シーン3:“ボーイミーツガール”出会う場面は屋外。ふと目が合う程度で会話はない。
家に帰ってからもなぜかヒロインのことが印象に残っていることを伺わせる独白を入れる。
シーン4:二度目。適当な場所。女から声をかける。どちらも異性としては意識していない。
シーン5:世界破滅までのおおよその時間がわかる。それに対するリアクション等。何らかのトリックスター的なキャラが主人公の
目の前に現れる。(実は身近な人物であるとよい)彼(彼女)は選択肢を主人公に提示する。
それは自分の命と世界、どちらかを選べというもの。自分の命を選択すると、自らの認識する世界だけは存続するのだが、現実の世界は滅びてしまう。
>>814
>>691からの続き
【シーン3】
男「はぁ、はぁ、はぁ……もっと余裕持って行くつもりだったのに……」
友「はぁ、はぁ、はぁ……朝から……全力で走るのは……きついな……」
男「やっと、城見えてきたぞ……」
友「間に合いそうだな……あっ! おい、城から人いっぱい出てきたぞ!」
男「うわ、始まってるよ……登城初日から遅刻って……いや、待て。あれ違うぞ」
友「違うって何が……本当だ、従士団じゃない。てか、あれ近衛兵団だぞ!」
男「うわ、俺初めて見た。確か道空けないと駄目なんだよな」
友「それどころじゃねぇよ! 近衛兵って王族警護だぞ。ってことは王族も一緒に……!」
男「えーと、従士の場合、最敬礼か! こうか?」
友「そうそう。き、来た……」
男「(真ん中にいるのが王族の方か……俺らと同じ歳の子みたいだな)」
女「……」
男「(やべ、目が合った! 目が合っただけで処罰とかはないよな……)」
友「……ふぅ。行ったか……。あー、すんげぇ緊張したぁ! 初日から勘弁して欲しいよなぁ!」
男「(あの娘の目……)」
友「おーい、通り過ぎたからもう終わりだぞー」
男「えっ? あ、あぁ……。っておい! 時間が! もう始まってんじゃねぇか?」
友「てか、敬礼してる間に鐘鳴ったからな。もう訓辞位は始まってると思うぞ」
男「王族無視する訳にはいかなかったしな……事情話すしかないか」
男「ただいま。はぁ……疲れた……」
母「おかえり。どうだい、しっかりお勤め出来たかい?」
男「う~ん、まぁまぁ、かな」
母「なんだい、はっきりしないね。とりあえず着替えてきな」
男「あぁ……」
男「それにしてもあの娘の目……なんであんなに悲しそうだったんだろう」
男「あれじゃ、近衛兵に見張られてる罪人じゃないか……」
男「でも、近衛兵が罪人の護送なんてしないよな」
男「……やめやめ! 王族の事なんて俺なんかが考えたってしょうがない」
【シーン4】
男「やっと昼か……つ、疲れた……」
男「あー、飯あんまり食いたくないけど、それだと午後持たないしな」
男「お、あの木の下涼しそうだな。あそこで食うか」
男「しかしあいつ、何時まで居残り特訓させられてんだろ。昼休み終わっちまうぞ」
女「あの……昨日お会いした従士の方ではありませんか?」
男「はい? ……あ、貴女は! そ、その通りであります!」
女「窓から貴方の姿が見えたものですから、ご挨拶にと」
男「も、勿体無いお言葉にございます!」
女「お城でのお勤めはいつから?」
男「はっ! 昨日より従士団の一員として――」
近「こんな所におられたのですか。お部屋からお出になられてはなりませんと申したはずですが」
女「申し訳ありません。昨日城下にてお会いしましたこの方とお話がしたくて、つい……」
近「従士にとっては貴重な休憩時間、邪魔をしてはなりません。君、すまなかったな」
男「い、いえ! そんな、俺……いや、自分は、その……」
近「王がお呼びです。私がご案内いたしますので」
女「父が……はい、分かりました……」
男「俺と話してる時はあんなに楽しそうだったのに、近衛兵が来たらまた悲しそうな目……」
男「勝手に出歩いただけで怒られたりするもんなのか? 王族って……」
男「それに、近衛兵が王族に代わって従士に謝るって、いくらなんでもありえないだろ!」
友「うんうん、確かに何かあるな」
男「うわっ! お、お前いつからそこに……」
友「お前がぶつぶつ独り言言ってるあたり。それはそうと、休憩そろそろ終わるぜ」
男「あ、もうこんな時間か。……あれ、お前飯は?」
友「ふっ……俺が午後の訓練中倒れたら、頼むぜ……」
男「お前、まさか今まで……し、死ぬなよ?」
友「お前の王族のあの方とがどんな会話したのか吐くまでは死なないって。さ、行こうぜ」
男「あ、あぁ……」
3スレ目>>137
>>695からの続き
埃っぽく乾いた風に喉を詰まらせる。
疲れと焦りで重くなった脚を一歩ずつ、じりじりと敵陣を進んだ。
なんだ――俺はあの頃から進歩がなかったのだ。
今もこうして、少しずつしか踏み出せないではないか。
「……ふ……はは」
自嘲の笑いが洩れる。
今でも俺は、若かった頃のように我武者羅に進めばそれで良いのかも知れない。
そんな事を考えると俺の脚も、まるで俺自身の命みたいに軽くなった気がした。
敵の一団に遭遇したのは、しばらく歩いた後の事だった。
「……数が多いな」
目を擦りながら、そう遠くから見て取る。
……三騎。
奇襲して倒せない相手ではないのかもしれない。だがそうなったとしても、一騎を討った所で返り討ちに会うのが関の山だろう。
或いは――向こうもそれを考えて、こちらに気付かぬふりをしているのかもしれない。
風向きが変わる。
「……我々は、王の警護に向かう」
彼らの話し声はこちらにも流れてきた。
「……盤面は終局に差し掛かっている。敵陣に踏み込んだ味方が彼の蛮王を討てば我々の勝利だ。
だがその為には、我々で王を何としてでもお衛りせねばならん」
あかがね色の鎧の騎士――あれが隊長なのだろう。透き通った声が朗々と響いく。
小さな体にすらりと伸びた手足――しかし全身から発する気は、歴戦の戦士のそれだった。
だが――あの騎士は。
「……以上、各々の持ち場に着く様に。散会!」
三騎が別れ。
その内の一騎が、風のように俺の横をすり抜けていった。
……俺は、そいつを見ることが出来ない。
或いは――あかがねの騎士も、それは同じだったかもしれない。
なんで。
なんで、お前が敵方にいるんだよ――桂馬!
不意の風に。
明りを殺したたき火が、小さく踊る。
「……背後から現れても、警戒しないのですね。貴方は」
先ほど捕まえた、故郷では見たことのない生き物の肉を、俺は炎の中から短刀で取り上げる。
俺は後ろに向けて、声を発した。
「俺の背中は、とっくの昔にお前の物だったからな」
中まで火は通っているが味のしないそれに、俺は息を吹きかけながら齧り付く。
味付け用の塩など、とうに使い果たしてしまっていた。
静寂。
炎が揺らめく他は、気配もしない。
「お前は、幽霊なのか?」
「いいえ、違います」
鎧が軋む音。
「何が起こったのか、私にも解りません。気が付いた時には、また、戦場にいました。
――それまでとは、陣営を変えて」
「そうか」
痞えながら肉を飲み込み、俺は頷いた。何をだろう?
「……これを使ってください」
座る俺の横に、皮袋が投げ込まれる。
「何だ、これは」
「塩です」
「何のつもりだ」
「わかりません。でも、私にはこれしか差し上げられません」
俺は皮袋を開ける。
岩塩は、故郷のそれと違って赤みがかっていた。
「有難く、頂く」
「……毒かもしれませんよ?」
声は小さく、頼りないものだった。
思慮深くて、でも臆病なお前とは違うんだよ。俺は。
ざらつく喉で俺が飲み込んだのは、そんな言葉だったかもしれない。
「次に逢う時は」
「そうですね」
俺達は、昔のままじゃない。
再び俺は、咀嚼を開始した。
背後の気配は、いつの間にか消えていた。
「……お前が昔作った料理みたいだよ……塩辛い」
冷たく乾いた風に、消えかけた炎が細かく揺れた。
最終更新:2010年02月13日 17:29