ラブクエスト

ラブクエスト

part38-267~288,297 2010/02/26に記事内容を修正


267 :ラブクエスト:2008/04/22(火) 04:01:06 ID:7ALH8GZx0
*お知らせ*
これより、ラブクエストを投下します。
こんなにいいストーリーなのに、誰からもリクエストが出てないなんてもったいないです。
なので、書いてみました。
筆者より。


プロローグ

それは、横浜の教会でのこと。
「あなたがた二人は、健やかなるときも、苦しいときも、夫婦であることを誓いますか?」
「はい」
「は、はい。ち、ち、誓います」
「それでは、指輪の交換を…」
僕は愛する人の方を向く。美しい、ゆかさん。ゆかさんの手を取って、指輪をはめ…ようとしたら、
緊張のあまり、指輪を落してしまった。落した指輪を探して、拾い上げる。
顔を上げると、そこにはゆかさんはいなかった。神父さんも、シスターも知らないと言うし…。
ゆかさんは、僕を置いて消えてしまった。


1.冒険のはじまり。下北沢Home

ゆかさんが消えてからひと月後。下北沢の社宅の一室。僕は目を覚ます。
あんなことが起こらなければ、今ごろは、ゆかさんとふたりで暮らしているはずなのに。
ああ、何とかして、ゆかさんを探し出したい。探し出して、どうして僕を置いて逃げ出したのかと訊いてみたい。
電話が鳴っている。ママからだ。
「もしもし、あら、その声は…。まだおネンネしてたんですのね。
ママは、あなたのことなら、なあんでも解るんでちゅよ。
ところで、まだゆかさんのこと探すつもりですの?もう、あきらめなさい。
きっと、彼女とあなたは『運命の赤い糸』で結ばれていなかったんでしょう」
「で、でも、僕は、ゆかさんが好きなんです。だから、探します」
「はぁっ!なんて心の美しいコなんでしょう。解りました。でも、途中で辛くなったら
いつでもママの胸に飛び込んでくるんですよ」
電話を切る。…そうだ、僕は【マザコン】だ。24にもなるのに、いつもこんな調子だ。
悩んでいても始まらない。適当に服を選んで着替えて、外に出る。


268 :ラブクエスト:2008/04/22(火) 04:02:20 ID:7ALH8GZx0
そういえば、僕はゆかさんのことを何も知らない。どこに住んでいるのか、とか。
RPGの基本は、まず情報収集だな。僕は道往く人にゆかさんのことを聞いてみる。
そうすると、ゆかさんのことを知っている人がいた!
「ゆかさん?下北沢ハイツの503号室の?おたく、ずいぶん…いえ、なんでもないわ」
下北沢ハイツの503号室に行って、ドキドキしながらチャイムを押す。
出てきたのは美しいゆかさん…ではなく、中年のおばさんだった。同じ名前なだけだった。
おばさんは、愚痴を聞いていかないか、と誘ってきた。
こ、これは、普通のRPGで言うところの戦闘にあたる「♡アタック」というものか。
僕のこの「口(くち)」を武器に、女性を口説いて♡で満たしてあげるのだ。
何事も経験。僕はおばさんの挑戦を受けることにした。
「うちのバカ亭主!こんにゃろ!てめえが浮気してるの知ってるぞ!」
おばさんはすごい勢いで愚痴を言ってくる。それに打ちのめされそうになるけど、
虚勢を張って耐えて、おばさんをなだめる。
「あーすっきりした。ありがとね。これ、お礼です」
おばさんは愚痴を言って満足げだ。規定の経験値とお金の他に、劇場のチケットを貰った。

せっかくチケットをもらったので、劇場に行ってみる。客席は暗くて、辺りが見えない。人とぶつかってしまった。
「キャー!チカン!」
ぶつかったのはOLらしき女性だ。僕はチカンではないと弁解する。
「ふーん、チカンじゃなかったのね。お詫びと言っちゃなんだけどさ、
新宿のレストランでさ、食事でもご馳走させて。ネッ!待ってるから」
OLから新宿への切符を貰った。


2.新宿Cityはツライよ

電車に乗って新宿へ。レストランの場所を調べて、向かう。途中で、青年に呼び止められた。
「あれ~?あなた、主人公でしょう?ちょっとお話聞かせて下さいよ。ここじゃなんですから…」
などと言われて、近くのバーに連れて行かれてしまった。
青年としばらく話をしていると、青年が持っている携帯電話が鳴り出した。
「解った、今からそっちに行く!」
急用が出来た、5分くらいで戻ると言って、青年はバーを出て行った。
それからしばらく待っていたけど、5分どころかいつまでたっても帰ってくる様子はない。
ホステスが近付いてきた。
「まゆみでぇ~す。よろしくね」
しばらくまゆみと話をする。彼女は飲み物をこぼして、僕の服は濡れてしまった。
「あっ、すいません。その服、脱いでぇ。代わりの服、用意するから。いいでしょ?」
言われるままに服を脱ぐ。そして、いいかげん帰ろうとすると、法外な金額をふっかけられた。
いわゆる、ぼったくりだ。店のマネージャーが凄みをきかせてきた。財布をとられる。
「なあんだー。足りないじゃーん、これっぽっちじゃさー。んじゃ、その指輪、貰うよ」
それは、あのとき、ゆかさんの指にはめることが出来なかった指輪だった。大切に持っていたものだ。
文字通り、身ぐるみ剥がされて外に放り出された。
近くにいたホームレスの男にダンボールを譲ってもらい、はげまされた。
あの指輪を、何としても返してもらわなければ。道往く女のコたちに、片っ端から♡アタックを挑み、
言われた金額を工面して、ぼったくりバーに持っていった。
「本当に工面してくるとはね。しかし、あんた、【初心者】だろ?気をつけなよ」
マネージャーから指輪を返してもらい、代わりの服も用意してくれた。


269 :ラブクエスト:2008/04/22(火) 04:03:06 ID:7ALH8GZx0
だいぶ遅れたけど、やっとレストランに行くことができる。OLは待ちくたびれていた。
OLにゆかさんのことを相談することにする。
「なるほど、婚約者がねぇ。で、彼女のこと探してたんだぁ。
だったら、あたしの友達の はるか に相談すれば?彼女、結婚式の途中で逃げ出したんだ。
『よせたんデパート』にいるよォ。行ってみたら?」
彼女のアドバイスどおりに、よせたんデパートに行く。
「はるか」のネームをつけたデパートガールを見つける。勇気を出して話しかけてみる。
「あ、あのですね、し、失礼ですけど…」
「私に何か?…ううっ!」
はるかさんは肩に手を当てて苦しそうにしている。これは、肩こり?
他のデパートガールにも話を聞いてみると、はるかさんは肩こりに悩まされているらしい。
はるかさんの肩こりをなんとかしてあげたいと、もみこし老人の元へ。
もみこし老人の指圧は効くらしい。僕は、もみこし老人から指圧のコツを教わる。

占い師に呼び止められた。タダでいいので占ってあげるというので、占い師の店へ。
「あんた、最近、ヤなことあっただろ。ズバリ!婚約者に逃げられた!」
驚きのあまり、何も言えなかった。
「アタイの占いだと、あんたの婚約者は…原宿のタレントショップにいる!間違いない!」
この占いは当りそうだ。覚えておこう。
再びはるかさんに会おうと、よせたんデパートに行くと、閉店のアナウンスが流れた。
はるかさんはバックヤードの方に行ったというので、後を追う。
男たちに囲まれたはるかさんは、困った顔をしている。まだ制服のままだ。
はるかさんに近付こうとしたが、男たちに阻止されてしまった。
「お前、邪魔なんだよ!」
男たちにボコボコにされてしまった。ああっ、鼻血が出ている!
「ちょっと、ひどいじゃない!ひとりに寄ってたかって!…大丈夫?」
はるかさんは僕に駆けよってきて、鼻血をふいてくれた。
「ごめんなさい、私に好意を持ってくれるのはうれしいんだけど、もういい加減、疲れたの。
男の人たちに追い回されるのは。おかげで、ひどい肩こりになっちゃうし…」
はるかさんは男たちにそう言ったあと、また肩に手を当てて苦しそうにする。
「あ、あのですね、僕、治せるかも知れません。その肩こり」
僕は、はるかさんに、もみこし老人から習った指圧をしてあげた。
「不思議…肩が軽くなった!どうもありがとう」
うれしそうにしているはるかさん。僕は、はるかさんの手をとって走った。
「えっ…ちょっと!」
デパートを出たところで止まった。
「何か、あるの?」
はるかさんに、ゆかさんのことを相談する。
「…そう。でも、どうして?あなた、いい人なのに。私、あなたみたいな困っている人って
ほっとけないの!一緒についてく!」
はるかさんが仲間になった。


270 :ラブクエスト:2008/04/22(火) 04:05:15 ID:7ALH8GZx0
占いの通りに、原宿に行こうとする道の途中で、男が待ち伏せていた。
「は…はるか…」
男の顔を見て、はるかさんの顔は青ざめた。道を引き返す。
「だ、誰なんですか、あの人?」
「彼、けんじ っていうの。私の、前の婚約者。私、結婚式の途中で逃げ出したの。お金にだらしなくて、
まともな仕事もしていない。おまけに、変な趣味が…。早く、彼のこと忘れたい。
『後ろ髪引かれる』って言うでしょ。私、彼の後ろ髪を切ってやりたい。
うちのデパートで売ってる『縁切りバサミ』で、彼との縁を切ってやりたい…」
よせたんデパートの3階、アイディア商品売場に行ってみる。
縁切りバサミは限定50本で、全て売り切れだという。
最後に買っていったのは、バーテンダーの女のコだそうだ。

バーテンダーの女のコは、長い間休んでいたが、最近仕事に復帰したとのこと。
彼女の店に行ってみる。メニューに、「ブラックルシアン」という、
聞きなれないカクテルがあるので、注文してみる。
「いやだ、そのカクテルだけは…絶対、作りたくない」
彼女は、そう言ってハサミを取り出す。
「そのハサミ、もしかして…」
「うるさい!あたしがどんな気持ちでこのハサミ買ったのか、あんたたちなんかに、わかるわけっ!
何も知らないくせしてさーっ!」
このままでは話にならない。♡アタックで彼女を落ち着かせる。一言でよろめいた。
彼女はシェイカーを振って、カクテルを作る。
「はい、ご注文のブラックルシアン。そのカクテル、彼がよく飲んでた…」
休業していたのは、失恋の痛手からなのだそうだ。
「彼への未練を断ち切るために、ハサミを買ったんだけど、でも、もう必要ない。
あんたに♡を満たしてもらったから!」
縁切りバサミを譲ってもらった。
はるかさんは縁切りバサミを持って、けんじのところへ行く。そして、思いっきり、けんじの後ろ髪を切った。


3.ウキウキ♪原宿Street

原宿で一番大きなタレントショップ、「ありさの店」に行く。
ありさ は今、話題のアイドルタレントだ。ありさ目当てのお客がたくさんいる。
ひと通り回ってみたが、やっぱりゆかさんらしい人はいない。店員の女のコに、話を聞いてみることにする。
「ゆか?何それ?そんなヤツ、知らねぇよ。それよりさ、この店のオーナーの ありさ、
あんにゃろ、バイト代は払わないでシカトこいてやんの。アンタさ、あの女のトコ行って、
バイト代を取ってきてくんない?あの女、渋谷のNNKにいるからさ、頼むねぇ」
僕は引き受けることにした。
「あんな生意気なコの頼みなんか引き受けていいの?」
はるかさんはそう言う。
「おい、そこのババア、デパートの制服着てるおめぇだよ。余計な口出ししてんじゃねーよ。ババアは黙ってりゃいいの」
店員の女のコは、はるかさんをババア呼ばわりする。
「ババアとはどういうこと!礼儀を知らないの!」
女のコとはるかさんは喧嘩を始めてしまう。
「あ、あのですね、行きましょう、はるかさん」
はるかさんをむりやり店から連れ出した。


271 :ラブクエスト:2008/04/22(火) 04:06:11 ID:7ALH8GZx0
南へ歩いていく。歩行者天国を通って、NNKへ。
NNKはテレビ局だ。ありさを待ち伏せているマスコミの間を縫って、中に入る。
2階の楽屋にありさはいた。
「いやーっ!みんな大嫌いー!!帰ってよ!」
側にいるマネージャーさんが、次の仕事に行くよう説得するけど、
ありさは、マスコミを嫌がって動こうとしない。
ありさが余りにも取り乱しているので、気後れしてしまう。
「いいわ、私が言ってあげる」
はるかさんは僕の代わりに、ありさに話し掛ける。
「あの、私たち、ありさのお店のことで…」
ありさの代わりにマネージャーさんが答えた。
「あ、そうスか!これはすいませんっスー!あいにく、今、ありさは忙しいもんで。
僕がやっとくっスから。きょうはお引取りくださいっス」
出て行こうとすると、マネージャーさんが僕を呼び止めた。
「わざわざ来ていただいて、どうもすいませんっス。しかし、あなた、【小心者】っスね」

原宿へ戻る途中の歩行者天国で、路上ライブが行われている。人が道いっぱいに広がっていて進めない。
「みんな、アリガトー。ワタシ、みんなのために歌うワ!」
むんむんちゃん とかいう人が歌っている。観客は熱狂している。
僕とはるかさんは、観客に囲まれてしまった。
「はるかさん、ちょっと、苦しいです…」
観客にもまれ、そのうちに気を失ってしまった。

目を覚ますと、そこはボロっちいアパートの一室だった。
「気がついた?だいじょぶ?ここにいる、ルイ さんっていう人、私たちを助けてくれたの」
ルイさんはサングラスをかけた、性別不明の外見の人だ。だけど、一応、女性らしいことは解る。
「ユーたち、具合、よくなっタ。だから、さっさと消えてクレ」
僕とはるかさんが出て行こうとすると、ドアを叩く音がする。
「こんちは~地上げ屋でーす!早くこのアパートから出て行ってちょーだいよ、ネ!」
このアパートは地上げ屋に苦しめられているらしい。
「逃げるんだ、ベイビー」
押入れが隠し通路になっているというので、みんなで逃げる。
アパートの入り口に来た。
「あいつらは、原宿にある不動産会社の手先さ。ああやって、毎日アパートの住民を脅してル」
とにかく、その不動産会社に行ってみようということに。ルイさんもついてくることになった。


272 :ラブクエスト:2008/04/22(火) 04:06:45 ID:7ALH8GZx0
不動産会社の中へ。
「ようこそ、いらっしゃいました」
めぐみ という女性が応対してくれた。
「アパートの地上げはやめてもらえないかナ」
ルイさんがいきなり切り出すと、めぐみさんはいきなり泣き崩れた。
「ごめんなさい、わたくし、間違っておりました。今すぐ地上げはやめさせます。
…なーんちゃってねえ、ハハハハハ!甘ったれんじゃねえ!
たかがアパート追い出されるくらいで、ガタガタぬかしやがって、バーロー!」
めぐみさんの態度がいきなり変わった。ここは♡アタックだ。めぐみさんはご機嫌になった。
「月で、結婚式挙げるんだ、アタシたち」
めぐみさんはチラリと視線を移した。その先には彼氏と思われる男性がいた。
「あの、お金、どれくらいかかるんですか?」
「8000億円。ウソじゃない。アタシは本気。…アタシには、お金が必要なんだ!」
その金額に驚いてしまう。
「だからって、地上げをしてお金を稼ぐなんて、人間として間違ってると思う!
あなたたちのおかげで、大勢の人たちが困っているの」
はるかさんはめぐみさんを説得した。
「ぼ、僕もそう思います」
「解ったよ!地上げやめりゃいいんだろ!今すぐ手続きしてやるよ。チクショー!
ハッ!あんなボロアパート…」
めぐみさんはまだ強がっている。僕たちは不動産会社を出た。
「月で結婚式なんてね。ちょっぴりうらやましい」
はるかさんはうっとりしている。
めぐみさんと彼氏、あの二人は赤い糸で結ばれているんだ。僕もうらやましくなった。
「レイ、ここでバイバイ。いつまでもユーたちの邪魔してらんナイ。ルイ、待ってた人、大勢いる。
サンキュー、ユーには感謝してるゼ」
ルイさんと別れた。

歩行者天国に行ってみると、むんむんちゃんはひとりでしょんぼりしていた。
なんでも、ライブハウスにロックの女王が戻ってきたんだって。
ライブハウスに行ってみると、むんむんちゃんの路上ライブ以上の盛り上がりだった。
あの美人の女性がロックの女王か。
「お、久しぶりだゼ!」
ロックの女王が親しげに話しかけてきたのでびっくりする。
「あの、どちらさま?」
「こうすりゃ、解るかい?」
ロックの女王はサングラスをかける。すると、不思議なことに、外見がまるで違って見える。
「ル、ルイさん!」
「ルイ、地上げ怖かっタ。大好きなロック、歌えなくなるくらい、怖かっタ。でも、今は、
ユーたちのおかげでベリーハッピー。これ、ヤル。今のルイにはもう必要ナイ」
ルイさんからサングラスをもらった。
「ルイ、これからも歌いつづけるゼ!!」


273 :ラブクエスト:2008/04/22(火) 04:07:48 ID:7ALH8GZx0
渋谷に行くために、NNKの中へ。渋谷側の出入り口は、ありさを待つ大勢のマスコミの人がいて、通れない。
「イヤったら、イヤっ!」
2階の楽屋には、まだありさがいる。
「急がないと、次のリハーサルに間に合わないっスよー」
だけど、マスコミがいるから、と言って、ありさは動こうとしない。
そうだ、ここは、さっきもらった、あのサングラスを…。
僕は、ありさにサングラスを渡して、かけさせた。すると…。
「…ま、まるで別人っス!これならバッチリっスー!これがありさだってわかるヤツなんていないっスよー!
本当、たすかったっス」
全く外見が変わったありさは、るんるん気分でNNKを後にした。マネージャーさんもついていった。


4.渋谷Avenueはお騒がせ

NNKの渋谷側の出入り口を通り、渋谷へ入る。いきなり目の前をパトカーが横切った。
何なんだろうと追いかけてみると、パトカーはCDショップ・サワーレコードの前で止まった。
「万引きだってさ。犯人はまだ18才らしいわよ」
野次馬のおばさんたちがひそひそと話している。
「よし、ほら、行くぞ!」
CDショップから、おまわりさんに連れられて出てきたのは、ありさの店の店員の女のコだった。
「おーっす。つかまっちゃった。へへへ」
女のコは悪びれた様子もなく、僕にそう言った。女のコはパトカーに乗せられた。
サワレコの中に入って、店員のおじさんに話を聞いてみる。
「万引きしたから、警察に突き出したまでです。当然でしょ。
…あ、待てよ、あのレコードと引き換えに、許してやってもいいなぁ。
よし、決めた。『天空の妻』ってレコードをオレんトコに持ってきたら、許してあげようっと」
聞いたことがある。たしか、「天空の妻」を歌った歌手は、下北沢に住んでいた。

渋谷駅から電車に乗って、下北沢へ帰る。
たしかこの辺に…あった、あの歌手の家。だけどそこは、白黒の垂れ幕がかかって、白い花輪が置かれてある。
玄関は開け放たれていた。声をかけても、返事がない。
「し、失礼します…」
ちょっと上がらせてもらうことにした。もうお葬式は終わったらしい。
そこには、あの歌手の遺影が掲げられ、奥さんが泣いていた。
「主人を返してっ!もうイヤ、何もかも。そうだわ!私もあなたの元に…」
僕はあわてて奥さんに駆け寄った。
「は、早まっちゃいけません!!」
奥さんを落ち着かせるために、♡アタックをしかけることにした。奥さんは♡で満たされた。
「私、目が覚めました。主人のぶんまで、精一杯生きていかなければいけないんですね。
あの、うちには他に何もありませんけど、これ、主人のデビュー当時のレコードです。
もらってやってください」
奥さんはあの「天空の妻」のレコードをくれた。


274 :ラブクエスト:2008/04/22(火) 04:08:57 ID:7ALH8GZx0
渋谷に戻ろうと駅に行くと、駅前で部長が待っていた。
会社を休んでいるので、心配してくれたらしい。留守電にメッセージが入っているので聞け、と言う。
そうだな、せっかく戻ったんだし、家に寄るか。
留守電を聞いてみる。
「キミが会社に来なくて、ボク、淋しい…」
部長はハゲのオヤジのくせに気持ち悪いことを言う。
「元気にしてますか?あなたは知らないかもしれませんけど、表参道に、ゆかさんの叔母が経営している
エステサロンがあります。行ってみたらどうかしら」
2件目はママからだった。

電車に乗って渋谷に戻り、サワレコのおじさんにレコードを渡す。
「本当に持ってくるとは思わなかったよ、マジで。キミ、【シャイ】な感じだけど、見所あるな」
約束通り、おじさんは女のコを許してくれるという。渋谷の警察署に行き、署長に事情を説明する。
「話は聞いているよ、早く開けてあげなさい」
女のコは牢屋に捕まっていた。開けてあげると、女のコは僕に駆けよってくる。
「何?助けに来てくれたの?アハハ、ラッキー!あー、おなかすいた。ゴハン食べに行かない?
もちろん、アンタのおごりでさ」
反省する気ゼロらしい。たまりかねた はるかさんが前に出る。
「もう我慢できない!あなたのような自分勝手なコ!誰のおかげで出れると思ってるのっ!」
女のコは突然泣き出した。
「泣いちゃってます…」
「ちょっと、言いすぎたかな。ごめんなさ…」
はるかさんがスキを見せた一瞬を逃がさず、女のコは僕の前に来た。ち、近い…。
「えへ… れいこ のこと、好きぃ?」
れいこちゃんという名前なのか…。
「あ、あ、あの…」
僕が何も言えないでいると、はるかさんが割り込んできた。
「もおおおお!ウソ泣きだったのね!もう絶対許せないっ!」
「アンタ、れーこの彼氏にしてあげるぅ~」
れいこちゃんは僕の腕を取った。こうして、また新しい仲間ができた。

表参道に行くには、トンネルを通らなければならない。
トンネルに行ってみると、そこはまだ開通していなかった。
めぐみさんとその彼氏が、黙々と目の前の土壁を掘っていた。
「こうして汗水たらして、お金稼ぐことにしたんだ。彼氏とふたりで。
でもさ、クレーンとかショベルカーとか何にもないんだもん。手で掘ってるだけじゃ、ね」
クレーン、と聞いて思い浮かぶのは…ゲームセンターだ。ゲームセンターに行って、クレーンゲームに挑戦。
僕とれいこちゃんがやってみたが、失敗に終わった。最後にはるかさんが挑戦。
「愛を感じるなぁ…。ああ、はるかおねえさま…。ボク、あなたに惚れました。一緒にお供させて…」
なぜかしゃべりだすクレーンゲームの機械。裏に回ってみて納得、黒子が動かしているのだった。
クレーンゲームを連れて、トンネルの方に行ってみると、おじさんに呼び止められた。
「ワタシはね、高校で物理を教えている者だ。キミのクレーンゲームで、ある実験をしてみようかねー」
おじさんにクレーンゲームを渡すことにした。
「ちょっと時間がかかるから、その間、キミたちは、歌でも歌って時間をつぶしてきなさい」
おじさんに言われた通り、カラオケ屋のビッグ・イコーに行ってしばらく時間をつぶす。
またトンネルに行ってみると、なんと、トンネルは開通していた。



275 :ラブクエスト:2008/04/22(火) 04:10:00 ID:7ALH8GZx0
5.はちゃめちゃ☆表参道Hill

トンネルを抜けて表参道へ。
「れーこの超嫌いなおまわりさん、いるぅ~。なーんか、物騒だよね」
れいこちゃんが言う通り、おまわりさんの姿が目立つ。
話を聞いてみると、最近、下着ドロボーが出没するので気をつけなさい、とのこと。
ゆかさんの叔母が経営しているというエステサロンへ行くが、休業中だった。
「このたび、オスキーの ひがし 社長に多大な迷惑をおかけいたしました。
そのため、しばらくの間お休みさせていただきます」
ドアにそんな貼り紙がはってある。

ゲームソフトを作ったり、ゲーム関係の本を出版したりしている会社がオスキーだ。
ひがし社長に会ってみることにする。オスキーの広い社長室で、社長はパターゴルフに興じていた。
周りになぜかチアガールがいる。
「社長、ナイスショット!!」
などと盛り上げようとしているが、社長の表情は曇ったままだ。
「つまんない。ちっとも楽しくないザマス!」
「髪の毛ないじゃん、このオヤジ。カッコ悪い」
おそらく一番言ってはいけないことを、れいこちゃんは言ってしまった。
「何もかも、あのエステサロンが悪いザマス!ボクちゃんの髪の毛、元通りになるまでは、
あのエステサロン、お休みザマスっ!せめて、かつら だけでもほしいザマス…」
オスキーのビルを出ると、遠くから奇妙な歌声が聞こえてくる。
「ゆるゆるゆる~な♪…OK!カムカム!」
怪しい男が現れた。
「ん?何?キャッ!」
「毎度、ありがとうございました~♪」
怪しい男は去っていった。
「あ、あの、今、何が起きたんですか?」
はるかさんは顔を真っ赤にしている。れいこちゃんは笑っている。ま、まさか…。
「あははー。下着、盗まれちゃったあ」
そんなことを堂々と言ってのけるれいこちゃん。しかし、動きが速すぎて見えなかったぞ。
おそるべし、下着ドロボー。

かつら屋さんに行って、かつらをオーダーする。
店員さんにハサミを渡された。
「当店のシステムを説明いたします。そのハサミを使いまして、
かつらの元となる女性の髪の毛をお持ちください。
ただし、髪の毛はどんな女性の髪の毛でも良いとは限りません。
若い女性の髪で、ストレートロングの美しいものでなければなりません」
うーん。はるかさんはショートだし、れいこちゃんは長めだけどパーマを当ててるからダメ、と。
僕が知ってる女のコで、条件に合って、しかも、こんなことを頼めそうな人は…一人しかいない。


276 :ラブクエスト:2008/04/22(火) 04:11:00 ID:7ALH8GZx0
スッパイラルという建物にやってきた。地下は女性用のブティックで、2階はイベントスペースになっている。
今、イベントスペースでは、ありさのイベントが終わったところらしい。
ありさに近付こうとする途中で、僕の前に女性が立ちふさがった。
「今、ヒマっスかあ~。ナンパしていいっスかあ~?」
彼女は自称・ナンパ師のえつこさんという人らしい。♡アタックで勝負だ。
「いや~、メロメロっス。えつこサン、逆ナンされたっスよ~。これって、あれっスよね。
ってカンジで。行きましょ、行きましょ」
えつこさんもついてくることになった。
舞台袖では、ありさのマネージャーさんがまた困っている。
「あっ、いいトコに来たっスね。ありさったら、あなたが来るかも知れないって、ここ、動かないんっすよー」
僕を見つけて、ありさは言う。
「絶対、来てくれるんじゃないかと思ってた。アリサ、あんときのお礼がしたくって…」
僕はありさに、髪をくれるようにお願いしてみる。
「あ、あのですね、髪がですね、かつらが、ですね…」
「かつらにするのね、あたしの髪の毛。…いいわ。切って、そのハサミで」
僕はおそるおそる、ありさの髪にハサミを入れる。切りすぎないように…。
うん、大丈夫。切っても、ありさの髪はまだ長い。あまり印象が変わったようには見えないし。
「ご、ごめんなさい…」
「気にしないで。あたし、これから、お仕事がんばるから、あなたも早く、婚約者、見つけてね」

かつら屋さんに、ありさの髪の毛を持ち込むと、あっという間にかつらが出来上がった。
オスキーの社長室に行って、ひがし社長にかつらを渡す。
「あああっ!かつら!うれし~ザマス~♡ボクちゃん、ハッピーザマスよーっ。
さっそく、女のコ ナンパしに行くザマスーっ!
これで、あのエステサロンを許してあげるザマスー」
エステサロンに行くと、もう営業を開始していた。オーナーに会う。
「あなたが、ゆかの婚約者?私は、あの子の叔母なの。このたびは、お世話になりました。
ところで、ゆかは見つかりました?式の最中に逃げ出すなんて…。
でも、あのコなりに、何か事情があったんだと思うの。私にはわからないけど…。
あの…この街の、『あほやま大学』に、あのコの妹が通ってるんです。ゆみ っていうコなんですけど」
エステサロンを出たところで、はるかさんは言う。
「あなた、ゆかさんに妹がいるってこと、知ってたの?」
そうだ。僕はゆかさんのことを何も知らない。何も…。そのことをあらためて思い知らされた。

あほやま大学に入ろうとするが、下着ドロボーのせいで警備が強化されているらしく、
入り口のところで止められてしまった。
「怪しいな、キミたち。下着ドロボーの仲間?デパートの制服なんか着ちゃって」
はるかさんの格好がまずかったらしい。スッパイラルの地下へ行って、女物のスーツを買ってあげることにする。
はるかさんはフィッティングルームに入って、さっそく、着替えた。
「ホントにいいの?私だけ、こんな。このスーツ、前からほしかったの」
はるかさんは喜んでいる。
「れーこだって、服、ほしいもん。ズルいな、ババアだけ」
れいこちゃんはスネている。


277 :ラブクエスト:2008/04/22(火) 04:11:42 ID:7ALH8GZx0
再度、あほやま大学に行くと、今度は通してくれた。
「いくのよ~そよ風のように~♪愛する人へ~ラララ~♪」
変な歌とともに、下着ドロボーがやって来て、校舎の中に入っていった。
下着ドロボーを追いかけるように校舎の中へ入る。
学生たちにゆみちゃんのことを聞いてみる。ゆみちゃんはフランスに留学して帰ってきたそうで、
そのせいでお高くとまっているとのことだ。それに「ゆみサマ」と呼ばないといけないらしい。
さらに、ゆみサマと話すにはまず、フランス文学についての講義を受けなければならないそうだ。
仕方なく、フランス文学の講義を受ける。教室にはゆみサマ目当ての学生がいっぱいだ。
講義が終わったあと、外人の講師から花をもらった。
「これ、記念のお花。女性が喜ぶお花ね」
ベルナールという花なのだそうだ。
「ヤッパ、えつこサン、ガイジンの男がいいっス。ってカンジで、
六本木にガイジンをナンパしに行くえつこサンなのでした」
教室を出たところで、何かに目覚めたらしいえつこさんはそう言って、去っていった。

ゆみサマは屋上でくつろいでいた。高そうな服を着ている。
ゆみサマにベルナールを差し出す。
「そのお花、ワタシの好きなベルナール…ああ、思い出すワ…フランスにいた頃を…。
美しいワ…まるでワタシみたい…」
ゆみサマはしばらくうっとりしていたが、いきなり我に返ったように言う。
「ん!?あら、もうこんな時間…そろそろ、ランチにしなきゃ…」
な、なるほど。僕が買ってくるのか。というわけで、学食でテキトーにランチを買って、屋上に持っていく。
「…なんなの、これ。こんなカロリーの高いもの、ワタシに食べさせるワケ!?
ワタシの自慢のナイスボディがくずれたらどーしてくれるワケ!」
ゆみサマはいきなり怒り出した。♡アタックをして、怒りをおさめる。
「どうして、このキュートでセクシーなワタシが、アナタたちと♡アタックしなきゃならないワケっ!」
だけど、まだゆみサマは怒っている。堪忍袋の緒が切れたれいこちゃんが前に出る。
「おい、こら、テメー!テングになんのもほどほどにしろ!とっとと、ゆかのこと教えろよな!」
ゆかさんの名前を聞いて、やっとゆみサマは大人しくなった。
「えーっ?それじゃ、アナタは、おネエサマの婚約者?」
「そ、そうなんです。僕、ゆかさんを探して…。お願いです、ゆかさんのこと、教えてください」
「…おネエサマのことは、言いたくない。だって、ワタシ、あの人キライだもん」
えっ、そんな…。そのとき、また奇妙な歌声が聞こえてきた。
「ゆ~み~は~ひろい~な~大きい~な~♪」
下着ドロボー登場。
「ゆみサマ、お持ちいたしました。下着1000枚デース。これでやっとデートOKですネ~♡」
つみ上げられた下着1000枚。すがすがしいものすら感じるその眺め。
下着ドロボーはゆみサマのためにやってたのか…。だけど、ゆみサマは冷たく言い放った。
「…ワタシはネ、宝石がほしいワケ。下着なんてもらって、どうするワケ?それも1000枚も」
「え、宝石…?」
下着ドロボーはうろたえている。どうやら勘違いしていたらしい。

278 :ラブクエスト:2008/04/22(火) 04:13:00 ID:7ALH8GZx0
「クソー、こうなりゃ、腕ずくだ!!」
下着ドロボーは逆上して、ゆみサマを羽交い絞めにした。
「はっはっはっ、ゆみサマはあずかった。取り戻したかったら、ここまで来てみよ!」
直線距離で最短のところを通ろうとすると、スタート地点に戻されるという、
RPGにはよくあるトラップをしかけられた。ここは右の方から回りこんで…成功だ。
下着ドロボーを取り押さえた。ゆみサマは解放された。
「ゆるちて、ネ。もーしないから、ネ♡」
下着ドロボーはぺこぺこと頭を下げる。
「あ~、バカバカしい。これだから日本はキライ。ワタシ、帰る!」
ゆみサマは屋上から出て行こうとする。
「あ、ぎゃあああーっ!鼻、鼻が…イタ!イタ!」
ゆみサマはドアに鼻をはさんでしまったらしい。
はるかさんとれいこちゃんに下着ドロボーを任せて、僕はゆみサマを後ろから引っ張った。
ゆみサマの鼻はドアから抜け出た。
「あ~、イタイ。…あのね、おネエサマはね、アナタのことなんか好きじゃないの」
「…え?」
アナタなんか、愛しちゃいないって言ってるの!ま、愛なんてなくてもネ、結婚なんてできるけど」
「そ、そんな…」
ゆみサマから聞いた事実に、僕は打ちのめされた。ゆかさんが、僕を、愛していないなんて。
やっぱり、僕とゆかさんは、運命の赤い糸で結ばれていなかったのかな…。
僕は衝動的に、手すりを乗り越えた。
「長い間、お世話になりました…。ぼ、僕、ここから飛び降りて…死にます」
そう言ったものの、その高さに足がすくんでしまう。
「だめ、だめよっ!」
「勝手に死ねば、バーカ」
駆けよってくるはるかさん。そっぽを向いているれいこちゃん。

そのまま、飛び降りることができずにいると、東の方からヘリコプターが飛んできて、屋上に着陸した。
機体には「テレビ朝田」のロゴが入っている。ヘリから、お天気お姉さんとディレクターさんが降りてきて、
お天気の実況を始める。ディレクターさんが下着ドロボーを見て驚いている。
「ん?あああっ!手配中の下着ドロボー!キ、キミたちがつかまえたワケ?
キミたちさ、明日のモーニングショーに出て!ギャラ出すから、ね!」


6.遊びなれた 六本木Junction

そして…。
結局飛び降りることなど出来なかった僕と、はるかさんとれいこちゃんはヘリに乗せられて、
六本木にあるテレビ朝田に連れてこられた。もうすぐ本番だというので、スタジオに入る。
「みなさん、おはようございます。モーニングショーのお時間です。
本日のゲスト、下着ドロボーをつかまえた方です。
ところで、この方は婚約者をお探しだそうです。婚約者の特徴は…?」
急にふられたのでびっくりする。僕は、ゆかさんのことを何も知らない。だけど、知ってる限りのことを言った。
「みなさまの情報をお待ちしております」

279 :ラブクエスト:2008/04/22(火) 04:14:43 ID:7ALH8GZx0
本番終了。
「はい、お疲れさま。婚約者、見つかるといいですね。はい、これは粗品です」
ディレクターさんから、携帯電話をもらった。
モーニングショーに出ている女子アナウンサーに話しかけてみる。彼女は さつき という名前だ。
「私、ドジなんです。アナウンサーに向いてないのかも知れません」
さつきさんはそんなことを言う。はげましたい、そしてちょっぴりいじめてみたい気持ちもあって、
♡アタックをすることになった。さつきさんはご機嫌になった。
「ありがとうございました。お帰りはこちらです」
さつきさんに案内された方へ行くと、行き止まりだった。そこにいる人にチラシをもらった。
やっぱり、彼女はドジらしい。
テレビ朝田を出て、しばらくすると、携帯電話が鳴った。
「たった今、視聴者から連絡がありまして、アナタの婚約者、ボブソンズで見かけたそうです」
ボブソンズは近くにあるアイスクリーム屋さんだ。ボブソンズは女性に人気の店らしい。
女性がたくさんいたが、ゆかさんらしい人は見当たらない。男女共用のトイレにも行ってみる。
「だーれかあああ~!」
個室の方から声がする。紙がないらしい。先ほどもらったチラシを投げ入れてあげることにした。
個室から出てきたのはおじさんだった。お礼に、と言って、東京タワーに行くといいと教えてくれた。
結局、あの情報はガセだったらしい。ボブソンズに、ゆかさんはいなかった。

東京タワーに行くには、テレビ朝田の中を通って地下道へ抜けなければならない。地下道の先が東京タワーだ。
地下道の途中に、黄色い車が何台かあった。でも、車のわりには小さい気もする。
そして、頭にターバンを巻いた、恐らくインド人の男が、車と戦っている。
「必殺、カレービーム!」
男が放ったカレービームは車ではなく、僕に当たった。
「この先は危険です。私と一緒に逃げましょう」
連れて行かれた先は、六本木にある、大使館だった。
インド大使はインド1号と名乗る、正義のヒーローだったのだ。他に2号と3号もいるらしい。
どうして車と戦っていたのかと聞いてみる。
「あれは車なんかじゃありません。イエローキャブという、この街に生息するバケモノなのです。
あなたもイエローキャブ退治に参加しませんか?」
YESと答えないとシナリオが進まないのでYESと答える。
「私の目に狂いはなかった。その心意気は、まさに【マハラジャ】ですね」
ちょっとおだて過ぎのような気もするが。インド1号は、テレビ朝田の裏にあるビルに行けという指令を出した。

該当のビルはサークル・ビルという。中には、イエローキャブがたくさんいた。
♡アタックで、イエローキャブの♡を満たす。すると、イエローキャブは女のコになった。
女のコは、ガイジンと♡♡♡したら、イエローキャブになってしまったと言う。
そういうことか。ビルの階段を使って上へと上がっていく。2階にはえつこさんがいた。
「ガイジンと♡♡♡になったら、イエローキャブになったっスよ~。でも、よかったっス。
元通り、えつこサンに戻れて。やっぱ、えつこサンは、アンタ一筋って決めたっス。
ガイジンはダメダメってカンジで」
また、えつこさんがついてくることになった。
最上階では、船乗りの格好のガイジンの男の人をイエローキャブたちが取り巻いていた。
取り巻いているイエローキャブの♡を満たす。男の人に話を聞いてみるが、
英語でも、フランス語とかでもないらしく、何を言っているのか、さっぱりわからない。
「今、ゆかって言ったわよ!」
その中に「ゆか」という単語を聞き取った。だけど、どうしようもない。

280 :ラブクエスト:2008/04/22(火) 04:16:41 ID:7ALH8GZx0
「…お取り込み中、なんなんスけど、えつこサン、デートの約束があるっス。
あ、そうだ、その男、先生だから、彼に通訳してもらえばヨロシ。
ってカンジで、一緒に行きませう」
いきなりえつこさんがそんなことを言い出した。待ち合わせ場所だという、ホテルの前に行く。
その男は先生らしいけど、筋肉バカだった。優秀な生徒がいるので、西洋学園に行け、という。

西洋学園の中に入る。お嬢さま学校だそうだ。あゆみ ちゃんという生徒が、例の優秀な生徒らしい。
あゆみちゃんを見つけて、協力をお願いする。
「ワタクシでお役に立てれば…。たいへん恐縮ですが、ご一緒させてください」
あゆみちゃんを連れて、サークル・ビルの最上階へ行く。
「ワタクシ、訳させていただきます。この方のお名前は、ローマンさんです。
この間まで、大きな船の乗員だったそうです。その船に、ゆか という女性が乗ってきて、
男から逃げてきた、と言ったそうです。美人だったので、よく覚えているそうです。
しかし、今ごろは船にはいないだろうと申しておられますが…」
逃げてきた、だって?やっぱり、ゆかさんは、僕を…。意識が遠のく。
…っ!しばらく、気を失っていた。
ローマンさんは、僕にペンダントを差し出した。
「ローマンさんの、お守りのペンダントを差し上げるとおっしゃっています。
気を落さないで、がんばってください、と言っておられます」
「♡のペンダント」をもらった。最初から、運命の赤い糸で結ばれていれば、
こんなことにはならなかったのに…。
「元気出して。あの人が言ってること、本当かどうか、わからないんだし」
はるかさんが、はげましてくれた。

サークル・ビルから降りて行くと、飲食店のマスターから呼び止められた。
このビルからイエローキャブを追い出してくれたお礼に、と、地下のロッカーに行ってみろ、と教えられた。
地下のロッカーには、「バイブル」なるモノが入っていた。怪しい男が近付いてきて、耳元でささやく。
東京じゅうが見渡せるところで、そのバイブルを使ってみろ、とのことだ。
それは、あそこしかない。地下道を通って、東京タワーに向かう。
東京タワーの中は、イエローキャブがうじゃうじゃいた。なんとかエレベーターに乗り込み、
展望台に来た。やっぱり、ここだ。ここならだいじょうぶ。
僕は、バイブルを開いてみた。そこには、女のコたちが、恋愛に失敗しないように、と
こと細かなアドバイスが書かれていた。読んでいる途中で、バイブルはさらさらと砂になり、
風に乗って、東京じゅうに飛んでいった。
エレベーターに乗って、降りてきてみると、イエローキャブたちはもとの女のコに戻っていた。
「もう、ガイジンと♡♡♡なんていたしません!」
女のコたちは心を入れ替えたらしい。きっと、バイブルのおかげで、
東京じゅうのイエローキャブが元に戻ったことだろう。

東京タワーを出て、地下道を戻って行くと、見覚えある女のコに会った。
「アタシ。覚えてる?新宿でさぁ。…あのときは、ゴメンね」
新宿のぼったくりバーにいた まゆみ だった。まゆみは、客から貢がれたけどもういらないから、
と言って、「外車のかぎ」をくれた。
しばらく歩いて行くと、突然、あゆみちゃんが声をあげた。
「もうこんな時刻ですか!門限の時間まで、あと1時間でございます。
おじいさまにしかられます。ワタクシの自宅は浅草なのですが…」



281 :ラブクエスト:2008/04/22(火) 04:17:59 ID:7ALH8GZx0
7.浅草Town・義理と人情

外車で高速道路を飛ばして、浅草へついた。
車を降りてみると、町の人たちはなにやらものものしい雰囲気だ。
「『かぎ』を持っていると危ないです。ここはひとまず、ワタクシに預けてくださいませんか?」
なんだかわからないけど、あゆみちゃんに「外車のかぎ」を渡す。
「おじいさま、遅くなりまして、まことに申しわけございません」
おじいさまは外で待っていた。あゆみちゃんはお屋敷に入っていった。
あっ、外車のかぎを返してもらわなければ。お屋敷にお邪魔する。
あゆみちゃんのおじいさまは、「大旦那」と呼ばれている。どんな職業かは知らないけど。
今、あゆみちゃんには会えないらしく、大旦那の部屋へ通された。
「かぎを返してほしいか?…その代わり、オレは花火が見たい。
オレは子の浅草で生まれて育った。毎年、花火を楽しみにしてたんだ。
その花火が、今年は中止らしいんだ。おめぇさん、何とかしてくれねぇか?」
外車が運転できないと、浅草からは出られない。仕方ないけど、引き受けることにした。
「おっ、威勢がいいねぇ、【江戸前】ってトコだな。ま、がんばれよ」
大旦那は意外にいい人なのかもしれない。

屋敷を出たところで、町の人が騒いでいる。
「てーへんだあっ!」
川を流されて行く男の人。
「花火屋の大将だ。"し"でえことしやがって…。きっと、婦人会の連中のしわざに違いねぇっ!」
病院に入院している花火屋の大将のお見舞いに行く。
かわいそうに、婦人会の会長に、「たま」と「かぎ」を取られたらしく、「やー」しか言えなくなっている。
婦人会の人たちが出没するという、仲見世の商店会に来た。
坊やに話しかけられる。
「おにいちゃんも、花火、見たいよね?ね?」
思わずうなずいてしまう。
「ふーん。ママ~、あのおにいちゃんが、花火見たいんだってぇ~」
坊やは即座に、婦人会のおばさんたちにチクった。僕は、婦人会のおばさんたちに囲まれてしまった。
♡アタックで♡を満たそうとするが、うまくいかない。
「誰がなんと言おうと、花火大会は中止よ。文句があるなら、ネオ・アサクサ21へいらっっしゃい」
おばさんたちは去っていった。

ネオ・アサクサ21は、最近できた新しいマンションで、婦人会のおばさんたちの根城だ。
「来た来た!アナタざますね!♡アタックとかいう、しょーもないことやってる男は!
やってもらおうじゃないのよ、え!その♡アタックとやらを、サ!」
今度はうまく、おばさんたちの♡を満たすことができた。
「…意外といいわネェ、♡アタックって」
おばさんたちは満足して、自分の部屋へ帰っていった。
最上階で待っているという、婦人会の会長の部屋を目指して、♡アタックをしながら、1階ずつ上っていく。
「浅草といえば、下町の人情と花火。私たちが悪うございました!ぜひとも、花火大会をやって下さい!」
婦人会のほぼ全員の説得に成功した。あとは、会長から「たま」と「かぎ」をもらえれば…。

282 :ラブクエスト:2008/04/22(火) 04:19:22 ID:7ALH8GZx0
最上階についたとき、どこからともなく、着物を着た男がやってきて、会長のおばさんに話しかけた。
「オレはな、闇の仕事人だ!新しく引っ越してきたお前さんたちにゃ、
江戸っ子の『心意気』ってもんがわかってねぇようだな。悪いが、死んでもらうぜ!!」
会長は負けずに言い返す。
「心意気?何それ?なにそんな古いこと言ってんの」
そのとき、マンションが揺れた。
「きっと、浅草の観音さまがお怒りになったんだ!」
揺れがおさまると、マンションは半壊していた。会長は今にも落ちそうになっている。
会長から「たま」と「かぎ」を受け取った。僕は会長を助けようとしたが間に合わず、会長は落ちて行った。
下の階に下りると、岩が道をふさいでいて通れない。おばさんが困っている。
だけど、男の力ならワケはない。岩をどけて、マンションを出ようとする。
突然、上から石が落ちてきて、僕の頭に当たった。僕は気絶した。

気が付くと病院だった。
「フツーだったら死ぬよな、あの落石」
れいこちゃんは素直な感想を言った。すぐ隣は、花火屋の大将のベッドだ。
大将に「かぎ」と「たま」を渡す。大将はすぐ元気になった。
「たまや~!かぎや~!もうでぇじょぶでい!"し"さしぶりに、パパ~んってやっかあ~!
オイラは、先にゆう"し"ビルに行ってっからよォ、おめぇさんたちも来るんだぜ!」
花火屋の大将は、夕日ビルの屋上から花火を打ち上げるという。
夕日ビルの周りで、町の人が騒いでいる。花火屋の大将は泣いていた。
「うええええ~ん。"し"でぇぇぇ!あんまりだあああ~!屋上を見てくれ!」
屋上には、茶色と言うか、黄色と言うか、そんな感じの巨大なウ○チがある。
様子を見に行くため、夕日ビルを上って屋上へ。だけど、余りにも強烈な臭いなので、
速攻で引き換えした。

そういうことを専門に研究しているという、ベン研究所のベン博士を訪ねる。
博士はテレビを見ていた。さつきさんがテレビに出ているので、博士はご機嫌だ。
テレビ朝田のヘリコプターが、浅草を飛んでいる。
「ヘリコプターからの中継レポートです。私は今、浅草の夕日ビルに来ています。
みなさま、ご覧下さい、ウ○チです、大きなウ○チです。
突然、ウ○チが出現しました。近付いて見ましょう…あっ!」
さつきさんは、身を乗り出しすぎて、ウ○チの中へ落ちて行った。
博士は、さつきさんを助けに行くと言うので、同行することにした。
はるかさんとれいこちゃんはここに残るという。
博士から「ベンガード」というものを渡された。これを装備すればウ○チの中でもへっちゃらだ。

夕日ビルに上り、ウ○チの中を進んで行く。さつきさんが落ちているところまで来た。
さつきさんを助ける。
「私、どうなって…?」
さつきさんを連れて、ウ○チの頂上へ登る。

283 :ラブクエスト:2008/04/22(火) 04:20:49 ID:7ALH8GZx0
そこにはインド1号がいた。ウ○チを神と崇めているらしい。…色は似てるけど、カレーじゃないですから。
そこへいきなり、婦人会の会長がやってきた。
「こんにちは~♡さっきはごめんなさ~い♡」
だけど、それは罠だった。会長は態度を変えて、僕に襲いかかってきた。
♡アタックをする。会長は♡で満たされた。そして、会長は恐るべき事実を口にする。
「このビッグなウ○チををしたのは何を隠そう、この私。出すときにとっても苦労したわ。
そのへん、調べてごらん。お供え物が落ちてるはずよ」
ここでやっと役に立つ、「調べる」コマンドを入力しながら、反応がある場所を探す。
…あった。これは、福神漬け?福神漬けを拾い上げた。
そして、博士がウ○チに向かって悪口を言う。
お供え物を奪われ、博士に悪口を言われ、追い詰められたウ○チは、なんと、消えてしまった。
博士は突然、さつきさんの唇を奪う。さつきさんは小さく悲鳴を上げた。
「ウ○チには福神漬け、さつきにはくちづけ、僕と結婚しましょう」
博士のプロポーズにさつきさんはOKした。さっそく、結婚式の日取りを決めているらしい。
これが、運命の赤い糸、か。見せ付けてくれちゃって。
「たまや~!かぎや~ってか。ぱぱ~んとやるぜい!」
花火屋の大将がやってきた。花火大会が始まる。

「成功ね、おめでとう」
「江戸っ子の人たちも、すっげー喜んでるよォ!」
はるかさんとれいこちゃんに合流する。そして、大旦那の屋敷へ。
「すまなかった、返す」
外車のかぎを返してもらった。このかぎは、花火とは関係なかったのに、関係があると勘違いされていたらしい。
「花火、見せてもらったぜ。おめぇさん、見かけによらず、なかなかやるじゃねえか。
ところで、おめぇさん、女を探してるそうじゃねぇか。心配するんじゃねぇ、
運命の赤い糸さえ手に入りゃ、探してる女もすぐに見つかるぜ。
運命の赤い糸の由来はな、中国なんだ。『糸ひとたび、これをつなげば、
ついにかうべからず』。中国の昔話だ」
これはいいことを聞いた。中国と言えば、やっぱり、あそこかな?


8.ふり向けば、横浜Harbor

というわけで、海沿いの道を外車で走って、横浜にやってきた。
さっそく中華街へ。そこには、「運命の赤い糸」の噂を聞きつけてやってきた、女のコたちがたくさんいた。
ある中華料理店に入ると、ステレオタイプな中国人のおじさんが話しかけてきた。
「あいやー、アナタ、特別ネ~」
店の奥に案内された。
「店の壁、隅々、調べる!すると、摩訶不思議!秘密の扉が開くアルネ~。
そこに眠る、中国4000年の歴史。なんと、孫悟空が生まれたという、伝説の岩!
日本人、それ見るの、アナタさま、初めてアルネ~」

284 :ラブクエスト:2008/04/22(火) 04:21:54 ID:7ALH8GZx0
壁を調べて秘密の扉を開き、地下室へと降りて行くと、そこには言われた通り、伝説の岩があった。
「おーっす、いや~、ダルいわ、マジで」
伝説の岩は話しはじめた。
「むかしむかしの中国に、古い言い伝えがありました。ある男女の『運命の赤い糸」の話です。
…長くなるからやめた。早い話がサ、運命の赤い糸は『せきららの神』っていう、
縁結びの神様が持ってんのヨ。でサ、この神様はサ、満月の夜に出るっていう言い伝えがあんの。
はい、コレ」
伝説の岩は、「ドラゴンの羽衣」をくれた。
「せきららの神はサ、海が好きらしいんだ」
海か。すぐ近くだな。

海へ行こうとする途中で、占い師に声をかけられた。占い師は「満月」をくれた。
「満月」…ってこれ、ずいぶん安っぽくないですか?それは、紙で出来ているような、薄くて丸いものだった。
「それを持って、この先の山下公園に行くんだよ。どうだい、エフ○フっぽくなってきただろう?」
山下公園を進んで行って、海のところまで来た。「満月」の効果で、急に暗くなった。
目が回って、倒れてしまった。起き上がると、目の前に、せきららの神がいた。
「わらわは、中国4000年が誇る、縁結びの神様じゃ~っ!捧げ物をよこせ~!」
ここでドラゴンの羽衣を渡すのかと思いきや、せきららの神は続けて言った。
「どうせドラゴンの羽衣じゃろ。そんなもん、いらんわ。実際、そんなもん、着れるか。ダサい」
せきららの神は、「運命の赤い糸」をくれた。
「いかなる男女も、その糸があれば、夫婦(めおと)になれる。その糸を持って、
この先に停泊しておる『クイーン号』へ急ぐのじゃ!おぬしの婚約者はそこにおる。さらばじゃ~」
せきららの神は消えた。
「ふーん。これで、冒険も終わり、か」
れいこちゃんがしんみりしている。

山下公園を抜けて港に行くと、たしかに船が泊まっている。
急いで乗り込んでみると、それは漁船だった。クイーン号はこのあと入港するとのこと。
漁船を降りたところに、ママが待っていた。こ、こんなところまで、僕を…?
「ママは、あなたが心配で心配で…。ママと一緒に、おウチに帰りますよっ!
帰ったら、ママがシチューを作ってあげますからね♡
さ、教会の神父様にあいさつして、帰りましょ」
ママは、はるかさんとれいこちゃんを無視して、僕を連れて行こうとする。
「ママ、待ってください。この人たちは、僕にとって…。と、とにかく、一緒に連れて行きます!」
「ママにくちごたえするなんて…」
ママは少しだけ面食らったような顔をした。はるかさんとれいこちゃんも一緒に教会に行くことになった。


285 :ラブクエスト:2008/04/22(火) 04:22:32 ID:7ALH8GZx0
来た道を戻って、繁華街へ戻り、教会へ。そう、そこは結婚式場だったところ。
ママは神父さまに言う。
「息子を連れて帰ります。もう、冒険はやめさせます!」
どうしよう、どうすれば…。迷っているところに、神父さまが僕に言う。
「あなたの婚約者は、クイーン号という船の中で、あなたが来るのを待っていることでしょう。
今すぐ、彼女の元へお急ぎなさい。これまでの、あなたの経験が、きっと役に立つことでしょう」
僕は、教会を出ようとする。ママは、僕の腕をつかんだ。
「行っちゃダメですよ!」
そんなママに、はるかさんは訴える。
「ここまで来るのに、ずいぶんツラいことも多かった。正直言って、仕事も休んでるし、
途中で何度も新宿に戻ろうと思った。でも、私は冒険がしたかったんじゃない!彼と一緒にいたかったらなの」
「エンディング見てぇだろ。行くっきゃねぇよな」
れいこちゃんも同意する。
「そうだぜ、ベイビー。オマエはほんとは、グレイトなヤツ。ユーはただもんじゃない」
サングラスをかけているレイさんが駆けつけてくれた。
「あなたに助けてもらわなかったら、今ごろ、アリサ…。あなたに助けてもらった人って、
アリサのほかにも、たくさん。今度はあなたが婚約者に会って、幸せになる番!」
ありさも来てくれた。
「…クイーン号、行きます!」
僕は、ママにつかまれた腕を振りほどいた。そして、はるかさんと、れいこちゃんに向き直る。
「あ、あの、ついてきて くださいますか?」
「そうじゃなくて、ついてこい、でしょ…♡」
「ったく、しょーがねえ。ついてってやるよ。…えへへ♡」
はるかさん、れいこちゃん、ありがとう。ママはまだ、僕を止めようとしている。
「おやめなさい。行かせてあげるのも、愛情です」
神父さんに説得されて、ようやく、ママはあきらめた。
教会を出たところで、ママが声をかけてきた。
「お待ちなさい!…ママ、ちょっぴり、うれしいの。だって、ママがいなくても、
あなたは、しっかりやってるんですもの。ママ、あなたを見直しました。ママが、甘やかしすぎたようね。
もう【親ばなれ】のときなのね…。気をつけて、行ってらっしゃい…」

港へ向かう途中で、OLさんに道をふさがれた。
「運命の赤い糸がなんだってんだ!クイーン号なんか、沈んじゃえ!」
なんだかやさぐれているので、♡アタックでご機嫌にしてあげた。
「アタシ、ローマンっていう、ガイジン船乗りにフラれてさ…。結婚する予定だったの。
もう一度やり直したいけど、ローマンはどこにいるのか…」
ん?ローマンて聞いたことが…。
「ちょっと借りるよ」
れいこちゃんが「♡のペンダント」を持ち出して、OLさんに手渡した。
「こ、これ、ローマンの!え、六本木にいるの?アタシ、行ってみる!ありがとう!」
OLさんは喜んで、去っていった。


286 :ラブクエスト:2008/04/22(火) 04:24:59 ID:7ALH8GZx0
山下公園を歩いていると、えつこさんがやってきた。
「ちょえーす!幸せっスか、みなさん?交通安全は、みんなの願いってカンジで。
こえ、もらってくよ~ん」
あっ!「運命の赤い糸」を取られてしまった。えつこさんは港の方へ逃げていった。
取り返さないと。港へ急ぐ。途中でクレーンゲームにバッタリあった。
「アッ、こんにちは、お元気ですか。ボクも元気です。めぐみさんたちも一緒です。ボクは、見送りです」
めぐみさんと彼氏は、クイーン号に乗って、そこで式を挙げる予定なのだそうだ。
「やっぱり、私は月で結婚式を挙げたい。子供の頃からの夢なのに、やっぱり、無理なのかな…」
めぐみさんは迷っているようだ。
港へ着いた。クイーン号の前に、えつこさんはいた。僕は、えつこさんに思いっきり詰め寄った。
「ちょ、ちょえーす。…わかった、返す、返すっスよォー、旦那ー」
えつこさんから「運命の赤い糸」を返してもらった。
「…えつこサンだって結婚したい。『運命の赤い糸』持って、船に乗れば、結婚できると思ったざんす。
でも、ダメっス。船のチケット持ってないっス。
でも、まあ、そのうち、できるよね!楽勝っスよ、楽勝!ほんじゃあね。婚約者、みつかるといいね」
えつこさんは去っていった。…そうだ、船のチケットがない。なんとかしないと。
来た道を戻る。
「やっぱり、あきらめらんない。月で結婚式がしたい!」
めぐみさんだった。月か。月と言えば、こんなのを持ってたっけ。
僕はめぐみさんに、「満月」をあげた。すると、めぐみさんと彼氏は、月へ昇っていった。
…まじめにやろうとしてるのに、もう突っ込む気も起きないよ。変なことばかり起きて。
「コレ、ふたりの遺品」
クレーンゲームから、船のチケットをもらった。

船のチケットを使って、船に乗ろうとしたのだけど、チケットはふたり分しかない。
はるかさんとれいこちゃん、どっちかを選ばなくてはならない。ふたりで、船に乗った。
船内を進んでいって、最上階のデッキへ。

287 :ラブクエスト:2008/04/22(火) 04:26:11 ID:7ALH8GZx0
「お兄サマ、ここよ!」
とつぜん、そんなことを言われたのでびっくりする。それはゆみサマだった。
「私ってサァ、素直でいいコだから、今までのコト、反省してるの。
…そんなコトより、おネエさまのことよォ。ちょうど、この下の部屋にいるみたい。
かぎがかかってるから、入れないけど、あの煙突の中を通れば入れるかも。がんばって、お兄サマ!」
しおらしくなったゆみサマに見送られて、煙突の中へ。そこには、チャイナドレスの女性がいた。
彼女はキャシーといって、ラスボスとして産み出されたが、活躍する場面がなかったとのこと。
♡アタックをしてあげることに。キャシーは♡に満たされた。
キャシーにもはげまされて、とうとう、排気口から、ゆかさんの部屋の中へ。
「早かったじゃない」
「ゆかさん、ずいぶん、探しましたっ!」
僕は、ゆかさんを真っ直ぐ見つめる。すこし、キツイ感じの顔立ち。
あのときと変わらない、美しい、ゆかさん。しばらく沈黙が続いたあと、ゆかさんが口を開く。
「アタシにもやって、♡アタック。一度やってみたかったのよね。お連れさんは下がって。
ふたりきりで、ね」
部屋の中でふたりきりになる。
「あなた、アタシに手も触れたことないんだもん。さ、余計なものはつけないで…」
僕は全ての装備を外す。服を脱いで、靴とアクセサリーも取る。
だけど、負ける気はしない。僕には、これまで積み上げてきた経験がある。
最後の♡アタックが始まる。ゆかさんは、一言でよろめいた。
僕の圧倒的な強さに驚いているようだ。
「…逃げ出したりして、ごめんなさい。もう、どこにも、逃げたりしない。
ずっと、あなたと一緒にいるわ!」


エピローグ

「ゆかさん!待ってください!」
ゆかさんは、僕を強引に、横浜の教会へと連れてきた。
「さ、式のやり直しよ。神父さん、始めてください」
だけど、僕はまだ、納得できない。それを聞くまでは…。
「あの、あのとき、なんで逃げたんですか!理由、教えてください!」
ゆかさんは、やれやれ、というように、話しはじめた。
「フッ、ヤッパ、あなたには、アタシの気持ちが、ぜんぜんわかってないのね…。
もし、自分の婚約者が、いろんな経験も少なくて、お金もぜんぜん持ってなかったら、あなた、どうする?」
えっ?
「アタシはいやよ、そんな人。…アタシの言ってること、間違ってる?
でも、よかった。あなたが冒険してくれたおかげで、経験値とお金、たくさん手に入ったから。
ま、RPGお決まりのシステムを利用したってトコかな?…神父さん、始めてください」

288 :ラブクエスト:2008/04/22(火) 04:29:08 ID:7ALH8GZx0
いつの間にか、涙がこぼれる。
「経験値とお金がほしいからって、式の途中で逃げ出して、僕に冒険させるなんて…」
「メソメソしないでくれる、みっともない。…アタシたちのためにやったんじゃない。
ふたりで幸せにやっていきましょ」
だけど、僕の涙は止まらなかった。
「なんのために冒険をしてきたんだ…。こんなもの、こんなものがあるから…!!」
僕は、すべての経験値を、お金を、投げ捨てた。それを、ゆかさんが拾い集めている。
「おまえは、全部失ったわけじゃねぇ!!おまえは持ってる、一番、大事なものをよ」
そこへやってきたのは、大旦那だった。
「経験値や金がもったいねぇか?そんなもん、ほしいやつにあげちまえ!
愛ってやつは、育つもんなんだ。経験値や金で育つんじゃねぇ!
苦しいときも、悲しいときも、お互いをなぐさめあい、はげましあって、育てていくもんなんだ。
なぐさめあい、はげましあう…おめぇさんには、そんな大事な人がそばにいたはずだ。
しかも、ふたりも、な」
僕は後ろを向いた。そこには、はるかさんと、れいこちゃんがいる。
「待って!まさか、あの人たちと?冗談じゃない!そんなこと、させないから!」
ゆかさんは「運命の赤い糸」を取り出して、僕の小指に結びつける。だけど、効き目がないようだ。
「これ、ニセモノよっ!」
ゆかさんは怒っている。そんなゆかさんに、神父さんは言う。
「本物もニセモノもありません。そもそも、「運命の赤い糸」なんて、この世にありえないものなのです。
自分が相手を愛する気持ち、相手が自分を愛する気持ちに、きっと自信が持てなかった人が、
勝手に作ったものなのです。彼を、行かせてあげなさい」
ゆかさんは、やっとあきらめたようだ。
そう、経験値やお金がなくても、僕にはまだ、残っている。それは、この愛、
そして、ここまで来れたという、自信だ。それさえあれば、どんな困難でも乗り越えていける。
さあ、はるかさんと、れいこちゃん、どっち?心は、もう決まってる。
僕は、愛する人の前に立って、言う。
「僕は、あなたのことを、愛しています!」
指輪を取り出して、愛する人の指にはめた。

おしまい♡


*お詫び*
ギャグや小ネタを極力排除して、ストーリーに重点をおいて書きました。
そのせいでつまらなくなったかも知れないことをお詫びいたします。
興味がおありなら、Wikipediaなどでラブクエストのことを調べていただくと、幸せになれるかもしれません。
筆者より。

*解説*
大旦那の言った、「糸ひとたび、これをつなげば、ついにかうべからず(糸一繋之、終不可易)」は、
元ネタは糸でなく縄らしいです。かう(易う)は交換するor変わる、の意味。
元の文は「呉楚異郷、縄一繋之、終不可易」で、赤い縄で足をつなげば、
どんな夫婦でも離れられなくなる、と言う意味。「太平広記」という書物に載っている昔話だそうです。
運命の赤い糸の元ネタでございます。
同時に、「せきららの神」は「月下老人」じゃないかと。詳しくはググってください。
テキトーかと思ったのに、ソースがしっかりしてて、ビビりました。
筆者より。

*おまけ*
新宿や六本木は言うまでもなく、実在の地名ですが、
そこに配されているビルやお店の固有名詞は、まぎれもなく実在の何かがモデルです。
そう思って地図を見てみると面白いですよ。
これもテキトーじゃなくてちゃんと考えているんだと、またもやビビりました。
筆者より。

*お知らせ*
この文章は攻略にも使えます。
詰まったとき、どこへ行ってどうすればいいのかが、一応わかるようになってます。
【】内は、そのとき手に入る「口(くち)」です。


297 :ラブクエスト・エピローグの後日談 :2010/02/09(火) 21:41:38 ID:/SyPu7Pl0
*お詫び*

これは既に完結している「ラブクエスト」記事の余韻をぶち壊すひどい内容です。
ですが、これがなければ「ラブクエスト」ではないんじゃないか、との思いにより、今回書くことにしました。
内容に先立ちましてお詫び申し上げます。なお、ヒロインのセリフ以降の段落にはやや潤色が含まれてます。

エピローグ・はるか編

僕は長い冒険の果てにはるかさんと結婚した。
しかし、ゆかさんを捜すために長い間会社を休んだ僕はクビにされ、はるかさんも専業主婦になっていた。
そして、貯金も食糧も一ヶ月で底を突いてしまった。
空っぽの米びつを前に途方にくれるはるかさんと、仕事も無く呆然と窓の外を見つめる僕。
そんな僕の背中を見ながらつぶやくはるかさん。「経験値の無い人なんて・・・いまどき雇ってくれる会社もないし・・・」

そう。僕は自分が何のために冒険をしてきたのか分からなくなり、最後の最後に経験値とお金を捨ててしまっていた。
そのために僕は再就職も出来ず貯金もなくなったのだ。
確かに経験値やお金で愛は育たないが、それ以外の物を手に入れるためには必要だったのだ。
はるかさんの言葉には、全てを捨てた僕と結婚したことへの後悔が見え隠れしていた・・・。
THE END

エピローグ・れいこ編

長い冒険の果てにれいこちゃんと結婚した僕だったが、1ヶ月で生活は立ち行かなくなった。
僕は会社をクビになり、元々フリーターのれいこちゃんもお金を持ってるわけではなかったからだ。
そんなあるとき、れいこちゃんは僕がその指にはめた指輪を売り払ってしまった。
当時ヒラ社員だった僕が大それた指輪なんか用意できるはずもなく、大した額にはならなかったらしい。
それでもせっかくの指輪を手放してしまったれいこちゃんに「何てことを」と言った僕だったが、彼女の返事には声も出なかった。
「あーぁ、お金ほしい・・・」

そうだった。愛があれば良いなんて世の中では通用しないことだった。
冒険の最後に経験値もお金も捨ててれいこちゃんへの愛を選んだ僕だったけど、それでも捨てるべきじゃなかったのかもしれない。
後悔先に立たず。経験値とお金を全て捨て、今結婚指輪をも手放した僕達の手元に残されたのは、何日食べていけるか分からないはした金だった・・・。
THE END

最終更新:2010年02月26日 21:22