『おお、友よ! 心地よく歌い始めよう、喜びに満ちて!』
晴れ渡った青空に陽光をはじき白く輝く雲がただよう。
木々の梢には小鳥が遊び、軽やかな音色を奏でている。
今日は麗らかな小春日和の良き一日。
一人のむくつけき巨漢が豊かなドレッドヘアーを揺らし、傍らに座る少女に語っていた――
「昔、俺の友が言っていたんだがな」
「そいつは本をいつも読んでる頭の良い奴だった」
「そいつが言うにゃ気楽に生きる秘訣があるんだとさ」
「リッスン・リル・ガール」
「この世にゃ決して壊れなかったり無くならない物なんてない」
「つまりこの世に絶対なんてものは無い」
「そう考えるだけで気が楽になるんだとさ」
「ヨー・プリティ・リル・ガール」
大男と少女、二人の座る丘は花が咲き誇り、少女は伸び伸びと風を浴びていた。
花の絨毯を揺らす風は穏やかに、暖かな陽射しと共に会話する小さな影を包んでいた。
「ぜったいがないと気がらくになるの?」
「かなしいとか、つらいとか、そういうのがなくなるから?」
「かなしいとか、つらいとか、そういうのもうれしいとか楽しいとか」
「なんにだってなれるから?」
「かなしいからって泣いているわたしも、泣かなくなるから?」
「そうおもえば気がらくになるのかな?」
「絶対に、未来永劫変化しない物が無い以上、何だって何にだってなる」
「だからどんな悲しいことも、それを悲しいと思う心も、何にだって変わる」
「だからくよくよすんなって、世界の果てが見える友は言ってたぜ」
「なんだってだいじょうぶ?」「ああ、大丈夫だ」
「なにがおきても?」「ああ、そうなんだとさ」
「あんしんしていいのかな?」「ああ、気楽にすりゃいい」
「いいのかな?」「ああ、いいさ」
笑顔を交わす二人の姿に、花咲く丘を訪れた諸人が喝采を贈る。
少女の顔に浮かぶ安堵の笑顔を称え、丘の上は祝いの言葉で満ちた。
――おめでとう
――おめでとう
――すばらしい
――すばらしい
「そいつはいつでも澄まし顔で、いつも冷静な奴でな」
「そいつが言うことはいつも当たっていた」
「俺はいつでも自信満々だろう? そいつの言葉を聞いているからさ」
「だから大丈夫だ。怖い思いなんてどっかにすっ飛んでいくさ」
「どんなときでも?」「ああ、どんな時でもだ」
「そのおともだちもあんしんしてた?」「憎らしいくらいにな」
「そっかあ。すごいんだね」「そうさ。凄いんだ」
「わたしもがんばれるかな?」「頑張れるさ」
「リピート・アフタ・ミー・リル・ガール!」
「俺が言ったことを覚えておきな」「うん」
「それさえ忘れなきゃいつでも安心だ」「うん」
「さっき言った言葉はこれ以上無いってくらいのおまじないだ」「うん」
「それだけ覚えてりゃ他は何も覚えてなくてもなんとかなる」「うん」
「安心しな」「うん」
「この筋肉に誓って嘘じゃない」「うん」
「後はそうだな。だからその気持ちを忘れないようにだ」「ように?」
「歌うか!」
「いくぜ!」
「カモン・ベイベー・プリティ・リル・ガール」(Come On Baby, Pretty Little Girl)
「アイ・ノウ・ユー・ノウ」(I Know, You Know)
「ウィー・ラブ・SA・TO・RI!!!」(We Love SA・TO・RI)
「カモン・ベイベー・プリティ・リル・ガール」(Come On Baby, Pretty Little Girl)
「アイ・ノウ・ユー・ノウ」(I Know, You Know)
「ウィー・ラブ・SA・TO・RI!!!」(We Love SA・TO・RI)
こうしてよろこびの歌は歌われ、いつまでも花舞う丘に響き渡っていた。
いつまでもいつまでも、その旋律は悠久の時を越えて――
どうだろう? 耳を澄ませば、貴方にも聞こえてはこないだろうか?
今一度、耳を澄まし、心に響く音に乗せて彼らの声を聞き返してみてはいかがだろうか?
※BGM
tps://www.youtube.com/watch?v=EB-bYJoqvQQ 
――――――
(摩訶般若波羅蜜多心経)
「昔、俺の友が言っていたんだがな」(観自在菩薩行深)
「そいつは本をいつも読んでる頭の良い奴だった」(般若波羅蜜多時)
「そいつが言うにゃ気楽に生きる秘訣があるんだとさ」(照見五蘊皆空度一切苦厄)
「リッスン・リル・ガール」(舎利子)
「この世にゃ決して壊れなかったり無くならない物なんてない」(色不異空空不異色)
「つまりこの世に絶対なんてものは無い」(色即是空空即是色)
「そう考えるだけで気が楽になるんだとさ」(受想行識亦復如是)
「ヨー・プリティ・リル・ガール」(舎利子)
~間奏~
「ぜったいがないと気がらくになるの?」(是諸法空想)
「かなしいとか、つらいとか、そういうのがなくなるから?」(不生不滅)
「かなしいとか、つらいとか、そういうのもうれしいとか楽しいとか」(不垢不浄)
「なんにだってなれるから?」(不増不減)
「かなしいからって泣いているわたしも、泣かなくなるから?」(是故空中)
「そうおもえば気がらくになるのかな?」(無色無受想行識)
「絶対に、未来永劫変化しない物が無い以上、何だって何にだってなる」(無限耳鼻舌身意)
「だからどんな悲しいことも、それを悲しいと思う心も、何にだって変わる」(無色声香味触法)
「だからくよくよすんなって、世界の果てが見える友は言ってたぜ」(無限界乃至無意識界)
「なんだってだいじょうぶ?」「ああ、大丈夫だ」(無無明亦無無明尽)
「なにがおきても?」「ああ、そうなんだとさ」(乃至無老死)
「あんしんしていいのかな?」「ああ、気楽にすりゃいい」(亦無老死尽無苦集)
「いいのかな?」「ああ、いいさ」(滅道無知亦無得)
~間奏~
「そいつはいつでも澄まし顔で、いつも冷静な奴でな」(以無所得故菩提薩垂)
「そいつが言うことはいつも当たっていた」(依般若波羅蜜多故)
「俺はいつでも自信満々だろう? そいつの言葉を聞いているからさ」(心無圭礙無圭礙故)
「だから大丈夫だ。怖い思いなんてどっかにすっ飛んでいくさ」(無有恐怖遠離)
「どんなときでも?」「ああ、どんな時でもだ」(一切転倒夢想究境)
「そのおともだちもあんしんしてた?」「憎らしいくらいにな」(涅槃三世諸仏)
「そっかあ。すごいんだね」「そうさ。凄いんだ」(依般若波羅蜜多故得)
「わたしもがんばれるかな?」「頑張れるさ」(阿耨多羅三藐三菩提)
「リピート・アフタ・ミー・リル・ガール!」(故知般若波羅蜜多)
「俺が言ったことを覚えておきな」「うん」(是大神呪)
「それさえ忘れなきゃいつでも安心だ」「うん」(是大明呪)
「さっき言った言葉はこれ以上無いってくらいのおまじないだ」「うん」(是無上呪)
「それだけ覚えてりゃ他は何も覚えてなくてもなんとかなる」「うん」(是無等等呪)
「安心しな」「うん」(能除一切苦)
「この筋肉に誓って嘘じゃない」「うん」(真実不虚)
「後はそうだな。だからその気持ちを忘れないようにだ」「ように?」(故説般若波羅蜜多呪)
「歌うか!」(即説呪曰)
「いくぜ!」(即説呪曰)
「Come On Baby, Pretty Little Girl」(羯帝羯帝波羅羯帝)
「I Know, You Know」(波羅僧羯帝)
「We Love SA・TO・RI」(菩提僧莎訶)
(般若波羅蜜多心経)
fin.