始祖の破壊神 ◆oShO2fvib.




「とにかく、仲間を探さなきゃな……協力してくれる奴がいればいいんだが……」
RX-78-2ガンダムを街中で走らせながら、武蔵はそう独りごちた。
何故街中にいるかというと、ここには外を警戒して、ここに隠れている参加者がいるかもしれないからだ。
そんな人たちを集め、このゲームでどれだけ被害者を出すか分からないダイを倒す。
確かに、はっきりこのゲームをどうにかする方法が見つからないが、それはおいおい皆で集まって考えれば、見つかるかもしれない。
三つの力が一つになれば、というものだ。だから、今やらねばならないことは何か?
このゲームの被害者を減らすため、危険な連中を倒して、隠れてない泣いているような人たちを救うことだ。
「こんなとき、リョウやハヤトがいてくれればなぁ……」
あの2人がいれば、どれだけ力強いことか。
「と、そんなことを言ってる場合じゃないな。おーい!誰かいないのかー!?」
外部スピーカーをONにして、呼びかけてみるが、答えはなく、ただ異常なほどの静けさが際立つばかり。
「本当に、幽霊都市って感じだな……」
やれやれ、とガンダムの背をビルへと凭れさせる。
「おおっ!?」
ビルに食い込むように倒れだしたのが分かって、慌ててガンダムをまた起こした。カメラをそちらに向け、今崩れたところを見れば……
「なんだこりゃ?」
ボロボロに、ビルの構造がなっている。ガンダムの指で試しに触ってみると、飴細工か、泥の固まりか何かなのかいとも簡単に崩れていく。
この世界のビルがすべてこうなのか?それともここはなにかおかしいのか?
どちらにしろ、こんなところにいるのはあまりよくないだろう。
移動のため、足を一歩踏み出す。すると、足が勢いよく地面に深く突き刺さった。
ここにきて、疑念が確信へ変わる。さっきまで、いくらなんでもここまで地面は脆くなかった。
なのに、崩れたということは、この数分でずいぶんと脆くなっている。つまり、最初からこうなっていたのではない。
おそらく誰かが任意的にこの状況を引き起こしている――!
ヒュン!
風を切る音がして、咄嗟にガンダムを空へと上げて足を引き抜いた。
後ろで何かが崩れる重低音がする。しかし、振り向く余裕などない。ズブズブとめり込む地面に同時にまたジャンプ。
そのたびに、後ろから何かか崩れる音がする。
「敵がいるのか!?でも、いったいどこだ!?」
5度目の着地のとき、あえて道路ではなくビルの上に降りて周囲を見回す。すぐに崩れる足元。
しかし、ギリギリまで粘り、探しつづければ……
「いた!あいつか!?」
今いるビルから約200m前後の距離に、棒立ちで悠然と空に浮く機体を見つけた。
しかし、崩れる足場から薄い緑色をしたマガタマが3つ、こちらに向かって来て――
大きな音を立てて、ガンダムは瓦礫と粉塵へと飲み込まれていった。

「終わったの……かな?」
空から様子を眺めていたテニアは、シックススレイヴを戻しながらコクピットで呟いた。
これから、自分は人を殺すことになる。不意をつくにしても、正面からにしても、この機体を使いこなすことが必要となる。
そのため、見かけた相手に攻撃を仕掛けてみたのだ。
結果は、予想外、いや予想以上のものだった。これほどまでの威力をマシンセルが発揮するとは思わなかったし、
空間さえ把握できれば自由自在に動かせるシックススレイヴもこれほどとは思わなかった。
自分には、カティアのような精密射撃や、行動予測はできないし、メルアのようにブースターうまくを使って移動力を伸ばしたり攻撃を受け流すことはできない。
自分ができるのは、うまく相手の弱点を狙って打ち込むことと、武器の扱いを的確に使って攻撃力を上げることだ。
そういう意味では、このベルゲルミルは非常に相性がよかった。
マシンセルで足止めして、スックススレイヴが離れた確実にしとめる。防御の必要性などまるでない。攻撃に専念できるのだ。
瓦礫の山にそろりそろりと近づき、キョロキョロと周りを確かめる。
その辺に落ちている、割れた盾を見つけて、試しに持ち上げて、
「うおおおぉぉぉーっ!!」
瓦礫を吹き飛ばし、巨大なハンマーがベルゲルミル胴体に打ち込まれた。
コクピットの後ろに叩きつけられ、息が一瞬できなくなる。
生体自立金属マシンセルでできた胴体が大きく窪む。おそらく、もとの量産型ヒュッケバインなら、死亡していただろう。
後ろによろめくベルゲルミルを逃すことなく、ガンダムが両肩を掴んだ。
「悪いが、この闘いに乗った奴をほっとくわけにはいかねぇ!」
ズブズブと沈む地面をまとめて掻き出すように、脆くなったセメントを巻き込みながらガンダムを中心に竜巻が起こる!
「大!雪!山!おろしぃぃぃっ!!」
次の瞬間には、ベルゲルミルは脆くなったビルの上層に叩きつけられていた。
「か……は……ッ!」
意識が白く点滅する。コクピットがまるで絶叫マシーンのように揺れ、今度はベルゲルミルがビルの瓦礫に押しつぶされる。
(なん……で……?)
シックススレイヴは防げたとしても、あの高さから受身も取れず落ちて、しかも瓦礫に飲まれて無事なはずが……
なのにどうしてああも平然と行動できたのか?
答えは簡単だ。マシンセルは強力すぎた。
あの時、武蔵は3つのマガタマを2つを盾を犠牲にして防ぎ、残り1つはガンダムハンマーで弾いた。
当然、その後は瓦礫に飲まれたのだが……あまりにも溶けてスカスカになりすぎた瓦礫は、まるでクッキーのようにガンダムにぶつかると砕け、
地面に衝撃を与えるだけの高度はなく逆に緩衝材の役割を果たしたのだ。
結果、ガンダムに目立った傷はなく、近寄ってきたベルゲルミルを返り討ちにできた。
「これくらいでくたばる相手じゃないだろ……!」
対して、何故自分が助かったを知っている武蔵は、自分と同じ状況になった相手は自分と同じようになっていると理解し、
右手にジャベリンを、左手にサーベルを構えた。
相手がどうなっているかわからない以上、ヘタに仕掛けるのは不味いと窪んだ地面で瓦礫をにらむ。

その時。

異変が起きた。

「嫌……死にたく……ない」
頭がぼんやりする。はっきりしない意識の中、重く圧し掛かる呪い。
「………死にたくない……」
搭乗者の意識を感じ取り、自立金属が意思を持つように動き始める。どこかで、スイッチが切り替わる音がした。
「!?何だこれ!?」
瓦礫が突然内部から発生した黒い霧に包まれ、バチバチと電気が霧の中に何本も走る。
みるみるうちに瓦礫が黒と濃紫のマーブル模様の液体に変わっていく。粘性が高いのか、中で震えており、そして膨張している――!
霧が液体へと吸い込まれる。そこには、あのロボットの姿はない。
不気味に水泡を浮かべながら膨張を続け、周りのものまで飲み込んで直径50mほどの球体になった。
「なんだか知らないが、こりゃやばそうだぜ……!」
風船を割るような軽い音と共に、禍々しいマーブル模様がはじけ、空に消える。
中にいたのは3機のベルゲルミル。しかもそのうち2機はまったく同じ姿勢をとっている。
手を前に合わせ、背中の輪を体に展開し、輪は高速回転――!
「やべぇ!!」
武蔵もその意味がわかったのだろう。ガンダム後ろに跳ねる。
直後。
12のマガタマがガンダムに殺到する!
まずは正面から2つのマガタマが複雑な軌道で迫る。
「くっ!!」
それをサーベルで強引に切り払う。すると、砕いたマガタマから中からさっきの奇妙な液体が現れ、ガンダムへと降り注いだ。
焼けるような音と煙と共に、触れた部分が白から淀んだ黒へと変わる。
しかし、そんなことを気にしている間ではない。次々迫り来るマガタマを両手の武器で打ち落とさねばならない。
右から迫る4つのマガタマを薙ぐようにやり過ごし、後ろから来るマガタマ2つをバルカンで打ち落とす。
左と上から同時に迫る2個ずつがバックパックと両肩を狙うのをジャベリンで砕く。
一つ落とすたびに、中から溢れる液体がガンダムの装甲を汚していく。
「しまったっ!?」
ガンダムの両腕を掻き抱くように2機のベルゲルミルが体を寄せる。
マガタマを落とすことに集中していたため、そちらへの意識が緩慢になっていたのだ。
左のベルゲルミルが、右手を右肩に乗せ、右のベルゲルミルが、左手を左肩に乗せた。
ゴポリ
ベルゲルミルの色が濃紫に変わると、形を失い液体へと戻り、ガンダムの各関節にマシンセルが流れ込んでいく。
「くそっ、いったいどうしちまったんだ!!」
コクピット一杯に警告メッセージが表示され、かしずくように膝を突いた。
その周りを回る6つの影。死神が動こうともがくガンダムの周りを旋回する。
「頼む!動いてくれ!お願いだ!」
マシンセルに侵されたガンダムは、純白の白を失い、黒い石ころのように停止したまま。くるくるくるくるくるくると……
徐々に回る円が狭くなる。だが、ガンダムに動く方法などない。
「頼む!動いてくれェェェェェ!!」
死神がガンダムへと滑り込む。慟哭があたりに響き渡る。
同時に、魂まで焼き尽くす炎が龍の形を取り、内部から全てを破壊した。



【フェステニア・ミューズ 搭乗機体:ベルゲルミル(ウルズ機)(バンプレストオリジナル)
 パイロット状況:ゲイムシステムON(死へ恐怖)
 機体状況:腹部に陥没  ガンダムハンマー所持 マシンセル暴走気味
 現在位置:D-8
 第1行動方針:参加者の殺害
 最終行動方針:優勝】

【巴武蔵 搭乗機体:RX-78ガンダム(機動戦士ガンダム)
パイロット状態:死亡
機体状況:中から焼かれており起動不可】

【初日 14:30】




本編51話 核ミサイルより強い武器


最終更新:2008年06月29日 19:15