それは、まだ暑い秋の日のことだった。
いつものように俺は長く辛いハイキングコースを歩き、山の頂上にある学校を目指し歩いていた。
教室に入るといつもと変わらず俺の後ろの席で涼宮ハルヒは雲の観察をしていた。
「あんた今度の土曜日あいてるわよね」
なんだいきなり。
「ちょっと付き合ってほしいのよ」
「何にだ?」
「そんな事どうでもいいじゃない、とにかく今度の土曜日いつもの所で」俺が予定を言う前に話しは終わった、まあいいさ、どうせ何もすることもなかったし。
しかし、それはまだ土曜日を知らなかったから、のんきな事がいえたのだ。まあ、たいした事でもないのだが…
六時間目の睡魔との闘いを見事勝ち抜いた俺は、部室棟の文芸部室へと行く、もちろん俺は文芸部員ではない、SOS団員である、SOS団を知らないやつは活動内容などは聞くな俺もよく分かっていない、ただ最近は朝比奈さんの入れてくれたお茶を飲みながら古泉とボードゲームをする日が続いている、平和って素晴らしい。
ドアをノックすると中から、
「はあーい」
と声がし、ドアが開く。
「あっキョン君、こんにちは」
こんにちは朝比奈さん。
「今お茶を入れますね」
俺は長机にかばんを置きながら窓のほうを見た、うん、いつもの位置でいつものように本を読んでいる長門がいる。
しかし、いつもと違う事がある、それは長門が読んでいるのはいつものようなハードカバーのSF物ではなく、なんと写真集であった。
「驚いたでしょう、僕も来たときは驚きましたよ」
古泉か、俺に話しかけるぐらいなら、もう少し将棋ができるようになってからにしてくれ。
「いえ、将棋は難しいですね、それだけやりがいがありますよ」
と人畜無害なスマイルを振りまき俺に言う、すまんが古泉、お前が相手だと俺には簡単過ぎるのだが……。
そうこうしている間にハルヒがやってきた、そして
「突然だけど今度の日曜日、SOS団の野外活動として写真をとりに行くことにしました、みくるちゃんは暇よね」
「はえ?あ、はい」
「古泉君はなんか予定ある?」
「いえ、その日はちょうど涼宮さんを待っていたかのように空いているのです」
「有希はないよね、予定」
「ない」
「じゃあ決まり、十時にいつもの場所でね、持ち物は特にないわ、それじゃあ私用事がるから」
まて、俺の予定も聞いていけ、それにカメラはどうするんだ。
「あんたの予定なんて私にすれば無いようなものよ、カメラは今から調達しに行くのよ」
何処へだ、カメラ屋を襲うのか?それとも写真部か?
「襲うだなんて、私は一度もやったことはないわ」
お前の頭の中では、コンピ研の一件はなかったことになっているのか?
「もう、今は忙しいのよ、だからまた今度気が向いたら聞いてあげるわ、じゃあね、あ、キョンは土曜日のこと忘れないでね」
できればずっと忘れていたっかったのに、それにしても写真ねえ、深い意味は無いのだろうけど、なぜ写真なのだろうな。
で、次の日
SOS団の待ち合わせ場所としてすっかり馴れ親しんだ駅の広場でいつものようにしかめっ面で突っ立っているハルヒを眺めながら、恒例のごとくまた俺のおごりか、などと考えつつ歩み寄ると、
「今日は二人だけだし、もう行く所も決まってるから別にいいわ」
などとあっさりかわされ、電車に揺られて数十分、目的地に着いたのか俺の袖を引っ張り電車を降りる、自主的に降りるからせめて袖を引っ張るのはやめろ、服が伸びて母親に怒られるのは俺だ、何より今、他の人の視線が痛い。
「ここよ」
「なんだ」
「カメラ屋よ」
それ位認識できる、なぜここに連れて来られたのかを問いたい、
「明日使うカメラを取りに来たのよ」
「カメラは昨日の時点で調達したんじゃないのか」
まあ、いいさこんなシュチエーションで答えるハルヒじゃない、現に俺の話をことごとく無視し、一人店の中へ入っていく、仕方が無いので俺もハルヒの後に続き店の中へと入っていく。
ところで、カメラ屋とはいかなるものか分かるだろうか、電化製品なども売っている大型店ではなく、いわゆる、町の写真さんだ。
「おじさん、昨日頼んどいたやつなんだけど、ある?」
「おお、ハルヒちゃんか、実はさっき届いたばかりなんだ、そこのダンボールの中に入ってあるからもってお行き」
「ありがとう、ほらキョンそのダンボール持って」
なるほど、やはり俺は荷物持ちか
「当たり前じゃない、でないとあんたを連れてきた意味が無いじゃない」俺はお前の家来になった覚えは無いんだがな。
帰りの電車の中、何故あそこでカメラを調達したか聞いてみると、
「昔から写真撮るときはいつもあそこなのよ、それだけよ」
とハルヒなりにすんなり返ってきた。
それにしてもなかなか年季の入った店だったな。
最終更新:2007年04月16日 01:23