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フォルテ・カンパネラ

 メイリスと別れたオレは、予想外に長くなりそうな旅路を思い浮かべた。
少し、荷物が軽すぎたかもしれない。
一度ガンディーノに戻るか。そう思い、オレは踵を返した。

 無事に森を抜けたオレは、ガンディーノ王国へと向かった。
 アメジスト大陸の誇るべき王都、ガンディーノ王国はいつものように城下町が行き交う商人や買い手たちでにぎわっていた。
ローブ等を売る者たち、かたや果物や穀物類などを売る者たち。遠い街から人々はガンディーノ王国を目指してやってくるのだ。
ただし、人の出入りの多いこの国は国民に武器や防具を売ることはない。そもそも、国の許可を受けた契約商人しか扱えないからである。
もちろん、城のみでしか出入りすることは許されない。
もし、国民に武具でも売ろうものならとても重い刑罰をかけられるのである。
包丁などの刃物でさえも厳重に取り扱うよう国から命じられているし、商人にとっては耳の痛い話である。
しかし、もう国民が王に反撃する理由などない。そんなことをせずとも、2年前に戦を終えたガンディーノ王国には平和が訪れていた。
陸戦で最強とも言われていたガンディーノ王国は無事に勝利の栄光を掲げたのである。
その後、海上戦では優秀な船の研究家を持ち、最も強いとされたレーガ王国と友好国となり戦は終わりを告げた。
もはや、ガンディーノ王国には向かうところ敵なしという表現が似合う。

 そんな昔話を瞑想しながら、オレは少し微笑んだ。
ダークウィザードの少年。オレがこいつに出会わなければ、ただの殺人兵器になっていたかもしれない。
あいつは、魔導師の魔力ですら凌駕するような魔力を持っていながら自分自身の力に恐れていた。
しかし、オレは何だ。恐れることもなく、はたまた使い放題だったわけだった。
仲間を失ったという事実さえも忘れ――。

 そうだ、オレが人のために何かをしたいと感じたのもきっとあのときだった。
でなければ、カルネの敵討ちの為に水色のローブなど追っていない。
いつからかとんだお人好しだな、オレは。
くくっと喉を鳴らし、笑いをこらえる。
そうだ、きっと。悪魔だって人間とわかり合えるよな?
その証明に、悪魔だと言ったオレのことをカルネは対等に接してくれている。
だからオレからも日頃の恩返しだ。
――絶対、敵は討つ。
カルネが義足になってしまうという事実を知った上でそう胸に誓った。

 オレは、先程から喉が渇いていたことに気がついた。
よし、果物でも買うとするか。
この土地では、土壌の豊かな王都周辺にしか実を結ばないという果物は貴重な特産物だった。
果実は、厳正な土壌管理をした上で手間をかけずして甘くはならない。
その条件を満たすためには、その街事態が裕福であるべきなのだ。
そうでなくとも、果実は高価な品物であるから元は十分取れる筈だ。
ジュースなどでも、皇室御用達のものが多い。それほど高価であるからだ。
騎士ですらもあまり口に入らない産物だ。
オレは、暑い土地に生まれたから大好物なんだけどよ。
そして店先に並ぶ赤い果実を手に取る。少し値は張るが、背に腹は代えられない。
「お姉さん、これ一つ」
オレは近隣の村から来ているという顔見知りの中年女性に声をかけた。
「あらぁ、フォルテ君じゃないか。そんな格好して旅にでも出るのかい?……寂しくなるねぇ。
 そんないい体しといて一つなんかで足りるのかい?今日はサービスだ、これ一袋持っていきな!」
気前がよく、活気のある中年女性は果実を一つといったオレの身を案ずるようにしてその果実があふれるほど入った袋を押しつけた。
その袋の中身は、信じられない程の量の果実で凄く重い。
「……経営、大丈夫なのか?」
身を案じてくれるのはありがたいが、それよりも気になることがあった。
「いいのよぉ、最近暑いからね。ほら綺麗に熟したものばかりだろう。
 まだ家に腐るほどあるんだから、あんたみたいな若い子にいっぱい食べてほしいんだよぉ。
 ……申し訳ないなと思うなら、カルネ君に少しでも持っていきな」
中年女性は片足を失った戦友、カルネのことを知っていたようでオレにそう言った。
「……そう、だな。そうさせてもらうよ。ありがとな」
オレは深くお礼を言ってから中年女性に別れを告げた。
その袋からは、とても甘い匂いがした。
そして中年女性の言う通りカルネのいる城の方角へと向かった。
昨日義足を付けたとの報告があったから、今頃はまたベッドに居るんだろうが。

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最終更新:2011年08月05日 15:59