Prof.サム 目からウロコの基礎マーケティング①

第1回

「マーケティングの思い込み」


「マーケティング」と言う言葉は毎日いろいろなところで使われていて、「マーケティング」という言葉に触れない日はないくらい馴染みのある言葉かも知れません。でも、一番誤解されている言葉なのかも知れません。典型的な誤解を二つほど考えてみましょう。

1. 誤解の1
「マーケティングは金儲けの手段でしょう。」

マーケティングの目的とは一体何なのでしょうか。コトラーは「マーケティングとは人間や社会のニーズを見極めてそれに答えることである。」と定義しています。経済学でもマーケティングでも人のもっているニーズは無限であると考えています。検索エンジンはグーグルが世界を席捲しましたが、ひょっとするともっと凄い検索エンジンが来年でてくるかも知れません。人間は常にもっとよいモノやサービスを求め続けると考えるところにマーケティングの面白さがあります。

2. 誤解の2
「うちの商品はよいのだがマーケティングが弱くて・・・。」

「自社の商品は他社に負けない素晴らしい商品なのだが、どうも売るのが下手だ。」「だからマーケティングが弱いと考えている。」ということです。でも、本当にそうなのでしょうか。
本当に優れた商品だと、広告も営業も何もしないであっと言う間に世界に浸透していくのではないでしょうか。グーグルがグーグルアースという世界地図のソフトを発表しました。私の昔住んでいた、ニュージーランドのオークランドの家、イギリスのロンドンの家、アメリカのグリニッジの家、をパソコン上でみることができるのです。正直このソフトには圧倒されました。しかも、無料なのです。他社にはない優れた商品やサービスは恐らくマーケティングの力を借りなくても広がるのではないでしょうか。大多数の商品は十分な差異化がなく似たり寄ったりの場合が多いのです。

マーケティングは大体今から100年前くらいに誕生した歴史の浅い学問です。しかも、私たちの日々の生活と密着した学問です。私たちに非常に近いということはそれだけマーケティングは大切な学問であるといえますが、同時にその近さ故に多くの誤解を生んでいるとも考えられます。

マーケティングの元となっている言葉はマーケット(market=市場)です。「市場」は恐らく太古の昔から人が共同体を営む中で必要なものを入手するために自然に発生した人類の知恵の一つだと思います。海に魚釣りに行って鯛を二匹釣ってきた人が、その一匹を山で栗を拾ってきた人と交換することは、両者の幸せを高めるために最も合理的な行為だったのです。

経済学でもマーケティングでもこの市場を中心に考えて行きます。だれか特別の権利を持っている人が「東京都民は、今日はパン一人一個と卵焼き一個を朝食に食べればよい。」と決めて生産者と販売者に指示しているわけではありません。市場というメカニズムを利用して自然に多くの人の満足度が最大になるようにしているのです。勿論市場は完璧ではありませんが、かと言って、王様のような人が勝手に「私たちが朝食に何をどれくらいの量食べればよいか」を決めてもそれで私たち全員が幸せになるわけでもないのです。
2008/07/25

杉山 愼策 Sugiyama Shinsaku
特定非営利活動法人スプリングウォーター理事
立命館大学経営管理研究科教授

岡山県出身。岡山大学法文学部卒業後、ロータリー財団奨学生として西ワシントン州立大学大学院経済学研究科に留学。 1973年資生堂に入社、資生堂UK社長、本社国際広報課長を歴任。1994年から日本リーバ(現ユニリバージャパン)でマーケティングを担当(理事)、マテルジャパン代表取締役社長を経て、2001年日本ロレアル取締役副社長。この間、ブランド・マーケティングについて、ハーバード、ノースウェスタン大学等のMBAコースに招かれて講演。2003年国立大学法人東京水産大学(現東京海洋大学)客員教授。2006年立命館大学経営管理研究科教授。

1994年『愛しのイギリス』(日本経済新聞社)を上梓。「英国ロイヤルソサイエティーオブアーツ(RSA)」フェロー。AMA、JMA会員。

スプリングウォーターではTRIGGER開催支援や社会人のためのマーケゼミ講師などスプリングウォーターを共に創り上げている。2006年NPO法人化に伴い理事に就任。



















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最終更新:2008年08月12日 10:18
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