BIBLIOMANIAX内検索 / 「望月楚羅嗚は沈まない」で検索した結果

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  • 望月楚羅嗚は沈まない
     楚羅嗚のエーテルが力に変わる。虹色の光彩が世界の中へ解き放たれる。  瞬く間に空間に色が生まれる。幻想的なグラデーションが現実へと昇華する。美しく輝き、空が光に満ちる。  そして、描き出されるのは幻想の生物。翼持つ巨大な赤い獣はドラゴンと呼ばれる幻獣だ。太く力強い首には手綱がつけられており、翼の間には鐙が装着されている。  ドラゴンが一声嘶き、夜神を睨みつける。存在しない筈の竜種、その眼光は鋭く恐ろしい。けれど、夜神は怯みもしない。 「吠えるな、蜥蜴」  何の挙動も見せず、夜神が動く。  もし相手がただのドラゴンならば。もしドラゴンを生み出したのが楚羅嗚でなければ。その僅かな動きで、ドラゴンは先程の男と同じ運命を辿っていただろう。  しかし、目の前にいるドラゴンは、【ファンタズマゴリアレジェンド】望月楚羅嗚が描き出し、創りだしたものなのだ。そう簡単に行くはずがない。 「ハッ!」  楚羅嗚...
  • 時夜 夜厳
    ...夜夜神は浮かばない 望月楚羅嗚は沈まない スクールイベント異伝‐学園都市熱狂・ギルガメシュGP夜の王VS溝鼠の王 牛王と日ノ本の女王、そして道化王 速度の王
  • 時夜夜神は浮かばない
     その男は、暗い闇で造られている。  光を知らないような暗い瞳、輝きを否定するような黒いジャケットコート、影を彷彿とさせるその出で立ちは、見る者に等しく恐怖の感情を抱かせる。  彼こそが、【人類最凶時夜夜神】の異名を有し、【放浪する禍】の忌み名で呼ばれる男その人だ。  けれど、誰もがその姿を最初に見た時は疑う。本物なのか、と。歩く災厄とまで謳われる男にしては、あまりに歩みが弱すぎはしないか、と。  強靭にして凶刃、狂妄なる凶暴。狂いに狂った男にしては、表情が弱すぎるのだ。  その歩みは夢遊病者のようで、その顔に力はない。  狂人と呼ばれる人間は、得てして顔に力がある。それは独善からくる笑みであったり、愉悦から来る快楽であったり、本能から来る喜びであったりと様々だ。  恐らく、人が理解出来ない理由で。或いは、理性によって抑え込んでいる本性で。はたまた壊れてしまった心を押えきれなくなって、人は...
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    ...夜夜神は浮かばない 望月楚羅嗚は沈まない スクールイベント異伝‐学園都市熱狂・ギルガメシュGP夜の王VS溝鼠の王 牛王と日ノ本の女王、そして道化王 速度の王 First contact崇道院早良&アルシア・ヒル 崇道院早良&冷泉神無 3バカ(万珍&厳&キャンディ) 音土けモノ屋の日常 音土けモノ屋の非日常 早良のわくわく潜入日記四十物谷調査事務所の飲み会編 篭森珠月のお茶会編 3バカシリーズ3バカの日常 旅立ちのユキヤナギ 天狗の話。 番外 早良の口演 講談「とら侍」講談「とら侍」その壱 First contact宿彌&逆襄 沙鳥&比良坂 学園都市前奏ダーククロニクル迷走編/序章 『上海暗躍』 学園都市前奏ダーククロニクル迷走編/一章 A『DETECTIVE office 乱』 First contact三島広光路&澪漂二...
  • First Contact/三島広光字&望月遡羅
     First Contact 三島広光路&望月遡羅  「あー……この辺りは全部持ってるし……。これは保存状態が悪すぎ。ふへ、そろそろ掘り出し物見つけるのも、難しくなってきたねぇ」  西区画の繁華街にある、小さな古道具屋。その中でも、電子書籍が一般的な現代では比較的珍しい、紙の書籍が並んでいる棚の前に、一人の男が立っていた。  癖のある髪の毛をオールバックにして後ろで縛り、赤いフレームのスタイリッシュな眼鏡を掛けている。中華風の長袖シャツの上から、昇り竜をデザインした外套のようなものを羽織っていた。更に奇抜なことには、機械的なデザインを持つ二メートルほどの槍を、右肩に担いでいるということだろうか。  男の名は、【アンタッチャブルサイズ(不可触民の鎌)】三島広光路という。  この西区画を管理するリンク【澪漂管弦楽団】に席を置く生徒であり、現在は丁度仕事のために住処である九龍城砦...
  • First contact/望月遡羅&篭森珠月
    Fast contact 望月遡羅&篭森珠月 「妙な光景だ」  ぼそりと呟いた澪漂二重の言葉にきゃあきゃあ言いながらケーキを切り分けていた望月遡羅と篭森珠月は振り向いた。 「何がだい? 二重」 「包丁をこちらに向けるな。貴様に刃物を向けられると、殺意がなくとも緊張する」 「御希望なら、投げつけてやってもいいよ」 「止めろ、【無能】が」  言葉だけとらえると険悪だが、どちらも顔は笑っている。珠月は肩をすくめると、さらに切り分けたチョコレートケーキを乗せて二重に差し出した。 「で、何が妙だって?」 「人類3KYOのうち二人の身内が、仲良くケーキを切り分けている光景だ。写真を取りたがる記者が山のようにいるだろうな。まあ、そのような【無能】、生きて仕事場に帰れるとは思えないが」 「それくらいで殺しはしないよ。データ没収で厳重注意が関の山。ねえ?」 「そうですね。流石に自分の写真が知らないところで...
  • ロイヤルベルベットブルー
    ロイヤルベルベットブルー  ベアトリクスに手を引かれて、矯邑繍は重厚な木の扉を潜った。とたん、心地の良いクラシックが耳をくすぐる。  店内は青かった。目に痛くない上品で深い青色で店内は埋め尽くされている。  Loyal velvet blue  入り口に小さく掲げられていた看板を、繍は思い出した。なるほど。確かにここは上質の青の空間だ。特に濡れたような深い色というのは、ベルベット生地の特有の色でもある。 「ゲームバーなのよ。ほぼスカラー用の」  ゲームといってもやかましいアーケードゲームのことではない。カウンターとちょうど反対側の壁の隅がダーツ場になっていて、そこで数名の男女がダーツを楽しんでいる。他のテーブルでは、チェスや賭けなしの健全なトランプを楽しんでいるものもいる。  戦闘者であるグラップラーやソルジャーなら、ダーツよりはるかに難易度の高いゲームを好む。彼らにとって、すべ...
  • 望月 遡羅
    望月遡羅の憂鬱 白雪姫と五人の守人
  • 望月遡羅の憂鬱
    【望月遡羅の憂鬱】  人は誰しも、苦手な人間が存在する。  それはやれ極寒の吟遊詩人だの、やれ悪趣味な程に真っ赤な道化だのというのは人それぞれである。  そして彼女――序列31位、【ファンタズマゴリアバディ(幻想具現化)】の望月遡羅(もちづき そら)にも勿論例外なく、苦手な人物がいるわけで……。  ※※※ 「師匠っ!! 今日も一つ御指南御願い致しますっ!!!」 「……だから、その『師匠』というのをやめて下さいと何度言ったら分かるんですか……」  何の前触れもなく自室を訪ねてきた来訪者を見て、遡羅は大きな溜息と共に項垂れた。  それと同時に、丁度周りの部屋の主が皆外出している事に安心する。こんな光景を見られでもしたら、明日からきっと悪ふざけに『師匠』と呼ばれそうだ。特に二角当たりに。  しかし当の言われた本人――序列2001位、弓納持有華(ゆみなもち ゆか)は全く気にする事もなく、む...
  • 序章 これは訓練ではない
    序章 これは訓練ではない  ゾアックソサエティ・ライザーインダストリー  元日系企業が寄り集まってできたこの巨大企業が、かつての世界大戦の前、日本と呼ばれた国があった場所に立てた学校がある。  その名を学園都市・トランキライザーという。六年間の予科――ただし飛び級可能――と十年間の本科からなり、予科から本科に進学できるのは全体の1%程度。その1%さえ卒業までにたやすく命を落とす、強いものだけが生き残る修羅場である。  その超エリート学校の中でも、特に次世代のリーダーとなるに相応しい序列300位以内の超成績優秀者のことを『上位ランカー』あるいは単に『ランカー』と呼ぶ。ランカーは学生の身分でありながら、あらゆる分野において世界を舞台に活躍している。 「避難訓練をしようと思うんだ」  学園都市・トランキライザーのイーストエリア。ダイナソアオーガン会長室にて、二人の人物が向かい合っていた...
  • Happy birthday 遡羅様
    【Happy birthday 遡羅様】 今日から6月!…といっても何ら変わりない仕事の内容に肩を落とす牙裂紅。解りやすいにもほどがある。桐ヶ谷桜花は変わるわけ無いだろうと言ってから独り言のように呟いた。 「今日は望月さんの誕生日だっけな」 「えぇ!?『あの』望月さんのお誕生日なんですか!?」 「あのって言うのは失礼だぞ。」 「すみません…。師匠は物知りですよね」 「僕は何でも知ってるよ」 「そうなんですか!?」 『あの』とつけるくらいだ、そうとう気になっていたのだろう。桐ヶ谷は驚いている牙裂紅に答えず届け物を見遣る。 「そこの終わった奴、ちょうど届け先が西区だから。」 そこまで言うと桐ヶ谷の思ったとおりに牙裂紅が手を上げた 「師匠、私行ってきます!」 「当たり前だろう。早く帰ってくるように」 「う……頑張ります」 届け物を片手に元気に出て行ったかと思うと、ま...
  • Consulta
    【Consulta(相談会)】 「……そういうわけで、妹としか見てもらえないんです」  遡羅はため息を呑み込むようにチョコ大福に齧り付く。 「まぁ、小さい頃から一緒だとどうしてもそうなるだろうね」  藤司朗は湯のみにお代わりを注ぎながら、小さく苦笑した。 「うちだって、特にスズ辺りなんかは娘を溺愛しちゃってるみたいなもんだし。そうなると、マサ姉がお母さんで、俺がお兄ちゃんで、ユキが弟で、丈がペットのポチってところかな?」  もしも本人に聞かれていたら、いつものように大惨事となっていただろう。  そんな丈之助は、現在沙鳥と共に徘徊中。危機は免れた。 「口説こうとか、ラブに発展とかって展開はないんですか?」 「ないね。絶対に」 「絶対ですか……さとさんが聞いたら怒りそう」 「まぁ、沙鳥に望まれたんなら喜んで応えるけど、あり得ないから。多分、他の奴もそうじゃないかな?...
  • First contact
    ミヒャエル・バッハ&篭森珠月 三島広光字&望月遡羅 三島広光路&澪漂二重 不死原夏羽&不死川陽狩 冷泉神無&法華堂戒 太刀花悠香&嶽夜叉汚嶽 宿彌&逆襄 崇道院早良&アルシア・ヒル 崇道院早良&冷泉神無 戦原緋月&星谷遠 時夜夜巖&クロエ 望月遡羅&篭森珠月 朝霧沙鳥&篭森珠月 朧寺緋葬架&四十物谷宗谷 朧寺緋葬架&篭森珠月 毎熊匠&雪城白花 沙鳥&比良坂 法華堂戒&エドワード・ブラックシープ 淮南万珍&三ツ石厳&白亜キャンディ 澪漂二重&朝霧沙鳥 澪漂二重&澪漂一重 狗刀宿彌&ネモー・ヌスクヮム 狗刀宿彌&牡丹 矯邑繍&にゃんにゃん玉九朗 篭森珠月&ジェイル・クロムウェル 篭森珠月&空多川契
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    メニュー トップページ ABOUT 学園へ戻る 別館(ギャラリー)へ移動 誤字・脱字報告 作者別 時夜 夜厳 朝霧 沙鳥 篭森 珠月 澪漂 二重 世都母 比良坂 経世 逆襄 狗刀 宿彌 望月 遡羅 空多川 契 下流 ゲル 崇道院 早良 巫 牙裂紅 共通シリーズ First contact 更新履歴 取得中です。 @ウィキ ガイド @wiki 便利ツール @wiki
  • Creato
    【Creato】  一つ目は塵芥以下。  二つ目は劣化コピー  三つ目は明らかな贋作。  四つ目は玩具にもならない。  五つ目は……まぁ、改良の余地あり。  他人の手で作られた五つの出来損ない。  使えるのは一つか二つ。  彼らにはその程度の物しか作れなかった。  期待外れも良い所だ。 「そう思わない?」  何の前触れもない問いでも、少女は反応を返さない。  驚きもせず、訊き返しもせず、怒り狂いもせず、ニコリともせず。  彼が何をしようと、何と言おうと、少女は何も返さない。 「……つまらないな」  クルクルと笑い、少女の頬に爪を立てる。 「やっと成功したんだよ? やっとやっとやっとやっと……やっぱり、あんな役立たずたちなんかに任せないで、最初から僕一人でやれば良かったんだ。そう思わない? そう思うでしょう? ね...
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    シェアワールド作品School of Lifeの小説庫です。 作品 作者別 経世 逆襄 篭森 珠月 空多川 契 狗刀 宿彌 澪漂 二重 朝霧 沙鳥 望月 遡羅 時夜 夜厳 崇道院 早良 世都母 比良坂 更新履歴 取得中です。 上記以前に更新された物はこのwikiのページ一覧から 外部リンク ・別館 絵や漫画を置いています。携帯からの閲覧可能。 ・School Of Life ×TRANQUILIZER×学園2nd 公式wikiです。設定を置いてます。
  • 神様の天秤は傾かない
    神様の天秤は傾かない  断続的に聞こえる銃声と爆発音が肺の中の空気まで揺らす。銃火器と悲鳴に慣れた耳は、しばらくは小さな音を拾うのに苦労するだろう。  南アフリカ地域、企業都市リザル近郊鉱山地帯。二つの異なる勢力がぶつかり合っていた。否、ぶつかり合っているというのは正しくない。今や兵力の差はあきらかで、一方がもう一方をただ食い潰している惨状となっている。  そのやや後方。殺伐とした空気と粉塵で汚れた空気をもろともせず、無表情で通信用小型PCと向き合う少女がいた。ひたすらPCで指示を出す以外、動こうともしない。 「篭森様。敵の右翼は潰しました。相手は隊形を維持しつつの撤退を行っております。おそらくは街を捨てて古い炭鉱にこもり持久戦に持ち込むつもりです」 「問題ない」  横に立った人物のほうをみようともせず、少女はタッチパネルに指を走らせる。 「それくらいは予想の範囲。二分五十五秒後に仕掛け...
  • 澪漂 二重
    sheep Cooking Psychic and Witch Knife and Fork 8ave Battle (1) Battle (2) Vampire After Day 交響曲第一番 【無能】チューニング 薄暗い部屋の中で 第一楽章 音楽家たちの円卓 第二楽章 戦争、開始(1) 第二楽章 戦争、開始(2) 第三楽章 鋏と死骸(1) 第三楽章 鋏と死骸(2) 第四楽章 終演時間 カーテンコール 見えざる囚人 交響曲第二番 【無礼】チューニング 謎の会合、あるいは一重の憂鬱 第一楽章 虐殺者たち、あるいは擦れ違い(1) 第一楽章 虐殺者たち、あるいは擦れ違い(2) 第二楽章 交錯する者、あるいはヒーロー見参!(1) First Contact澪漂二重&澪漂一重 澪漂二重&朝霧沙鳥 三島広光路&望月遡羅 学園都市トランキライザーの異常な日常バレンタインデー編...
  • Cocco
    【Cocco(可愛い子)】 「あ、ランキングだー」  沙鳥が指差した先へと、傍らを歩いていた藤司朗と丈之助も視線を向ける。 「人気投票? 暇なんだね……」 「あ……沙鳥11位」 「ホントだーw 藤司朗と丈之助もいるよ! すごーい!」  手を叩いて喜びながら、ランキングに挙がっている自分達の名を指す。 「うわ。ホントに名前ある。物好きもいるんだね……篭森さんの方が可愛いと思うんだけどな。あ、丈もあと一票で世都母の小父さんと並ぶよ」 「……どれ?」 「ほら、この人。ついでにこっちが南王でこっちが東王。……そろそろ覚えてあげないと泣かれるんじゃない?」 「南王……東王……あぁ、知ってる!」  ようやく合点がいったとでも言うのか、「この間どっかで見た! 何かしてた!」などと曖昧な「ちゃんと知ってるよ」アピールが続く。 「はいはい。本人の前では言わないようにね。……それ...
  • 篭森 珠月
    First contact毎熊匠&雪城白花 篭森珠月&空多川契 法華堂戒&エドワード・ブラックシープ 篭森珠月&ジェイル・クロムウェル 不死原夏羽&不死川陽狩 矯邑繍&にゃんにゃん玉九朗 朧寺緋葬架&四十物谷宗谷 冷泉神無&法華堂戒 ミヒャエル・バッハ&篭森珠月 望月遡羅&篭森珠月 朝霧沙鳥&篭森珠月 戦原緋月&星谷遠 朧寺緋葬架&篭森珠月 ブラックシープ商会 Baa,Baa,Black sheep(めえめえ 黒い羊さん)Baa,Baa,Black sheep Baa,Baa,Black sheep Ⅱ Baa,Baa,Black sheep Ⅲ Baa,Baa,Black sheep Ⅳ Baa,Baa,Black sheep Ⅴ ブラックシープ商会短編羊の日常 羊の日常 其の二 羊さんの届け物 前編 羊さんの届け物 後編 四十物谷調査事務所 四十物谷調査事務所調査...
  • try!! 1
    try 「偽物です」  ずらりと並べられた絵画の数々。状態の良いものもあれば、あきらかに修復が必要なものもある。共通しているのは筆遣いと色彩感覚。素人目にもそれは一人の画家が描いたものだと分かる。それがすばらしくうまいということも。もう少し知識がある人間ならば、その画家の名前すら出てくるだろう。 「はっ……馬鹿なことを言うな。これらはすべて最新の科学鑑定を」「フェルメールが天才と言われるのはその構図の美しさや人々の暮らしを描いた技術もさることながら、細密な絵画とは思えないほどタッチが大胆であることです」  幾人もの中高年の男女がいる中でもっとも年若い少女は、そう答えた。そして、手袋をつけた手で、一枚だけ平置きで台に置かれている絵を横から覗き込む。 「角度を変えてよく見てください。フェルメールのタッチとはまったくことなります。細かすぎるほどに細かく、丁寧な筆遣いですよ」  誰も声を発しなか...
  • Baa,Baa,Black sheep Ⅴ
     キャシー・クラウンのピーチハウス襲撃事件。 ブラックシープ商会社員の一斉襲撃と死者の発生。及び責任をとっての一部幹部の辞職。 フォックスグレーシアのテロ事件。 ウエストヤードでの銃殺死体発見。 一連のブラックシープ商会襲撃事件の犯人捕殺。  一日で起こった事件に学園は一時騒然となった。しかし、ブラックシープ商会の事件の犯人が捕まり、さらに幹部が責任をとったということで、その騒ぎもやがては沈静化した。 フォックスグレーシアに関しては、色々と恨みを買っていたリンクだったということもあり、恨みある何者かによる犯行として処理された。見事に全滅していたために、訴え出るものがいなかったせいもある。二つの事件を繋げて考えたものもいたことはいたが、証拠が出ない以上憶測の域を出ず、すぐに彼らも沈黙した。  数日後には、校内は完全にいつも通りの平穏さを取り戻したように見えた。  ...
  • 5、地下の王
    5、地下の王  暗い。 まれに照らす明かりはあれど、それはあまりにも儚い。  篭森珠月は、漆黒の闇の中を歩いていた。彼女の特徴である黒いゴスロリ服が闇に溶けて、境界線をあいまいにする。  自分自身さえほとんど見えない闇の中、しかも崩れかけたコンクリートで埋もれたお世辞にも歩きやすいとはいえない道を、珠月は黒いドレスをなびかせて颯爽とあるく。  相変わらずの黒いブラウスに黒いコルセットスカート。片手には日傘を、もう片方の手には小さなトランクと紙袋を持っている。  何となく頭上を見上げる。そこも闇で満たされていて何も見えない。しかし、珠月はその中にあるのが分厚いコンクリートであることを知っている。  ここは学園地下に広がる、俗にアンダーヤードと呼ばれる場所。  旧日本の時代に縦横無尽に張り巡らされた地下鉄や地下道、排水路などの跡地のうち、戦後になっても企業の手が及ばなかった場所に、犯罪者や...
  • 4、外野席
    4、外野席  盛り上がる料理コンテスト。  それに反比例するように、出店の客は徐々に落ち着きつつあった。朝から立ちっぱなしだった各店の従業員たちも次々と休憩に入り始める。 「お疲れさん」  ブルーローズ社長、雪城白花が顔をあげると、ミルクがたっぷり入ったアイス珈琲が差し出された。グラスを持っているのは、副社長の毎熊匠だ。 「ありがとうございます。匠さん」 「……いっつも言ってるけど、さんはいらない」 「あ、ごめん。ついつい癖で。本当に今日はお疲れ様。モンブランちゃんも」  ゆっくりと近寄ってきたヒグマに向かって、白花は手を振った。  匠のエイリアス【デンジャラステディベア(超危険なクマさん)】の由来でもある、彼の相棒モンブランはヒグマである。正確には、戦闘用に作られた生物兵器の失敗作である。しかし、白花は気にしない。匠はもちろん気にしていない。気にしているのは、むしろ客であるが、そ...
  • あの人とおしゃべり
    あの人とおしゃべり 「店長……今日、早引けしたいですぅ」  学園都市トランキライザー、サウスヤード。海を望む地域であり、ワーカーや若者の集まる活気ある街の中でも比較的落ち着いた空気を持つ市場の近くに、パステルランドという店はある。その名前から想像できるように、店内は淡い色で統一され、毒々しいまでに色とりどりのミニケーキとお茶が提供されるファンシーな空間となっている。味でも売上でも学園トップ2には遠く及ばないものの、天然素材でここまでファンシーな色を出すということでネタとしての人気は高い。見てびっくり、食べてゆっくりというわけだ。  その店の店主はアルバイターの突然の要望に顔をしかめた。 「駄目だよ。今日は混んでるんだから」 「だって……今日の客層、カオスすぎるんですよ。ちょっと店長もフロアでてくださいよ。私たちだけじゃ心が折れそうです」 「クレーマーでも来た?」  バイトの女の子は無言で...
  • 女よりも悪いもの4
    「で?」  乾いた初冬の空の下、柔らかな日光が降り注ぐサンルームで篭森珠月は珍しい客人と対面していた。否、対面すること自体は珍しくもなんともないし訪ねてくること自体も稀有ではない。ただ彼がおとなしく敵陣で椅子に座っているのが珍しいのだ。まして、珠月は彼に自分がひどく嫌われている自覚がある。 「まあ、概ね穏便に落ち着いたほうだということは了解したよ。介入した以上、治安維持の観点からしても自体が長引くのは避けたいところだったしね。文句があるとするなら、初めから貴方がしゃり出てくるならもっと穏健な方法もあったでしょうに、なんで殺しまくるわけ? 死体処理だけでも一仕事なんだよ?」 「苛立ちはどこかで発散しないと、心の健康に悪いんですよ。カルバニア」 「知るか。もっと合法的に発散させてよ」 「貴方と違って、こちらは殺人免許を所持していませんので」 「正当防衛ねらえば?」 「私レベルになると、にじみ出...
  • 三島広光路&澪漂二重
    First Contact 三島広 光路 & 澪漂 二重  ―――小さい時のホゥ アルオンについて、か?大人しい奴、だったかな。おやっさんのことは嫌いそうだったけど。んー、練兵場で何やら訓練していたのは知ってたけど、実はインチャオ時代はさ、彼奴と話したこと無いんだよな。え、意外だって?んなことねぇよ。当時の関係って言えば、憎まれてても雇い主の御曹司と、一少年兵だぜ?そう、おいそれと話せる身分かよ。  指令を受けた光路はかったるげにメインストリートを歩く。当時の西区画といえば、ザンスキングダムの冥獄一派が支配していた頃。かの名高い澪漂管弦楽団と言えど、学園内では新興勢力であった。  メインから工場地帯を抜けていくと、歪に聳える異形の建造物、九龍城砦に辿り着いた。 (まぁさか、こんな格好であのアルオンと再会するとは、思わなかったなぁ……)  学園に来てい...
  • First Contact/三島広光路&澪漂二重
    First Contact 三島広 光路 & 澪漂 二重  ―――小さい時のホゥ アルオンについて、か?大人しい奴、だったかな。おやっさんのことは嫌いそうだったけど。んー、練兵場で何やら訓練していたのは知ってたけど、実はインチャオ時代はさ、彼奴と話したこと無いんだよな。え、意外だって?んなことねぇよ。当時の関係って言えば、憎まれてても雇い主の御曹司と、一少年兵だぜ?そう、おいそれと話せる身分かよ。  指令を受けた光路はかったるげにメインストリートを歩く。当時の西区画といえば、ザンスキングダムの冥獄一派が支配していた頃。かの名高い澪漂管弦楽団と言えど、学園内では新興勢力であった。  メインから工場地帯を抜けていくと、歪に聳える異形の建造物、九龍城砦に辿り着いた。 (まぁさか、こんな格好であのアルオンと再会するとは、思わなかったなぁ……)  学園に来ていたのは知っていたし...
  • 睦み合う音楽家たち ――第四管弦楽団・澪漂四重
       Ⅲ.睦み合う音楽家たち ――第四管弦楽団・澪漂四重  「わはははは! 何をぼけっとしておるのかね? 諸君、我輩はこっちだぞ!」  「いたぞ、あっちだ!」「捕まえろ!」「銃を用意しておけ!」  深夜のオフィス街に響く大声。サーチライトが揺れる夜空を横切るように、奇妙な風体の人影がビルとビルの間を飛び越える。  一つは、大きな袋を背負った姿の男――シルクハットに黒のスーツ、律儀にも肩にマントを羽織り、手には細身のステッキを持っている――は、眼下の道路を走る男達を見やり、彼らの先に待機している相方に声をかけた。  「九重(ここのえ)、そちらに行ったぞ!」  「ハイヨ、だんちょ団長!」  不意に聞こえた返答に、男達が視線を頭上の人影から前方に移すと、そこには深夜のオフィス街にはそぐわない、真紅のチャイナドレスに身を包んだ女性が立っていた。なぜか手には竹箒が握られている。 ...
  • 水と葉の庵
    水と葉の庵  ウエストヤード、バザール。  商人が集まり様々なものを売り買いする市場からすこしそれた道の奥に、〈水葉庵〉はある。見落としそうな路地の中、目印になるのは水紋に葉っぱが浮いたモチーフの、透かし彫りの看板だ。  頭よりやや高い位置にある青銅でできたそれを見上げ、序列158位【レッドラム(赤い羊)】法華堂戒はゆっくりと視線を下に落とした。細身の体が路地の壁に影を落とす。その影がゆがんでいるのは、手に持った荷物と背中に背負ったトライデントという三又の槍のせいだ。  確認するように、戒は路地裏に唐突に出現した扉を見つめた。頑丈そうなドアに取りつけられた硝子の向こう、薄暗い空間が広がっている。扉を開けると扉の上部についた鈴が、思ったよりも大きな音で鳴った。  中は見通しが悪い。暗いからという理由もあるが――商品が傷まないように、強い照明は取りつけていない――それ以上に、並べられた棚や...
  • Contrare
    【Contrare(逆襲)】 「いらっしゃい。ちょうど良かった。ついさっきね、沙鳥がブルーローズのケーキを大量に持って帰ってきたところなんだ。好きなの一個取って良いよ」 「……ありがとうございます」  遡羅はお礼を言いつつも、藤司朗と視線を合わせる事が出来ない。普段とは違う意味で。 「自分で食べる? あーんってする? 口移しが良い?」 「じ、自分で食べます……」 「残念。はい、どうぞ」  満面の笑みでケーキを差し出される。 「こ、紅茶で良いかしら……」 「じゃまですよ、マサ。踏みますよ」 「ひ、酷いわ。スズちゃん……」  扉の奥から紅茶の載った盆をソソソと押し入れる政宗と、それを遠慮なく踏み付けて部屋に入ってくる鈴臣。 「そんなに恥ずかしがらなくても大丈夫だよ、マサ姉。とても可愛いよ」 「そうかしら……」 「照れてる所なんか最高。ギュってしてチューしたいく...
  • 2、参加者集結
    2.出場者集結  ライザー学園は、旧東京都に作られた巨大学園都市である。  その中には、学園所有の施設もあれば、個人の施設や企業のもの、リンクと呼ばれる生徒の作った組織の所有する物件もある。そしてそれと同じくらい多く存在するのは、持ち主不明の廃屋やスラム街だ。  とはいえ、それは全体を見渡しての話。  学園本部のおひざ元であるメインヤードは、他の区画からすれば信じられないほど近未来的な美しい街並みが広がっている。  その一角。さまざまな文化施設が並ぶ通りに、エンジェルエッグ所有の多目的ホール《シャングリオン》はある。普段はコンサートや舞踏会などのイベントに使われているが、今日はそこは良いにおいに包まれていた。 「本日最終回! ブラックシープ商会推薦の健康食品はいかがですか?」 「ブルーローズの新作、白桃の蒟蒻ゼリーです。有機栽培で作られたブランド白桃を贅沢に使...
  • 夜の王VS溝鼠の王
    「おいおいマジかよ先輩! 違うだろう? アンタはその程度じゃねぇ、そうだろうよ!」 「俺はいつだって、その程度よりちょっと上にいるだけデスヨ」 「はっ、よく言うぜ! あんだけ俺にご高説たれやがった癖によ!」  二人共、スピードは落とさない。風をまともに浴びながらの会話、届くこと自体が可笑しい。それでも二人、楽しげに叫ぶ。 「オヤオヤ、貴方は俺の言葉なんて信じてイタノデスカ? 言葉なんか飾りに過ぎません、信じるとバカを見ますよ?」 「違うね。俺は先輩、言葉じゃねぇ! アンタのソウルを感じたからこうやってつるんでんだよ! かつての俺らみたいなガキじゃねぇ、いつかのアイツらみたいな大人じゃねぇ! マッスル気張って突っ走る、アンタのスタイルが気に入ったからこうやってんだ!」  アクセルを限界以上に引き絞る。フルスロットル、エンジンの焼ける匂いすらしてくるように感じる。 「俺はあの日から前に来たぜ!...
  • おまけ、パステルランド
    おまけ パステルランド  サウスヤード・ハーベストストリート。  ここに最近できた、色々な意味で話題のスィーツショップがある。その名も「パステルランド」。  店内のショウケースに並ぶのは、青やピンクのパステルカラーのカップケーキたち。しかも、こんなに毒々しいパステルカラーをしているというのに、すべて天然素材でできているという二重の意味で驚きのスィーツだ。店内には飲食スペースもあり、おいしい紅茶や珈琲と一緒に、甘いカップケーキが楽しめる。 「イギリスでは、カップケーキをフェアリーケーキともいうのよ」 「ほえ~、妖精のケーキなんてロマンチックだね」 「ロマンチックというか、オカルト的? 本場の妖精って、日本でいう精霊とか妖怪とか死者とかがごっちゃになった存在だから、意外と可愛くないよ。私は日本のもののほうが好き。可愛いから」 「珠月ちゃん、可愛いもの大好きだもんね」  沙鳥は笑うと、綺麗な...
  • くまときょうりゅう
    くまときょうりゅう  やや粘性のある液体が滴り落ちる。一見、その液体は何もない空間からこぼれ落ちたようにみえた。しかし目を凝らすと狭い空間に無数の極細ワイヤーが張られていて、その一部が真っ赤に染まっているのだと分かる。視線を下げれば乱雑に切られた人間の肉の一部が横たわっている。つまり、切断された人体から噴き出した血がその奇妙な光景を作り出しているのだ。  水音がして床にたまった血が揺れる。ヒールのあるブーツがそれを踏みつぶした。揺らぐ赤い水面に黒い影が映る。男は茫然とそれを見つめていた。つい先ほどまで周りにいて指示を出したり自分をかばったりしていた護衛たちはすでにすべてが肉塊となって赤い海に沈んでいる。 「――――化け物め」  だが男はひるまない。自分よりはるかに戦闘能力でまさる相手があっさりと倒されたというのに、それでも相手に銃器を向けようとする。だが、それが獲物を捕らえるよりも前に...
  • Debris
    Debris  わたしがあの御方に出会ったのはまったくの偶然でした。  そのころ、わたしは今から考えると下賎で俗物な男の元で働いていました。仕事は都市の外、誰のものでもないような土地や誰かの土地ではあるけれど完全に放置されていて勝手に人が住み着いているような場所に赴いて害虫駆除をすることでした。  普段ならば都市部に近付かない限り、そこで虫の百匹や二百匹が生きていても何の問題もありません。ですが、何か有事の際に奴らが暴れ出すと色々と面倒なことになります。だから、紛争前後には掃除が必要なのです。  確か、あの御方にお会いしたのは前掃除のためにどこかの虫の巣に赴いたときのことです。いつもの通り仕事を始めようとしたら奇妙な一団が乗り込んできたのです。敵が雇った治安維持部隊だと、当時私にいつも命令していた男は言いました。それが彼の最後の言葉でした。おそろしく精密に計算されて飛んできた弾丸が奴の額...
  • 早良のわくわく潜入日記~四十物谷調査事務所の飲み会編~
     ここは、とある飲み屋。学内リンクの一つ、四十物谷調査事務所が飲み屋を丸々一軒貸し切っての飲み会を行っているところである。リンク全体の六割ほどだというが集まっているメンバーの数は多く、人種からランキングまでの何もかもがバラバラで一見して何の集まりかわからないような、そんな集団であった。  その上座付近には代表である【ホーンデットアックス(怪奇斧男)】四十物谷宗谷を始めとしたリンクのコアメンバーが集まっており、そこに包囲されるかのように南区画の王である【キングオブインサニティ(狂気の王)】経世逆襄が何故か座っていて、一桁や二桁をも含むトップランカーの塊という恐ろしいスペースが出来上がっていた。  そんな飲み会の一角に【ジャック・ザ・リバー(闊歩する自由)】崇道院早良はいた。このうごうごと人のひしめく室内でどんな楽しいことが起きるのだろうか、そう考えるだけでわくわくものであった。  早良はこ...
  • First contact/冷泉神無&法華堂戒
    First contact 冷泉神無&法華堂戒  雨が降っていた。すりガラス越しでも外が薄暗いのが分かる。客足もすっかり途絶え、肌寒い。今日はさっさと店じまいをしようかと、冷泉神無は心の中で考えた。  ライザー学園の本科に上がった神無が、ウエストヤードのバザール近くにひっそりと店を構えたのはもう二カ月も前のことだ。しかし、当然のことながら客は多くない。無理に店に客を呼ばずとも、売り出し中の鑑定士で修復人である神無にはいくらでも仕事はある。扱うのが骨董という関係で、自分が向かわなければならないことも多い――骨董の消耗が激しくて迂闊に動かせないとか、そもそもでかすぎて簡単に移動できないとか、湿度や温度の関係で持ち運びしないほうがいいとか、古いものには色々事情があるのだ。 「とはいえ、誰も来ないというのも寂しいね」  ぽつりと神無は呟いた。本科二年目。そこそこ友人はいるが、いずれも今は上へ向...
  • First contact/淮南万珍&三ツ石厳&白亜キャンディ
     その日、彼女は自ら道を踏み外していくこととなる。すなわち、馬鹿へと。    白亜 キャンディ(はくあ きゃんでぃ)は困惑していた。クールにドライに学園生活を送ろうと思っているのに目の前の二人組はそれとは程遠い馬鹿馬鹿しい喧騒を繰り広げていた。しかも都合の悪いことに道を塞ぐようにして、だ。  一方は踊るかのように、一方はふんぞり返るかのように話している。  「豆腐、とうふ、トウフー! いやー美味いにょん」  「頭でも沸いちまったか? いや元々だと思っていたがな」  「そんな連れないこと言わんくてもいいだに、さっき友達だって言っただにー」  「だからこその苦言だ、天下の往来で小躍りしながら豆腐を食うな」  近づきがたい雰囲気の中で馬鹿達の運命を揺るがす決定的な一言が放たれた。    「お前のような奴のためにある言葉を教えてやろう。『豆腐の角に頭打って死ね』、だ」    「にゃふち……。死ねと...
  • Baa,Baa,Black sheep
    Baa,Baa,Black sheep(めえ めえ 黒い羊さん) 「困ったことになった」  ライザー学園イーストエリア。  ビルの立ち並ぶその中心部、ビジネス街のど真ん中にブラックシープ商会本社はある。その24階、大きな窓を持つ会議室に十数人の男女が集結していた。 「忙しい中、わざわざ集まってもらってすまない。用件は分かっていると思うが、最近、我がブラックシープ商会傘下の商店や営業のため外に出ていた職員が何者かに襲撃される事件が起きている。幸いまだ死亡者は出ていないが、多くが現在も入院中だ」  窓を背に立つ青年は、この巨大リンク【ブラックシープ商会】のトップにして生みの親、序列201位【ファンタスティックキャラバン(幻想暗黒商人)】エドワード・ブラックシープ。そのエイリアスの由来は、彼がまだ商社のみを経営していたとき、企業同士の紛争が勃発した地帯から不可能と言われたキャラバンを率いて...
  • illness
    illness  盛大なくしゃみの音が聞こえた。買い物袋を両手に提げた、見る人が見れば己の目を疑いかねない姿の珠月は音が聞こえた町家を見上げる。そして小さく唸った。 「本当に風邪ひきさんだったのか。てっきり仮病だと思ってからかう意味でわざわざ見舞いの品を持ってきたのに……本当に役立ちそうだ:」  誰かに言い訳するように珠月はぶつぶつと呟いた。その後ろで紳士的に燕尾服を纏った『骸骨』が同意するように頷く。  東区の魔女、“人類最強”の愛娘――【イノセントカルバニア】篭森珠月。そのエイリアスの由来は異能で操る成人の白骨。それが本物かそれとも精巧な作りものなのかは誰も知らない。物体操作という珍しくもない能力の持ち主である彼女のエイリアスが能力に沿ったものになったのは、ひとえにこの普段から操る対象の異様さによるだろう。これがただの人形や戦闘時に使う銃弾や鋼糸の操作だけならここまで能力で有名にはな...
  • First contact/崇道院早良&アルシア・ヒル
     典型だ。いや、間違った。天啓だ。  崇道院早良は心の中で呟く。その視線の先にあるのは一匹のトカゲ……のぬいぐるみ、を腕につけている女の子。典型的な話芸家スタイル、腹話術師ではなかろうか。  早良は思い込んでいた。今の時代、話芸家が飯を食べていける保証などない。そんな超ウルトラ圧倒的マイノリティーの道を歩む奴なんぞ誰が仲良くしてくれるだろう。しかし話芸に理解の有る人ならば……。  まだまだだと先送りにして学園生活を送っているが、いずれ誰かに連帯保証人を頼まなくてはならない。しかしながら「これだ!!」という友人にすら未だ巡り合えず焦燥感を覚えてきた矢先のことであった。  そして、ぬいぐるみに反応した。あ、あれに見えるは腹話術師の人に違いない。まさか、この学園に話芸に理解があるだけでなく、自ら話芸を行う者がいるとは思わなかった。何はなくとも声はかけねば一生の後悔だ、と。  「もしもし、お嬢さん...
  • Psychic and Witch
     「Psychic and Witch」   「なぜ基本デスクワーカーの僕がわざわざ街に出向いて調査しなければいけないのでしょう?いささか理解しかねますな」  西区画の繁華街を長身の男が愚痴を零しながら歩いている。見ただけで高級品だと分かる上等のスーツを着こなし、白い手袋をした手にステッキを突いている。男は入念に撫で付けられたオールバックの金髪を再び軽く撫でつけた。  「それもこれも、団長たちがいない時に限って現れた誘拐犯のせいですよ」  周囲の建物によって切り取られた空を見上げ、ランキング140位、【ロウオブワン・ツー・スリー(三本の矢)】のアルフレッド・フレミングは大きなため息を吐いた。  「それじゃあ実地調査にはアルフレッドが行ってきてくださいね」  数時間前、西区画の中央に位置する複雑怪奇な建造物の集合体、『九竜城砦』のとある一室で、【ファンタズマゴリアバディ(幻想具現化)】...
  • 0、時計の針の終着点はどこか
    0、時計の針の終着点はどこか  チクタクチクタクチクタクチクタク  どこかで時計の針が時を刻んでいる。人間が時間という感覚を失わない限り回り続けるであろうそれは、自分のしっぽを追いかけて回る犬に似ている。どこかでも回るだけで、どこにも行きつけない。  時計は時を刻む。刻み続ける。しかし、精密に作られた時計もやがては年を取り、時を刻めなくなる。そうなった時、時計は死ぬ。人が死ぬように。花が枯れるように。石が風化するように。  チクタクチクタクチクタクチクタク  魂が擦り減っていく音がする。心がこぼれおちていく音がする。 「―――――」  薄暗い部屋の中、少女は小さく息を吐いた。  わずかな呼吸さえなければ、死人と見間違えたかもしれない。それくらい少女には生気がなかった。とはいえ、弱っているわけではない。そういう病人や瀕死人の気配はない。それにもかかわらず、少女はどこか死体に似ていた。...
  • 人はそれを愛と呼……ばない
    人はそれを愛と呼……ばないと思う 「ちょっと、あれ! アレ」 「馬鹿、聞こえる。あ、こっち見た」  ひそひそと囁く声がする。苛立ちを込めて、不死原夏羽は目の前のローストチキンに思いきりフォークを突き刺した。本日のランチプレートの上で鶏肉がはねる。 「なにをしているんですか? 夏羽、食べ物で遊ばないでください」  くるくるとシーフードのクリームソースパスタをフォークで絡め取りながら、向かいにすわった不死川陽狩はいやそうな顔をした。先ほどから投げかけられる視線と囁きに気づいていないわけがないのに、その様子は微塵も出さない。 「――――うざい」 「仕方がないですよ。有名税というものですね」  平然と答えて陽狩は昼食を続行した。夏羽は乱暴に鳥を切り分ける。その間もちらちらと視線が飛んでくるのが分かる。好奇とも好意ともつかないなんともいえない視線の主のほとんどが女性の複数連れだ。それ以外もいるが...
  • ties 終章
    「のんびり船旅を終えて、例の遠縁のところに着く頃にはほどよく一連の事件にほとぼりが冷めているでしょう」 「一か月も船旅なんて聞いてないわ」 「良いではありませんか。海原のドレスに揺られてゆったりと過ごすのも、良い経験です」  三人は港にいた。港からは大きな客船が出発の準備に追われている。第一次非核戦争後、人間の移動手段としての船の需要減ったが、それでもゆったり旅をしたい人間というものは一定数存在する。いまだ海の多くで汚染が残っているというのに、それでも旅をしようというのだから人間はたくましい。 「金銭的なものはすでに口座名義が写りました。家と物品は船に後から追い付きます」 「家ごと引っ越ししなくて、売り払っても良かったのに」 「本当に?」  織子は黙った。この二人にはなんでも見透かされてしまう。 「はいはい。分かってる。ありがとう。父と過ごした大切な家よ。ばらして運んで組み立て直すわ」 「...
  • バレンタインデー編
       中央区――ライジングサン・ストリートにて マッタリーン・マターリスの場合  中央区の目抜き通りともいえるこのライジングサン・ストリートを、一台のトラックが疾走している。通行人や一般車両をすり抜けるように走り去るトラックの運転席には、一人の青年の姿があった。  序列三十六位、【ロードオブゴッドスピード(神速道路)】のマッタリーン・マターリスは、こみ上げてきたあくびをかみ殺しながら一人ごちた。  「あぁーあ……世間はバレンタインデーだっつーのに、俺は何をしてるんスかねぇ……?」  マッタリーンは八つ当たり気味に、アクセルを踏みつけた。周りの自動車が急加速したトラックを避けるように大きく揺れる。しかしそんなことには目もくれず、彼は自らの仕事をこなすためにさらにトラックを加速させた。【ロードオブゴッドスピード】のエイリアスは伊達ではない。  「ま、皆が幸せだからこそ、俺が儲か...
  • お茶とお茶菓子
    お茶とお茶菓子  天気が悪い。雨が降っているわけではないが、朝から日光を拝んでいない。天気予報によると雨こそ降らないものの一日中この曇り空が続くらしい。雲で薄められた光がぼんやりとノースヤードの街を照らし出している。序列269位【クルワルティワーシプ(残酷礼賛)】不死原夏羽(しなずはら かばね)は、そんな空を見上げて小さく舌打ちした。普段は相棒の序列270位【ヴァイスワーシプ(悪徳礼賛)】不死川陽狩(しなずかわ ひかり)とともに地下にいる夏羽だが、常に住所を変え続けなくてはならないという都合のせいで、たまにこうして地上に居を構えたり、ホテルやウィークリーマンションに滞在することもある。今もそうだ。昨日からノースヤードの安ホテルに泊まっている。ダイニングと寝室が二つあるシンプルな作りだが、暮らすには問題ない。むしろ普段暮らしている環境を考えるとかなりいい環境だ。やろうと思えば豪邸に住むこと...
  • 3、天使のチョコレート
    3、天使のチョコレート  西区画にそびえたつ複雑怪奇な建造物・九龍城が目前に見えるある通り。そこに真っ赤な門があり、その両脇には石を彫って作った唐獅子が座っている場所がある。日も暮れかけた今、門の奥には赤々とした明かりがともり、天井からはいくつもの中華行灯と底をくりぬいた鳥籠の中に電灯を入れたものがつり下がっている。 「おかえりなさいませ、桔梗様」 「いらっしゃいませ、秋人様」  二三人の人間が一行を出迎える。  見上げた門の上には、『無名堂』と墨で書かれた看板が立てられている。中に入ると、壁には幾つもの掛け軸や時計が掛けられ、黒壇の棚にはまねき猫や日本人形が飾られている。何気なく置かれている壺は、青磁だ。窓や門の飾り格子は、李朝朝鮮を思い出させる。  店内にいる人間の服装もチャイナドレスから着物まで様々で、まるでアジアのイメージを煮詰めたような奇妙な空間が広がっている。 「何かお飲み...
  • 授業風景 二時限目数学
    授業風景 二時限目数学  一般的な知識レベル――旧時代でいう義務教育やせいぜい高等学校くらいのレベルの教育において、数学や理科や歴史などの授業が速攻で役に立つことは少ない。語学くらいなら場合によっては役に立つが、できなくても死にはしない。  だが、それらが役に立たないのはそれが本当に基礎的な知識にすぎないからだ。重要なのはそれをどう応用し活用するか。例えば数学。プログラムや各種計算を行うためには情報数学の知識が必要だ。計算それ自体はコンピューターがしてくれるとしても、そこに計算させたい数値を入れるのは人間だ。人間が計算結果出てくるものの正体を把握していなければ、話にはならない。もっと身近なところでいうとならば、理科の実験。薬品を使用する量を計るのにも数学の知識は必要だ。設計や経済学にも数学は欠かせない。  そして、黄道暦を迎えた現在世界最高峰の教育機関の一つと称えられる我らがトランキ学園...
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