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出題:3スレ目>>219

>>227

 8月も終わりに近づき、私は夏物をしまう準備を始めた。
私はこの作業が一番嫌いだ。決して面倒な訳ではない。
祭りの後であるとか、友達が帰った後の部屋であるとか、
そういった『楽しかった出来事の終わり』に似た、何とも
言えないせつなさを感じるのが嫌でしょうがないのだ。
 しかし、考えても見ると、夏がとりわけ好きという訳でもない。
むしろ、暑さが苦手な私にとっては嫌いな季節に類する。
そんな夏の終わりに切なさを感じてしまうのは、やはり
冷たさであろう。
 真夏日が次第に減り、比較的過ごし易い日々が続く。
朝晩の冷え込みに思わず身震いしたかと思えば、
日中は相変わらずの若干汗ばむ程度の陽気。
しかし、次第に日中も半袖では肌寒く感じるようになり、
気が付けば雨の季節。雨が終わる頃には、周囲は
すっかり秋へと模様替えされている。秋へと変化していくと
同時に、徐々に低下する気温が、愁いとなって心境に
変化をもたらしているのであろう。
 同じ『冷たさ』でも、冬の冷たさはどうか? 夏の終わりに感じる冷たさを
別れと表現するならば、冬の寒さは孤独と言い表せよう。
厳しい寒さとによる外部との遮断。降り積もる雪は来客を拒むだけでなく、
外部の音をも消し去ってしまう。白く、静かで、孤独な世界。
しかし、なぜか悲しさや寂しさは感じない。それは、もともと
冬とはそういうものなのだという刷り込みもあろうが、それだけではない
何かがあるのではないかと――

女「真面目に宿題やってるかと思えば、何書いてんのあんたは」
男「え? いや、ちょっと夏の終わりの愁い、冬の冷たい孤独の比較について」
女「愁いって、あんたの場合、毎回宿題終わらなくて怒られるのが嫌なだけでしょうが」
男「だから、こうやって緻密な分析をする事でだな――」
女「知ってる? それ分析じゃなくて現実逃避って言うの」
男「冬は良いよな。あの寒さ、身が引き締まるようで好きだ」
女「その分休みも短いけどね」
男「……やっぱり秋ですよ。過ごし易い気候、美味しい食べ物、読書に丁度良い夜長」
女「休みも無いから宿題も出ないし」
男「……何が言いたい、さっきから」
女「夏休み最終日に、わざわざ宿題見せてやりに来てるんだから、さっさと写せボケ」
男「すいません、もうちょっとで終わります……」

>>230

夏の終りに、母を送った。

玉砂利を弾きながら、寺の駐車場に車を止める。
ドアを開けると、雪の一片が額を冷たく濡らした。強い風が吹いたので、先ほど買って来たばかりの献花を背中で庇う。
……今はそれほどでもないが、今夜中には積もるかもしれない。
駐車場周りの草花も、冬の厳しさに枯れ果ててしまったようだった。秋頃には何種類もの小さな花が出迎えてくれたというのに。
私は一人、墓地への階段を登った。

母を亡くした事が、こんなに堪えるものだとは考えもしなかった。
いつも口煩く私を叱り、仕事疲れの体に雑務を押し付けるような、そんな母だったというのに。
定期健診で見つかった小さな影が、あっという間に私から母を奪ってしまった。
それからの日々は、目まぐるしく過ぎた。
暫くの間は泣く暇もなかった。
あれから月命日毎、私は母に会うのを欠かさない。

墓地は閑散としていた。
今この時間、ここにいるのは私だけらしい。
高台のここは、下より冷えるのかもしれない。墓石の多くはうっすらと雪が積もっていた。
私の墓石もそれは同じで、手袋で雪を落とした後、ハンカチで上部を拭わなければならなかった。
……昔、父が亡くなった時。周りの反対を押し切り、母が強引に買った上等な墓石。
あの時の母は正しかったのだと、今こうして思う。
花を手向ける。
入り口からここまで、よその墓前に供えられた花は見かけなかった。
この花は、雪の中で孤独に両親を守るのかもしれない。
私はそれを、寂しく思った。

先月に供えた枯れ花を片手に、処分所に向かう。そこは物置も兼ねた小さな小屋になっている。
小屋の小さな戸を開けた私は、驚きと喜びの入り混じった溜息を漏らした。
中にあったのは、花瓶に飾られた、沢山の、色取り取りの花。
風や寒さから守るよう、墓前にではなく、ここにひっそりと手向けられていたのだ。
よく見ると、同じ形の花瓶がいくつかある。誰かが、まとめて置いて帰ったのかもしれない。
暫く見とれていた私は、静かにもう一度溜息を吐くと、体を回して引き返した。
もう一度、花を手向けなおすために。

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最終更新:2010年02月13日 17:30