ヤマノコ(&神代の旗手 ヘヴィ・アイアン)プロローグ2


ヘヴィ・アイアンについて、彼の成り立ち・原点をここに記しておこう。

彼には金鉱脈目当てで集まった者同士、意気投合した友人達がいた。
オカルトマニアで、過去現在未来全ての出来事が記されたアカシックレコードを求める男。
故郷に置いてきた新妻へ金のネックレスを贈ると豪語するレンガ職人の男。
己の身体を鍛える事を趣味とし、ダンベルと寝食を共にするマッチョの男。

薄汚れた山小屋の中。
時に笑いあい、時にぶつかりあい、魔人であった彼らは時に自衛の戦闘訓練を行い――。
金を掘り当てる事に情熱を燃やし、確かに幸福な未来を信じて生き抜いていた。

しかしある日、その未来は幻と消える事となる。
ヘヴィ・アイアンを残し、他の三人は金を巡る諍いに巻き込まれ、命を落としたのだ。
なんというこの世の無情さか! 気の良かった仲間達を偲び、ヘヴィ・アイアンは涙した。

そしてその日、音楽を趣味とし、生ぬるい平和の中で生きてきた一人の男は決意した。

もしもこの世に、このような悲劇を起こすよう予め記したアカシックレコードがあるならば。
そんなものを綴った大馬鹿者を、宇宙の果てであろうと追い詰めて殴り倒してやろうと。
そして過去・現在・未来に生きる全ての救われるべき人を救いたい――と。

その後の彼の消息を詳しく知る者はいない。

ある人は彼は時を渡る力を得て過去を変える戦いに挑んだと言い、
ある人は友人の家族を養い、生涯を寒村の一角で終えたと言い、
またある人は船を駆り世界中の救うべき人を救う旅に出たと言う。

一つ確かな事があるとするならば。
決意の日から10数年後のジャマイカで、黒人奴隷解放運動を指揮し、時の総督を召喚せしめた反乱、
その主導者は猛々しいドレッドヘアーを揺らした筋肉の偉丈夫であったという事だけである。
最終更新:2016年01月25日 20:49