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F-1-020 - (2010/07/31 (土) 11:28:11) のソース

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*ファンタジーと言えば魔法だろう

20 : ◆91wbDksrrE :2008/12/11(木) 13:25:44 ID:4NaP2bH7

ファンタジーと言えば魔法だろうという事で、 
一つ考えてみました。投下します。 


21 : ◆91wbDksrrE :2008/12/11(木) 13:26:23 ID:4NaP2bH7

 ――高度に発達した科学は、魔法と区別がつかない―― 
 こんな言葉を残したのは誰だったか。言葉は知っていても、どういった 
人間がその言葉を口にしたのかはよく知らない。世の中には、そういった 
言葉が沢山あると、俺は常々思っている。まあ、俺が中途半端に無知な 
だけなのかもしれなくて、実際は皆、言葉と発言者はセットで覚えている 
ものなのかもしれないが。 
 まあ、そんなのはどっちでもいい事だ。問題になるのは、言葉を口にし 
た人間ではなく、その言葉の内容なのだから。 
 かくして、現代という時代の中において、人は魔法に囲まれて生活して 
いるに等しい状況にある。いや、魔法に囲まれて、という言い方は正しく 
無いだろう。より正確に言えば―― 
「高度に発達した科学は、魔法と区別がつかない、か」 
 ――魔法を超える力に囲まれて、だ。 
「区別がつかないどころじゃないよな」 
 自嘲気味の笑みを浮かべながら、俺は指先に念を込めた。 
 ぽう、と、その指先に灯りが、小さく揺らぐ炎が点る。 
 陽が沈んだ、薄暗闇に包まれた街の中でも、その光は余りに小さく、儚い。 
「高度に発達した科学は、魔法を超える……正しくは、こうだ」 
 その灯火は、小さく、余りにも小さく、風が吹けばすぐに消えてしまい 
そうで……だけれども、それを灯す為にさえ、体力が少しずつ削られていく。 
 この程度なら、すぐに疲労困憊になって肩で息をする、なんて羽目に 
は陥らずに済むが、それでも多少なりとも疲れる事に変わりは無い。 
 マッチやライターがあれば、疲労を感じる事なく、多少の風では揺らぐ 
事の無い炎が灯せると言うのに。 
 魔法とは、斯様な力だ。疲れるし、メンドくさいし、効率が悪い。科学に 
よって生み出される力が、どうしてここまで発達してきたのか。どうして 
魔法は発達せず、置いていかれ、過去の遺物とし、幻想の世界の中で 
しか語られなくなったのか。答えは如実に示されていると言える。 
 だが、それでも。 
「……面倒だけどなぁ」 
 やらなくてはならないことは、ある。魔法の力にしかできない事は。 
 例えば、魔法の力によってしか撃退できない“敵”が現れた時。 
 ……とんでもなく都合のいい話だが、そういった事態は、実際にあるのだ。 
だからこそ、魔法は廃れきってしまわず、現代の、この科学万能の時代に 
生き残っている。 
 そしてその“敵”は、今、この瞬間にも存在しているのだ――! 


「なぁにをやってんだにゃぁ、おにゃしは」 
 知らず、どこか遠くへと飛んでいた俺の視線が、横合いから聞こえた間の 
抜けた声によって引き戻される。 
「リリか。いや、まあ、なに、現状の再確認って奴をだな……」 
 声は俺の肩から……肩にちょこんと鎮座した、小さな黒猫から聞こえた。 
 使い魔。式神。使役動物……こいつはまあ、そんなようなものだ。 
 リリという名前からわかる通り、雌猫のはずなんだが……慎みとかそうい 
ったものが一切無い。本当にメスなのか、こいつは? 
「そんなもん確認してる暇があったら、さっさと行くにゃ」 
「出たのか」 
「うにゃ」 
 頷くリリ。 
 そう、“敵”は、今この瞬間にも存在している。 
 そして、“敵”が存在するからには、それを倒す必要がある。 
 そして、倒す為には――戦わなければならない。 
「三丁目の交差点に、澱みが生じてるにゃ。生まれ出たばかりにゃから、 
 さっさと行けばさっさと倒せるにゃ」 
「……まったく、人使いの粗い猫だな」 
 俺は、リリの首根っこを引っつかんで、肩口から引き剥がす。 
「にゃ……! おにゃしは猫使いが粗いにゃっ!」 
「黙ってろ。翔ぶぞ!」 
 全身を包み込むようなイメージ。 
 軽い、羽毛が空を舞うようなイメージ。 
 空を駆ける……翔けるイメージ! 
 意識が一本の針のように研ぎ澄まされていく。 
 黄金の光放つ一本の針が、空に輝きの道を描く。 
「……っ!」 
 身体から徐々に力が抜けていく感覚は、いつまでたっても慣れない。 
 ましてや、先ほどの灯火とは、魔法の規模が違う。疲労のレベルは段違いだ。 
 だが、慣れずとも、レベルが違おうとも、意志の力でそれを無理やり抑えつけ 
る事はできる。精神で肉体を御する事が可能なだけの精神力――それが、 
魔法使いとして必要な、唯一にして最大の資格。 
「いくぞ!」 
 そして、俺は飛んだ。脳裏に描いた黄金の軌跡に沿って。 
「さっさと倒して、家でコタツだ!」 
「文明の利器バンザイにゃん!」 
 高崎祐太、16歳。そんなこんなで、まあ……魔法少年、やってます。 


ここまで投下です。 

※続きは、[[1-315>F-1-315]]

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