出題:1スレ目>>405

>>412

人類の肉体はどこまで鍛え上げられるのか。
その問いにひとつの答えを示すのが人類の祭典、オリンピックである。
一生に一度は生で見たいものだ。そう思って俺はこの陸上競技場にやってきた。
さすが世界中から注目される100m決勝。応援も半端ではない。
しかしそこで、俺は不意に尿意に襲われた。限界だ、我慢できそうにない。
隣の席の友人に時間を聞くとまだ多少余裕があるそうだ。俺はトイレにダッシュした。
戻ってくると会場が沸いていた。なんと、ちょうど選手たちが走り終わったところであった。
俺は友人の元に戻りうなだれて一言だけ放った。
「すまんなんか11秒差で空気読めなかった」

>>417

 うちの学校には少し変わった奴がいる。そいつに言葉を投げ掛けると、少し遅れて反応が返って来る。
 これは脳神経の病気で、聴覚した言葉の意味を、一つ一つを認識するので反応に11秒程遅れが発生するのだった。
 この奇病以外、彼は全くの健康。ただ、この障害のせいで友人はほとんどいなかった。
 ある日、彼は授業のチャイム鳴っても、教室には帰って来ない。
 担任に入院したと告げられた。彼はセットされた目覚ましの如く十一分おきに喋っていたという。
 さらに彼の病気は悪化していた。だんだん十一時間、十一日……と時の単位を増やしていき、いまは植物人間の様に入院している。
 そして、まもなく十一年十一か月十一日十一時間十一分十一秒ぶりに彼は言葉を発する。
 彼はいったい何て言うだろう。次はいつ反応するんだろうか。
 僕は彼の数少ない友人として見舞いに来ていた。

>>423

親友「あ、絵の具切れた」
女「じゃあ購買まで買いに行く?」
男「親友、お前の自慢の足で買ってきてくれよ。頼りにしてるぜ陸上部!」
親友「えーなんで俺がー」
男「丁度学食券が一枚余っているんだが、いるか?」
親友「持つべきものは友だよな!任せとけ!」

男「なあ、…キスしてもいい?」
女「だ、駄目だよ!」
男「いいじゃん、近頃してなかったし」
女「だって親友君速いからいつ戻って来るか…!」
男「大丈夫だ、あいつでも少なくと往復も5分はかかること知ってるんだ」
女「でも…!」
男「いいからいいから」

近づく二人の距離。

女「あ…」

バターン!
「どうだ、生まれ変わった俺の速さを!ストップウォッチではかったらなんと…」

ザ・ワールド!時が止まった!

女「男君のばかぁー!」
バチーン!タッタッタ…
親友「…すまん、11秒差で空気読めなかった」

>>425

「ヘアッ!」

 ウルトラマンの放ったスペシウム光線が俺をとらえた。
 痛い。ものすごく痛い。顔色一つ変えずにこんなひどい事を出来るなんてなんて奴だ。
 アイテテテテ! 脇腹に当てるなっての!いくら俺の体が固いっていっても、長時間スペシウム光線をくらい続けるなんて拷問なんだぞ!?

「ギャアアーーーッ!」

 あ、今のは鳴き声ね。
 小さい頃から「男は泣くな、泣くなら鳴け!」って母ちゃんに言われてきた。だから、断末魔の叫び声もあげるつもりはないぜ?
 三十秒間スペシウム光線をくらい続ければ、俺はオダブツ。子供は喜ぶ。だけど、せめて最後くらいは格好よく無言で爆発して終わりたい。

「ヘアッ!」

 ……あ~、意識が遠くなってきたわ。今、十五秒くらい経ったからまだ半分かよ。
 ははっ! 残り十秒くらいになると何も考えられなくなんのかな?
 なんて事を考えていた俺は、ウルトラマンがスペシウム光線を止めている事にすぐには気付けなかった。

「ギャアッ?」

 あれ? なんでやめるんだよ、おい! とっととスペシウム光線をうてって! 子供が泣くぞ!?

「……ヘアッ……!」

 俺の無言の励ましも虚しく、ウルトラマンは地に膝をついた。
 しっかりしろよ、おい!
 なんか戦闘機がブンブン飛び回ってるけど、そんな事は関係ない。ミサイル? 無駄無駄。俺の体固いっすから。
 何事かとウルトラマンに駆け寄ると、視線で何かを見ろと訴えているのがわかった。
 なんだ? 地面を見ろってのか? そこに何が―――。

 すまんなんか11秒差で空気読めなかった

「シュワッチ!」

 俺に伝えたいことを伝えたウルトラマンは、宇宙へ飛び立って行った。
 そっか、そうだよな。地球の空気ってお前にとっちゃ猛毒なんだもんな。胸のタイマーがピコピコいってたもんな。
 はは、また来週までもちこしっすか? はは、ははははは!

「ギャアアアアーーーッ!」

 ごめん、母ちゃん。
 俺、泣いちった。

>>433

 僕はヨーグルト星での任務を終え、今まさに地球へ帰ろうとしていたところだった。
 生きて帰ることができるかどうか……、という危険な任務が見事完遂できたのも、恋人
のシンシアに再び会いたいという一念のおかげだ。

 僕はさっそく基地内からシンシアに連絡を入れた。
 ここからシンシアのいる地球までは、会話するにも十一秒間のタイムラグが生じる。
 そのタイムラグがもどかしかったものの、俺は任務が無事に済んだことをシンシアと喜
び合った。

 それからさらに二言三言話した後、なんとなく僕は黙りがちになってしまった。
 それにつれて、シンシアの言葉も少なくなり、まもなく二人は完全に黙り込んだ。
 ただ、気まずい雰囲気ではなかった。むしろ逆で、この沈黙は愛情にあふれたものであ
り、言葉を必要としないがゆえの必然的な静寂だった。

 自分はシンシアを心から愛している。胸がいっぱいで、言葉も出てこなかった。きっと
シンシアも同じ気持ちなんだと僕は信じた。
 遠く離れてはいるけれど、結婚を申し込むのは今しかない。
 僕はありったけの気持ちを込めて、結婚を申し込む言葉を伝えた。
 そして、僕は時計をじっと見た。

 十一秒がたった。まさにいま、シンシアのもとに僕のメッセージが届いたはずだ。
 と、そう思った瞬間、スピーカーから、シンシアからの愛にあふれた結婚の申し出が聞
こえてきた。
 僕は呆然としてそれを聞いた。
 二人は同時に、プロポーズをしたのだ。
 シンシアもいまこの瞬間、それに気づいたはずだ。

 僕たちはこの偶然に心をうたれ、さらに深い幸福感に包まれた。そして何度も愛の言葉
を交し合った。

 しばらくしてシンシアが冗談めかしてこう言った。
「あーあ、本当にもったいないことをしたわ。あなたに先にプロポーズを言わせていれば、
結婚してからも私のほうが優位に立てたのに。十一秒間のタイムラグのせいね。空気を読
めていなかったわ。注意してれば、わかったかもしれないのにね」
「シンシア、残念だけど君は間違っているよ」僕は笑った。「君は決して空気を読めなか
った。ヨーグルト星にいる僕と地球にいる君との間には、空気はないんだ」

[了]

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最終更新:2010年02月13日 17:18