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作者:◆R4Zu1i5jcs (4スレ目>>567)

 桜舞い散る四月。何の感慨もなく高校二年生に進級してしまった。振り返ってみればこの一年、まただらだらと浪費してしまった。
 新品の制服を着た新入生が少しうらやましかったりするものだ。一年前の自分があんなに初々しかったなんて……少し鬱になるというものだ。
 さて、始業式は特に授業もなく昼前に解散となる。俺は特定の部活に入っている訳ではないので自動的に帰宅することになる。
「お~い、公鋳(くちゅう)。置いて行くなよ~」
 うっとおしく絡んでくるこいつは釜道。中学からの腐れ縁で今年も運悪く同じクラスだ。
「俺はお前を待っているほど暇じゃないんだよ」
「つれないな~。全く」
 まぁ、何だかんだで仲は良いと思う。馬鹿話をしているうちに自宅へ到着。俺の家の方が学校に近いのだ。
「んじゃあ、明日」
「あぁ、じゃあな」
 ドアノブがガチャガチャと音を立てて俺を拒む、仕方がないので鍵を差し込み、中へと入って行く。 どうやら家には誰もいない様だ。
「ふぅ」
 ベッドへ倒れこむ。あぁ、このままじゃ制服がぐしゃぐしゃになる。クリーニングしたばかりだし初日だ。今日くらい労ってやろう。
 学ランを脱ぎ、収納棚の取っ手を引く。
「おぉ、遅かったではないか」
 ぱたん、と見なかったことにして閉める。かけてあった洋服の代わりに人がいた。しかも、女だった気がする。真っ黒な服でくせ毛が立っててまるで……。
「ゴキブリみたいな」
「ゴキブリ言うなぁ!!」
 ばたんと内側から扉が開く。驚いて一歩引いてしまった。
「私の名前は御貴前しのぶ。ゴキブリなどでは一切ない!!」
 ごき……名前まで似ている、けれど黙っておこう。それにしてもよく見ると何気に可愛い。胸もデカい。
「えーと、そんなことより何でこんなとこにいんの? つーかこれ不法侵入だよね。通報していいっすか」
 いくら美少女でも正体不明では警察に預けるしかない。
「なんと。私は招き入れられたというのに」
 ほらっと鍵を見せてくる。某鼠キーボードも付いているから間違えなく母さんのだろう。
「で、君は誰さ 母さんの知り合いか?」
「なにぃ! お前、許婚の顔も知らんのか!?」
 あぁ、許婚。……許婚。……許婚。
「許婚ぇ!! このゴキブリ女が!?」
「ごっ、ゴキブリ女だと……? 二度も侮辱を……」
 やれやれ、今年は騒がしくなりそっ。怒り心頭の彼女のハイキックで俺の意識は混濁していった。

 はて、目を覚ますと知ってる天井。時計はもう七時を指していて、一階の台所からはカレーの匂いがする。
 やけに頭が痛い。上半身を起こし周りを見渡すと数時間前の記憶が蘇る。そいつ――御貴前しのぶは部屋の隅で膝を抱えて座っていた。
「お、起きたか。大丈夫か? つい」
 体育座りは何となくしおらしいかつ滑稽だが、台詞はまるで反省がみられない。
「ついじゃねー! 思いっきし蹴りやがって」
「それはお前が侮辱をするからだろう。私たちは許婚。名前で呼ぶといい」
 ぽんと胸を叩く。豊かな胸がその瞬間に揺れていたのを俺は見逃さない。
 正直、押しかけられて迷惑極まりないが、実はラッキーなんじゃないんだろうか。こんな可愛い娘と結婚出来るらしいのだから。
 しかし、ここは簡単に籠絡される訳にはいかない。せめてもの抵抗するのだ。ここまでストレートだとなんとなく悔しい。全く謎めいたプライドだ。これがなければ男、いや漢はもう少し器用に生きられるに違いない。
「お、お前なんてG子で十分だ」
 さっと枕を盾に報復に備えるが、G子からは特にリアクションはない。
「なんだそれは。私はしのぶだ。そんな和洋折衷な名前ではない」
「いや……愛称だ。愛称」
 怒リアクションがなくなんだか拍子抜けしてしまった。いやMではない。断じて。
「そんなことより飯だ。母さんからお前の話も聞きたい」
 そんな訳で俺とG子は公鋳家の食卓へ向かった。

「え? 許婚だけど」
 カレーを頬張りながらマイマザーが答える。軽いなオイ。
「だから唐突すぎだろ! 何も知らされてないって!」
「お前、家族内でハブられてるのか」
「えー、彩くんハブられてんのー?」
 G子の茶茶に、母さんまで乗ってくる。こいつらなんて埒が明かないんだ。
「とにかく! 納得する説明をして下さい。おかしいでしょう」
 ばんと机を叩く。G子と母さんは黙々とカレーを食べている。カオスだ。
「辞退するのか?」
 不意に後ろから声。振り返ると仕事帰りの親父がカレーを片手に立っている。この男は忍者か。
「こんな可愛い娘もったいないぞ。ゆくゆくは×××とか×××とかし放題だ。俺の顔を立てると思って、な?」
 女性陣に聞こえぬよう耳打ち。やはりこの親父はどうしようもなく漢だ。そんなこと言われたら断れる訳がないじゃないか。

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最終更新:2010年02月13日 17:40