語り:この世に蠢く善と悪。その躰が肉体を失い、魂だけになった時…人は天の國と地の國に分けられる。
しかし、母親の手を見失った子供が迷子になるように「魂の迷子」に成る物も後を絶たない。
その「迷った魂」…称するに「迷魂」が集団的に増えたために建てられた、いわゆる「貸し物件」があった。
様々な名の付けられたそれらは、今もこの国に数件ほど存在しているという。
彼女が今回引っ越す事になったのは、都会の一角にある廃れた住宅街の中の「チザクラ荘」という所だった。
癒癒:「ここかな…?」
語り:地図の通りに道を進み、辿り着いたそこは…
癒癒:「…廃屋じゃないよね、これ。」〔苦笑〕
威圧感漂う屋敷。高い塀の四隅には何やら鉄の棒が立てられている。
え、ちょ…怪しい雰囲気満載なんだけど。
悼魄:「こないな時間にどうしたの?お嬢ちゃん。」〔優しく話しかける〕
癒癒:「ぅわっ!!!!!」
悼魄:「そないなにびっくりせんでよ~」〔苦笑〕
時弥:「お前がオバケみたいな顔してるからだろ。」〔呆れ〕
悼魄:「えー、そんなことあらへんよ。酷(ひど)いなぁ時弥は。」〔ムッ〕
時弥:「はいはい。」〔流す〕
癒癒:「あ、あの…ここの屋敷の方ですか?」
悼魄:「ぇ?ああ、そうやけど…もしかしてお嬢ちゃん、今日ここに越してくるっていう…」〔キョトン→ひらめき〕
癒癒:「癒癒です!守使癒癒。」
悼魄:「ああ、せや。癒癒ちゃんね。しかし珍しいねぇ、普通の子が越して来るなん…もがッ」〔思い出す→感心〕
時弥:「はい黙る。…俺は獅吼時弥。こいつは鐙悼魄だ。よろしくな。」〔厳しく…?→優しく〕
癒癒:「はい、よろしくお願いします!…えと、あの…」
時弥:「ん?」〔キョトン〕
癒癒:「悼魄さん、大丈夫ですか?;」
時弥:「おっと…悪い。」〔慌て〕
悼魄:「ケホッ、ケホッ…アホ、苦しいやないの!!」〔涙目で怒る〕
時弥:「ごめんって;」〔苦笑〕
悼魄:「もう…今度から気をつけてよ。…あ、そだ、癒癒ちゃん。」〔ムッ→思い出し〕
癒癒:「はい?」
悼魄:「まだ中入ってへんよな?」〔にこっ〕
癒癒:「ぇ、あ、はい…」
悼魄:「じゃあ僕等が案内したるよ。ついてき~。一人やったら『つかれる』かもしれへんし。」〔優しく→おどけて。全文さらっと流す〕
癒癒:「そんなに広いんですか?」
悼魄:「いや、屋敷自体はそんなに広くないんやけど~…」〔苦笑、オーバーに〕
時弥:「肉体的疲労の『疲れる』じゃなくて、取り『憑かれる』方だからな。」〔太字強調、さらっと流す。〕
癒癒:「ぇえ?!」
時弥:「あ、でも、ここにいる連中はみんな良い奴だから、安心すればいい。」〔慌てて訂正→優しく〕
悼魄:「そうそう。初めて会った時は吃驚するかも知れへんけどね~。」〔おどけて〕
癒癒:「え、それって…私達以外みんな『人じゃない』って事ですか?;」
時弥:「私達?」〔怪訝〕
癒癒:「え、違うんですか?」
悼魄:「いややわぁ、僕等も厳密に言えば人やないんよ?」〔オーバーにおどける〕
時弥:「幽霊でもないけどな。」〔静〕
癒癒:「じゃあ…何なんですか?」
悼魄:「ん~、生きつつ死んでるって感じかな?w」〔おどける〕
時弥:「まぁ、屋敷に入ってみれば分かる。…お前のような一般常識人には理解不能だろうがな。」〔静→「お前のような…」以降は軽く鼻で笑う感じで〕
癒癒:「…一般常識人って…」〔ムッ〕
悼魄:「も~、そんな言い方せんでもええやん時弥ぁ!癒癒ちゃん、気ぃ悪くしたんだったらごめんね。」〔怒→謝の気持ちを込めて〕
癒癒:「ぁ、いえっ、別に!」
時弥:「とにかく、こんな所にいたら風邪を引く。早く入るぞ。」〔ツンデレ。早く入るぞ、は気遣ったように〕
癒癒:「はい…」
悼魄:「あ、ちょっと待って。…癒癒ちゃんにあげなあかんモンがあったんや。」〔待って!という感じ…?;→優しく〕
癒癒:「なんですか?」
鐙さんの方へ向き直ると、彼がいきなり急接近してきた。
そのままこつん、とおでこ同士をぶつけられる。
癒癒:「…?!な、なんですか急に!;」
悼魄:「霊感。」〔れーかん。と優しく〕
癒癒:「…へ?;」
悼魄:「僕の能力。おでこぶつけると、相手に霊感分けれるんよ。」〔明るめににこにこな感じで〕
癒癒:「れい…かん?って、あの…幽霊が見えるようになったりするっていう…」
悼魄:「そ。ここに住むからには、見たくなくても見なあかん。不用意に変なのに近づいて、乗り移られたりせぇへんよーに。」
癒癒:「はぁ…気をつけます。」
大きな門をくぐって、屋敷へと踏み込む。
霊感を貰った所為かなぁ…すごく寒い。
悼魄:「癒癒ちゃんの部屋はここね。」
癒癒:「あ、はい・・・」
案内された部屋に入ってみると、そこは綺麗に片付いた畳5畳半程の和室だった。
今まで誰も使っていないのか、はたまた私が来る事が決まったので気を遣って掃除してくれたのか…
新しい青々とした畳が独特の香りでその場を包んでいる。
部屋の壁は鶯色の土壁で、その4面のうち部屋に入ってすぐ左の壁には押入らしき襖が見えた。
右側の奥には磨き上げられた茶色い木のクローゼット、正面には旅館によくあるような障子型の窓がある。その窓の縦は私のお腹あたりから頭のちょっと上まで、横は肩幅より一回り大きい。
部屋の中をくまなく見回していると、ちらりと目の端に赤い物が映った。
癒癒:「ぇっ…?」
視点をその赤いものに合わせ、全貌が見えた時…私は凍りついた。
小学2年生ぐらいの女の子が、私をじっと見ていたからだ。おかっぱ頭に白いブラウス、赤い折目つきのスカートという装い。
それだけなら、私がこんなに立ちすくむ事はない。問題は、その子が持ってるものだ。
思わず小声で隣の鐙さんに助けを求めてしまう。
癒癒:「あ…鐙さんッ…!!」
悼魄:「ん?何?」
癒癒:「あの子、あの子包丁持ってる!!」
悼魄:「え?あぁ、見えたんやね。せやったら挨拶せなあかんよ。」
癒癒:「挨拶って、包丁持ってるんですよ!?」
悼魄:「そんな怖がらんでも大丈夫やって。その子は花子ちゃん。」
癒癒:「は…なこ…ちゃん?」
悼魄:「そ。ほら、挨拶して。」
癒癒:「はい…」
私は改めて「花子ちゃん」なる女の子の方に向き直り、目線を合わせてみる。…この子さっきから瞬きもしてないよぉ;
癒癒:「こ、こんばんは。あの…今日ここに越してきた守使癒癒といいます。よろしくお願いします…っ。」
な、何で年下にこんなに敬語使っちゃってるんだろう…;
花子:「ああ、あなたがね!!」
悼魄:「花子ちゃん、掃除ありがとうね。」
花子:「どういたしまして!そっかぁ、あなたが癒癒さんね。…「癒癒お姉ちゃん」って呼んでもいい?」
癒癒:「え、あ、もちろんいいよ。」
花子:「やったー!じゃあ、これからよろしくね、癒癒お姉ちゃん!」
癒癒:「う、うん、よろしく。」
にこにこと嬉しそうにはしゃぎ回るその姿は見たまんま小学生。でも、どことなく大人びた部分を感じるのは何でだろう…?
花子:「時兄は今日も仏頂面だねー。悼兄を見習いなよ~。」
時弥:「大きなお世話だ。」
花子:「悼兄~、時兄がつめたぁい…」
悼魄:「あはは、仕方ないよ~、時兄は今日あの日なんだから~」
時弥:「もっかい言ってみろ、このエセスマイル詩人が!!」
悼魄:「や~ん、時弥こわーい!」
沙紅:「騒がしい。」
…まさに鶴の一声。たった一言でその場が静まり、花子ちゃんは気をつけまでしている。…この人誰?どこかで聞いたような声だけど…
沙紅:「…君が、守使癒癒さんですね。僕はここ「チザクラ荘」の管理人、沙紅といいます。」
癒癒:「あ、管理人さんですね!よろしくお願いします、お世話になりますっ…」
沙紅:「あは、そんなに堅くならなくて良いですよ。私もあなたには感謝しなければいけない。」
癒癒:「ぇ、私…何か感謝されるような事しましたか?;」
沙紅:「ええ、大いに。…こちらの仕事を手伝って下さるんですよね?」
癒癒:「はい、契約の時に条件だと言われて…あの、私に出来る事なら、力を尽くしますから!」
沙紅:「それはよかった。では、夜も遅いです。今日はしっかり寝て下さい…あ、窓を開けっ放しで寝ないように。」
癒癒:「え、なんでですか?」
沙紅:「なぜか?それは聞くまでもないでしょう…理由があるからですよ。行きますよ、悼魄、時弥、花子。」
(三人):「はーい。」
…あ~あ、行っちゃった…。っていうか、沙紅さん…
「「なぜか?それは聞くまでもないでしょう…理由があるからですよ。」」
…答えになってないし。
漆黒の闇に映える金色の月が部屋を照らしている。
「開けっ放しで寝ないように」という言葉が引っかかりはしたが、私はその言葉に従う事にした。
「霊感」のせいで身体に受ける何とも言えない視線を受けるような感覚を気にしないようにしながら、眠りに落ちた。
~了~
さて、「魄癒」第一話は如何でしたか?
主人公の守使癒癒が手伝う事になった仕事とはどんなものなのでしょう。
次回、「魄癒」第二話【使命】お楽しみに。
ん?お前は誰だ…ですって?…ふふ、私は…。
最終更新:2010年07月17日 22:42