出題:3スレ目>>339
>>344
机の引き出しを開けると、懐かしいものが出てきた。
それは、ソリッドブラスのジッポライター。
真鍮という合金、混じり物なのにソリッド(無垢)という単語がついているのが面白くて購入したものだ。
このソリッドブラスのライターは、使わなければ黒く変色し、使い続ければ金色に輝くという特徴がある。
煙草を吸わなくなり使用する事がなくなった今、昔の輝きは見る影も無い。
「ねえアナタ、何を見ているの?」
妻が私の様子に気付いたようだ。
無言で掌の中のライターを見せた。
「あら、なつかしいわね」
私の肩に頭を預けながら妻は言った。
どうやら彼女も私と同じ感想をもったようだ。
「禁煙はもう終わり?」
その問いかけに無言で首を振った。
「愛煙家は卒業したのさ。今は愛妻家だからね」
私は、妻の金色に輝く髪を手で梳きながら言った。
その輝きは、以前よりも増しているように思えた。
>>345
ある日、トランペットが送られてきた。送り主はわからない。
しかもケースに入れてではなくはだかのまま、ぐにゃりと曲がった例の細長い部分に(スライドというらしい)荷札が貼り付けてあるのだ。
ひょっとしたら間違いで届いたのかも? そう思って何度も送り先を確かめては見たけれど、それは間違いなくぼくあての物だった。
少し怖くなったので、ぼくは両親には内緒で自分の部屋に持ち込む事にした。
トランペットは、どうやら新品らしかった。
金色の真鍮がピカピカして、美しい。思わずさわった所をシャツでぬぐってしまった位だ。
次第にわき起こる、吹いてみたくなる衝動。
でも近所迷惑になるかも……。
間を取って。
小さく吹いてみる事にした。
……音が出るわけもなかった。
ていうか、何かつまってるみたい。
しばらくの間のぞいたり突っついたりして、ようやくぼくは”それ”を取り出すことが出来た。
それは、一通の手紙だった。
<突然にこんな物を贈ってしまって、君は途惑っているのではないかと思う。
だがスペースの都合上、早速だが本題に入らなければならない。
これは、魔法のトランペットだ。
美しい音を奏でると、吹いた者の願いを叶えてくれる。
君がこれを上手に使ってくれる事を願っている。 >
・ ・ ・ ・ ・ ・
あれから、ぼくは大人になった。
よくある物語なら、ぼくは実力のあるトランペッターにでも成っていたかもしれない。
でも現実は、そんなに簡単でも劇的でもない。ぼくには、トランペットは吹けなかった。
ぼくは当たり前に学校を出て、当たり前に仕事をし、当たり前の家庭をつくった。
そこに後悔はない。
でも時々。
ぼくはトランペットを物置から取り出して、それを磨くのが習慣になっている。
それは、ぼくにとって、きっと……。
「パパ? その金色の、なあに?」
三歳になる娘が、つたない言葉でぼくに尋ねる。
「……これはね、楽器なんだよ。吹いてみるかい?」
頷いて、娘はマウスピースに小さな口を当てる。
……それは、とても美しい音だった。
「ふふ、素敵な音だね? ……パパ?」
「……うん、そうだね。とても素敵だ」
ぼくは、何故だか涙が止まらなかった。
知ってるかい?
これは吹いた者の願いを叶える、魔法のトランペットなんだよ。
>>347
ブラスハートたん
最終更新:2010年02月13日 17:31