出題:2スレ目>>484
>>497
「ママー? このニンジン、くるくるしてるね」
娘がたどたどしい箸づかいで、今晩のおかずを持ち上げる。その可愛らしい手付きに、私は仕事の疲れも忘れ微笑んだ。
「飾り切りっていうんだよ、きれいだね。これはどうやって作ったんだい、ママ?」
「ふふ。まずね、ニンジンを桂剥き……えっとね、巻物みたいにくるくる剥くの。
そうしたら、斜めに包丁を入れて、少し水にさらせば」
『くるくる~』 彼女と娘が同時に言う。全く、仲の良いことで。
思えば、ずっと忙しい日々が続いていた。こうして家族そろっての晩御飯も、随分久しぶりの気がする。
「おいおい、二人とも?……パパも仲間に入れておくれ?」
『くるくる~』
そんな夕食を、しばし堪能した。家族っていいな。
「このニンジンさん、あれに似てるね。……えっと、デオキシリボ核酸!」
ビールにむせるところだった。
「……難しい言葉を知ってるね。テレビでやってたのかい?」
「うん!DNAっていうんだよね。遺伝子ー!らせんこーぞー!」
……全く、いつの間にこの子は。視線を上げると、同じように苦笑する彼女と目が合った。
「くるくる~。ニンジンもコンニャクもくるくる~」
娘に言われて気が付いた。
コンニャクも、らせん状になっている。……確か手綱切りといったか。
そういえば他にも……ニンニクや山芋、ニラレバ炒め、それに……。
ふと。
顔を上げて。
妖しく微笑む彼女と、もう一度目が合った。
「遺伝子ー!くるくる~」
最終更新:2010年02月13日 17:26