出題:6スレ目>>52
>>58
祭りのときにさ、いろいろ屋台でるじゃん?
俺あれが苦手なのよ。だってさ、たいしたことないのに雰囲気で騙してるようなもんだろあれ。
リンゴ飴もイカ焼きも焼きそばも家でつうくるか専門の店で買ったほうがよっぽど安いしウマイ。
金魚救いとかただの虐待だよなー。
っつーわけで、俺は祭りの屋台はいらないとおもうワケ。わかる?
「えー屋台なしのお祭りなんて楽しくないじゃん。」
なんと言おうと嫌なものは嫌なの。
俺が毎年どれだけの金をつかって金魚や亀を救ってると思ってるんだ。
もううちの庭の池はいっぱいだぞ。おかげでそこらの金魚救い大会で優勝できる腕前だ?
「思いっきり売り上げに貢献してるし……それむしろ楽しんでない?」
た、楽しんでなどいない!俺は純粋に屋台が嫌いなんだ!
なんだよあの明らかに見世物としてゲームやなんか置いてて、
当たるのは絶対に変なキーホルダーあたりがせいぜいのクジとかさぁ!
DSを当てるために10000円つぎ込んだことがあるとかそんなことはないぞ!
「ツンデレ?」
>>69
冷たい空気が体を震わせる頃。一丁の玉子が、屋台のおでん汁に浸かりながら呟いた。
「革命が……必要だと思うんだ」
「革命?」
豆腐の素っ頓狂な発言に、敷居の向こうで同じく身を浸していた大根とちくわが耳を傾けた。
「僕らは所詮、おでんの具に過ぎないじゃないか。こうして汁に浸かって、いい感じに出汁を吸ったところで人間に
食べられる。これが絶対で普遍の真実……じゃないか?」
「当たり前だろう、僕らはおでんだ」
ちくわの一言に反抗するように、玉子が汁に潜った。
「食物の定めなんだ。こうして生まれて来た以上、僕らに食べられる以外の未来はないよ……どうしたって、逃げられない」
「……ぷあっ。だから、革命が必要なんだよ。僕らは食べられるために出汁を吸う。でもそれは違うんだ」
小さなしぶきを上げて、豆腐が再び顔を出す。屋台を通り抜ける秋風が、滑らかな頭に溜まった熱を奪っていった。
「普遍の未来なんてものは存在しない。僕がそれを今から証明してみせるよ。僕が、君たちの希望になる」
そう言うと玉子は黙って再び汁に沈んでいった。大根とちくわはやれやれと芯をすくめると、同じように黙って身を浸した。
しばらくして、喧しい人間の男の声が屋台に響いた。
「親父ぃ、熱燗と玉子一つ」
「あいよ」
屋台の親父がお玉を持つと、見事に茶色く色づいた玉子を掬い上げる。
「玉子!」
大根の叫び声に体を震わせて玉子が応えた。
器に移された玉子が箸に摘まれ、男の口元に運ばれる――そして。
「熱っ!」
男が、口に入れた玉子を吐き出した。その勢いのまま、玉子は屋台を大きく逸れて道へと転がり落ちる。
「どうだ! 僕はやった! やったんだ! これで自由――」
そこまで叫んだところで、玉子はようやく目の前にある自転車の車輪に気付いたのだった――。
「――とかよう、そんなことを想像すると、なあ! おでんも一生懸命生きてるんだなって、そう思えてよう!」
「お客さん、飲みすぎですよ……」
「うるっせいや! 俺はナア、あの玉子を思って泣いてやる! ああ泣いてやるさ、うおおおおお……」
「お客さん、静かにしてください!」
――そんな他愛ない言葉が交わされながら、屋台の夜は更けていくのである。
>>70
女「おい、ラーメンの屋台を探せ」
男「……一応聞いてやろう。なんでだ?」
女「私が屋台のラーメンを食べたいからだ」
男「なんでそんなに偉そうなんだって言ってんだ!」
女「それは私が偉いからだ」
男「……」
女「ほら、早く探し出せ」
男「……いや、無理だろう」
女「諦めるな。お前なら出来る」
男「……今のって褒めてんの?」
女「腹が減った」
男「聞けよ!?」
女「……屋台のラーメンが無理ならば仕方ない」
男「……わかってくれたか」
女「お前がラーメンを作れ」
男「俺が作るのか!?」
女「当然だろう。私は屋台のラーメンが食べたいのだがな」
男「……」
女「早くしろ。もうお腹ペコペコだ」
男「……」
女「出前一丁で頼む」
男「せめてそこはチャルメラって言っとけよ!?」
>>82
俺はひとり、砂漠をさまよっていた。
真昼。容赦なく陽が照りつける。
暑い。
咽喉が渇く。
全身が疲労しきっている。
死にそうだ。
しかし俺はなにかに突き動かされるようにただ歩いた。
数時間前に、盗賊に襲われた。
ラクダは奪われた。
荷ももちろん奪われた。
命だけは助かった。
あのときは胸をなでおろしたが、今思えばいっそ殺してくれればよかったものを。
俺はなぜわざわざ日本を離れ、こんなところへ来てしまったのだ。
ただただ後悔するのみだ。
そのとき、彼方になにやらぽつんと黒い点が見えた。
あれはなんだ。
俺は歩いた。
だんだん黒い点が大きくなってくる。
さらに歩いた。
しばらくすると、その正体がつかめた。
そして歩く。
俺はそれの真ん前にまでやってきた。
それは思ったとおり、屋台だった。
日本人らしき親父がたこ焼きを焼いている。
親父の真剣な眼差しに、俺は話しかけることを躊躇した。
彼の額から、汗が噴き出し、頬を伝い、顎を離れ、手元に落ちていった。
まるで殺し屋の目だ、と俺は思った。
先ほど出会った盗賊などとは比べものにならない、修羅の眼差しだった。
あからさまな殺気があるわけではない。
その目は、ただただ虚ろだった。
それがかえって恐ろしかった。
俺は背筋が冷えるのを感じた。
「兄さん」親父が顔を上げずに言った。「たこ焼きどうだい」
俺は咽喉を鳴らし、なんとか声を出した。「結構です」
「そうかい」
親父はそれきり黙りこんでしまった。
しばらく沈黙が続いた。
それを破ったのは俺だった。「このあたりに水場はありませんか」
「ある。そっちへ――」親父は地平線を指差した。「――ひたすら歩けば、ある」
俺はそちらを見た。ただ砂漠が広がっているだけだ。本当にあるのだろうか。わからない。
「ありがとうございます」俺はそう言って、屋台の前を去った。
そして決して振り返らなかった。親父も遠ざかる俺を見はしなかっただろう。
親父の指し示した方向へ、俺はひたすら歩いた。
それほどの時間が経ったろうか。
オアシスはあった。本当にあった。
案外大きい。砂漠のど真ん中にこのような場所があるとは信じがたい。
しかし現実にあるのだ。幻ではない。
俺は水をすくい、飲んだ。そして服を脱ぎ、飛び込んだ。
充分楽しんでから、俺は陸に上がり、改めて周りを見回した。
ところどころに木々が生え、俺の背丈以上の草が生い茂っている場所がある。
こんな場所でこのような植物が育つのか、と俺は目を見張った。
もしかしたら、なにか食べられるものがなっているかもしれない。
俺は背の高い草の生い茂る一角へと出向いた。
そして、草をがさりとかきわけた。
そこに、またしても屋台があった。
「親父」
俺はうめいた。
さっきの親父がいたのだ。
同じようにうつむいて、たこ焼きを――いや、やきそばだ。やきそばを作っていた。
「一体いつの間にここまで来たんです」俺は訊いた。
「兄さん、俺とあんたは初対面だ」
「何を言うんです。さっき話をしたじゃありませんか」
「それは俺の双子の兄貴だ」
「なるほど」
それなら納得だ。
俺はまたひと泳ぎすることにした。
終わり
最終更新:2010年02月13日 17:37