BIBLIOMANIAX内検索 / 「澪漂二重&朝霧沙鳥」で検索した結果

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  • 澪漂 二重
    ...澪漂二重&澪漂一重 澪漂二重&朝霧沙鳥 三島広光路&望月遡羅 学園都市トランキライザーの異常な日常バレンタインデー編 組曲「交響楽のための澪漂」踊らされる音楽家たち ――第十二管弦楽団・澪漂爆重 絡み合う音楽家たち ――第九管弦楽団・澪漂鍵重 睦み合う音楽家たち ――第四管弦楽団・澪漂四重 見極める音楽家たち ――第六管弦楽団・ルリヤ=ルルーシェ
  • First contact
    ...厳&白亜キャンディ 澪漂二重&朝霧沙鳥 澪漂二重&澪漂一重 狗刀宿彌&ネモー・ヌスクヮム 狗刀宿彌&牡丹 矯邑繍&にゃんにゃん玉九朗 篭森珠月&ジェイル・クロムウェル 篭森珠月&空多川契
  • First Contact/澪漂二重&朝霧沙鳥
       First Contact 澪漂二重&朝霧沙鳥  「あれ? 団長、出かけるの?」  「出かけるの?」  ある日の昼下がり――西区画・九龍城砦。 愛用の外套を肩に羽織った【エターナルコンダクター(悠久の指揮者)】澪漂二重に、部下である杏藤波音と花音の双子姉妹が声をかけてきた。  「ん? ああ……ちょっと中央のさっちゃんのところにな」  「今日は万具堂で、さっちゃん主催のお茶会なんだ」  二重に続いてそう言ったのは、二重の相方である【アルカディアフレンド(理想郷の大親友)】澪漂一重である。彼女も外出用のコートを羽織って、二重の隣に並んでいた。  「ふーん、じゃあ私達はお留守番だね」  「お留守番―」  常に無表情の杏藤姉妹は、どうとでもとれるような口調でそう言うと、さっさと自分の机に戻ってしまった。二重はそんな二人に苦笑して、一重の肩に腕を回すと、オフィスから出...
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    ...澪漂二重&澪漂一重 澪漂二重&朝霧沙鳥 三島広光路&望月遡羅 学園都市トランキライザーの異常な日常バレンタインデー編 組曲「交響楽のための澪漂」踊らされる音楽家たち ――第十二管弦楽団・澪漂爆重 絡み合う音楽家たち ――第九管弦楽団・澪漂鍵重 睦み合う音楽家たち ――第四管弦楽団・澪漂四重 見極める音楽家たち ――第六管弦楽団・ルリヤ=ルルーシェ Genio o Cretino (天才かバカか) Folle (狂人) Rainy Blue (雨の日の憂鬱) Felicitare (幸せにする) Abitudinario (いつも通り) Papera (うっかり) Gihad (聖戦) Consueto (いつものこと) Benvenuto (ようこそ) Generico (脇役) Amicizia (親愛) Devoto (信頼できる人) Amicone (仲良し) ...
  • First contact/朝霧沙鳥&篭森珠月
    first contact 朝霧沙鳥&篭森珠月 「~~~~~~~♪」  通りを大声で鼻歌を歌いながら歩く少女と無表情でそれにつき従う少年という妙な光景に、時折すぎる通行人は例外なく足を止めてあるいは振り向いて二人を見やる。けれど、注目を集めている本人たちはまったく気にしていない。 「~~♪ って……あれ? さっきもこの道通った気がするよ」 「沙鳥………………また、迷った」 「そっかぁ。おかしいと思ったんだ。一時間も歩いてるのに家に着かないなんて」  もっと早く気付けと突っ込んでくれる連中はここにはいない。心の中で会話に突っ込みをいれた通行人は無数にいたが、二人の服装を見て口をつぐむ。  まっ白な軍服と姫君という言葉が似合いそうな白いドレス。顔を知らなくても、それだけで二人が何者か分かる。  世界最大級の小中企業の共同体であるレイヴンズワンダーのクイーン【ゴッドアイドル(神の偶像)】朝霧沙...
  • 三島広光路&澪漂二重
    First Contact 三島広 光路 & 澪漂 二重  ―――小さい時のホゥ アルオンについて、か?大人しい奴、だったかな。おやっさんのことは嫌いそうだったけど。んー、練兵場で何やら訓練していたのは知ってたけど、実はインチャオ時代はさ、彼奴と話したこと無いんだよな。え、意外だって?んなことねぇよ。当時の関係って言えば、憎まれてても雇い主の御曹司と、一少年兵だぜ?そう、おいそれと話せる身分かよ。  指令を受けた光路はかったるげにメインストリートを歩く。当時の西区画といえば、ザンスキングダムの冥獄一派が支配していた頃。かの名高い澪漂管弦楽団と言えど、学園内では新興勢力であった。  メインから工場地帯を抜けていくと、歪に聳える異形の建造物、九龍城砦に辿り着いた。 (まぁさか、こんな格好であのアルオンと再会するとは、思わなかったなぁ……)  学園に来てい...
  • Happy birthday 沙鳥様
    【Happy birthday 沙鳥様】 「以上で会議を終わります。   解散」 解散の合図と共に、どよどよと出席していた人が席を離れる。 「こ、光月さん!」 巫牙裂紅もどよどよと流れ出る人に巻き込まれながらも序列65位、【アトローチェドルチェッツァ(私の愛しい人)】の光月藤司朗を見つけ、ちょっとした頼みごとをお願いしようと意を決して声をかける。 「どうしたの?巫さん。」 振り向きざまににっこりと微笑まれ、こんな私にまで…?凄い方だなぁ…と思いつつ、『ちょっとした頼みごと』を話し出す。 「あの…、これを あしゃっ…すみません、朝霧さんに渡していただけないでしょうか…?」 緊張のあまり肝心な名前のところで噛んでしまったが、一応は伝わったようだ。 「沙鳥に?プレゼント?」 「はい、本当は直接お逢いしたいのですが…恐れ多くて。」 あからさまにがっくりとしている牙裂紅を眺めながら一息ついて『わか...
  • First Contact/澪漂二重&澪漂一重
     それは、七年ほど昔の記憶。  床に倒れた自分を見下ろすように立ちはだかる、男の姿。逆光でその表情は読み取ることができない。しかし、見えなくともその顔が苦々しく歪み、怒りの表情をかたどっていることぐらい容易に想像できる。  男の口が何事かをまくし立てるように動いた。  虚ろな頭の中を、その怒鳴り声がハウリングするように突き抜ける。  ――貴様はどうしていつもそうなのだ二重(アルオン)! 何故父である私の意思に背き、あまつさえ牙を剥こうとする! まったく、貴様という奴は本当に【無能】だな! 兄の命を奪って生まれてきた図々しい奴め、貴様など、我が候(ホウ)の家系の恥さらし以外の何者でもない…………                    ♪  「……重、二重、ふーたーえ!」  自分の名を呼ぶ声で、机に伏せるように眠っていた澪漂・二重ははっと身を起こした。  「も...
  • 下流 ゲル
    First contact三島広光路&澪漂二重
  • First Contact/三島広光路&澪漂二重
    First Contact 三島広 光路 & 澪漂 二重  ―――小さい時のホゥ アルオンについて、か?大人しい奴、だったかな。おやっさんのことは嫌いそうだったけど。んー、練兵場で何やら訓練していたのは知ってたけど、実はインチャオ時代はさ、彼奴と話したこと無いんだよな。え、意外だって?んなことねぇよ。当時の関係って言えば、憎まれてても雇い主の御曹司と、一少年兵だぜ?そう、おいそれと話せる身分かよ。  指令を受けた光路はかったるげにメインストリートを歩く。当時の西区画といえば、ザンスキングダムの冥獄一派が支配していた頃。かの名高い澪漂管弦楽団と言えど、学園内では新興勢力であった。  メインから工場地帯を抜けていくと、歪に聳える異形の建造物、九龍城砦に辿り着いた。 (まぁさか、こんな格好であのアルオンと再会するとは、思わなかったなぁ……)  学園に来ていたのは知っていたし...
  • Semplice
    【Semplice】  自信満々に真っ直ぐ前を向き、ポテポテと歩いていた沙鳥は振り返ってはっきりと宣言した。 「迷った!!」  対して丈之助は、ゆっくりと首肯する。 「だと思った」  いつもの事である。  何となく、こっちっぽいで歩き出し、気付いたら迷っている。  否、家を出た瞬間から迷ってると言えなくもない。 「どうしよっかーここどこだろう?」  藤司朗に連絡すれば何とかなるだろうが、何故か繋がらない。 「いっぱい歩いたり上ったり下りたりしたような気がしないでもないんだけどね」  それでも、迷いなく真っ直ぐに歩く。正確には迷っているのだけれど…… 「ねぇ、そっちは危ないよ?」 「にゅ?」  見ると、そこには見覚えのない少年がいた。 「そっから奥には行かない方が良い」 「そっかーじゃ、こっちは帰り道じゃないんだね! ありがとう!」  少年に向かって深...
  • 篭森 珠月
    First contact毎熊匠&雪城白花 篭森珠月&空多川契 法華堂戒&エドワード・ブラックシープ 篭森珠月&ジェイル・クロムウェル 不死原夏羽&不死川陽狩 矯邑繍&にゃんにゃん玉九朗 朧寺緋葬架&四十物谷宗谷 冷泉神無&法華堂戒 ミヒャエル・バッハ&篭森珠月 望月遡羅&篭森珠月 朝霧沙鳥&篭森珠月 戦原緋月&星谷遠 朧寺緋葬架&篭森珠月 ブラックシープ商会 Baa,Baa,Black sheep(めえめえ 黒い羊さん)Baa,Baa,Black sheep Baa,Baa,Black sheep Ⅱ Baa,Baa,Black sheep Ⅲ Baa,Baa,Black sheep Ⅳ Baa,Baa,Black sheep Ⅴ ブラックシープ商会短編羊の日常 羊の日常 其の二 羊さんの届け物 前編 羊さんの届け物 後編 四十物谷調査事務所 四十物谷調査事務所調査...
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    メニュー トップページ ABOUT 学園へ戻る 別館(ギャラリー)へ移動 誤字・脱字報告 作者別 時夜 夜厳 朝霧 沙鳥 篭森 珠月 澪漂 二重 世都母 比良坂 経世 逆襄 狗刀 宿彌 望月 遡羅 空多川 契 下流 ゲル 崇道院 早良 巫 牙裂紅 共通シリーズ First contact 更新履歴 取得中です。 @ウィキ ガイド @wiki 便利ツール @wiki
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    シェアワールド作品School of Lifeの小説庫です。 作品 作者別 経世 逆襄 篭森 珠月 空多川 契 狗刀 宿彌 澪漂 二重 朝霧 沙鳥 望月 遡羅 時夜 夜厳 崇道院 早良 世都母 比良坂 更新履歴 取得中です。 上記以前に更新された物はこのwikiのページ一覧から 外部リンク ・別館 絵や漫画を置いています。携帯からの閲覧可能。 ・School Of Life ×TRANQUILIZER×学園2nd 公式wikiです。設定を置いてます。
  • 3、審査員席にて
    3.審査員席にて  ヘイゼルの合図とともに、一斉に参加者たちが料理を始めた。  色とりどりの果実や見ているだけで美味しそうな肉類、新鮮なのが食べずともわかる魚介がステージ上に運び出される。こぽこぽと音を立てる鍋や規則正しく響く包丁の音が、心地よい。 「おー、肉使う人と魚の人、見事に別れたな。マリアは……やっぱ肉かよ! なあ、マジでその肉大丈夫なんだろうな? まあ、俺が食べるんじゃねえからいいけどよ。春恵やモハメドは流石に本職。見事な包丁さばきで野菜を切っています!」  序盤なのでまだ焼いたり煮たりする作業に入っているものはいない。米を炊いたり、野菜をきったりと下準備をしている。  あきらかに下準備が必要なもの(肉をたれに漬け込むとか、漬物を作るとか)は完成品の持ち込みが許可されているが、それでも作業量は多い。 「こうしてみてると、何作ってるんだか、さっぱりだな。そうだ...
  • First contact/沙鳥&比良坂
     B.Z.43 December  学園都市から東へ二キロほど離れた廃墟に、少女たちは佇んでいた。  男がそこを目指したのは、偶然のようなものだ。  東区画と呼ばれる場所の整備を行なっていた際に、街の東端まで至ったところで、彼の能力がそこにいる子供たちの存在を感知した。  だが、そこへ向かってみたのは、結局にして、ただの気紛れだったのだろう。  男が目的の場所に到達し、周囲を見渡す。  一人だけ、わずかに離れた場所から、他の子供たちを見詰めていた十歳に満たないと思える少女に歩み寄り、声をかけた。 「こんなところでなにを見てる?」  少女がゆっくりと視線を上げる。この年頃の子供に対して、ぶっきら棒な物言いだっただろうか。そう心配した男の考えとは裏腹に、気にした風もなく、自らの指先を前方の空間に向けた。そこには、どこからか持ってきたらしいスプリングのいかれたソファが置かれ、二つの死体が...
  • Benvenuto
    【Benvenuto】  身も心もボロボロの体で、男たちは逃げるように会場を立ち去る。  否。  逃げるように、ではない。  逃げているのだ。  何からか。何もかもから。  自らにとって唯一ともいえる何よりも安全な場所へ逃げ込み、ようやく息を吐く。  怯えた顔で、世界中を敵に回したとでも言うように。  もちろん、彼らの予想は正しい。  彼らは敵に回してしまった。  この学園で、最も敵に回してはいけない人物を。 「Quesito(質問)」  誰もいないはずの根城に響く、玲瓏な男声。 「何をそんなに怯えているの?」  聞く者の神経を逆撫でするような、軽やかな笑い声。 「俺たちがそんなに怖い?」  薄汚れた部屋には似付かわしくないほど、穏やかな微笑。 「……さて、本題。俺らの事は知ってる?」  デザインはそれぞれに合わせて変えているが、揃いの白い軍服……...
  • 踊らされる音楽家たち ――第十二管弦楽団・澪漂爆重
       Ⅰ.躍らされる音楽家たち ――第十二管弦楽団・澪漂爆重  独立学園都市トランキライザー。その西区画にある複雑怪奇な建造物の集合体、九龍城砦。その中層にある【澪漂第六管弦楽団】のオフィスの電話が鳴ったのは、昼時が過ぎて団員たちが各々の仕事に戻り始めた時だった。  「――ん? 千重……団長からか?」  第六管弦楽団団長【エターナルコンダクター(悠久の指揮者)】澪漂二重は、固定電話のディスプレイに出た番号を見てそんな呟きを漏らした。そんな彼の呟きに、側の机で書類を広げていたパートナーの【アルカディアフレンド(理想郷の大親友)】澪漂一重が、  「またお仕事? この前一週間出張したばっかりじゃん」 と嫌そうな顔をした。二重は小さく笑いながら受話器を取り上げ、通話ボタンを押す。  「はい、私です」  『やほやほ、二重クン。千重団長だよ?』  受話器を耳に当てなくても聞こえる...
  • 1、宴の支度
    1.宴の支度  軽やかな音が響く。ローラースケートが舗装された地面を駆ける音だ。  風になびく髪の色は白。ただし、年をとっている故の白ではなく、生まれつき色素がほとんどない故の白色だ。その髪の毛で覆われた小さい頭はまだ若い少年だ。  アルマ・アベル。13歳。  ランキング222位、通称【リーヴルノーブル(誇り高き野兎)】ブラックシープ商会所属の運送屋である。  この学園の生徒にしては珍しく戦闘能力は高くないが、どこにでも入り込んで荷物を届けるその姿は生徒にはよく知られている。また、たとえそこが戦場でも刑務所でも荷物を忠実に荷物を運ぶ勤務態度から、名指しで大企業の重要機密運搬を任されることもある。  「人は見かけによらない」  この学園では繰り返し言われる言葉を、彼はよく体現している。 「あ、アルマさんだ」  アルマが止まった瞬間、すぐ目の前の店の扉があい...
  • コトノハ
    コトノハ  言葉は言の葉。言語の葉っぱ。千の言を尽くしても、言の葉は言の葉。葉が積もるだけで大樹になりはしない。  コトバは事の端。事象の端っこ。万の言葉を尽くしても、言の葉は事の端。欠片が溜まるだけですべてを表せはしない。  見えるもの、感じるもの、知るもの、考えるもの――――どんな簡単なことでも、そのすべてを言葉で表すことは不可能。言葉で表せるものはすべて嘘だ。 だから、やめてほしい。 綺麗な言葉で飾るのは。艶やかな装飾で彩るのは。 気づかなくていいことに気づいてしまうから。守りたい本当が嘘になってしまう気がするから。直視しなくてはならない醜いものが、そうでもないように錯覚してしますから。大事に守っているものがバラバラにされて晒されるような、あるいは足元のものがすべて嘘になって砕け散るような、そんな不吉な気持ちになって――――恐くて怖くて殺したくなる。  黄道暦が始まってすでに...
  • 朝霧 沙鳥
    Genio o Cretino (天才かバカか) Folle (狂人) Rainy Blue (雨の日の憂鬱) Felicitare (幸せにする) Abitudinario (いつも通り) Papera (うっかり) Gihad (聖戦) Consueto (いつものこと) Benvenuto (ようこそ) Generico (脇役) Amicizia (親愛) Devoto (信頼できる人) Amicone (仲良し) Semplice (無邪気な人) Perche (疑問) Intimita (団欒) Giochetto (暇つぶし) Scapato (無責任) Consulta (相談会) Consulta2 (相談会2) Giochicchiare (戯れ) Cocco (可愛い子) Sarcasmo (嫌味) Cavalleria (騎士道精神) Contrare (逆襲) M...
  • 序章、アフタヌーンティ
    序章 アフタヌーンティ  黄道暦。  第三次世界大戦および、核兵器妨害装置開発により勃発した第一次非核戦争を経てあらゆる国家が崩壊した世界が、国家ではなく企業による統治を選んだことによりはじまった年号。それもすでに半世紀以上。すでに国家というものを経験している世代は、少数派になり始めている。  その中で、かつて日本国と呼ばれる国があった島そのものを買い取って作られた世界最高峰の巨大学園都市・トランキライザー。  あらゆる分野において次代を担う人材の育成を目標に、かつての日本国の上にそのまま建てられたこの都市は、学園敷地面積2187.05km2(東京都に相当)教職員、生徒、企業家、現地住民のすべてを合わせた総人口は約一千三百万人、まさに世界最大の学園都市である。  そのイーストヤードと呼ばれる区画。ここはかつての日本国の面影をもっとも多く残している区画である。  中心部には高層ビルが立ち...
  • チューニング 謎の会合、あるいは一重の憂鬱
     チューニング  謎の会合、あるいは一重の憂鬱  澪漂・一重(みおつくしひとえ)の目の前を不思議な光景が横切っていく。  ここは旧東京に建造された独立学園都市トランキライザーの西区画、その中心部に聳え立つ歪な建造物の集合体・九龍城砦(クーロンじょうさい)。その中にある一際大きな大集会場に向かって、西区画に住んでいる人々がぞくぞくと集まっているのだ。  ぱっと見ただけで目に付くのは学園都市の序列でも高位に位置するいわゆるトップランカーたち。一重の知っている顔も少なくない。  【ミスタトゥ】、【デリシャスタイム】、【パンツァーメイド】、【ウェポンバトラー】、【クローズドサークル】、【ラストエンペラー】、【ホーカスポーカス】、【ダイヤモンドダスト】、【ヘンケルス】……世界的に有名なエイリアス持ちがぞろぞろと、一人また一人とやってくる。その中には、一重の所属する澪漂管弦楽団に在籍して...
  • その5、開始1時間15分
    5、開始1時間15分 「殺す殺す殺す殺す殺す――――建物出たら覚えてろ」 「そう言いながらも、きちんと避難訓練はしてるんですね。ふふ、単純馬鹿で扱い安くてなんともうれしい限りです。そういうところは大好きですよ」  音を立ててバールが振り下ろされた。うお、とおっさんくさい声をあげて、陽狩はそれを回避する。何も事情を知らない相手がみれば、チンピラに若手サラリーマンが絡まれているように見えなくもないが、中身を知っている者はその着崩したスーツの男――陽狩のほうが性質が悪いと知っている。 「危ないですね。当たったら、脳挫傷起こして死にますよ?」 「殺す気でやってるんだよ」 「なんて酷いことを」 「酷くない。ほんの一時間前に人を盾にしようとしたお前には言われたくない」 「その代わり、つい先ほど予告なく非常階段が爆発した時は教えて差し上げたでしょう?」 「その後、がれきで半分埋まってるエレベーターの...
  • 赤頭巾/1
    【赤頭巾ちゃんとお母さんとの約束】 あるところに誕生日のプレゼントにもらった赤い頭巾を好んで被る女の子がいました。 その女の子は朝霧 沙鳥といいましたが、いつも赤い頭巾を被っているので赤ずきんちゃんと呼ばれていました。 そんな赤ずきんちゃんはお母さんと二人で暮らしていました。 ある日、政宗おかあさんが赤ずきんちゃんにおつかいを頼みました。 《森の奥に住んでいるおばあちゃんが病気でねているから、お菓子とぶどう酒をもっていってお見舞いにいってくれる?》という内容でした。 政宗お母さんは赤ずきんちゃんを心配して、赤ずきんちゃんと約束をしました。 「いい?沙鳥。絶対に寄り道なんかしちゃ駄目よ。」 「うん、わかったー」 赤ずきんちゃんはお母さんと指切りをして出かける用意をし始めました。 用意の済んだ赤ずきんちゃんは、お母さんに見送られながら元気に家を出ました。 「いってらっしゃい、約束破...
  • 第一楽章 音楽家たちの円卓
       第一楽章 音楽家たちの円卓  アフリカ南部のとある地域。岩肌が所々顔をだしている荒涼とした草地が見渡す限り広がっているこの土地に、澪漂・二重は立っていた。  この近辺の地域は数年前まで、アパルトヘイトという非合法カルテルが支配していた。現在、企業が国に変わって人民の上に立つ、この世界の大部分に影響力を持った経済界のトップ、黄道十二宮協会――ゾディアックソサエティに協賛することなく独自の手法で統治を行っていたアパルトヘイトは、ほんの数年前に壊滅させられている。それによってこの地域は一般の企業や自治体に分割されているわけである。そのアパルトヘイト壊滅事件に、二重も籍を置く学園都市の生徒の一人が関わっているということを彼もよく知っていた。  その生徒の名を【ナイトメア№7(悪夢七号)】蔡麻勇太郎というが、二重は別にそのことに関して勇太郎をとやかく言うつもりはない。ただ、と二重はこの『戦場...
  • 通り雨
    通り雨 「おー、雨だ」  姫宮沁は、窓の外に目をやって声をあげた。  現在のところ、黄道暦において間違いなく世界最大にして最高の教育機関の一つとして名が挙がるであろう学園都市トランキライザー中央部。すべての学園公式施設のさらに深部のセントラルピラーは、あらゆるものから守られている。そのため、雨音さえ聞こえない。目にするまでは雨が降っていることすら気付かなかった。 「雨だ」 「外に出たいなどと言わないでくださいね。我がトランキライザーは世界でもまれにみる『ドームのないドームシティ』です。空と大地の間に遮るものがないということは、汚染された雨でも流れ込むということです」  淡々とした声で秘書の三七が釘をさす。沁は楽観的に笑った。 「平気だって。最近ここらで妙な実験や事故は起きてないし、汚染だって大戦直後に比べれば随分とましになってるはずだせ」 「はい。雨に打たれて即病気になるようなことは御座...
  • First contact/篭森珠月&空多川契
    First contact 篭森珠月&空多川契  私が彼女と知り合ったのは、まだ予科を卒業する前のことだった。  学園都市トランキライザー。  第三次世界大戦とそれに続く第一次非核戦争ののち、これまでの国家体制とエネルギー体制が一新され、黄道十二宮協会という十二宮の企業が表の世界を、九つの組織と呼ばれる秘密結社が裏の世界を束ねる世界。その黄道十二宮協会において、ふたご座の称号を持つライザーインダストリーが、次世代の人材を育成するために作った巨大学園都市である。まだ設立より数年ではあるが、すでに一部の生徒はその教育の成果を発揮し始め、各地の企業から世界最高峰の教育機関として、注目を集めていた。  篭森珠月は走っていた。気配を殺し、闇に紛れる。その背後からかすかな足音を立てて複数の人影が追ってくる。そこは暗い。足元を冷たい地下水が流れ、影すらできないほど光がない。  ここは学園...
  • First contact/望月遡羅&篭森珠月
    Fast contact 望月遡羅&篭森珠月 「妙な光景だ」  ぼそりと呟いた澪漂二重の言葉にきゃあきゃあ言いながらケーキを切り分けていた望月遡羅と篭森珠月は振り向いた。 「何がだい? 二重」 「包丁をこちらに向けるな。貴様に刃物を向けられると、殺意がなくとも緊張する」 「御希望なら、投げつけてやってもいいよ」 「止めろ、【無能】が」  言葉だけとらえると険悪だが、どちらも顔は笑っている。珠月は肩をすくめると、さらに切り分けたチョコレートケーキを乗せて二重に差し出した。 「で、何が妙だって?」 「人類3KYOのうち二人の身内が、仲良くケーキを切り分けている光景だ。写真を取りたがる記者が山のようにいるだろうな。まあ、そのような【無能】、生きて仕事場に帰れるとは思えないが」 「それくらいで殺しはしないよ。データ没収で厳重注意が関の山。ねえ?」 「そうですね。流石に自分の写真が知らないところで...
  • 第二楽章 戦争、開始(1)
       第二楽章  戦争、開始  「うむ……双方、動き出したようだな。タイミングがいいことだ」  地平の彼方に、小さくうごめく人影が見える。この場所からは蟻ほどにしか見えないが、しかしそれらは明確な意思を持って動いていた。  すなわち、勝利という目的のために。  「七重と二十重にはとりあえずしっかりと働いてもらおうか。我らの仕事には全滅――殲滅という形でしか成功はないのだからな」  【デスペラードコンダクター】澪漂・七重と、【ボトルズボトム】澪漂・深重は並んで荒野のど真ん中に立っていた。向かう方向に見えるのは大きな岩山――革命軍が拠点としている地である。  今、視界の奥には地を埋め尽くすほどの人々が押し寄せてこようとしていた。多くは歩兵として、そして一部は装甲車に乗り込んで。おそらく武装は相当レベルの高いものだろう。ゾルルコンツェルンが援助をしているという時点で、装備...
  • 第三楽章 鋏と死骸(1)
      第三楽章  鋏と死骸  「何だよこれは…………?」  ドームシティにとんぼ返りした光路と、一緒にやってきた二十重と十重の三名は、町に一歩踏み込んで息を呑んだ。  本来ならば結構な人数が生活しているドームシティ――その多くは【マリアスコール】の社員や家族であるのだが、この空間には全く生き物の気配がなかった。  生き物の気配――生活音だとか話し声だとか、そういった露骨なものどころか、呼吸音や心音といった微弱な気配まで一切が途絶えている。いくら戦争中だからといって、ここまでの無気配は異常としか言いようがない。  二十重は【キャッチインザライ】を振るって手近な建物の外壁を破壊した。そこから覗き込むと、中にはごろごろと、さっきまでは生きていたのであろう人々がすでに物体となって転がっている。二十重と十重はそんな中にずかずかと入り込んで、一つ一つ死体を検分し始めた。光路も仕方なく後に...
  • Cocco
    【Cocco(可愛い子)】 「あ、ランキングだー」  沙鳥が指差した先へと、傍らを歩いていた藤司朗と丈之助も視線を向ける。 「人気投票? 暇なんだね……」 「あ……沙鳥11位」 「ホントだーw 藤司朗と丈之助もいるよ! すごーい!」  手を叩いて喜びながら、ランキングに挙がっている自分達の名を指す。 「うわ。ホントに名前ある。物好きもいるんだね……篭森さんの方が可愛いと思うんだけどな。あ、丈もあと一票で世都母の小父さんと並ぶよ」 「……どれ?」 「ほら、この人。ついでにこっちが南王でこっちが東王。……そろそろ覚えてあげないと泣かれるんじゃない?」 「南王……東王……あぁ、知ってる!」  ようやく合点がいったとでも言うのか、「この間どっかで見た! 何かしてた!」などと曖昧な「ちゃんと知ってるよ」アピールが続く。 「はいはい。本人の前では言わないようにね。……それ...
  • 第三楽章 鋏と死骸(2)
     七重とアンディの打ち合いはなかなか決着がついていなかった。  否、状況を有利に進めているのは七重の方であるが、しかし決め手となる一撃をどうしても決められずにいるようだ。  「……ちっ、面倒くさいわね。さっさと殺されなさいっての!」  苛立ちを言葉にしながら、七重は直刀を振るい数十合目になるであろう攻撃を繰り出す。  「むぅ……そうやすやすと殺されてやるかよ。俺には、やらなきゃならねぇことがあんだよ!」  覚悟が違う、といった面差しで七重の攻撃をサーベルの柄で受け止めるアンディ。すでに両手は感覚がなくなるほどに痺れていて、武器にしているサーベルも大小様々な傷で覆われていた。  傷だらけなのは武器だけではない。攻撃を受け止めているアンディ自身もまた、身体の各部に大小の傷を受けている。  カウンターで繰り出されたサーベルの突きが左腕をかすめ、七重は苦々しい表情で攻撃する手を止めた...
  • 絡み合う音楽家たち ――第九管弦楽団・澪漂鍵重
       Ⅱ.絡み合う音楽家たち ――第九管弦楽団・澪漂鍵重  【澪漂交響楽団】の本拠地は、ユーラシア大陸の極東部、上海シティにある。  本部の建物は、豪州のオペラハウスのような荘厳な外観を持つ建造物であり、しかしどこか暗い雰囲気を纏っていることから、「ファントムハウス(オペラ座の怪人館)」と呼ばれている。  そしてそのファントムハウスの周囲には、【澪漂交響楽団】に列席する団員たちの住居も点在しており、独特の雰囲気を持った区域となっていた。  「背徳の蜂蜜亭」は、そんな中の一つ――澪漂屈指の【異端者】の異名を取る、第九管弦楽団が詰める建物である。                     ♪  「相変わらず甘ったるい匂いのするところだな」  オレンジの長髪を風に靡かせ、黒のレザージャケットに身を包んだ男が、その「背徳の蜂蜜亭」の前に立っていた。まだ幾分の冷たさを孕...
  • 第四楽章 終演時間
      第四楽章  終演時間  おろおろと周囲をうろつく一重に対して、数重は酷く冷静な様子で電話をかけていた。しかし彼女が寄りかかっている発射装置は着々と発射へ向けたエネルギーの充填をしており、そんな状況下、冷静に衛星電話のボタンを押している数重は逆に不自然だった。むしろおろおろとしているだけの一重の方がまだまともな反応である。  「ちょっと一重、あんまりうろうろしないでよ。気が散るでしょ?」  「数重ちゃんこそ、なんでそんなに冷静なの? 早くどうにかしないと、二重が……」  言外に二重が助かればそれでいいというようなことを口走る一重。数重はそれを咎めない。澪漂として、それは当然の反応だからだ。しかし。  「あなたが二重を守りたいように、私も万重をみすみす死なせるつもりはないわよ。老い先短いといっても、私にとっては大事な友達だからね。大丈夫、万重に任せなさい――」  数回コー...
  • 第二楽章 戦争、開始(2)
     七重の猛攻を止めたのは、以外にも軍用サーベルによる一撃だった。  撒き散らされた死体の弾幕を乗り越えて振るわれたサーベルの攻撃を、七重はしかし余裕をもって回避し、その攻撃の主を睨みつける。  「……ふぅん、やっと骨のありそうな人が出てきたわね」  七重に攻撃をしてきたのは他でもない、革命軍の指揮をとっているアンディであった。  「何者だお前等……どうやら【マリアスコール】の手の者じゃなさそうだが……」  アンディはこめかみに青筋を浮かべ、七重にサーベルの先端を突きつける。当然のことだが、相当怒っているようだった。  七重は直刀をくるくると回転させながら、嘲笑にも似た笑みを浮かべる。  「澪漂第七交響楽団団長、【デスペラードコンダクター】の澪漂・七重よ。名前を聞けば分かるかと思うけど、お察しの通り、アンタたちが敵対している【マリアスコール】とは何の関係もないわ」  「澪漂か...
  • 見極める音楽家たち ――第六管弦楽団・ルリヤ=ルルーシェ
       Ⅳ. 見極める音楽家たち ――第六管弦楽団・ルリヤ=ルルーシェ  世界に数あるドームシティの多くは、中核となる企業を中心として大きな都市が展開されているものが多い。その例に漏れず、東欧に位置するこのドームシティも中心部の殆どがオフィス街となっていた。  時刻はまだ夜中とは言いがたい時間帯だが、周囲の殆どが企業の所有するビルという条件もあって人の気配はまったくない。  ただ一つ、隣接するビルの屋上から【ブリランテムーン(眼鏡の輝き)】ルリヤ=ルルーシェが眺めているビルには、ところどころ明かりの点いている窓が見られた。どうやら遅くまで勤務している社員がいるらしい。  「――ふむ、皆さん。持ち場に着きましたか?」  ルリヤは耳に掛けている通信端末に向かってそう呟いた。やや間を置いて、彼女の仲間達からそれぞれ返答がある。それを確認して、ルリヤはずれた眼鏡の位置を直しながら手短...
  • 訓練風景
    訓練風景  うすぐらい倉庫のような空間で二人の人間が対峙していた。壁には窓の一つもない。それでも明るいのは天井から光を投げかける照明のせいだ。死角なく、ただしまぶし過ぎない程度に部屋を照らし出す明かりは、破壊されないように鉄格子と強化硝子で覆われている。  一人が動いた。巨大な軍用ナイフのようなものを片手に一気に間合いを詰める。それに対してもう一人は相手から目を離さぬまま大きく後ろに跳び、さらに牽制とばかりに細いナイフを投げつける。しかし一直線に迫る相手はわずかな身体の動きでそれを回避した。逃げる相手は間合いを計りながら相手の横に入り込むように動く。だが、それを見越して巨大な刃物をもつ方の相手は迎撃体勢にはいる。  するどい金属音がした。跳躍し、勢いと体重をかけた一撃が振り下ろされる。巨大なナイフの人物は、自分の獲物でそれを防いだ。対するほうは細身のナイフ二本をうちこんだが、折れたのは細...
  • おまけ、パステルランド
    おまけ パステルランド  サウスヤード・ハーベストストリート。  ここに最近できた、色々な意味で話題のスィーツショップがある。その名も「パステルランド」。  店内のショウケースに並ぶのは、青やピンクのパステルカラーのカップケーキたち。しかも、こんなに毒々しいパステルカラーをしているというのに、すべて天然素材でできているという二重の意味で驚きのスィーツだ。店内には飲食スペースもあり、おいしい紅茶や珈琲と一緒に、甘いカップケーキが楽しめる。 「イギリスでは、カップケーキをフェアリーケーキともいうのよ」 「ほえ~、妖精のケーキなんてロマンチックだね」 「ロマンチックというか、オカルト的? 本場の妖精って、日本でいう精霊とか妖怪とか死者とかがごっちゃになった存在だから、意外と可愛くないよ。私は日本のもののほうが好き。可愛いから」 「珠月ちゃん、可愛いもの大好きだもんね」  沙鳥は笑うと、綺麗な...
  • チューニング 薄暗い部屋の中で
       チューニング 薄暗い部屋の中で  時刻はすでに夜十時を回っていた。学園都市西区画の中央に聳え立つ歪な建造物の集合体――九龍城砦。その幾つもある屋上の中でも一際高みに位置する一つに、二人分の影があった。  一つは東洋人にしては比較的高い身長のシルエット。身長の割に手足は細長く、見るものには針金、あるいは夕方の細く伸びた影法師をイメージさせる。律儀にも返り血を浴びたかのようなくすんだワインレッドの燕尾服に身を包み、肩には同色のマントを掛けている。肩ほどまでの黒髪をぞんざいに一つに束ねているが、頭頂部では特徴的な二本の毛――いわゆるアホ毛とか、アンテナとか呼ばれるものが、風にゆらゆらと揺れていた。  「しかし解せんな。第六管弦楽団に召集が掛かるならばまだしも、団長たる私と副団長たる君しか呼ばれない、というのはどういうことだ? ……まぁウチのメンバーは正式な団員でもないからそれはそれで当然...
  • 第一楽章 虐殺者たち、あるいは擦れ違い(2)
     学園都市の上空を、奇妙な物体が移動している。  大きく翼を広げた姿は鳥のようだが、しかしそれは決して鳥などではなかった。  まず、鳥にしては大きさが巨大すぎる。人ほどもある大きさのそれは、両肩に複数の火器を備え付けていた。  学園都市の巨大なビル群よりもさらに高い位置を飛行していたそれに気づく者など、地上には一人としていなかったが、仮にそれを近くで見た者がいるとするなら――それが翼を持った人の姿であると気づいただろう。  人の体に不釣合いな大きな翼――その翼は白銀に輝く機械で出来ている。体は生身だが、下半身もまた翼と同じような金属製であり、鳥の足を模した力強い造形を持っていた。  流線的なデザインのヘルメットの下では、猛禽類のような鋭い瞳がぎらぎらと得物を探るように、眼下に広がる学園都市を見下ろしていた。  不意に歪な機械音がして、ヘルメットに備え付けられたインカムが女性の声...
  • 睦み合う音楽家たち ――第四管弦楽団・澪漂四重
       Ⅲ.睦み合う音楽家たち ――第四管弦楽団・澪漂四重  「わはははは! 何をぼけっとしておるのかね? 諸君、我輩はこっちだぞ!」  「いたぞ、あっちだ!」「捕まえろ!」「銃を用意しておけ!」  深夜のオフィス街に響く大声。サーチライトが揺れる夜空を横切るように、奇妙な風体の人影がビルとビルの間を飛び越える。  一つは、大きな袋を背負った姿の男――シルクハットに黒のスーツ、律儀にも肩にマントを羽織り、手には細身のステッキを持っている――は、眼下の道路を走る男達を見やり、彼らの先に待機している相方に声をかけた。  「九重(ここのえ)、そちらに行ったぞ!」  「ハイヨ、だんちょ団長!」  不意に聞こえた返答に、男達が視線を頭上の人影から前方に移すと、そこには深夜のオフィス街にはそぐわない、真紅のチャイナドレスに身を包んだ女性が立っていた。なぜか手には竹箒が握られている。 ...
  • 第一楽章 虐殺者たち、あるいは擦れ違い(1)
       第一楽章 虐殺者たち、あるいは擦れ違い  「なんだ、七重じゃないか。どうしたんだ?」  波音に手を引っ張られて応接室までやってきた二重は七重の顔を見るなりそんな気の抜けた言葉を口にした。波音は二重を部屋に押し込むと、仕事は終わったとばかりに踵を返してとてとてと歩き去る。  「なんでって、仕事よ仕事。ホントならあんたの顔なんか見たくもなかったけど、報告がてら寄らせてもらったわ」  「ツンデレ」という言葉が一重の脳裏を掠めたが、あえて彼女は黙っていた。七重はこう見えて面倒見のいい姉貴分なのだが、本人はそれを恥ずかしく思っているのかこうしてツンケンした態度をとりがちである。彼女のパートナーである深重はしばしばそれをからかって半殺しにされている。  「仕事? この学園でか?」  七重の言葉に二重の眉が寄った。  「そうよ? ちょっと暴れることになると思うから、それを伝えて...
  • 9、連鎖 そして終幕へ
    9、連鎖、そして終幕へ 「……あれはなんでしょう」 「本当になんでしょうねぇ」 「あんなに沢山人が集まって……もう夜なのに」 「なにか探し物でしょうか」 「それにしては殺気立ってるような……心配ですね」 「ここは誰に伝えておいたほうがいいんじゃないでしょうか」 「よその区画に口は出したくないけれど」「同じ学園の仲間ですものね」  序列44位【フラッパラビット(悪戯なウサギ)】宇佐見ハトと、序列47位【シリアスキャット(生真面目なネコ)】音古見トモは互いに顔を見合せてうなづいた。  普段メインヤードにいる二人がスラム街に来ることはあまりない。それでも、今のこの場所の異常くらいは分かる。夜も更けつつあるというのに複数の人間が走りまわり、逆に現地の住人はおびえたように身を潜めている。 「どなたかが大規模な狩りをなさっているようね」 「獲物はなんでしょうね。ずいぶんと不穏な様子です」 「困った...
  • Meglio
    【Meglio(最善の策)】  その左胸に手を当てて、深く息を吐く。  感じる温もり。きちんと鼓動しているのがはっきりと分かる。 「ごめん……」 「どうして謝るの? これが最善だって決めたんでしょう?」  沙鳥はいつもと同じ笑みを浮かべる。 「私はそれに従うよ」  迷い無く、真っ直ぐに。  直視出来なくて、思わず目を閉じる。  痛みを感じさせてはいけない。  苦しみを長引かせてはいけない。  一瞬で終わらせる。  いつもは容易く出来ていたはずなのに、どうしても手が震えてしまう。  これではいけない。  無駄な傷を付けてしまう。  綺麗なままでいて欲しいのに。  傷付けてはいけないのに。  心臓の位置を確かめたまま動けずにいる俺の手を、沙鳥の小さな手が覆う。  俺よりも一回りも二回りも小さい手。  何度も触れて、しっかりと覚えてしまった温もり。 ...
  • Gihad
    【Gihad】 「いっただっきまーす」 「……待って、沙鳥」 「うにゅ?」  沙鳥の手を掴み、有無を言わさず一口目を奪い取る。 「あ、うあ……」  余りのショックで言葉を失っている沙鳥を他所に、丈之助は定位置である斜め後ろへ戻る。 「さ、さっちゃんの……」 「毒見」 「うそだぁあ!」 「シロの命令」  たとえ信頼の出来る友人が作ったものであろうと、どこで何があるかは分からない。  二進数的思考回路の丈之助に状況判断や臨機応変などといった柔軟な対応は無理だろうから、藤司朗は事前に「沙鳥が口にする物の一口目だけは、何が何でも奪い取れ」という指示を出していたのだ。 「……つまり、さっちゃんと勝負しようって事だね!」 「……何が何でも、ね」  不本意ながら、火花を散らす。  スピード勝負であれば、沙鳥に勝ち目は無い。  頭脳戦であれば、丈之助には分が悪い。 ...
  • Piacere!
    『Piacere!』  別に、話さなかった事に深い意味がある訳ではない。  ただ、この少女がどういう反応をするのかが知りたかったのだ。  例え、そうする事によって政姉を傷つけたとしても。  俺は丈之助のように素直に感覚だけで信じたりは出来ないから。  何かの証拠みたいな物が欲しかったのだと思う。  それに、政姉は可哀想な事にその手の反応には慣れている。  表面上は困ったように笑うだけだろう。  そして、俺はその手の事で傷付いた政姉を慰める事に長けている。  彼女がどんな反応をしようと、大きな問題が起こる事はないだろう。 「ここが二人のお姉ちゃんのいる所?」 「そう。……あんまり巻き込みたくないんだけど、他に頼れるところもないしね」  俺たちの怪我は、素人の応急手当だけで放って置いて良いほど軽くない。  少しでも早く信頼出来るような医者に診てもらう必要があった。――それも、確実にあの人の...
  • Intimita
    【Intimita(団欒)】 「そういえば、今日ねー信君に轢かれそうになっちゃってさービックチしたよ。幸成の言った通り、交通事故に注意は大正解だったね!」  夕食中のひとコマ。  丈之助の首元に、三方向から箸が突きつけられる。 「もう、スズちゃんもシロちゃんもユキちゃんも、食事中なんだからダメよ。後からにしなさい。丈ちゃんも刀に手をかけないの!」 「……ビックリした」  食事は静かに楽しく頂くものだ。  不本意ながらも正論だからと素直に従い、食事に戻る。  沙鳥は気にせず、幸せそうにご飯をかみ締めながら話を続けた。 「やっぱり、幸成の占いは凄いねぇ。毎回当たるもの」 「そうだね。聞き手が逆に笑えるくらい無駄にしちゃってるけど」  藤司朗は柔らかい笑みを浮かべたまま、丈之助を冷たく睨み付ける。 「そうだ。いっそ、売り物にしちゃえば? かなりの儲けになるんじゃない...
  • Cavalleria
    【Cavalleria(騎士道精神)】 「……何それ」  珠月は眉間に皺を寄せ、おぞましい物を見たかのように唸る。  対して藤司朗はいつも通り満面の笑みを浮かべながら。 「いらっしゃいませにゃ、ご主人様」  滅多に感情を見せない珠月でも、こればっかりはと額を抑える。  本気で頭が痛い。 「あぁ、間違えたにゃ。こういう場合は、おかえりにゃさいませ、お嬢様だったにゃ」  平然と口にする藤司朗の頭には、本物かと思うほど精巧な金色の猫耳。 「……何、罰ゲーム?」  期待を込めて問うが、あっさりと首を振られる。 「猫耳期間中なんだよね、今。猫語とご主人様云々は篭森さん限定のサービス」 「……そんなので喜ぶ趣味はない」 「だろうね。喜ばれたら、ビックリして過剰にご奉仕しちゃったかも」  本気かどうか判断しにくい笑みを浮かべ、後ろを指差す。  そこには、一枚のポスタ...
  • Sarcasmo
    【Sarcasmo(嫌味)】 「昔読んだ絵本の話なんだけどね」  藤司朗の手によって目隠しをされた状態でも、いつも通り無邪気な笑みを浮かべたまま沙鳥は話し続ける。 「悪い妖精にお金だったか金糸だったかを頼んだ人がいた訳さ」  政宗が投擲した長椅子と並行するように丈之助が駆け出し、進入してきた男たちを短剣で切り付ける。 「その時にね、悪い妖精は『代わりに何れ生まれてくるお前の子供を貰う』って言ったんだったかな? とにかく、女の人の子供を貰う事になったのさ」  鈴臣は分かり易く舌打ちをしてから渋々腰を上げ、丈之助が仕損じた男の腕を捻り上げて横たわらせ、首の後ろに乗せた足へと緩やかに力を込める。 「そうしてその人たちは幸いを手に入れて、しばらく後に女の人は赤ちゃんを産む」  幸成は衣擦れや足音すらも立てずに男たちの眼前に立ち、彼らが何らかの反応をするよりも早く顔面を握り潰し...
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