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無限桃花の愉快な冒険5」を以下のとおり復元します。
猫が歩く。それを追う桃花。 
特に追う理由があるわけではない。 
ただなんとなく、ここまで一緒だったのだからどうせだから一緒にいたいだけだ。 
旅は道連れ。目指すところはあれど行き方がわからないのならば猫に任せてもいいだろう。 
そんな風に考え、時には大通りを、時には人が歩くのは難しい細道をただ歩いた。 
気付けば周りに人が多い。人の中を何の支障もなく歩く猫を人波に負けじと着いていく桃花。 
やがてその猫はとある駅前で止まった。桃花がそれに追いつき、猫が見ているほうを向く。 
『聖跡桜ヶ丘駅』。看板にはそう書かれている。だが猫の目的地はここではない。 
桃花が視線を猫に戻すと既に歩き始めていた。慌てて追いかける。 
再び道なき道を歩く。入り組んだ住宅街の道をくねくね歩いていると小さなロータリーに出た。 
先ほどまでの人ごみはない。景色を見るとどうやら小高い丘の上らしい。 
猫はそのまま歩き、一軒の店の前で止まった。置いたあった椅子に飛び乗る。 
「なんだ、ここがお前の家なのか」 
返事の代わりに大きなあくびをして丸くなる。どうやらここが猫の終着駅らしい。 
店は開いていない。中は暗く、ぱっと見では何の店かもわからない。 
ここにいても仕方ないので当てもなく歩き出そうとすると少女が近くにいることに気付いた。 
猫を見ていた少女の視線が桃花に向く。桃花よりも少々幼い彼女が桃花に質問する。 
「あの、この店に何か用事ですか?」 
「いや、違う。この猫に着いてきたらここに着いただけだ」 
「あなたもですか!」 
少女が嬉しそうに声を上げる。一方の桃花はなぜこんなに喜ばれるのかはわからないと言った様子。 
「ムーンは客引きが上手だね」 
少女が猫を撫でる。猫は眠いのか特に反応しない。 
桃花は少女が本を抱いていることに気付く。もしかしたらと思い、今度は桃花が質問する。 
「その本は図書館で借りたものか?」 
「そうですよ」 
「もしよければその図書館がどの辺にあるか教えてほしいのだが」 
「いいですよ、えっとですね……」 
そこの坂道を道なりに下っていけば見えてくる。 
少女の説明を聞いた桃花は彼女の礼を言い、立ち去ろうとした。 
「あ、待ってください」 
「何か?」 
「ムーンがせっかく連れてきたお客様だもん。こっちにどうぞ。いいものが見れますよ」 
特に急いでいるわけでもないし、何よりもいいものとは何か気になったので着いていくことにした。 
彼女が店の脇のドアを開け、手招きする。 
崖に出っ張るように作られた店らしく、眼の前にはかなり急な階段とそして――。 
「これは……」 
町があった。 
階段を降りて、手すりに手をかけて、ゆっくりと見回す。 
そこからは町が一望出来た。町にあるひとつひとつの家々、子どもたちの通う学校、ビル、駅、図書館。 
普段はそういったものは独立したように建っている。だがそこからはその全てのものがある一つの町を形成していた。 
「いい景色だ」 
「私、ここが好きなんです。こんなに綺麗な景色があるしそれに――」 
少女が笑みを浮かべている。その眼は町でもその先の山でもなくさらに向こう側の何かを見つめていた。 
そこには歴史が、記憶が、思い出があるのだろう。桃花はそう思うと同時に寂しくなった。何せ自分にはないのだから。 
でもいつかは自分も。こうやって何か過去のことを思うときが来る。桃花はそう願った。 
だが彼女は気付いていない。それが既に形成され始めていることに。 
あの学園都市で、雪の森で、駅前で、港町で、この場所で。そしてあの男と話した暗い場所で。 
桃花の記憶は同年齢のものより短い。だけど確かに桃花は覚えているのだ。今までの世界を。 
「きみの言っていた図書館とはあれかな」 
桃花が坂の途中にある大きな建物を指す。少女が頷く。 
「そうか。ありがとう。それじゃあきみにも面白いものを見せてあげよう」 
そういうと階段を上り始める。少女も階段を登ろうとするが、桃花が待っているようにジェスチャーで伝える。 
一番上まで登り、再び町を一望する。少女が期待と心配の入り混じる眼で桃花を見つめる。 
一つ、息を吐く。同時に一気に階段を下る。階段で勢いをつけるのは難しいがないよりかましといったものだ。 
階段が終る。と、同時に跳躍する。桃花の体は驚く彼女の横を通り、そして手すりの先へと。 
「いっけえええええええええ!!」 
桃花の体が空を跳ぶ。そしてそのまま町に吸い込まれるように消えていった。 


段々とおかしくなってきたけど気にしない気にしない。

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