アットウィキロゴ
 

二回戦第一試合その1


新潟は魔境だった!!
上空を飛行する一台の軍用ヘリ。中にいるのは『山本勘助』と『監督』だ。

「ちょっと『監督』…! 武闘会さあ、
武闘会の第一回戦さあ…どういうことなの。これ?」
「言ったろう。君は"つなぎ"だったのだ。我々『甲斐国』は武闘会をきっかけに『山本勘助』が実在する新たなる歴史を作る。」

怒り心頭なのは『山本勘助』だ。彼の怒りももっともである。なぜなら、第一回戦、なんと出場していたのは彼本人ではなく、全然見たこともないおっさんだったのだ。しかも負けやがった。
『山本勘助』は歴史上の人物、山本勘助の役を演じる偽物である。以上のことからこうとしか考えられない。『山本勘助』はクビにされていたのだ。

「説明しろ『監督』!!こんなこと聞いてねーぞバカヤロー!」
「黙れ小僧!所詮我々の過ごした甘い時間など偽りに過ぎなかったという事だ…
次の対戦相手は冷蔵庫だ!私はこのヘリを脱出させてもらう!アデュー!」

言うが早いか、『監督』はヘリ上空から飛び降りた!彼の両翼からジェットエンジンが展開し、彼方へと飛翔してゆく…

「逃げるな『監督』!俺たちの愛は偽物だったのか!
『監督』…『監督』ゥゥゥーッ!?気をつけろヲヲヲヲーッ!!?
"何か"ッ!近づいて来るぞーーーッ!」

急速にヘリに近づく飛翔物体!!
それは巨大なハンバーガーだ!

「駄目だッ!もう遅い!うああああ」

新潟の猛獣、ハンバーガーは『監督』を捕食!五体がバラバラになり絶命!そのままの勢いでヘリコプターすらも捕食した!大自然の脅威!

「北海道サイコー!」

ヘリは爆発!全員死んだ!
全員死ね!

☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆

足元に白砂、天蓋は青海。
中心には九メートル立方の金網で覆われたリング。
即ち、太平洋に沈むプロレス格闘リング。
ここは徳川秘密海底格闘技場。

一般に秘匿された格闘技場。だが今宵、ここは一層秘された戦いの場として選ばれた。

不意に周囲を包む黒い暗幕。中から現れたのは二人の男だ。

一人は片目片脚の男。彼はマジで何者だろうか。いかにも武士然とした佇まいだが、色々と怪しい。良いとこ、時代劇の時代考証レベルの知識に基づく"侍"と言ったところか。それは「時間がないので急拵えでお侍さんの格好させました」と言わんばかりのインチキ侍だ。
だが、その顔面に浮かぶ死相は本物である。

「お主が今宵の対戦相手でござるか…我が兵法も存分に発揮出来よう…」

まさかのござる口調。そして兵法に対する絶対の自信はどこから来るんだ。お前はマジでなんなんだ。

そしてもう一方の男、これはもう他に形容の無いほどに冷蔵庫だった。
なんの変哲もない、冷蔵庫である。

「ふふ…黙って居らずとも拙者には分かるぞよ…兵法『明鏡止水』。先の戦いで放射能汚染されたことでむしろ感覚が研ぎ澄まされていてな…!
わかるのでござるよ。お主が只者ではない、ということが!」

ああ、山本勘助の耳から生えたのは触手!?
何本もの細長い触手が蠢く。
この触手、見た目は悍ましいが力も強い。何せ魔人の操る触手だ。ゴリラ以上の筋力。一本一本が魔人の力で動く。それこそがこの触手の最大の利点である。

だが依然、冷蔵庫は一向に押し黙ったままである。
何かがおかしい。何か分からないが違和感を感じる。
冷蔵庫。
それは良い。家庭に一台はあるものだ。ありふれたもの。何もおかしいところはない。
そして、対戦相手。ポータル出現した以上、これは対戦相手なのだ。
つまり山本勘助は、冷蔵庫と戦わねばならない。

「はっ…!?もしや!!これは兵法『獅子身中』か!」

山本勘助は瞬時に悟る!山本勘助は日常からノートにオリジナルの兵法を四字熟語で認めており、その八割を暗記しているのでいつでも思い出せるというわけだ!
これぞ軍師の兵法!

そしてこれは心理戦だ!
敵は冷蔵庫、それは良い。それは理解できた。軍師特有の勘だ。
問題は、この冷蔵庫が動かないことによって精神的にプレッシャーをかけていることだ。

「馬鹿め!普通の冷蔵庫のふりをしおって、この冷蔵庫め!貴様が只者ではないことは承知済み!我が最強兵法『山本勘助』でお前を死に追いやってしまおう!」

最強兵法『山本勘助』。
端的に言うと、触手によるくすぐり攻撃である。

「そぉ~れ!こちょこちょ こちょこちょ こちょこちょ こちょこちょ こちょこちょ こちょこちょ!!
どお~だ!耐えられまい。耳から生えた何十本ものか細い触手だ!一本一本が的確にお前の柔らかい部分を刺激し、このくすぐり攻撃の前ではどんな睨めっこでも耐えることは不可能!
我慢できず爆笑したところを、その大口に刀を突き立ててくれるわ~!」

山本勘助!お前は一体何者だ!

「…っ、ぶ!
……ふっへぇっハハハハハハハ!ダメダメ止めて笑い死んじゃうアハハハハハハハ!」

ついに耐えきれず正体を現したか!冷蔵庫は徐ろに四肢を生やすと立ち上がった!

「どうだ!我が最強兵法『山本勘助』のくすぐり攻撃は!最強兵法『山本勘助』の前には『瞞天過海』の探し物攻撃など児戯に等しい!理解したか!」
「…ああ!君が油断ならない強敵だということは理解できたよ!
騙すような真似をして悪かった!
私は冷蔵庫!本当は殺しあうような真似はしたくなくてね!普通の冷蔵庫のふりをして君の出方を伺っていたんだ。」

なんというクリーンファイト精神だ!これには軍師山本勘助も平伏せざるを得ない!

「本当は殺しあうような真似はしたくなくて普通の冷蔵庫のふりをしていただってェェェ!なんという良くできた冷蔵庫だ!拙者はすごく感動した!どうか拙者と友情を結んで欲しいでござる!」
「ああ!是非とも!」

ここに二人の間に固い友情が結ばれた。
この時、一人試合をさぼった神田蜜柑とかいう女がポータルで間違ってサハラ砂漠に送られていた事実がタケダネット上で判明したらしいが、この試合とは特に関係がないので割愛させていただく。

さて、熱い友情で結ばれた山本勘助と冷蔵庫はどうしたのか。彼らは殺し合いなどという野蛮な行為で決着したいとは思わず、プロレスで戦おうという結論に達したのだ。これは第一回戦で神田蜜柑とかいう女が放射性物質を用いた残虐ファイトを展開し、悪虐の限りを尽くし山本勘助を一度死に至らしめたという反省からくるプロレスファイトだった。本当に神田蜜柑とかいう放射能バラマキ女である。いくら殺しても良いからといって、人間を放射能で殺すなどという発想がサイコパス以外に実行できるだろうか。問答無用で人間を放射能殺するという点で臨界に達した原発よりタチが悪いとおもう山本勘助であった。

「グロロー!ではこの白砂のリング上で我らの友情ファイトを繰り広げようとしようぞ~!」

うなる山本勘助!

「レフレフレフ~!では僕から行かせてもらうとしましょう~!」

吠える冷蔵庫!
今、徳川秘密海底格闘技場で魔人レスリングの戦いが幕を開けた!
戦いの幕が開けると同時に、冷蔵庫は上部の蓋を開いた。吹き出す吹雪!一瞬にして床の白砂が凍りつき、氷面と化したではないかー!

「おわぁー!?なんじゃこりゃー!床が凍りつきよったぞー!」

冷凍系の能力!山本勘助は魔人プロレスラー特有の素っ頓狂な声を上げてリアクション!
だが冷蔵庫は攻撃を止めない!
冷蔵庫は仰向けになると、凍りついた床面を滑った!そのまま山本勘助にタックル!これぞ冷蔵庫の特性を利用した、冷蔵庫ならではの魔人プロレスだ!

「グロロー!」
「レフレフレフ~!これぞ冷蔵庫無限滑落(インフィニット・レフリジエイト・ボンバー)でございますよ~!僕も今では正義魔人の端くれですが、かつては完璧冷蔵庫(パーフェクト・レフリジエイター)として恐れられし存在…
舐めてかかっては痛い目に遭いますよぉ~!レフレフレフ~!」
「グロロー!」

なんという圧倒的な能力バトル!なんという熱い戦いだ!だが、山本勘助は堪える!冷蔵庫を受け止めて見せた!あなや!?

「グロロー!拙者とて…魔人軍師!
うおー!全触手を活性化させ筋力を増強させれば…グロロー!
トゥエイリャァーっ!この程度の…重さ何十トンもの冷蔵庫などグロロー!」
「レフ~!?」

も…持ち上げたぁー!?山本勘助、触手の力のみで冷蔵庫を持ち上げたァーっ!なんという魔人筋力!なんという能力バトル!これぞ魔人プロレス!

「グロロー!最強兵法『ビッグバン・バスター』!」
「レフレフレフ~!」

これはっ!山本勘助必勝の兵法『ビッグバン・バスター』!空高く飛び上がると同時に、空中で触手による関節極めを行い、全身を固めたまま地面まで必殺の刀による突きをお見舞いする殺人技だ!
だが、今回の山本勘助は触手で冷蔵庫の体を動けなくしたものの、刀は握っていない!今回は殺人ファイトではないからだ!男の友情はあくまで拳による決着を望むのだ!

「レフレフレフ~!僕は言いましたよ…甘く見てはいけないと~!あなたの触手はとうに見破っております!
忘れましたか!?私のメカ生体は触手ドレインを受け付けないことを!」

触手ドレイン!そう、冷蔵庫は機械の体で出来ているが故、触手によるドレイン攻撃を受け付けない!
触手関節技を極められながら落下中の冷蔵庫に逆転のチャンスあり!冷蔵庫は自らの肉体を激しく揺らし始めた!

「グロロー!そうやって体を激しく動かすことによって触手から逃げおおせられるとでも~!?
それとも他の策略が…グロロー!これはっ!あっ!
熱い!
グロロー!」
「レフレフレフ~!冷蔵庫放熱不良(レフリジエイト・ヒート)!ご存知ですかぁ~?冷蔵庫というのは…冷却口に水分が付着したまま凍ってしまうと充分な冷気が送られずに放熱不良を起こしてしまうんですよ~!このようにね~!」

なんという知略!そのIQ…180の如しと言えよう!冷蔵庫が体を激しく揺らしたのは触手から脱出する為ではない!冷蔵庫内部の水とかを冷却口に付着させ、凍らしめ、以て自らの放熱不良による体温上昇で触手を焼き切る為だったのだ!

「グロロー!これが完璧冷蔵庫(パーフェクト・レフリジエイター)の真骨頂というわけか…見事なり~!触手を焼き切り我が拘束を脱するとは~!グロロー!」
「レフレフレフ~!蓋の拘束が解けたことでこの技が使用できますよ…冷蔵庫無限野菜(インフィニット・ベジタブラー)!」

冷蔵庫下部の蓋が開き、中から得体の知れない出所の野菜が大量に溢れ出す!
その数キャベツ二万!
トマト四万!
レモン十万個分の野菜による物量攻撃だ!

「グロロー!こんな野菜など我が触手で吸い尽くしてくれるわ~!」

だがさしもの山本勘助と言えどこれほどの量の野菜、吸い付くせる訳がない!嗚呼、山本勘助は野菜により圧死してしまう運命なのか?

「レフレフレフ~!ご安心ください!峰打ちですよ!」

峰打ちでした!死ぬ心配はない!

「グロロー!我が知略が今こそ発揮されるべき状況…我が兵法…グロロー!」

その時!山本勘助のとった行動とは!?
なんと山本勘助は耳から新たな触手を数百本生やすと…野菜ではなく、周囲を包む金網を掴んだ!

「レフレフレフ~?そんな金網を掴んだところでどうなると言うのです~?
もはや野菜さん達はこの金網の中を埋め尽くしてしまうのですよ~!」
「グロロー!トゥエイリャァー!グロロー!」
「レフレフレフ~!?」

おおなんと!
触手の万力で金網が破れた!
そして…!上手いこと変形してゆく!触手は器用なのだ!
九メートル立方の金網は今や、触手によって歪められ、冷蔵庫へと逆戻りする野菜噴出口へと変形した!

「レフレフレフ~!
これは!金網が変形して山本勘助さんを避けつつも野菜さん達が私のところへ戻ってくる形状に…!」
「グロロー!兵法にばかり頼っては…結婚出来ないぜ!」

野菜さん達は冷蔵庫下部の冷凍室の中へと戻って行く…!そう…!それはアポロムを倒す時に野菜を無下に焼き尽くしてしまった時とは違う!
優しさに満ちた解答を山本勘助は示してくれた…!山本勘助!
冷蔵庫は製氷室にしまっておいた結婚指輪のことを思い出す。

「あなたまさか…私が雷堂影美さんと結婚さることを知っていて!?」
「グロロー!拙者、お節介な性格。お主が最初に床を凍らせた時…ちらっと結婚指輪が見え申したでござるよ~!結婚おめでとうッ!」

結婚おめでとうッ!
結婚おめでとうッ!
結婚おめでとうッ!

「レフレフレフ~ありがとう…!こんな嬉しいバトルをしたのは初めてだ!山本勘助!」
「グロロー!行くぞ…我が最強兵法をお見舞いしよう…」

金網に巻きついた触手が冷蔵庫へと延びる!冷蔵庫は避けられない!触手に掴まれる!
触手による拘束…だが、それだけではなかった!触手が縮んで行く!
触手が縮んで行く!つまり…冷蔵庫に山本勘助が一直線に向かってくる!

「グロロー!」
「レフレフレフ~!まさか触手ではなくあなた自身が関節技を…?」

関節技!関節技!関節技!
その恐怖が冷蔵庫を襲う!

「グロロー!その通りー!この技は先程の関節技と真逆の体制…つまりラリアット!
『爆砕!インダス・クラッカー』!」

山本勘助の圧倒的な十六文キックが炸裂した!これには冷蔵庫も苦悶の表情!昏倒!
冷蔵庫が倒れる!カウントダウン開始!







カンカンカン!完全勝利!山本勘助の圧倒的な勝利だ!

「レフレフレフ~…まさか僕が負けるとは…!どうやら僕は…正義魔人に転向し…結婚して…弱くなったようですね。」
「グロロー!それは違うでござる!」

激闘の後…二人の表情は柔らかだ。とても先程まで知的な能力バトルを繰り広げていたとは思えない。

「拙者には…天才軍師山本勘助と…心強い味方がもう一人いたのでござるよ。完璧冷蔵庫(パーフェクト・レフリジエイター)と呼ばれた、お主という最も心強い味方が…!」
「まったく…天才軍師な男です、貴方は!」

冷蔵庫に存在しない筈の目から流れる、一筋の涙。
それは、十六文キック攻撃の破損による、液漏れだったのかもしれない…

混濁し、薄れゆく意識の中、冷蔵庫は思う。
本当にここでこの男に出会えて良かったと。
放射能バラマキ女を許せないと。
神田蜜柑死すべしと。
マジで死ねと。

(この男に出会えて…良かった…)

そのころ、神田蜜柑はサハラ砂漠でサソリを食べていたというが関係のない話である。

(今度生まれてくる影美との子供…)

(この男に、名付け親になって貰おうか。)

(名前は…そうだな。)

(ダーマ神殿とかどうだろう…?)

そして意識を失った。
山本勘助、完全勝利。いざ三回戦へ。
最終更新:2016年07月11日 00:05