出題:3スレ目>>295

>>305

娘「ねえねえ、お父さん」
父「なんだい? それから、お父さんじゃなくてパパと呼びなさい」
娘「お父さん、聞きたいことがあるの」
父「……うん、なんだい」
娘「海岸ってどこからどこまでの事を言うの?」
父「海岸かぁ。難しい言葉を覚えたなー」
娘「えへへ///」
父「そうだなぁ、海岸は人や地域によって広さが変わるんだよ」
娘「へー」
父「ある人によっては海岸でも、他の人にとっては海岸じゃなかったりね」
娘「そうなんだー」

娘「じゃあ、お父さんの頭の海岸はどこ?」

父「っ! そ、それは……」
娘「ここは?」ツンッ
父「そ、そこは陸地だよ」
娘「じゃあここはー?」ツンッ
父「陸地だよ! ぎ、ギリギリ陸地だよ!?」
娘「それならここは~?」ツンッ
父「……か、海岸かな、はは」

娘「海岸って、陸がなくてもいいんだね!」

父「……」

>>310

 大きな欠伸をして水平線の彼方を眺める。
 九月の海は夏を惜しむように深い色をしていた。
 一人で波止場に座り、釣り糸を垂れていると時間の流れをゆっくりと感じられる。
 どうせならば八月の間もずっとこうして居たかった。海と同じく自分も夏を惜しんでいるのだ。
 誰かが呼ぶ声が聞こえる、しかしまだ帰るつもりはない。
 夏の気配は家に帰ったとしても別の形で感じられる、それでも俺はこの海と一緒に夏を惜しんでいたいのだ。
 波止場の両脇に広がる海岸線に子供達が遊ぶ姿が見える、ある種の懐かしさを感じながら俺は……

「期限過ぎてるんだからさっさと宿題やんなさい」

>>314

ざざ~ん
父「というワケで家族サービスの意味も込めて海岸にやってきますた」
母「あらあら、そっちには誰もいないわよお父さん」
娘「くらげだーっ!」
母「あらあら、よし子は好奇心旺盛ね。うふふ」
娘「ふんじゃえーっ!」
父「ミズクラゲ――水水母とも書く――とは、そもそも宗の歴代皇帝に伝わる秘伝において、もっとm
母「あらあら、さすがお父さんは歩く民明書房ね」
娘「ちちーっ! ははーっ! こっち来て一緒にふめーっ!」
ふみふみふみふみ
母「あらあら、はしゃいじゃって。うふふ」
父「くらげ踏み……それは英吉利のエンリコ・デンゼルバート博士が提唱した過激なるs
娘「カツオノエボシだーーーーっ☆」
ぷちっ ぷちっ ぷちっ
母「あらあら、電気クラゲは刺されると大変だから気をつけるのよ」
娘「楽しいーっ!」
父「まあ、何にせよ楽しんでくれているようで何よりだ」
母「あらあら、お父さんたら」
父「ははは。どうした?」
母「寒くて泳げもしねえのに家族サービスもクソもねえだろが」

>>317

夕暮れの砂浜に、一人歩く老人の姿があった。規則的な波音の中、白いシャツは紫がかったオレンジに映り、襟はぴんと張っていた。
海岸の松の木も、長年の風のせいと見えて皆一様に腰を曲げていた。ここいら一帯ではかなり強い風が吹く。寒流が寄る季節には、波が岬の灯台にまで跳ね上がるほどだ。
だが、彼は海風が好きだった。ただ風を受けるだけで、惑星が回転するのを、時が通り過ぎてゆくのを感じることができるような気さえするのだ。
ぱたぱたと服がはためくが、特に風が強いというわけでもなかった。
老人が歩を進めるたび、荒く黒っぽい砂が、貝殻が、足下に音を立てた。
点々と続く足跡が不意に止まった。
身をかがめると老人は何かを拾い上げ、また歩き出した。

一時間ほど経ったろうか、丸太小屋の中に、腰かけた老人の姿がある。
目の前の暖炉では湯を張った銅の鍋。時折こぽりと泡が湧く。
彼は貝殻を眺めていた。それほど貝殻が好きなわけでもなかったが、何か考え事をする際に貝殻を眺めるのが癖のようになっていた。
炉の紅い炎に、皺の多い顔は揺らめいて見えた。彼は長いことそうしていたが、やおら立ち上がると隣のドアへ消えていった。
夜の中に、ガラス窓がぴしぴしと鳴り、風は甲高く吠えていた。
 隣の部屋には彼の書斎があった。灯油ランプの立てる匂いが辺りに漂っている。椰子の木の実を抉って貝殻をはめたインク壺はどうやらお手製らしい。
 真鍮のペン先を浸すと、彼は何事か書きつづり始めた。
 風は強く、窓の外では夜目にも白く流れる雲が、星々を遮っては去ってゆく。
 窓のランプの明かりは、外から見ると真っ暗な大自然の中でいかにも頼りなげに揺れていた。暖かなか細い光は、その夜も家の周りをちらちらと照らすのだった。

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最終更新:2010年02月13日 17:31