【サブイネン幕間SS・テレビ番組オモロの時間より】



『対馬堂 穂波さんからの質問』

「サブイネンさんはブログでSSランクの魔人と書いていますが、
それって具体的にどれぐらい凄いんですか?」



「・・・って質問が来たんだけど」
「対馬堂ちゃん?ああ、ツマランナーみたいな格好でライブ来てた子やね」
「多分そう。ファンの為にも質問に答えてやってよ」
「せやけどスズハラさんが勝手に言うとるだけやからな。ワイにはサッパリやわ」
「うーん」

ジャーン

「はっ、このベースの音は!」
「リーダー!」

ジャカジャカジャカ

「番組後半の質問コーナー  サブイネン答えなきゃアカンネン~
自分だけで答えられないなら~ 知ってる人に聞けばイインヤネン~」

ジャーン!

オモロナイトファイブがメイン司会を務める30分番組『オモロの時間』。
番組後半の質問コーナーはいつも大体こんな感じで始まる。
そしていつも通りに画面が切り替えられるとサブイネンがマイクを持って外に立っていた。

「はい、つーわけでワイは今スズハラ東京本社に来ています。
スズハラ社ってのは魔人の研究をして魔人用の商品を作ったり魔人の能力の強さを
計測したりしとる会社なんやって!」

モロチン、スズハラ機関のやっている事業はもっと奥深いものであるのだが、
これは一般向けバラエティ番組。故にここでは『スズハラ社』として社会に提供している
情報のみを紹介するに止まった。
サブイネンが本社(とされているダミー会社)の前に立つと入口から広報担当の人が出て来た。

「お待たせしました。サブイネン様ですね広報担当のヒロサキサキヒロです」
「せやで、何かアンタんとこで勝手にSSランクとか言われとるサブイネンさんやで。
今日はこのランクについて質問しにきたんやけど」
「ええ、番組時間も少ないですし手早く説明しましょう」
「一言多いな君ぃ!」

オモロの時間は深夜の30分バラエティ、ゴールデンタイムへの移行はこれからの視聴率しだいだ。

「えー、わが社は希望崎や魔人警察と提携して中二力テストや魔人事件等のデータを集計し、
知名度の高い魔人達を脅威度でSSからDまでのランクに分類したんですよ」
「ほほう。んで、ワイはそれの一番上のランクって訳やな」
「はい、現在SSランクはサブイネンさんの他に10名前後の魔人が登録されております。
これは『スズハラ社が選ぶ最強魔人ベスト10』と言っても良いでしょう」
「どんなんがおるんよ?」
「情報を漏らしてはいけない魔人がいたりするので全員は紹介できませんが・・・」

広報担当者ヒロサキは両手で大きな紙を広げる。そこには数人の顔と能力が書かれてあった。

「これがランクSSの魔人達か。おお、ワイも書かれとるやんけ」
「はい、テレビの前の皆さんに紹介できるのはここの四人です。順番に紹介していきますね」

ヒロサキは用紙左上の電撃を身に纏った男を指さす。

「一人目、《天魔雷霆》絶轟田爆也。電気を自在に操る魔人で潜伏中のテロリストです」
「うちのカミマクリンと同じ能力やね。あいつはエレキ一刀流の使い手やねん」
「カミマクリンさん等の様に電撃使いの魔人は多数いますが、彼はその最たる存在です。
最大容量と精密性が他の魔人とは桁が違う彼は電磁波を利用して数万の人の心を操り
信者にしていると言われています。また、大気中の電流の微量の変化から数カ月先の気候を読み
農作物関連の投資で巨万の富を得たという記録もあります。彼個人の戦闘力は未知数ですが、
配下の数と資金の話が本当ならそれだけで圧倒的脅威と言えるでしょう」
「一人目からおっそろしいなあ」

ヒロアキは指を右下に動かし、ブタみたいな男を指す。

「二人目、《凝脂万固》白戸ロル。希望崎迷宮地下70階から来た人間とホワイトトロールの混血です」
「ワーオ、インパクトあるぶっさいくなオッサンやなあ。こいつは何使うの?」
「彼は皮脂を毛穴から自在に出す事が出来ます。皮脂をこねて様々な形にした後に硬化させます」
「地下70階から来たモンスターの皮脂を固めた武器かあ、臭そうやけど強そうやないか」
「いえ、こいつは皮脂を自分に塗り付けた後に硬化させ美女に化けてたんですよ。
希望崎学園の伝説の焼きそばパン目当てで女子生徒にとして転入して来たこいつは
あらゆる男子にラッキースケベを行い仲間を増やしていました」
「あの学校の焼きそばパン狙う奴はこんなんばっかりかい!!」
「しかし、販売当日激戦の中で皮脂が剥がれ落ちオッサンの見た目に戻ってしまった彼は
ブタ箱行きになりました。まあ、次の日には脱獄したんですけどね。
警察は変態性に気を取られて地下70階に生息するホワイトハーフトロールの腕力の事を
すっかり忘れていたんんです。そんな訳でコイツも潜伏中です」
「一人目とは違う意味で恐ろしい奴やなあ」

用紙右上、見慣れたスキンヘッドを指さすヒロアキ。

「三人目《神仏交差》佐分山珍念。喧嘩が強い。以上」

右下の四人目へ指を動かそうとするヒロアキの頭をどつくサブイネン。

「ちゃんと説明せんかい!」
「ギャフン!えー失礼しました。サブイネンさんが三人目です。
前の二人と違って犯罪者では無いのでテレビの前の皆さんはご安心下さい。
サブイネンさんの能力は正確な体内時計と先読みで良かったんでしたっけ?」
「おう、後は長年の戦闘経験に聖属性の肉体やな」
「サブイネンさんはこれらの能力を複合して戦う事で相手の攻撃をすり抜けながら
一方的に攻撃を加え続ける事が出来る訳です。格闘においては現環境最強の一角と言えるでしょう」
「ワイは何時でも誰からの挑戦でも待っとるでー」

改めて右下の四人目を指すヒロアキ。今度はどつかれない。

「最後はこの人《偶像伝説》天川宗理。知る人ぞ知る伝説のアイドルです」
「知っとるわこの人。ワイらがやっとるタイバン、アレの元はアイドルなんやで。
オカンや楽器屋のラトン先生と並んでワイの尊敬する人の一人ですわ」
「はい、天川さんはまだアイドルが今の形じゃ無かった時代に伝説となった人です。
現在は指導者として多くの弟子をとっていまsが、高弟達は今もなお天川さんの
最強を信じて疑っていません。武芸もさることながら保有戦力や人間力も強大です」
「伝説のアイドルにして偉大な指導者・・・もし敵になったらワイでもヤバイかもやね」

ヒロアキは紙を元の様に折りたたむと番組の締めに入る。既に放送時間は残り一分、
画面下ではスタッフロールが始っている。

「スズハラ本社では魔人の皆様のランク測定を無料で行っております。
自分の相対的な強さの指標が欲しいと考えている方は是非いらしてください」
「対馬堂穂波ちゃん、ランクSSってのは大体こんな感じなんやで~」

(完)
最終更新:2016年02月24日 22:28