勇者 鎧を きる

勇者 鎧を きる

part72-508~560


508勇者 鎧 をきる2020/11/24(火) 06:02:46.62ID:2IX86syp0
それでは、フリーゲーム(RPGアツマール・ふりーむで公開)の「勇者 鎧 をきる」のストーリーを紹介します。ちなみに、このゲームはRPGですが、製作者によると「死にゲー」でもあるそうで、途中いくつもの選択肢があり、間違った選択をすると即ゲームオーバーとなるため、実質的にはADVの要素が強いです。

あらすじ
様々な種族の人間が住まうエルサーバル大陸では、数百年以上前から魔王が魔物を生み出して人間達を苦しめていた。大精霊カフィオールは魔王を打ち倒すため、人間の中から勇者を選び、その為の力として「勇者の鎧」を与えてきた。勇者の鎧を勇者が着れば今のレベルから何十倍も強くなれるが、代償として一度着たらレベルが一切上がらなくなってしまう。今代の勇者として選ばれた主人公は、魔王を倒せる強さになるまでレベルを上げ、仲間と共に打倒魔王の冒険に出るのだった。

主要人物
マーグ:主人公。16歳。大精霊から勇者として選ばれた少年。ドラクエの様に「喋らない主人公」であり、ゲーム開始時にプレイヤーが名前を自由に付けられる(「マーグ」は製作者が命名した名前で、ドラクエにおける「えにくす」みたいなもの)が、ゲーム中では専ら「勇者」と呼ばれる(ゲーム内での表記も「勇者」となっている)。勇者の力により世界で唯一電撃の魔法を使える。初期レベルは1。
エクセール:森の国の王女。17歳。森の種族でいわゆるエルフ。心優しい精霊魔法の使い手。夢見がちで勇者との冒険に強い憧れを持っている。初期レベルは18。
アルト:獣人の国の兵士長。19歳。ケモミミ。屈強な肉体の戦士。真っ直ぐで熱い男だが直情気味で、↓のレーチェに脳筋な事をよくからかわれている。初期レベルは29。
レーチェ:魔導の国の長の1人。14歳。自称天才美少女であり、自堕落でフリーダムな性格だが国一番の結界魔法の使い手。初期レベルは36。
カフィオール:大精霊。エルサーバル大陸とそこに住む人間達を創造したと言われる伝説上の存在で、人々からは神の如く奉られている。勇者に相応しい資格を持つ人間に力を与える役目を持ち、今代の勇者としてマーグを選んだ。

 

 

509勇者 鎧 をきる2020/11/24(火) 06:03:49.49ID:2IX86syp0
オープニング
主人公は長い冒険の末に、とうとう魔王の前まで辿り着いた。戦闘態勢に入る主人公に、魔王は問いかける。「貴様達人間は魔物を全て殺し尽くしたが、人間達も全て死に絶えた。この世界で生きているのは最早我と貴様の2人だけだ。何をしても、何もせずともこの世界は滅び去る。この状況で貴様は何の為に戦うのか?」主人公は魔王の質問に対し、自分のこれまでの冒険を振り返るのだった。

勇者の隠れ里編
主人公は自宅で「勇者の鎧」を前に、祖父から勇者についての教えを受けていた。
曰く、この鎧は大精霊カフィオールから選ばれた者である、勇者だけが装備できる防具である。この鎧を着ている間、防御力は勿論、攻撃力や魔力等あらゆる能力が何十倍にも上がり、火炎攻撃を完全無効化する事も出来るが、その代償として一度でも鎧を着たらレベルが全く上がらなくなってしまう。
魔王を倒す為には可能な限りレベルを上げてから鎧を着なければならないが、魔王も勇者の鎧は恐れている為、世界中の魔物が主人公を探して殺そうとしている。その為、魔物から隠れてレベル上げするべくこの勇者の隠れ里を設立したとの事。
主人公の父(祖父の息子)は先代の勇者だったが、十分なレベル上げの前に、目の前で魔物に襲われる一般人を助ける為に勇者の鎧を装備せざるを得なかった。魔物は倒せたが中途半端なレベルだった為、魔王には返り討ちに遭ったのだという。そのため、祖父は主人公にはレベルを上げきるまでは絶対に鎧を着ないよう厳命するのだった。主人公の母親も、時に非情な選択をするとしても、自分より強い魔物とは決して戦わず逃げるようにと諭していた。
隠れ里には主人公一家以外にも何世帯か在住しており、ほぼ全員主人公を鍛える為に里に住んでいる手練れで、いざとなったら主人公を守る為に戦う覚悟の持ち主だった。家族ぐるみで来ているため、主人公より年下の子供も数人いたが、やはり世界を救う勇者を守る為に燃えていた。
ある時里の外から商人の一行がやって来た。里の長である祖父から依頼を受けて、レベル1の主人公でも勝てる弱い魔物(スライム)を生け捕りにして運んできてくれたのだ。弱い魔物は現在は逆に貴重であり、商人一行が里に来るまでかなりの時間がかかったため、道中強い魔物に狙われて何人かは命を落としたと言う。主人公は商人の犠牲に報いる為にも、里の人々が見守る中里の広場でスライムと戦う。
「魔物を殺せー!」「ガンガンいこうぜ」と声援を受けつつスライムを見事に殺し、レベル2に上がった。
主人公の勇姿を見て盛り上がる人々だったが、日が暮れて夜になった頃、魔物の集団が里に襲撃して来た。里は結界で外から隠されていたが、商人達が後をつけられた為見つかってしまったのだ。祖父の見立てでは、魔物達は今の主人公では全く歯が立たない強さであり、中でも魔物達を率いている魔将軍グァーテラーは里の人々全員で戦っても勝てるか分からない程だと言う。里の人々(商人含む)は主人公にレベル上げしてもらうべく、ある者は命がけで魔物にダメージを与えて弱め、ある者はしがみついて動きを封じ、何人も犠牲になった。
ちなみにここで勇者の鎧を着れば独力で魔物を全滅させ、里の人々を守れるが、まだレベルは10未満のため魔王城に辿り着く事すら出来ず、道中の魔物の軍勢に殺されてバッドエンドとなる。

 

510勇者 鎧 をきる2020/11/24(火) 06:05:56.41ID:2IX86syp0
鎧を着ずにグァーテラー以外の魔物を倒すと、祖父や母親を含む残った里の人々がグァーテラーに一斉に奇襲をかけダメージを与えるが、反撃に遭い主人公以外の全員が致命傷を負ってしまう。負傷しながらも自分の勝利を確信するグァーテラーだが、母親にはまだ最後の策が残っていた。
「まだよ…この里には最後の戦士達がいるわ…。さあ、今こそ勇者を守るのです!」母親の号令と共に物陰に隠れていた子供達がグァーテラーにしがみつき、自爆魔法を唱えた。子供達は息絶えたが、グァーテラーの体力を大きく削る事ができ、主人公1人でも倒す事ができた。お陰でレベルは15まで上がったが、母親ももう虫の息だった。「今まで厳しい事を言ってごめんね…。どうか強く生きて…そして魔王を倒して…」それが母親の最後の言葉だった。
激戦の疲労と、自分の為に里の人々全員を犠牲にしたショックから、主人公は気絶してしまったが、その時大精霊カフィオールが大精霊の神殿から主人公の心に語りかけて来た。美しい女神の姿をしている。
「勇者の鎧を着ずによくぞ魔将軍を倒しました…。ここから長い旅が始まるでしょう。勇者の鎧の力を結晶化して『勇者のオーブ』にしたので、これを持って行きなさい。このオーブを天に掲げれば勇者の鎧をいつでも着ることが出来ます。しかしこの鎧を着るという事は貴方のレベルが上がらなくなるという事。勇者の鎧は人類の希望にも絶望にもなり得ます。どうか貴方に精霊の加護がありますように…」

 

511勇者 鎧を きる2020/11/24(火) 06:07:03.74ID:2IX86syp0
森の国編
主人公が目覚めると、知らない家のベッドの上だった。部屋の主の女性はエクセールと名乗り、ここは隠れ里にほど近い「森の国」で、数日前に隠れ里に火の手があがっているのを見て訪れたところ、気絶した主人公を見つけて保護したのだと言う。彼女は森の国王の娘であり、主人公が勇者である事を確認すると、父が話があると言って国王の元まで案内した。
森の国王は主人公にお願いをして来た。いわく、この森の国の近くには巨大な魔物の巣があり、森の国の人々は巣の主であるドラゴンや多くの魔物に苦しめられている。ドラゴンのファイアブレスは一国を滅ぼす程の威力があるが、勇者の鎧は火炎を完全に無効化する性質があるので、どうか鎧を着てドラゴンを退治して欲しいという依頼だった。
ここで「勇者の鎧を着てドラゴンを倒す」を選択すると、魔物の巣まで行き魔物達やドラゴンを倒せるが、レベル15程度では魔王の前に辿り着くのが限界で、瀕死の状態で魔王に会うものの、魔王と戦うまでもなく力尽きるというバッドエンドになる。
「国王の頼みを断る」を選択すると、国王から勇者の鎧を着るとレベルが上がらないのであれば、近場の精霊の泉まで行ってレベル上げするよう提案される。精霊の泉付近の魔物は、森の精霊の加護により比較的弱めの魔物しか出ないので今の主人公でも問題無いらしい。案内役としてエクセールを連れて行くと良いと言われ、エクセールが仲間となる。
森の国の種族は精霊信仰が盛んな一方、国王も含めて排他的で、よそ者を歓迎しない風潮があるが、エクセールは幼い頃から勇者との冒険に憧れているため、案内役に抜擢されて喜んでいた。森の国で装備や道具など準備を整えて、サブクエストで森の国の人々のお使いがてら人助けをしつつ、精霊の泉に出発した。
精霊の泉までの道中の魔物は弱めだったが、それでも今の主人公達2人では真正面からでは倒せないため、地形を利用したり、エクセールの精霊魔法で遠距離から奇襲をかけて倒していった。森の国の種族は精霊と親交が深く、相性の悪い炎の精霊以外の、風・水・土の精霊魔法を得意としており、特にエクセールはその中でもかなりの使い手だった。
2人は順調に経験値を得て主人公はレベル25まで上がり、最奥部の泉に到着した。泉の傍には森の精霊が居り、2人を暖かく歓迎してくれ、ここで一休みして行こうとしたところ、突然ドラゴンが空から現れた。

 

512勇者 鎧を きる2020/11/24(火) 06:07:46.84ID:2IX86syp0
ドラゴンによると先程自分の巣に森の国の住人が火をつけ、住人は「自分は勇者の使いだ。悔しかったら精霊の泉まで来るといい」と言い残して去ったと言う。これは森の国王の計略であり、ドラゴンの巣に使いを遣って火を放ち勇者の仕業に見せかける一方、勇者を精霊の泉まで行かせてドラゴンと対峙させて窮地に追いやり、勇者の鎧を着させて目障りなドラゴンを倒させるという寸法だった。この国には勇者の成長待ちなどという悠長な事はできず、ドラゴンを殺しても魔王に反抗しなければ森の国の平和は保てるという狙いであり、その為なら魔王を倒せず他の国が不利益を被っても良いと考えていた。
ドラゴンは自分の巣を焼かれた怒りに燃えており、今にも主人公を喰らい殺しそうな勢いだった。ここで選択肢が現れ、「勇者の鎧を着る」を選ぶとドラゴンと戦闘になる。ドラゴンを倒すと、魔王討伐は諦めて主人公がエクセールと結婚し、新たな森の国王となって、主人公と結婚出来て満足そうなエクセールと共に国を平和に治めるというバッドエンド(?)になる。
「逃げる」を選択すると、ドラゴンから逃げようとするも追い詰められて殺されかけるが、その時エクセールが「私はずっと勇者様と一緒に居ましたが、勇者様はそんな命令してません!」と弁明してくれた。証拠など一切無いが、ドラゴンはエクセールの目に偽りが無い事を感じ取り、主人公は見逃してやる事に決めた。しかし自分の巣に火を放ち騙そうとした森の国の住人は生かす訳にはいかないと怒り、エクセールにファイアブレスを吐こうとする。その時森の精霊が間一髪でブレスから庇ったが、精霊の体が焼き尽くされてしまう。ドラゴンは、精霊に免じてエクセールも見逃してやるが、他の森の国の住人は根絶やしにしてやると言い、森の国に飛んで行った。精霊は息も絶え絶えに2人に語りかけた。「ここを出て右に進むと森の国に戻るけど、ドラゴンが居るから絶対にそっちには行かずに、左に進んで『獣人の国』に行くんだ…。今は耐えて、人間同士で協力してレベル上げしてから鎧を着て戦って欲しい…。どうか人と精霊達が無事に暮らせる世界を…」そう言い残して死亡した。
ここでどちらの道を進むか選択肢が現れる。右の道に進むと、ドラゴンに蹂躙された森の国へ着く。家や人々は燃やし尽くされ、国王も瀕死の状態であり、最期に森の国を守りたかったのに滅ぼしてしまった自分の愚かさをエクセールに詫びて、死亡した。2人でドラゴンの前まで行くと、エクセールは「…お父様が貴方に酷いことをしたのは謝ります。それでも私にとっては大切な人だったのに…大切な国だったのに…!」と言い放ち、主人公を残して1人で戦おうとするが、ここで主人公が勇者の鎧を着て2人でドラゴンを倒すと、一気に時間が飛んで魔王戦となる。エクセールの他にも、まだ見ぬ仲間たちが2人も加入しており4人で戦うが、魔王の強さは他の魔物とは桁違いで、勇者のレベルが25程度では敵わず、全滅してバッドエンドとなる。
左の道を進んで森の国から離れると、エクセールが自分の本心を打ち明ける。「本当なら森の国王の娘として、勝てなくてもドラゴンに立ち向かわなくてはならないのに、助かった事に心の中で安堵してしまった自分がいるんです…。そんな自分がドラゴン以上に許せないんです!ドラゴンを倒して皆の仇を討つため、レベルを上げて協力者を集めたい、だから身勝手を承知でお願いします!勇者様の旅に同行させてください!」
2人は燃え盛る森の国を後にし、獣人の国へと向かった…。

 

513勇者 鎧を きる2020/11/24(火) 06:08:38.74ID:2IX86syp0
獣人の国編
獣人の国は砂漠の真ん中にある巨大なオアシスに出来た国であり、砂漠を越えてようやく2人は到着したが、その途端獣人の男に見つかり、獣人王の城まで強引に連れて行かれた。
城の玉座は2つあり、それぞれ壮年の男と女が座っており、女の方が主人公達を連れて来た男を叱り飛ばした。「私は勇者殿を見つけたら城に来るよう『お願いしろ』と命じたんだ!『無理矢理連れて来い』などとは一言も言っておらん!」2人は獣人の国の獣人王と獣人女王だと名乗り、夫婦で国を治めているトップであると教えた。2人は部下の非礼を詫びつつ、このアホな部下は獣人の国の兵士長をしているアルトであると紹介した。
アホと言われて落ち込んでいるアルトを尻目に、獣人王と獣人女王は、勇者の隠れ里と森の国が魔物により滅ぼされた悲劇を労った。しかし、勇者が魔王討伐に出た事は獣人の国を奮起させ、つい数日前に獣人の国の間近にある魔物の巣に攻め込み、見事に魔物を倒したと言う。魔物の巣は元々は獣人王家の墓だったピラミッドで、虫の様な魔物が多数生息していたが、獣人女王が獣人軍を率いて全滅させた(留守番させられていたアルトは不服そうだったが)。主人公とエクセールにも協力的であり、この国でレベル上げの面倒を見るので共に魔王を倒そうと言ってくれた。
喜ぶ主人公とエクセールだが、獣人女王はその前にピラミッド奪還作戦で活躍した兵士達を労うため、獣人の国でお祭りを開いており、そのイベントの一環で今晩城の闘技場で武闘大会を開催する事を宣言した。アルトも参加するが、主人公もサプライズで参加して大会を盛り上げて欲しいと頼んだ。大会が始まるまでまだ時間があるので、それまでアルトが街の祭を案内する事となり、アルトが仲間となった。
戦いでは無く案内役をさせられる事にやや不満げなアルトだったが、先程の自分の無礼を主人公に詫びて仕事は真面目に行い、獣人の国を案内してくれた。獣人は獣の様な爪や毛、耳などが生えており、魔法は使えないが身体能力が高く、その強さを誇りとする種族で、獣人王と獣人女王もこの国で最も強い獣人だった。兵士長のアルトもそれに次ぐ強さの持ち主で、人々から慕われていた。途中人助けイベントをこなしつつ、夜になると城で武闘大会が開催された。獣人王や獣人女王、兵士の他、国中の人々が観戦する中、主人公は第一試合で獣人の兵士と戦う事になり、観客席のエクセールやアルトの激励を受けつつ戦った。
主人公が勝つと、それまで紳士的だった対戦相手がいきなり豹変し、半狂乱になりながら主人公を殺しにかかってきた。戸惑う主人公やアルト達だったが、おかしくなったのは対戦相手だけでなく、観客席の他の兵士や獣人女王までもいきなり周囲の人達を殺傷し始めた。止むを得ず応戦する主人公達だったが、多勢に無勢のため、エクセールの機転で城の篝火を風の精霊魔法で飛ばし、城に火をつけて包囲を突破した。燃え盛る城の中、主人公とエクセール・アルトは合流し、とにかく獣人王と獣人女王の元に向かう事にした。獣人女王は獣人王に襲いかかっており、獣人王は身を守る事で精一杯の状況のため、急いで玉座のある城の上層階に向かった。途中豹変した獣人兵達が殺しにかかって来たため何人も手にかけなければならず、特にアルトは自分の部下を殺す度に、この理不尽さに強い憤りと悲しみを感じていた。
獣人王達の元にようやく辿り着いた。獣人王は既に満身創痍であり、アルトは獣人女王に何故こんな事をするのか問い質すと、女王は高笑いしつつ、自分は獣人女王では無く、お前達獣人軍が数日前に全滅させたと思っているピラミッドの魔物、ソリューバである事を告げた。獣人女王の肉体から魔物がサナギの如く脱皮し、多数の触手や複眼を備えた醜悪な怪物の姿に変わった。ソリューバはピラミッドに住んでいた寄生虫の魔物の女王であり、産んだ子供の虫を敵に植えつけて操ったり、自分を殺した相手の脳に寄生する能力がある。その能力で獣人女王や侵攻してきた兵士達を乗っ取ったのだと言う。だからピラミッド奪還作戦に参加しなかったアルトや獣人王は平気だったのだ。

 

514勇者 鎧を きる2020/11/24(火) 06:09:18.52ID:2IX86syp0
よくも獣人の国のみんなを、と怒りをぶつけるアルトだが、ソリューバは「元はと言えば勇者が魔王様討伐の旅に出て、それを受けてケモノ共が奮起してピラミッドに侵攻したのだから、この国が滅ぶのは私のせいではなく勇者のせいですわ」と言い放つ。そして主人公達を抹殺し、自分の子供の虫を植えつけて手駒にしてやると宣言するが、目の前の獣人女王がもはや自分の妻では無いと理解した獣人王が、獣人奥義「獣神獄炎斬」を放ち、ソリューバに手傷を負わせる。この技は武器に炎を纏わせて大ダメージを与えるが、使い手の命をすり減らして放つ技で、獣人王はアルト達を助ける為に命を捨てる覚悟で繰り出した。ソリューバは火を過剰に恐れている事から、炎が虫の弱点だと判明するが、既にソリューバは獣人王に警戒している上、獣人王は刻一刻と弱まっていた。
アルトはエクセールに、お前は炎の精霊魔法は使えないのかと問うが、炎の精霊魔法は森の国の民とは相性が悪い為無理だと言い、代わりに主人公の電撃魔法の熱ならどうかと提案するが、今の主人公のレベルでは大した火傷にはならない。助かる為には勇者の鎧を着て魔力を何十倍にも上げなければならない。アルトは主人公に、この国の為に勇者の鎧を着てくれと懇願するが…。
ここで選択肢が出て、「勇者の鎧を着る」を選ぶとソリューバと戦闘となる。極大電撃魔法を使えるようになったことでソリューバの体を焼き焦がして虫を植えつけて操る技を封じ込み、勝利できる。しかし一瞬の油断が仇となり、主人公が寄生され、勇者の鎧を着た主人公がソリューバに乗っ取られるというバッドエンドになる。
「逃げる」を選ぶと、勇者の鎧を着ずに後ずさり、それを見たアルトが、「そもそもこれは俺達獣人の戦いなんだ!他人をあてにするなんて獣人の誇りが泣くぜ!」と奮起し、虫の良い事を言って悪かったと主人公に詫びつつソリューバに特攻を仕掛ける。「例え俺達は殺せても、その魂までは消せねえぞー!」アルトの男気を見たエクセールも、「勇者様は世界を救うという重大な使命があるんです!ここは私達に任せて逃げてください!」と立ち向かう。しかしソリューバの反撃に遭い、2人とも吹き飛ばされてしまう。アルトは間一髪獣人王が受け止めたが、エクセールは吹き抜けを通って火の海となっている下層階に落とされてしまう。
エクセールが焼死したと思い、絶望的になる一同だが、その時炎と共にエクセールが舞い戻る。土壇場で覚醒し、炎の精霊をも従えられるようになったのだ。お陰で虫による寄生や人間を操作する能力を防ぐ事ができる上、虫系攻撃や炎系攻撃によるダメージを9割減できるようになった事で、主人公・エクセール・アルトの攻撃でソリューバを討ち倒した。主人公のレベルは32に上がったが、エクセールは相性の悪い炎の力を無理に使った事で疲労困憊となった上、ソリューバが死んでも他に寄生された兵士達は健在で、国中の人々を殺し尽くしていた。主人公達にゾンビの如く近づきつつある元兵士達の集団を前に、獣人王が自分1人で食い止めるから3人は逃げるように告げる。獣人王1人を残して逃げるなんて嫌だと反対するアルトに、獣人王は「生き延びて魔王を討ち、その暁にはお前が新たな獣人王となって、獣人の国を再興しろ!その為にも隣国の『魔導の国』に協力を求めるのだ!」と言い放ち、3人を逃した。アルトは絶対にこの国に帰ってくる事を誓い、3人で燃え盛る獣人の国を後にし、魔導の国へと向かった…。

 

515勇者 鎧を きる2020/11/24(火) 06:10:05.40ID:2IX86syp0
魔導の国編
高い壁に囲まれた石造りの街がある、魔導の国に到着した3人。門を通って街の中に入ろうとしたところ、門から拘束魔法が放たれて動けなくなってしまう。3人が苦しんでいると、街の方から少女がやって来た。彼女がこの「魔導ゲート」の制作者であり、強い魔物等高い魔力を持つ者に反応して拘束する仕組みのため、特別な勇者の魔力を持つ主人公に反応してしまったらしい。
一悶着あったが、どうにか魔導ゲートから解放され、魔導の国のトップに会いたい事を少女に言うと、それなら目の前に居ると言う。主人公達よりも年下の女の子の、レーチェこそが魔導の国の長の1人なのだ。驚く3人に、この国は魔力こそが全てであり、天才美少女である自分だからこそこの国のトップなのだとレーチェはのたまう。なら自分達の魔王討伐に協力して欲しいと頼むが、国1番の魔法使いとは言え、小娘の自分1人では国の方針は決められ無いので、国の中央にある館にいる他の長たちに頼む必要があり、自分がそこまで案内すると言う。こうしてレーチェが仲間になった。
館に行く前に魔導の国を見て回る4人。魔導の国には魔法に長けた人が多く、レーチェを含む高魔力の長達は魔導ゲートのような「結界魔法」を用いて外敵を防いでいる。結界魔法の中でも至高にして難度が高いと言われる「退魔結界」は国の長達によって日夜研究されているのだと言う。特にレーチェはこの国始まって以来の天才であり、人々からの期待も高かった。
館に着き、長のトップである長老のデリンに会う4人。事の成り行きを説明し、協力を仰ぐが、デリンは返事をする前にこの国の成り立ちを話し出した。数百年前にこの地に魔物の巣を作り暴虐の限りを尽くしていた魔導兵器ゴーレムと、その配下の4体の魔物「四魔獣」は、結界魔法の開祖の長が編み出した退魔結界により今でもこの国の地下に封じ込められている。デリン達はその退魔結界を解析して戦闘にも応用しており、解析が終われば魔王すらも封印出来るのだと言う。その為勇者などと言う不安定な物に頼る必要等無いと豪語し、協力を断った。そのため研究材料のゴーレムは差し出せないが、最大限の譲歩として、封じられている四魔獣は勇者達に倒させて経験値を恵んでやろうと提案した。退魔結界が如何に完璧か分かれば、自分達で魔王を倒す必要など無い事が分かるだろう、と。
デリンは森の国や獣人の国が魔物によって滅んだのは国の知識不足が生んだ不幸な事故であり、魔導の国ならばそんな事にはならないとまで言われ、アルトは自分達の国を小馬鹿にされた事に怒りをぶつけるが、エクセールに制止される。険悪な雰囲気になりかけたが、こうなってしまった事に責任を感じたレーチェが「あのオッサンの言う事が気に食わないのは完全に同意だけど、退魔結界が完璧なのは本当だから、ここは四魔獣を倒してレベルアップしようよ!」と(デリンの前で)説き伏せ、地下の「封印の間」に閉じ込められている四魔獣を倒しに行った。
四魔獣はゴーレムには劣るものの特殊なバフ魔法を使うため非常に強いが、開祖の結界により戦闘開始から2ターンは行動が封じられる上、レーチェが退魔結界を重ね掛けする事でバフを解除出来るため四魔獣を次々撃破し、レベルを上げる事が出来た。

 

516勇者 鎧を きる2020/11/24(火) 06:11:03.01ID:2IX86syp0
ゴーレムも封印の間の最奥部で完全に沈黙しており、退魔結界が魔物に通用している事を確認して地上に戻る4人。やっぱり勇者には協力してくれないのかと問うと、デリンは「すまんが我等には我等のやり方があるのだ」と返答された。レーチェは3人にこれからどうするのかと聞き、魔王軍との戦いの最前線にしてエルサーバル大陸最大の国である「人間の国」に行き、人間軍に参加するつもりであると答えた。レーチェも3人の冒険について行きたいと言うが、デリンから「お前は長としてこの国で退魔結界を解析する義務がある」と却下した。別れを惜しむ4人だが、魔導の国が解析を終えたらまた合流して人間の国で一緒に戦う事を約束した。
とその時、封印の間に続く扉が内側から破壊された。重々しい足音を響かせながら、扉の奥より、封印されていた筈のゴーレムが現れた。突然出てきたゴーレムに驚きながらも、すぐに退魔結界を仕掛けるデリンや他の長達。しかし退魔結界はあっさりと解除され、デリン達はゴーレムの反撃に遭い致命傷を負ってしまう。
「なぜだ…開祖の…我等の退魔結界は完璧なはず…」ゴーレムは機械的な音声で答える。「退魔結界は53年と12時間前に解析済み。しかし退魔結界は魔王様の驚異となり得ると判断し、解除した後も敢えて封印の間に留まり魔導の国の情報収集に務めた。また、勇者一行が四魔獣を倒す実力がある事を知り、魔導の国の破壊及び勇者抹殺を決行」自分達の退魔結界がとうの昔に通用しなくなった事に愕然とし、デリンは最期に「恥を忍んで頼む、勇者よ…勇者の鎧を着て、レーチェを…この国を救ってくれ…」と言い遺した。
ここで「勇者の鎧を着る」を選ぶとゴーレムと戦闘となり、鎧の力によりゴーレムを倒せる。しかし撃破後にゴーレムは自爆シーケンスに移行し、「自爆5秒前…4…3…」とカウントが始まる。急いでその場から離れようとする4人だが、主人公は恐らく爆発からは逃げきれないだろうと判断してその場に留まり、自分の命を懸けて爆発を抑え込む。勇者の鎧の力もあり3人の仲間は無事だったが、主人公はゴーレムと共に跡形も無く消し飛んでいたため、仲間達は悲しみに暮れるというバッドエンドとなる。
「逃げる」を選ぶと4人はその場から全速力で離れるが、ゴーレムが追いかけて距離を詰める。館内の他の魔導兵士達も集まり、効果がない事も知らないままゴーレムに退魔結界をかけるが、あっさり返り討ちに遭い全員死亡する。デリン達に続いて余りにも呆気なく大勢の仲間が殺された事でレーチェの怒りが限界を超え、土壇場で退魔結界を超える退魔結界、「超☆︎退魔結界」を編み出し、ゴーレムを封じた。発動コストは高いものの行動を2ターン封じる上全ステータスにデバフをかけるという反則的な新技により、ゴーレムを撃破した。お陰で主人公のレベルは45に上がったが、その直後にゴーレムが自爆シーケンスに移行し、「自爆5秒前…4…3…」とカウントが始まる。焦る4人だが、咄嗟にレーチェが超☆退魔結界を反転して敵の攻撃を1ターン完全に遮断する「絶界」を編み出し、結界で覆われた4人は無事だった。しかし、絶界の解除後に目に映ったのは見渡す限りの瓦礫の山であり、ゴーレムの自爆により魔導の国は消滅していた。あまりの出来事にレーチェは泣き叫ぶ事しか出来なかった。こうして4人は、最後に残った国である人間の国へ向かった…。

 

517勇者 鎧を きる2020/11/24(火) 06:11:43.76ID:2IX86syp0
人間の国編
人間の国に到着した4人だが、武器屋やレストランは昼間から閉店し、死者が多数出た事で多くの民家が空き家となっていた。元々は人間達の国の中で最大の人口と規模を誇っていた人間の国だが、魔物達により森の国も獣人の国も魔導の国も滅んで交易が無くなった事や、連日の魔王軍の攻撃により人々の暮らしは荒んでいた。悪くなったのは人間の国だけでは無く、勇者の評判も最悪で、主人公が訪れた国が魔物に狙われて尽く滅んだことから疫病神のような扱いだった。反面、滅んだ国々の人も僅かに生き延びており、エクセールやアルト、レーチェ達は再会を喜んだ。
この国の王である人類王に謁見するため城に向かう4人だが、その途中大精霊カフィオールを奉っている神殿があった。神官から促されて主人公はカフィオールの像に祈りを捧げたところ、勇者の隠れ里以来にカフィオールが主人公の心に語りかけてきた。様々な苦難を乗り越えて魔王の直前まで来た主人公を認めつつも、悪い知らせを告げる。「私はこれまで人間達の中から優れた素質を持った者を勇者に選び、力を与えてきました。先代の勇者だった貴方の父親の気高さは貴方にも引き継がれていました。その為貴方の父親が命を落とした後はすぐに貴方を勇者に選びました。しかし今や人類の数が激減した事で、貴方が命を落とすと勇者に相応しい者は世界から居なくなります。そうなれば次の勇者が現れるまで人類が持ち堪えられる保証はどこにもありません。つまり貴方が事実上『最後の勇者』という事になります。どうか魔王を倒して世界を平和に導いてください…」
その後4人は城に向かい、人類王と呼ばれる人類を束ねる指導者である初老の男性に謁見した。ここまで来た4人を称えつつ、しかし魔物により世界に残された国は今やこの国だけになってしまった事を憂いた。
人類王はこの世界の歴史を語る。何百年も前から魔王に対抗する唯一の可能性として、何人もの勇者が大精霊により選ばれたが、今まで誰一人として魔王を倒した者は居なかった。どういう訳か、魔王は魔王城から外には一切出ず、勇者が死ぬと次の勇者が現れるまでの間は侵攻の手を緩め、人類には仮初の平和が訪れる。その為人々の中には、勇者がいるからこそ魔王が人間を苦しめるのだから、勇者こそが諸悪の根源なのでは無いか、もはや勇者を魔王に差し出して降伏すべきではという意見すらあると言う。仲間達は、そんな馬鹿な、悪いのは魔王に決まっている、生き延びる為に魔王に従うなんてごめんだ、と反発する。人類王は全くもって同感だと言い、かつて主人公が勇者に選ばれた時は自分の命令で勇者の隠れ里を設立させたのだと語る。魔王を倒さずして人類に真の平和は訪れないと主張し、勇者には全面的に協力する事を約束した。

 

518勇者 鎧を きる2020/11/24(火) 06:12:23.44ID:2IX86syp0
その後、人間軍と魔王軍の戦いの最前線の基地の「人類砦」に移動した一行。滅んだ国々の生き残りの兵士や元々の人間の国の兵士達との混成部隊に主人公達4人も組み込まれ、全員の前で人類王が戦略を知らせた。いくつもの国を滅ぼした事で魔物には油断が生じているはずなのでそこを突き、まず勇者を囮にして1人で魔王城前まで歩かせる。魔物達は人類が降伏したと思い込み勇者に引きつけられて大軍で城から出てくるだろうから、勇者は全力で人類砦まで逃げ、待ち構えている人間軍と合流する。魔物達は不意を突かれるので、そこを一網打尽にし、遠距離から弓部隊や魔法部隊が攻撃を仕掛け、歩兵部隊が近距離から敵の編成を乱し、勇者は治療部隊から回復魔法を受けつつ適度に弱まった魔物にとどめを刺してレベルを上げる、というのが作戦の第一段階であり、第二段階としてその勢いのまま魔王城まで突撃して勇者のレベルを限界まで上げて鎧を着て、魔王を速攻で倒すという電撃作戦だった。魔王が全ての魔物を作り出し力を分け与えているため、魔王さえ倒せれば他の魔物達も全て無力化出来るのだ。
囮役の主人公にはかなり危険な作戦だったが、期待通り門番の魔物や城内の魔物達を大勢引きつけ、無事仲間と合流し、多数の魔物を倒してレベル51まで上がった。作戦の第一段階の成功に歓喜に沸く人間軍だったが、その時伝令により、守りが手薄な人間の国に魔物達の軍勢が攻め込んでいるという報せが入った。
魔王城に攻め込めばその間に人間の国を落とされ、人間の国を守る為に戻れば魔王城に攻め入る機会を失ってジリ貧になる。悩む一同だったが、折衷案として、軍を二手に分け、半分を防衛に、もう半分を攻城にまわす事にした。人類王は兵士達の心情を考慮し、防衛側の兵士は人間の国出身の者を配備して自分達の家族や友人を守れるようにし、攻城側の兵士は敵討ちに燃える滅ぼされた国々の生き残りの者をあてた。人類王は防衛側で指揮をとり、主人公達4人は攻城側にまわった。いよいよ最後の決戦が始まろうとしていた。この戦いが終わったらエクセールは森の国を、アルトは獣人の国を、レーチェは魔導の国を、それぞれの国の生き残りの人達と共に再興する事を誓い、出撃した。

 

519勇者 鎧を きる2020/11/24(火) 06:14:36.81ID:2IX86syp0
魔王城編
攻城側は兵士達を分散させ、時間差で攻め込む作戦となった。人類砦から魔王城までの間、先行した兵士達により魔物が数体瀕死にされており、4人はとどめを刺してレベルを上げた。しかし先行の集団は城門前で多数の魔物に足止めされており、主人公達4人が城門前に着いた時は既に大勢の人間が殺されていた。
先陣をきっていた獣人の国の兵士も殺されてしまい、アルトは怒りに燃えていたが、その時魔物側が秘密兵器を繰り出した。城内から重々しい足音を響かせて、魔導の国で自爆した筈のゴーレムが現れたのだ。ゴーレムはオリジナルと予備の2体が作られており、オリジナルの方は自爆する瞬間まで勇者との戦闘データを予備に送信していたため、対勇者用の改良を施されていると言う。自分の国を跡形も無く消された事がトラウマになっていたレーチェは、ゴーレムが再び現れた事で怯えて立ちすくんでしまう。しかしアルトはレーチェを奮起させ、獣人の強さは肉体の強さでは無く仲間を守る心の強さにあると言い、レーチェや他の仲間はもう誰も死なせないと言い放つ。普段脳筋扱いしていたアルトから熱い励ましを受け、赤面しつつもトラウマを払拭したレーチェは復帰した。他の魔物達は人間軍の兵士達に足止めさせている間、強化型ゴーレムと戦闘になる。
改良されたゴーレムには勇者の電撃魔法を大幅に低減する装甲が付いていたが、主人公は自分の剣先一点に電撃を集中させて威力を高める「勇者突き」を編み出してゴーレムの装甲を破り、アルト、レーチェ、エクセールとの連携でゴーレムを撃破した。しかしゴーレムは例によって自爆シーケンスに移行し、カウントダウンが始まってしまう。魔王城を守る役割のため流石にオリジナル程の威力は出ないが、それでもこの場の人間軍を皆殺しにする威力はあると言う。
絶望に打ちひしがれる一同だが、アルトだけは「待っていたぜ、この瞬間を!」と言い、機能停止したゴーレムを1人で押し、魔物側の集団まで一気に移動させる。巨体のゴーレムを腕力だけで動かすアルトに驚く魔物達だったが、自爆カウントが残り1秒のところで慌てて自爆の中止を指示する。カウントは止まり、魔物の集団にただ1人囲まれているアルトは総攻撃を浴び、瀕死になってしまう。アルトを助ける為に駆け寄ろうとするレーチェだが、アルトから制止され、主人公にレーチェや他のみんなを連れて離れるように頼んだ。主人公はアルトの意志を汲み取り、人間軍全員を連れて離れ、それを確認したアルトは、かつての獣人王の様にゴーレムに獣人奥義「獣神獄炎斬」を放つ。命懸けの奥義によりゴーレムは破壊され、自爆した。
その爆発により周囲の魔物は跡形もなく吹き飛んだ。レーチェはアルトがいないか辺りを必死に探すがどこにもおらず、物音がした方を見ると、そこにいたのはゴーレムに自爆の指示を出した魔物だった。咄嗟に部下の体を盾にして生きていたのだ。「ちっ、あのイヌッコロ、自分もろともゴーレムを自爆させるとは…。まあ自分も死ぬんじゃとんだ馬鹿野郎だったな」と蔑むが、それがレーチェの逆鱗に触れた。「何でアルトが死んだのにお前は生きてるの?今すぐ死んでよ!」と言って魔法で瞬殺し、魔物が絶命した後も死体を攻撃し続けた。エクセールから制止され、攻撃の手をようやく止めて、泣きながらアルトの死を悲しむレーチェだった…。

 

520勇者 鎧を きる2020/11/24(火) 06:16:03.33ID:2IX86syp0
ようやく魔王城内部に入った人間軍一同だが、そこにも魔物が大勢待ち構えており、多勢に無勢で何人も犠牲になってしまう。魔導の国の兵士は状況を変えるために、魔物の群れの中に飛び込んで自爆魔法で魔物達を道連れにしようとするが、発動前に魔物に潰されてしまい、レーチェに役に立たなかった事を詫びながら死んでしまう。魔物達への憎しみが限界を超えたレーチェは、今までに無い規模の退魔結界を張る。この場の魔物達はおろか、魔王城内全てを覆う程の結界で、魔物達は身動きがとれなくなる。レーチェは語る。「アタシね…分かったんだ。退魔結界は『呪い』だったんだ。魔導の国の開祖様って、きっと魔物が憎くて憎くて堪らなかったからあんな凄い退魔結界を張れたんだね。今のアタシとおんなじだ。今のアタシなら開祖様と同じ退魔結界が出せると思う」レーチェは退魔結界を張るたびに今まで自分の心がすり減っていくのを感じていたため、無意識のうちに自分でブレーキをかけていた。しかしこの最強の退魔結界を放てば、その反動で自分は命を落とすだろうと言った。
エクセールは、アルトだけで無くレーチェまで死ぬなんてダメだと説き伏せるが、レーチェはそんな風に言ってくれるエクセールが大好きだと言いつつも、だからこそ大好きな人を守りたいと反論。この結界で魔王城内の魔物は行動不能になる筈だから、主人公達は魔物を倒してレベルを上げ、魔王を倒すように頼んだ。レーチェは最期に、魔物を呪った自分では、死んだ後アルトと同じ場所には行けないだろうと言いながら、誰かを呪わなくても良いような、平和な世界にするように主人公に後を任せて死亡した。
アルトに続いてレーチェまで失った一行だが、悲しむ暇は無く、城内を進んで行った。レーチェの最期の結界により多くの魔物は行動不能になっていたため楽に狩る事が出来たが、城には多数のトラップがあった事と、レーチェの結界の発動後に城の外から戻ってきた魔物は行動できた為、兵士達はどんどん命を散らしていき、とうとう主人公とエクセールの2人だけになってしまった。それでも進行を止めるわけにはいかず魔王を目指す2人。レベルは91に上がり、ついに魔王がいる最上階まであと一歩となったが、そこにドラゴンが飛んで来た。
森の国以来の再会であり、自分の国を滅ぼした仇に怒りをあらわにするエクセールだが、ドラゴンはこれまでの魔物よりも遥かに強く、エクセールの炎の精霊魔法をもってしてもドラゴンのファイアブレスを何度か防ぐのが限界で、戦闘不能になってしまう。勝ち誇るドラゴンだが、エクセールには逆転の策があった。獣人の国で炎の精霊魔法を習得した際、精霊の力を使い切ったらこの身を捨てて自分自身が精霊になり、主人公に一度だけ力を与える契約を炎の精霊と交わしていたのだ。そんな事を人間がすればすぐに肉体も精神も消えると驚くドラゴンに対し、エクセールは打ち明ける。
「本当なら私の手で森の国のみんなの仇をとりたかった…そして勇者様をこれ以上一人ぼっちにさせたくなかった…私だけでもそばにいてあげたかった…。でも、アルトさんもレーチェも勇者様に後を託していった!だから、今度は私が文字通りこの命を燃やす番!」そう言って自身を精霊と化し、主人公に加護を与える。エクセールの加護によりドラゴンの炎は完全に無効化され、ドラゴンを倒した。主人公のレベルはとうとう人間の限界であるレベル99の一歩手前、レベル98まで上がった。ドラゴンはかつては弱かった主人公とエクセールがここまで強くなった事を称え、「魔王様との決着を地獄から見させて貰おう」と言って生き絶えた。エクセールは森の国の皆の仇をとった主人公に礼を言いつつ、間もなく自分は自然の一部となりエクセールという概念は消える事を明かす。消える直前、女の子として一度だけで良いから恋をしてみたかったと主人公に告げる。「もしまた人間として生まれ変わる事が出来たなら…その時は、勇者様…」自然の一部となって消滅し、最後まで言葉を続ける事が出来なかったエクセールだが、消える直前に自分はもう主人公に恋をしていた事に気づけたのだった…。

 

521勇者 鎧を きる2020/11/24(火) 06:16:30.14ID:2IX86syp0
とうとうたった1人となり、魔王の間に入る主人公。魔王は頭から角の生えた壮年の男性といった姿で、玉座に座って主人公を待ち構えていた(ここでオープニングの場面に戻る)。戦闘態勢に入る主人公に、魔王は問いかける。「貴様達人間は魔物を全て殺し尽くしたが、人間達も全て死に絶えた。この世界で生きているのは最早我と貴様の2人だけだ。何をしても、何もせずともこの世界は滅び去る。この状況で貴様は何の為に戦うのか?」人間の国も防衛しきれず、結局全滅してしまったのだ。主人公は何も答えず、魔王は告げる。「語るまでもない、という訳か。良かろう。さあ、勇者の鎧を着るのだ!」
主人公は勇者のオーブを天に掲げ、とうとう勇者の鎧を着た。レベル98から何十倍もの強さとなった姿を見て、魔王は言う。「ここまで高レベルの勇者を見るのは初めてだが、最大レベルの99には届いていなかったようだな…。しかし…なるほどな。今の貴様は1人にあって1人にあらず…我の目には貴様の背後に渦巻く大勢の人間の想いが見えるぞ!」魔王だけでなく、主人公も感じていた。倒れていった仲間達、エクセール、アルト、レーチェが、尚も自分を応援し、後を押してくれていることを。ここで戦っても何も残らないのかもしれないが、彼らの遺志を無駄には出来なかった。
魔王は高らかに笑う。「様々な想いがレベル差を埋め、勇者としての力を幾重にも高めているようだな。面白い!相手にとって不足無しだ!勝負だ、勇者よ!」最後の決戦が始まった。魔王は通常攻撃だけでなく魔法攻撃も強力で、中でも極大闇魔法はこれまでの魔物の攻撃よりも遥かに強かった。しかし主人公も勇者の鎧を着て極大電撃魔法が使えるようになったことで互角の戦いとなり、無事勝利した。「見事だ…勇者よ…。歴代勇者の中で我を倒したのは貴様が初めてだ…。しかし最早この世界で生き残っているのは貴様だけだ…。生命の存在しない世界で貴様の生き様を、地獄から見せてもらうぞ…」魔王はそう言って事切れた。
その直後、主人公は魔王の間から大精霊の神殿にいた。カフィオールが主人公を召喚したのだ。
「私は大精霊カフィオール。今まで魔王に封印されていたため貴方を支援する事も出来ず、辛い思いをさせてしまいましたね。しかし貴方は見事に魔王を倒してくれました。ですがその代償として人間と魔物の戦いにより世界は荒廃し、生き残ったのは貴方だけとなってしまいました…。
勇者よ…貴方はこんな結末で納得できますか?小さな力で勇気を振り絞り、誰も救えなかった世界。ではもしも勇者が最初から大きな力を持っていたらどうでしょう?最初から最大レベルでやり直せたら、その結末はどうなるでしょう?貴方が望むならその選択肢を用意する事ができます。貴方の選択は…?」

 

522勇者 鎧を きる2020/11/24(火) 06:17:27.25ID:2IX86syp0
強くてニューゲーム編
気付くと主人公は勇者の鎧を着たまま勇者の隠れ里の自室に居た。カフィオールの声が伝わってくる。
「勇者よ…。私の全ての力を使って時を巻き戻しました。今は里に魔将軍グァーテラーが襲いかかっている時です。レベル98で鎧を着てしまったので本来ならもうレベルは上がりませんが、魔王を倒したご褒美と新たな旅の餞別で、1レベルだけ上げてあげましょう。それっ!」カフィオールから力を与えられ、主人公のレベルは最大の99となった。「さあ、貴方の思うままに戦い、世界を救うのです!」
主人公は自室から居間に移り、母と祖父に会った。前回の世界と同様に、魔将軍が襲撃して来た事を報告されるが、2人とも直後に主人公が勇者の鎧を着ている事に気付く。「何という事…。レベル2で勇者の鎧を着てしまうなんて…この里は救われても、世界は終わりよ…」嘆く母やその他の里の人々。今の自分はレベル99なのだと説明しても真に受けて貰えない。主人公は自宅の外に出て魔物と対峙し、かなりの強敵にも関わらず軽く腕を振るっただけで遥か彼方に吹き飛ばした。あまりの強さに人々はレベル99という事を信じざるを得なくなり、驚愕するしか無かった。
里の各地で魔物を見つけては瞬殺して人々を助けていく主人公。残るはグァーテラー唯1人。グァーテラーは鎧を着ているとは言え低レベルの勇者には負けぬと意気込むが、主人公の体には傷一つつけられず、逆に主人公の一撃で戦闘不能となる。理不尽な程の強さに恐れ慄くグァーテラーだが、主人公は有無を言わさず、渾身の力でグァーテラーを殴り飛ばした。主人公の凄まじいパワーとコントロールにより、グァーテラーの体は勇者の隠れ里からエルサーバル大陸の端にある魔王城まで吹き飛ばされ、城の門扉に激突した。門番の魔物が驚く中、グァーテラーは「勇者…恐るべし…」と呟いて絶命するのだった。
翌朝、勇者の隠れ里では人々が無事に魔物の襲撃を凌いだ事を喜び、主人公の活躍を祝っていた。犠牲者は最小限に抑えられ、1周目の世界では死んでいた商人や子供達も無事に生きていた。主人公の祖父は言う。「この里はそなたを鍛えるために設立したものだが、今のそなたはなんと言うか…、突然変異の様に強くなった。もはやこの里に居る必要は無いじゃろう。魔王討伐の旅に出ると良い。だが、魔王軍はいくつかの国のすぐ傍に魔物の巣を作っており、強力な魔物のボスが人々を苦しめている。まずは魔物の巣に攻め入ってボスを倒し、各国の人々を救うのじゃ!」隠れ里の人々に見送られ、まず主人公は近くにある森の国へ行くのだった。

 

523勇者 鎧を きる2020/11/24(火) 06:18:06.94ID:2IX86syp0
森の国に着き、国王の住む館でエクセールと会う主人公。時間が巻き戻された事でエクセールとの出会いは無かったことになったが、エクセールには僅かに記憶が残っているらしく、どこかで主人公に会った気がすると言っていた。森の国の王に謁見すると、既に勇者の鎧を着て魔将軍グァーテラーを倒した事を知っており、その鎧の力でドラゴンを倒して欲しいと頼まれた。1周目の世界では鎧を着ておらずレベル上げも済んでいなかったため断ったが、今の主人公に断る理由は無く、快く引き受けた。主人公はドラゴンの住む魔物の巣に単身で乗り込み、道中の魔物を全滅させてドラゴンに対峙した。ドラゴンは例え自分の炎が無効化されても、爪や牙で勇者など返り討ちにしてやると言って戦闘開始となるが、そんな攻撃では主人公は全くダメージを受けず、一撃で敗北した。常識外れの強さに愕然とするドラゴンだが、主人公は無言で殴り飛ばし、やはり魔王城の門扉に激突させた。門番の魔物が驚く中、ドラゴンは「勇者…恐るべし…」と呟いて絶命するのだった。
翌朝、主人公は森の国で国王とエクセールから感謝の言葉を受けていた。外部との接触を嫌う森の国の住人だが、この件で勇者は特別扱いとなった。国王は興奮の余り、お礼を兼ねて娘のエクセールと結婚してこの国の王になって貰えないかと言い出す。いきなり結婚の話になって赤面しながら慌てて国王を止めるエクセール。「お父様、勇者様には魔王討伐の使命があるのですから…」「ふうむ、そうですか…では魔王を倒したらその時に結婚すると言うのは…」「お父様っ!」どうにか国王を宥め、後の話は魔王を倒してからする事となった。
エクセールも主人公の旅に同行したい気持ちはあるものの、自分では足手まといになってしまうと言って主人公を快く見送った。再び旅に出ようとする際、国王は言う。「聞くところによると、獣人の国ではピラミッドの魔物の巣へ、大規模な奪還作戦を準備しているようです。勇者様も参加されてはいかがでしょうか?」1周目の世界では、獣人の国に着いた時点でピラミッドへの奪還作戦は完了していたが、この2週目の世界ではまだそこまで日数が経っていないのだ。主人公は作戦開始に間に合わせるべく、急いで獣人の国へ向かった。

 

524勇者 鎧を きる2020/11/24(火) 06:18:37.92ID:2IX86syp0
獣人の国に着いた主人公。その途端アルトに見つかり、獣人王の城まで強引に連れて行かれた。道中、やはり主人公に見覚えがある事に疑問を感じていたアルトだが、その理由は分からなかった。城に着くと、獣人女王から「私は勇者殿を見つけたら城に来るよう『お願いしろ』と命じたんだ!『無理矢理連れて来い』などとは一言も言っておらん!」と叱られるアルト。獣人王に宥められつつ、奪還作戦をもうじき開始するつもりである事を女王は説明し、主人公にも意見を聞きたいと言う。1周目の世界ではこの奪還作戦により獣人女王と兵士達が虫の魔物に寄生され、獣人の国は滅んでしまったのだ。主人公はその事実は伏せて、ピラミッドの魔物は寄生虫であり、大勢で行けば大惨事は免れない事だけを伝えた。思いもよらぬ事実に驚愕する一同。しかしピラミッドには魔物が多数生息している上、侵入者対策のため危険な罠がいくつもあるので、少数で攻めても返り討ちに遭う危険がある。その為、主人公は自分1人でピラミッドに攻め込むと言った。勇者なら恐らく大丈夫だろうが、獣人女王は念のためアルトをピラミッド入口までの案内役とし、もし勇者に何かがあれば自分達に報告する任務を与えた。
獣人の国のすぐ傍にあるピラミッドまでアルトに案内され、単身乗り込む主人公。ピラミッドの中には多数の罠があり、碑文に刻まれた暗号を正しく解かないと侵入者を抹殺する仕掛けが幾つも施されていたが、勇者の鎧の力で真正面から罠を破壊する脳筋作戦により、最短距離で進めた(暗号を解読して進むルートもある)。また、罠以外にも寄生虫の魔物が多数生息していたが、主人公の極大電撃魔法一発で全滅させ、あっさり最奥部にいる寄生虫の女王、ソリューバと対面した。ソリューバは自分の子供達を殺された怒りに燃えていたが、内心では寄生の能力により勇者が自分を殺した後勇者に乗っ取る作戦を立てていた。しかしその能力を1周目の世界で把握していた主人公は下手にソリューバに斬りかからず、極大電撃魔法でソリューバの肉体を焼き焦がしてまず寄生の能力を封じた。体を焼かれて戦闘不能となったソリューバは許しを請うが、主人公は聞く耳を持たずソリューバを殴り飛ばした。ソリューバはピラミッドの壁を破って魔王城まで吹き飛ばされて門扉に激突した。門番の魔物が驚く中、ソリューバは「勇者…恐るべし…」と呟いて絶命するのだった。
翌朝、獣人王と獣人女王の前に、アルトと共に帰還した主人公。アルトは興奮気味に主人公の活躍を報告していた。余りに事細かに報告する上に、「いやー、皆んなにも勇者の活躍を見せてやりたかったですよ」などと言うので、獣人女王から「ほう、ではお前は私の『万が一に備えてピラミッドの入口で待機しろ』という命令を無視して、こっそり勇者殿の後をつけたのだな?」と気付かれる。「しまったー!」「お前には兵士長としての自覚が足りん!罰として1か月語尾に『だワン』を付けろ!」「マジで勘弁してくれだワン!」獣人王は呆れて「お前達…勇者殿の前だぞ…」とその場を収めた。獣人女王にこれからどうするのかと聞かれて、魔導の国に行くつもりであると答える主人公。アルト達から改めてお礼を言われ、見送られながら出発した。

 

525勇者 鎧を きる2020/11/24(火) 06:19:39.27ID:2IX86syp0
魔導の国に着いた主人公。1周目の世界と同様に、入口でレーチェ作の魔導ゲートにより、拘束魔法に捕まってしまう。慌てて出てきて解除しようとするレーチェだが、その前に主人公の気合い一発で魔導ゲートを吹っ飛ばした。魔導ゲートを破壊出来た闖入者に驚きつつ、そんな事が出来るのは勇者に違いないと断定するレーチェ。続いてこの国まで何をしに来たのかを聞かれ、主人公はこの国の地下で封印されているゴーレムが、とっくの昔に退魔結界を解除しつつも敢えて地下に留まり情報収集している事を告げる。突拍子も無い事を言われて驚愕するレーチェだが、勇者が嘘をつく意味も無いと思い、信じる事にした。対策を練るため長老達のいる館まで移動する2人。やはりレーチェも、主人公の記憶が僅かに残ってはいたが、何の記憶なのか理解する事は出来なかった。
館に着き、長老のデリンや他の長達と緊急会議を行う主人公。そこでゴーレムを倒すと自爆シーケンスに移行し、魔導の国が消滅する規模の爆発が起こる事も説明した。絶望感が長達の間で漂うが、レーチェには打開策が浮かんだ。「ゴーレムの自爆を防ぐ退魔結界…これを仮に『絶界』と呼ぶけど、大勢の魔力を集めて絶界を張れば、計算上は国を消し飛ばす爆発でも防げるはず!」と主張。作戦としては、国中の結界魔導士が館に集まって絶界の準備をして、主人公は1人で地下の最奥の間に封印されているゴーレムの所まで行き、ゴーレムを倒した後急いで地上の館まで戻る。そして自爆前に地上の魔導士達と合流し、絶界を張って爆発を防ぐ、という段取りとなった。
レーチェは大急ぎで絶界を編み出して魔導士達に教え、作戦が決行された。主人公は地下のゴーレムの元へ向かった。ゴーレムは主人公が既に鎧を着ている事に気付き、警戒レベルを最大限に高めるが、そんなものでは主人公に全く歯が立たず、瞬殺された。そして自爆シーケンスに移行し、「自爆5秒前…4…3…」とカウントが始まる。しかし主人公は慌てる事なく、結局ゴーレムを殴り飛ばした。ゴーレムは自爆へのカウントを続けながらも天井を破って魔王城の門扉に激突する。門番の魔物が驚く中、ゴーレムは「ゼロ」と言い、魔王城の前で自爆した。門の辺りは無茶苦茶に吹き飛び、門番の魔物は「これも…勇者の仕業だと言うのですか…勇者、恐るべし…」と呟いて絶命した。魔物の巣は全て滅ぼし、残る拠点は魔王城のみとなった。
翌朝、館で長達に会う主人公。デリンは主人公に「よくぞやってくれた」と称えるが、レーチェは「と言うかよくもやってくれたな〜!みんなで集まって絶界張ったのに全然意味なかったじゃん!それにちゃんと自爆前に戻って来れるのか心配してたのに、これじゃアタシが馬鹿みたいじゃん!」ぷんぷんと怒るレーチェをなんとか宥めるデリン。「今回新たに出来た絶界は魔導の国に大いに役立つだろう。勇者が魔王を倒した後、平和になった世界の事を考え、新たな結界魔法を人々の生活に役立てるようにしていこうではないか」と諭され、なんとか納得するレーチェ。魔王を倒して人類に平和をもたらすようお願いし、人間の国へ向かう主人公を見送った。

 

526勇者 鎧を きる2020/11/24(火) 06:21:29.51ID:2IX86syp0
主人公は人間の国に着いたが、1周目の世界とは大きく様子が変わっていた。見るも無残に荒れ果てていた街並みは美しく整っており、人々は活気に満ちていた。1周目の世界では滅亡していた3つの国が今回は無事だった為、魔物との戦争にも優勢であり、人々の心に余裕が生まれていたのだ。その貢献者の勇者は国民的ヒーローになっており、サインをせがまれたり、勇者饅頭や勇者バッジなるものが販売されたり、完全予約制の高級レストランも顔パスの上無料でフルコースを堪能できたりと、VIP待遇を受けた。人類王との謁見でも、「そなたならば長きに渡る魔王との戦いに終止符を打てるだろう」と強い期待を寄せられた。
人類砦に移動し、人類王から作戦を聞く主人公。魔物の巣を根絶させた勇者は魔物達から特に狙われており、対勇者のために世界中の魔物を魔王城に集結させていると言う。そこを狙って、勇者単独で人類砦から魔王城まで向かい、魔物達が集まって来た所を人類砦の伏兵達が一網打尽にすると言う策だった。
作戦通り主人公が人類砦から出たところ、魔物の軍勢が砦の入口近くで待ち構えていた。あまりの数の多さに人類王は、いくら勇者でもこの戦力差では勝てないと絶望する。軍勢を指揮する幹部の魔物は「こっちは劣勢のフリをして人間どもを油断させただけなのに、まんまと騙されるなんて馬鹿な連中…」と言いかけたところで主人公は極大電撃魔法を放ち、幹部以外の魔物達を一撃で全滅させる。あまりの戦力差に絶望しかける幹部だが、奥の手として対勇者用に改良した強化型ゴーレムを繰り出す。
オリジナルのゴーレムは自爆する瞬間まで勇者のデータをこの予備のゴーレムに送り続け、そのデータを元に改良したので、オリジナルに比べ3倍もの強さがあると言う。幹部と一緒に強化型ゴーレムが主人公に襲いかかるが、3倍程度の強化では全く意味が無く、主人公に完敗した。しかし幹部は尚も諦めず、ゴーレムに自爆の指示を出す。魔王城付近で戦っていた1周目の世界と違い、今は人類砦のすぐそばで戦っている事もあり、幹部は自爆の規模をオリジナルの3倍にしてあると言い放ち、自分もろとも主人公を道連れにしようとする、が、主人公は幹部ごとゴーレムを殴り飛ばし、魔王城まで吹き飛ばした。自爆カウントはゼロになり、ゴーレムは魔王城で爆発した。幹部は「勇者…恐るべし…」と呟いて絶命するのだった。

 

527勇者 鎧を きる2020/11/24(火) 06:22:09.94ID:2IX86syp0
魔物の軍勢を蹴散らした上にゴーレムを自爆させた事で、残る城内の魔物は魔王を含めてあと僅かとなった。人類王は自分が立てた作戦は全く意味が無かった事を気にしつつも、主人公を褒め称え、自分達は国の守りを固めるので、魔王討伐は勇者単独で行って来るように頼む。もはや自分達では勇者の足手まといになってしまう事を悟ったのだ。
主人公は人類王の指示通り単身で魔王城に出撃した。道中、残っていた魔物が死なば諸共の覚悟で特攻を仕掛けるが、全く歯が立たず返り討ちになった。罠も多数仕掛けられていたが、鎧の力で全て正面突破し、あっさり魔王の前まで辿り着いた。
魔王は主人公に問いかける。「勇者よ、貴様の手によりこの世界の魔物は全て死に絶えた。残る魔物は我1人だけだ。…貴様はいつの間にレベル99となったのだ?我が気付いた時には既に貴様はレベル99となっていた。世界の理をねじ曲げてまで、貴様は何をなそうと言うのか…」主人公は何も答えず、戦闘態勢に入り、最後の決戦が始まった。2周目に入ってからは苦戦らしい苦戦などしなかった主人公だが、流石に魔王相手では手こずりつつも、無事勝利した。魔王は告げる。「見事だ、勇者よ…我が配下達が何も出来ずに倒された訳だ…。しかし、それ故に、だ…。
全ての魔物は我が作り出し、力を与えてきた。貴様は魔物達に何もさせずに倒してきたが、その事で我の力はほぼ費やされず残ったままになっている。今その力を集結させ、我の全力の姿を見せてやろう!」力を集めた魔王は異形の姿に変わり、先ほどまでよりも遥かに強くなった。「貴様を殺してその死体を魔王城の門に吊り下げ、人間どもにいくら魔王に歯向かっても無駄な事を教えてくれるわ!」第二形態となった「大魔王」は今の勇者でさえも苦戦する程だったが、辛くも勝利した。大魔王は死の際に、「貴様達はこれで本当に良かったのか…?我を倒し魔物を滅ぼした事で、人類は新たな脅威に直面するだろう。貴様達の行く末を地獄から見せてもらうぞ…」と言い残した。
次の瞬間、主人公は大精霊の神殿にいた。カフィオールが主人公を召喚したのだ。カフィオールは時間を巻き戻した事で力を使い果たした上、魔王に封印されていた為、旅の途中主人公を支援する事は出来なかったが、今回の世界では犠牲者が殆ど出なかった事を褒め称える。「さあ、世界中の人々が貴方の帰りを待っていますよ。私はいつでも貴方の事をここから見守っています。それではまた会える日まで…」別れを告げられ、主人公は人間の国に戻っていた。
人類王は主人公の帰還に喜び、魔王を倒した事を知らされると、国を挙げて祝賀会を開く事を宣言した。国中の人々が魔王討伐の報せに喜び、主人公の偉業を称えた。城には国中どころか勇者の隠れ里の身内や世界中の重鎮達も集まり、人類の夜明けに喝采の声を挙げた。祝いの宴は三日三晩開催され、この平和な世界はずっと続くのだろう、と主人公は思っていた。この時までは。

 

528勇者 鎧を きる2020/11/24(火) 06:23:11.07ID:2IX86syp0
主人公は目が覚めると、自分がどこかの牢獄に幽閉されている事に気付いた。牢獄の床には魔法陣が刻まれており、その魔法により自分の体が縛られているようだった。勇者の鎧は無く、ボロ布を着せられている。牢獄の外に居る見張りの兵士が、鉄格子越しに主人公が目覚めた事に気付き、呟く。「あれだけ薬を飲ませたのに、もう目が覚めるとは、流石は勇者…。いや、今は『元』勇者か。早く人類王に報告しなければ!」そう言って立ち去った。
何が何だか分からず、混乱する主人公。その時、牢獄の外から一匹のネズミが入って来て、主人公に語りかけてきた。「随分な様子だな、勇者よ」驚く主人公にネズミは、自分は主人公が1週間前に殺した魔王の残留思念が、野良ネズミの肉体に宿った存在だと言う。今は何の力も無いが、主人公の現在の状況は推測出来ると言い、説明を始めた。
祝いの宴の中で大量の薬を飲まされた主人公は、この人間の国の城にある地下牢に閉じ込められたのだ。人類王は、世界を支配していた魔王でさえ倒した勇者に対し恐怖心が芽生え、勇者を最強の存在たらしめる勇者の鎧を奪って、誰の目にも届かないようにしたのだと言う。勇者の鎧は魔王ですら破壊できない為、どこか想像のつかないような場所に封印したのだろうと魔王ネズミは推測した。人類王から裏切られた事に愕然とする主人公。
魔王ネズミは、このままここに留まって平和を保つのか、それともここから脱獄して争いの火種を生むのか、どうするのかと主人公に問いかける。ここで「留まる」を選ぶと、戻って来た兵士から前に飲まされた薬よりも大量の薬を飲まされ、そのまま目覚める事なく死ぬまで生涯を牢獄で終えるというバッドエンドになる。
「脱獄する」を選ぶと、魔王ネズミは「我は貴様の生き様に興味がある。脱獄の手助けをして貴様について行こう」と言い、床の魔法陣を前歯で削り取って主人公の封印を解く。何日間も眠らされていた為本調子では無かったが、魔王ネズミの助言に従い、さっきまでと同じ体勢に戻って縛られたままのフリをした。しばらくして兵士が戻って来て、魔法陣が解かれている事に気付き、牢の中に入って主人公の様子を伺ったところで奇襲をかけ、兵士と戦闘になる。勇者の鎧が無いとは言え、レベル99の勇者では兵士は敵わず、どうにか倒した。魔王ネズミを服の中に入れ、脱獄した主人公に、魔王ネズミはこれからどうするのかと問う。
ここで「人類王を糾弾しに行く」を選ぶと、襲いかかって来る兵士達を全員返り討ちにしながら玉座に構える人類王の元へ行く(余談だが、鎧無しで多数の兵士と戦う羽目になるので、ここの戦闘がゲーム全体におけるトップクラスの難所となる)。人類王は悪びれる事もなく牢獄に戻るよう主人公に指示するが、断ると逆上して自分の正当性を主張する。曰く、もし救世主たる勇者がいれば、本人の意志に関わりなく「人類王では無く勇者が世界を統治すべきでは」という勢力が生まれ、勇者派と人類王派との争いに繋がる、だからこそ勇者はこの世から平和の為に消えなければならないのだ、という主張だった。主人公は人類王の物言いに我慢出来なくなり、人類王を殺害し、自分が玉座に座った。そして民衆を集めて、人類王は王たる資格など無い、この世界に必要なのは強い力を持つこの勇者である、と力強く演説した。主人公は民衆の支持を集め、「人類覇王」と名乗って世界を支配した。しかし自分に逆らう者には容赦なく弾圧し、迫害する恐怖の王でもあった…というバッドエンドとなる。
「人類王を糾弾せず城から出る」を選ぶと、人間の国の民衆からいわれなき中傷を受ける。どうやら人類王が「勇者が乱心して人類王を殺そうとした」という噂を流していたらしい。ごく僅かに主人公の無実を信じる者もいたが、そういった人は牢獄に入れられていた。主人公はこの国には自分の居場所は無いと悟り、他国に救いの手を求める事にした。

 

529勇者 鎧を きる2020/11/24(火) 06:23:42.84ID:2IX86syp0
ここで選択肢が現れ、森の国・獣人の国・魔導の国の中からどこに行くのかを選ぶ事になる。どのルートを選んでも結末にはほぼ変わりが無いが、ここでは獣人の国ルートを説明する。
獣人の国に着いた途端、アルトに見つかる主人公。またこの展開か、と思った主人公だが、アルトは城に連れて行こうとはせず、すぐにこの場から去るように忠告する。そこへ獣人女王が現れ、「アルト、貴様は何をやっている?私は勇者殿に『お願いしろ』などとは言ってないぞ。『無理矢理でも連れて来い』と言ったのだ!」そう言って大勢の部下に主人公を強引に城に連行させる獣人女王。城で獣人王と獣人女王の前に連れて来られ、傍らのアルトと共に、獣人女王から今後について聞かされる。人類王のように勇者を恐れて監禁などしないから安心すると良いと言う。「魔王は恐怖と暴力によって世界を支配していたが、その方法は強さを誇りとする獣人こそが得意なものだ。魔王に代わって新しく世界を支配するのは獣人なのだ。ひいては勇者殿もこの国の戦力となり、共に世界を征服しようではないか。愚かな人類王と違い、この国の王族に連なる地位を約束しよう」と提案して来た。
ここで「提案にのる」を選択すると、アルトから「本当に良いのか?後戻りは出来ないぞ?」と念押しされるも、獣人王と女王から喜んで迎え入れられ、共に他国へ侵略に向かい、あっという間に世界を征服する。こうして主人公は獣人の国と共に支配者となる、というバッドエンドとなる。
「提案を断る」を選択すると、友好的だった女王の雰囲気が一変し、「勇者殿は私の真意が分からなかったと見える。私は協力して欲しいと『お願い』しているのではない。協力するよう『脅迫』しているのだ!」と言って、多数の獣人兵を呼び出して包囲する。いくら勇者とは言えこの人数の手練れ相手に勝ち目はあるまいと言い、無理矢理従わせようとする女王。しかしアルトは「こんな奴他の連中が出るまでもねえ!俺1人にやらせてください!」と言って主人公に掴みかかって来る。抵抗しようとする主人公だが、アルトは耳元で「そのまま聞いてくれ」と小声で話し出した。アルトによると、魔王が倒された後からみんなおかしくなってしまったと言う。ここは自分が主人公を出口に追いやるから1人で逃げてくれと言って、出口まで突き飛ばした。手際良く城から脱出する主人公だが、今後どうするべきか途方に暮れてしまう。

 

530勇者 鎧を きる2020/11/24(火) 06:24:33.49ID:2IX86syp0
その時遠くから轟音が聞こえた。勇者の隠れ里の方向だと気づいた主人公は、魔王ネズミから里に異変が起きたのでは無いかと言われて、里に向かった。
里に着くと、里の人々はほぼ全員殺されていた。里の入口で倒れていた友人に話を聞くと、少し前に人間の国が突然攻めて来たのだと言う。まさか同じ人間から攻撃されるとは思っていなかったため、なす術もなくやられてしまったのだ。そこまで話したところで友人は体力が尽き、息絶えてしまった。
主人公が里の広場まで行くと、母親と祖父が人間の国の兵士達に取り押さえられていた。少し離れた場所に居る人類王は主人公が来た事に気付くと、「待っていたぞ、勇者よ!」と話しかけて来る。「仮にも勇者ともあろう者が私を困らせるものではない。早く地下牢に戻るのだ。でないとこの2人はそなたのせいで死ぬ事になるぞ」脅迫する人類王。母親と祖父は、もう勇者は十分他人の為に戦ったのだから、私達の為にこれ以上自分を犠牲にする必要など無い、ここから早く逃げるようにと言ってくれるが、人類王は2人に制裁を加えさせ、黙らせようとした。自分達が生きている事で主人公の足枷となってしまっている祖父と母親は「勇者が人類の為に生き、人類の為に死ぬと言うならば、勇者の隠れ里の者は勇者の為に生き、勇者の為に死すのが定め!」「強く生きるのよ、勇者!」と言って、自爆魔法を唱えて自害した。
人類王は人質が居なくなった事に憤慨し、死んだ2人を悪し様に罵った。怒りの目を向ける主人公に対し、人類王は、私こそがこの世界の支配者であり、勇者と言えども私に逆らう事は許さんとまくしたてる。その時、「人類王の言う通りにはさせませんよ!」と声が響き、森の国王が部下達を引き連れて広場にやって来た。その中にはエクセールもいた。更に獣人王と獣人女王がアルト達獣人兵を、魔導の国の長老デリンがレーチェ達魔導士を引き連れて現れた。
各々の王達は、勇者の強大な力は自分達の国にこそ必要であり、価値の分かっていない他国の王には渡さないと主張し、それぞれに罵詈雑言を浴びせた。かつての仲間達も、こんな連中と居るくらいなら自分の国に来るよう説得して来た。
口論はヒートアップし、こんな連中に渡すくらいならいっそのこと勇者を殺してやると口々に言い出した。森の国王はエクセールに、獣人女王はアルトに、デリンはレーチェに指示を出し、主人公に攻撃させた。周りを兵士達に囲まれて逃げる事もできず、元仲間により徐々に負傷する主人公。魔王ネズミからは「いくらレベル差があるとは言え、このまま反撃せねば死ぬぞ」と忠告される。
ここで選択肢が現れ、「反撃する」を選ぶと、元仲間を主人公の手で殺害してしまう。理不尽な状況に怒りが収まらない主人公は「よくも僕に仲間を殺させたな!」と言って、周りの王達や兵士達をも皆殺しにした。激しい怒りによるものなのか、主人公は魔物へと変貌し、残った人類にも牙を剥くというバッドエンドとなる。

 

531勇者 鎧を きる2020/11/24(火) 06:25:26.02ID:2IX86syp0
「反撃しない」を選ぶと、無抵抗のまま元仲間の攻撃を受け続ける。その姿を目にした3人には徐々に罪悪感が芽生えだし、とうとう我に返って攻撃の手を止めてしまう。各国の王達から早く勇者を殺すよう命令されても、勇者は大切な人だから殺す事なんて出来ないと口々に反抗する。王達は自分達の部下に見切りをつけ、別の部下に勇者を殺すよう命令するが、その攻撃から3人が身を挺して主人公を庇った。主人公は無事だったが仲間は致命傷を負ってしまう。死の寸前、主人公に殺そうとした事を謝る3人。抑えきれない悪意のようなものが自分の中に湧いていたのだと言う。自分達だけでなく、世界中に得体の知れない悪意が蔓延してみんながおかしくなってしまった、しかし勇者は悪意になんて負けないで欲しい…そう言い遺して3人とも死亡した。
勇者を庇って部下が死んだ事に、命令に背いて死ぬなんてバカな奴だと嘲笑う各国の王達。高笑いしつつ主人公に改めて殺意を向けるが、その最中王達や兵士達は突然黒い光に呑みこまれた。この現象に驚く主人公だが、魔王ネズミは「とうとう始まったか…」と言い出し、説明を始めた。
「これこそが『悪意の塊』なのだ。我がこれまで魔王城から動かなかったのは、この悪意の塊を魔王城に封じていたからだ。貴様が我を殺した事でその封印が解かれ、世界中の人間の心に悪意が蔓延り、その悪意を糧として具現化したのだ」魔王ネズミの言葉通り、今や世界中の人々が悪意に駆られ、互いに罵りあい、殺し合いにまで発展していた。やがて人々は皆黒い光に呑みこまれた。「我は魔物の巣を各国の側に配置し、人類の進歩を阻害してきた。人間達が我を討って悪意の封印が解かれる事を阻止するためだ。そうして封印のために何百年も人間達と戦っていたが、魔王を単独で倒せる可能性を持つ勇者は特に警戒しなければならなかった。だからこそ勇者は殺さねばならなかった。そうしなければ世界は滅びるのだからな。
我は人類に希望こそ与えなかったが、さりとて絶望も与えなかった。しかし貴様は我を倒した事で世界中に絶望を振りまいたのだ」魔王ネズミの言葉に呆然とする主人公。世界中の黒い光は隠れ里上空に集まり、やがて巨大な怪物の姿に変容した。雄叫びをあげながら暴れ回る悪意の塊。今やこの世界で生き残った人間は主人公1人になってしまった。
そこへ、大精霊カフィオールが主人公達の前に現れる。人類王により失われていた勇者の鎧を再び授けて告げた。今こそ絶望を希望に変え、例え人類が居なくとも世界の為に悪意の塊と戦うのだ、と。魔王ネズミは「この状況で希望を抱けなどと、大精霊は笑えぬ冗談を言う…」と言うが、カフィオールは「お黙りなさい、魔王!貴方はこの世界から退場した存在です!さあ、勇者よ!勇者の鎧を着るのです!」と命じる。ここで選択肢が出る。
「勇者の鎧を着られない」を選ぶと、1週目に続いてまたしても人類を救えなかった絶望に負け、悪意に呑み込まれてしまう。魔王ネズミは「人類最後の希望が人類最後の絶望になってしまうのも無理からぬ事。せめて我だけは貴様の魂が安らかである事を祈ってやろう。誰に祈れば良いのかは分からぬがな…」と呟くというバッドエンドとなる。

 

532勇者 鎧を きる2020/11/24(火) 06:26:22.24ID:2IX86syp0
「勇者の鎧を着る」を選ぶと、悪意の塊と戦闘になる。レベル99の何十倍も強くなった主人公だが、悪意の塊は大魔王よりも更に強く、苦戦を強いられ、とうとう戦闘不能になってしまうが、それでも主人公は諦めなかった。魔王ネズミは主人公に語りかける。「…もういいだろう、勇者よ。所詮この世は悪意と絶望にまみれたものなのだ。目の前の悪意の塊がそれを物語っているではないか。守る者も無いのに、それでも勝ち目の無い戦いに挑むとは、貴様は一体何なのだ?答えよ!」「…僕は勇者だ!」言い放つ主人公。魔王ネズミは主人公の言葉に驚きつつも、自分が負けた理由がようやく分かった気がすると言い、悪意に染まらない強い意志を持つ魔物の魂から力を借り、主人公に分け与えた。
魔王ネズミから受けた力で、主人公は完全回復した上に、悪意の塊からの攻撃に耐性を得た。「所詮我は魔王の残滓。無理が祟ってもう意識を保つ事も出来ないようだ…。しかし貴様が勇者であるならば、この様な取るに足らぬきっかけでも何度でも立ち上がるのだろう?全く勇者というのは厄介な者だ。…貴様と一緒に過ごした時間、悪いものでは無かったぞ…」最後にそう言い残し、後にはただのネズミだけが残った。主人公は魔王から受けた力を用いて悪意の塊と戦い続け、遂には勝利した。しかし世界は悪意により荒廃し、主人公は人々の悪意に晒される。

 

533勇者 鎧を きる2020/11/24(火) 06:27:15.21ID:2IX86syp0
(殺せ…)(コロセ…)と殺意の声を聞く主人公。「魔物を殺せー!」「ガンガンいこうぜ」主人公は気付くと、勇者の隠れ里の人々から声援を受けつつ、広場でスライムと対時していた。勇者の鎧は着ておらず、自分のレベルは1に戻っている。人々の声援通りスライムを殺した事でレベル2に上がった。主人公の勇姿を見て盛り上がる人々だが、主人公には何が何だか分からなかった。今までの事は全て夢だったのかとまで思う主人公。もし夢で無いならば、この後里に魔将軍グァーテラーが魔物を引き連れ襲撃しに来る筈である。
里の入り口に向かうと、果たしてグァーテラーが部下の魔物と共にやって来た。グァーテラーは主人公を見つけると、すぐに攻撃を仕掛けてくるが、何故か自分が吹き飛ばされそうな気がすると言って攻撃を躊躇った。2週目の世界の記憶が残っているのだ。今目の前にいる低レベルの、勇者の鎧を着てもいない勇者に自分が負ける訳がないと思いつつも、勇者の強い意志を持った眼差しは何度か見た覚えがあると言い、一体どういう理由なのかと主人公に問いかける。主人公はグァーテラーの敵意が消えた事を感じ、今までの事を全て話した。グァーテラーは時を何度も遡ったなどとても信じられないと言いつつも、それが事実なら、1週目で自分が訪れた国は全て消滅し、2週目では魔王を倒した事で世界を崩壊させた、勇者こそが諸悪の根源なのでは無いかと問い詰める。反論出来なかったが、それでも主人公は「僕は勇者だ…」と言い返す。グァーテラーは「あくまでそう言い張るならば、ここで貴様は殺す!」と言い、斬りかかる。
が、途中で刃を止め、言い放つ。「勇者はたった今殺した!貴様はもはや何者でも無い人間だ!勇者の役目など忘れて、地べたを這いつくばって生きるがいい!さあ、世界に遍く報せるぞ!『勇者は死んだ』とな!これで魔王様の世は盤石ぞ!」高笑いしつつ部下と共に引き返すグァーテラー。主人公は魔物に見逃してもらった事を認識しつつも、先ほど指摘された「勇者こそが諸悪の根源である」という事が頭から離れなかった。
そこへ、大精霊カフィオールが主人公の前に現れた。「貴方は今勇者という存在に疑念を抱きましたね。勇者を疑うという事はこの私を疑うという事。貴方に授けた勇者の力は返してもらいます」そう言って、主人公から勇者の力を奪った。主人公は電撃魔法が使えなくなった。「さあ、もう貴方の好きに生きるといいでしょう。さようなら」カフィオールはそう言って消え去った。
勇者の力を失った事で、主人公は「勇者」という役割を失ってしまった。「勇者」の存在が世界から消えてしまい、主人公のゲーム内での表記は「勇者」から「?」へと変わった。

 

534勇者 鎧を きる2020/11/24(火) 06:27:46.76ID:2IX86syp0
弱くてニューゲーム編
魔将軍襲撃から一夜が明けた。世界には勇者が死んだという報せが広まっていた。勇者としての存在が消された主人公は、幽霊の如く他人から姿も声も認識されなくなっていた。それどころか、主人公が生きていた痕跡すら世界から失われていた。自宅に保管されていた勇者の鎧は消え、母親も祖父も自分達に家族がもう1人いた事を忘れており、隠れ里の人々は昨日まで里に居た筈の勇者がどんな人間だったのか曖昧な認識になっていた。僅かな違和感は持ちつつも、主人公が生きていた事を誰も覚えていないのだ。
主人公は隠れ里から出て、森の国や獣人の国、魔導の国、人間の国、果ては魔物の巣など、今まで行った場所をいくつも渡り歩いた。やはりどこの人間も魔物も、自分に気づいてくれる者はいなかった。エクセール、アルト、レーチェも、近くに誰かがいること、自分が何か大切な人を忘れていることに気づきながらも、それが何故なのか分からず苦しんでいた。
主人公は考えた。このままでは、いずれまた世界の誰かが勇者として選ばれ、魔王を倒しに行くのだろうと。もし勇者が魔王に倒されれば人類は絶望し、勇者が魔王を倒しても悪意の塊が現れ、どちらにしろ悲劇が起こってしまう。そんな事は絶対に止めたい、もしかしたら魔王ならば、自分の声に耳を傾けてくれるかもしれない…そう思い、魔王城へ向かう事にした。

 

535勇者 鎧を きる2020/11/24(火) 06:28:36.53ID:2IX86syp0
その時、人間の国では人類砦と魔王城の中間地点で、正体不明の物体が出現しているとの報告があがっていた。主人公が魔王城に行く道中、人気も魔物の気配も無い場所で、その正体不明の物体が行手を塞いでいた。近づくと、「どこへ行くのですか?」との声が。正体不明の存在はカフィオールへと姿を変えた。カフィオールは主人公に詰めよる。「この先は魔王城です。何者でも無い貴方が行く場所ではありません。この世界で貴方の居場所は無いのです。後はいずれ生まれてくる勇者と魔王が世界の歴史を作っていく事でしょう。貴方の冒険はここで終わりです。ご苦労様でした」
ここで「ゲームを終了する」「ゲームを終了しない」という二つの選択肢が現れる。「終了する」を選ぶと問答無用で即ゲームオーバーとなる。
「終了しない」を選ぶと、カフィオールは「理解出来かねます。貴方はもはやこの世界に不要な人間なのです。早くこの世界から消えてください」と言い放つ。主人公が黙っていると、「分かりました。自分で消える事を選択出来ないならば、私が力を貸してあげましょう」と言い、「覚醒霊」という配下を数体生み出して主人公と戦わせ、殺そうとしてきた。
主人公はレベル2で、電撃魔法すら使えないほど弱体化していたが、必死に抵抗した。その結果、「思い出す」という新たな技を編み出し、今までの戦闘の記憶から効果的な攻撃や防御の方法を引きだす事により、敵の攻撃を高確率で回避し、会心の一撃を高確率で当てる事が出来るようになった。今までの経験からレベル差を埋める事で覚醒霊を全て撃退し、レベルは12に上がった。カフィオールは低レベルにも関わらず勝利した主人公に対し、「見苦しい真似はやめて、この世界の為に喜んで死んでください」と言い、更に多数の覚醒霊を生み出す。
「さようなら!大精霊への反逆者よ!」覚醒霊が主人公に襲いかかる瞬間、エクセール・アルト・レーチェの3人がやって来て、覚醒霊を倒した。突然現れて自分に敵対の意志を示す人間に驚くカフィオール。「何故ですか!?そこにいる男は何者でも無い者です!勇者という不安定でか細い糸でのみ繋がっていた者達が、何故勇者でも無いこの男を助けるのです!?」エクセールは「あなたこそ、何故このような真似を!?大精霊カフィオール様ともあろう方が、今にも消えそうなか細い存在に何故ここまでの仕打ちが出来るのです!」と反論し、カフィオールは「そこにいるのはただの勇者の亡霊です。貴方達に知覚出来る存在では無い筈…」と疑問を口にした。アルトは答える。「何言ってんだ?こいつは亡霊なんかじゃねえ!こいつは『大精霊への反逆者』だ!てめえさっきそう言ったじゃねえか!」アルトの言う通り、カフィオール本人も知らず知らずのうちに主人公に新たな役割を与えていたため、今では他人から姿が認識される様になっていたのだ。

 

536勇者 鎧を きる2020/11/24(火) 06:29:31.94ID:2IX86syp0
カフィオールは3人に問いかける。「…分かりません。貴方達は何故この男を助けるのですか?貴方達とこの男との繋がりは別の時間軸でのものです。貴方達にこの男の記憶は無いはず」エクセールもアルトもレーチェも、カフィオールの言う通り1週目や2週目の世界の事を思い出した訳では無かった。しかしそれでも心に大きな棘が刺さったような違和感を持っており、そして主人公や他の仲間たちを見た瞬間、この人達が自分の大切な仲間であり、この人達を守りたいと強く感じたのだと言う。
カフィオールは言い放つ。「この私にも理解出来ない事があるとは驚きを禁じ得ません。これだから人間は面白いですね。
ですがもう結構です。この大精霊に逆らうという事は、大精霊に選ばれた戦士、『勇者』を敵にまわしたということです。貴方達過去の勇者一行は、大精霊の意志を継ぐ新たな勇者により倒されなければなりません」勇者はつい先日死んだはずでは、と疑問を出したレーチェにカフィオールは答える。
「勇者が死んだ場合、私は人間の中から優れた『心技体』を持った者を新たな勇者に選ばなければなりません。しかし、今この世界にはその心技体を持つ者はいません。にも関わらず無理に勇者を選ぶと、そこにいる失敗作のような出来損ないの勇者が生まれる危険性を伴います」失敗作だなんて、自分で選んでおいて勝手な事を言うなとアルトが怒ったが、カフィオールは無視して続ける。「勇者に相応しい者がいないなら、いっそのこと私がゼロから勇者を作った方が良い…」勇者を作るなんて事が出来るのかと驚くエクセールに、カフィオールは言う。「そこにいる出来損ないとは違い、私の指示に逆らわず勇者である事に一切の疑念を持たない、そんな最高の勇者を作りましょう!さあ大精霊の寵愛を受けて今こそ誕生するのです!新しき精霊の勇者よ!」カフィオールが力を振るい、新たな精霊の勇者が現れた。主人公と同じ年頃の少年といった出で立ちだが、無表情でカフィオールの指示を待っている。

 

537勇者 鎧を きる2020/11/24(火) 06:30:12.64ID:2IX86syp0
新たなる勇者の誕生に呆然とする主人公達。アルトは、「こんな勝手な理屈で生み出された得体の知れない奴が勇者だって言うのか…」と呟くが、カフィオールは勇者とは大精霊によって選ばれし者、つまり自分が選べばそれは勇者なのだと言う。それに対しレーチェは「いやいや、おかしいでしょ!勇者って大精霊の意志だけで簡単に生まれちゃって良いの?人間側の都合は完全無視?」と聞き、カフィオールは答えた。「人類の介入は必要ありません。人間は小さく、弱い生き物です。故に間違いも犯します。だからこそ、世界を正しく導くこの大精霊の意志こそが絶対的な真実なのです。そして貴方達はこの大精霊に歯向かうという大きな間違いを犯してしまいました。
さあ、新しい勇者の最初の戦いです。この者たちをこの世界から排除しなさい!」攻撃態勢に入る精霊の勇者。4人は身構えたものの、仲間達3人は一瞬の間に倒されてしまい、どうにか回避できたのは主人公だけだった。精霊の勇者を褒め称えるカフィオール。「良くやりましたね、勇者よ。1人だけ仕損じてしまったのは、生まれたばかりで強大な力を奮う事にまだ慣れていないからなのでしょう。ですが次は外しませんよ」カフィオールは高圧的な笑みを浮かべながら主人公に語りかける。「今まで自分が振るってきた勇者の力に殺されるのはどんな気分ですか?貴方が勇者の役割に疑問を持たなければこんな事にはならなかった。貴方の仲間達が巻き込まれる事もなかった。全ては貴方の責任なのですよ。
…ですが私は大精霊です。貴方にも慈悲を与えましょう。この先二度と私に逆らわず、自分が何者でも無き者である事を受け入れ、ここから去るのであれば、貴方だけは見逃しましょう。しかし貴方の仲間達は貴方に深く関わった事でこの世界の事を知りすぎてしまいました。残念ですが仲間達の命はここまでです。貴方が仲間達を助けると言うのであれば、貴方も同罪と見なし、全員をこの世から排除しなければなりません。…ですが貴方には大精霊では無くカフィオール個人としての思い入れがあるのも事実。今まで私達2人で頑張って来ましたからね。
だから貴方には最後の慈悲を与えましょう!早くここから去るのです!」
思わぬ提案に黙ってしまう主人公。傍らで倒れている仲間達は、息も絶え絶えに言う。「逃げて…ここから逃げてください…!」「俺達の事は良いから…お前だけでも生き延びろ…」「仕方ない…よ…。勇者には…大精霊には…勝てっこない…」
カフィオールは主人公に語りかける。「ほら…仲間達もこう言ってますよ。貴方を心から想う彼らの気持ちを無駄にするのですか?
それに貴方はずっと、勝てない敵からは何度も逃げて来たではないですか。勇者の使命のために人々を犠牲にしてでも強敵から逃げ続け、ここまで来たではないですか。そう…どうと言うことはありません。また逃げれば良いのですよ…」カフィオールや仲間達の言葉を受け、これまでの自分の人生を省みる主人公。

 

538勇者 鎧を きる2020/11/24(火) 06:30:50.50ID:2IX86syp0
人は、生まれてきた時は真っ白な存在だ。しかし僕は「勇者の息子」として生まれ、「勇者の後を継ぐ者」として期待され、父が死んだ後は「勇者」に選ばれた。つまり、僕は生まれた時から「勇者」という役割だった。
祖父や母には、勝てない敵からは逃げ、勇者には非情な決断をする事も必要だと教えられてきた。その教え通り、1週目の世界の森の国ではドラゴンから、獣人の国ではソリューバから、魔導の国ではゴーレムから、逃げる事を優先した。
「勇者」とは勇気ある者。「勇気」とは困難に立ち向かい自分の力で道を切り開く事。しかし僕は自分の意志を持たず、人に、精霊に、魔物にさえも流されていただけだった。

かつての世界では、勇者の隠れ里の人々も、エクセールやアルト、レーチェも自分の命を捨ててまで僕を助けてくれ、僕だけが生き延びてきた。
「勇者」とは勇敢なる者。「勇敢」とは傷つく事を恐れず愛する者を守り抜く事。しかし僕はレベル上げを免罪符にして、大勢の仲間を犠牲にした。

僕には勇気はなかった。
僕は勇敢ではなかった。
つまり…僕は最初から「勇者」では無かったのだ。

 

539勇者 鎧を きる2020/11/24(火) 06:31:29.97ID:2IX86syp0
「選択は決まりましたか?今逃げても誰も貴方を責めません。貴方はもう勇者では無いのですから」カフィオールから問いかけられ、主人公は答える。「そうだ…僕はもう勇者じゃない…けど、勇者じゃなくても構わない!」「何ですって…?」驚くカフィオール。「僕は今までずっと逃げて来た。それは勇者だったから。勇者の使命があったから。だけどそんなものはただの言い訳だ!
勇者じゃない僕にはレベル上げの為に誰かを犠牲にする必要は無い。だったら…勇者じゃないのは、望むところだ!これ以上勇者の為に犠牲になる人を見捨てずに済むのなら、勇者なんていくらでも捨ててやる!僕はもう、逃げない!」主人公の決意に対し、怒りを露わにするカフィオール。「勇者を自ら捨てるですって…!?最後の最後で一番愚かな選択をしてしまいましたね!
…フフフ、良いでしょう。その選択が貴方を、貴方の仲間達を苦しめる事になるのです。さあ、私の勇者よ!愚かな反逆者達を排除しなさい!」「僕は僕だ!僕自身の意志でみんなを守る!さあ来い精霊の勇者!」
精霊の勇者との戦闘が始まった。精霊の勇者は電撃魔法を用いて攻撃してくるが、そのことごとくを主人公は無効化した。電撃魔法は主人公が今までの冒険でずっと使っていたため、その見切り方も身についていたのだ。逆に主人公はカウンターで会心の一撃を放って精霊の勇者を倒し、レベルは26に上がった。
まさかの結果にカフィオールは驚くが、すぐに不敵な笑みを浮かべる。「流石は腐っても元勇者。ですがまだ終わりませんよ…貴方も知っているでしょう。勇者が勇者である由縁…。それは…」そう言いつつ、精霊の勇者に勇者のオーブを授けた。オーブを天に掲げ、精霊の勇者は勇者の鎧を着た事で何十倍もの強さを得た。いくら主人公が勇者の攻撃方法を知っているとは言え、勇者の鎧を着た勇者の絶対的な力の前には太刀打ち出来ず、凄まじい威力の一撃で遠く離れた人類砦まで殴り飛ばされてしまう。ボロボロになる主人公に更なる追い討ちをかけてくる精霊の勇者だが、その時誰かから炎が吹きかけられた。勇者の鎧の特性により炎は無効化されたため構わず主人公に迫るが、更に大量の虫による攻撃を受けた。それも無視して主人公に斬りかかろうとするが、寸前でゴーレムが現れて間に入り、主人公を庇った。精霊の勇者もカフィオールも主人公も驚く中、ドラゴンとソリューバが現れた。先程の炎と虫の攻撃はこの二体のものだったのだ。

 

540勇者 鎧を きる2020/11/24(火) 06:32:12.11ID:2IX86syp0
そこに、先程まで倒れていた仲間達3人が駆けつけて来た。主人公が時間を稼いでくれたおかげで回復出来たのだ。仲間達は自分達の国の近くに巣を作っていた魔物達が加勢してくれた事に驚く。ドラゴンは、勇者の天敵として生まれた自分達が勇者と戦うのは使命の様なものだと説明。ソリューバとゴーレムは、むしろ人間でありながら勇者と敵対する主人公達に疑問を投げかけるが、主人公は、自分はただ人間と魔物との戦いを止めたいだけであり、その為に魔王に会いたいのだと答えた。ドラゴン達は詳しい経緯は分からないものの、見覚えのある強い意志を持った主人公の目が嘘をついているとは思えないと判断し、主人公達に協力する事にした。ドラゴン達は精霊の勇者に三体がかりで攻撃し、息の根を止めた。仲間達は勇者の鎧を着た勇者が敗れる程の魔物達の強さに驚きつつ、助けてくれた事に感謝した。
そこへ、カフィオールが現れた。「おお勇者よ。死んでしまうとは情けない…。勇者のレベルが低ければ、勇者の鎧を着ても真価は発揮できません。ですが、勇者が『最初からレベル99』であればどうでしょうか?」カフィオールの発言に主人公だけがその意味を理解した。レベルがどうこう以前にその勇者は既に死んでいるじゃ無いかとレーチェから指摘されるが、カフィオールは「勇者とは大精霊の意志を継いだ者。大精霊によって何度でも蘇るのです!」と言って力を振るい、精霊の勇者は生き返った。「勇者に光あれ!」更なる力の追加により、精霊の勇者はレベル99となった。ドラゴンが吠える。「なんと味な真似をしてくれる!ならば死ぬまで殺し続けるだけ…」言い切る前に、圧倒的な力を得た精霊の勇者はドラゴン、ソリューバ、ゴーレムを鎧袖一触の強さで瞬く間に倒した。

 

541勇者 鎧を きる2020/11/24(火) 06:33:22.08ID:2IX86syp0
精霊の勇者は続いて主人公達に迫るが、そこへ「待ちわびたぞ、勇者よ!」との声が。魔将軍グァーテラーが現れ、「我こそは魔王様より勇者討伐の勅命を受けし者である!」と言いながら精霊の勇者に斬りかかった。精霊の勇者は不意を突かれつつもグァーテラーの奇襲を防いだ。グァーテラーは「ほう、この一撃を防ぐとはやるではないか!そこにいる『元・勇者』とは大違いであるな!そこなる腑抜け者は我が足元にも及ばぬ脆弱なる勇者であった!そのような者を倒したとしても我が名声の足しにもならぬ!貴様のような強者を倒してこそ魔将軍の名は更に世界へと轟く事になるのだ!ワーッハッハッ」と高笑いしつつ精霊の勇者に宣戦布告し、「さあ、我が盟友達よ、まさかこれで終わりではないだろうな」とドラゴン達に呼びかけた。
ドラゴン達は先ほどのダメージがまだ残っていたが、どうにか立ち上がって戦意を示した。グァーテラーは「その意気や良し!魔王様の為に勇者と戦う!ここが我が名誉の戦場である!だがしかぁぁし!この名誉ある戦場にそぐわぬ者達がいる。ドラゴン殿!そこなる部外者共を我が戦場から連れ出してくれ!」とドラゴンに言い、ドラゴンは快諾して自分の背に乗るよう主人公達4人に命令した。仲間達3人は戸惑いつつもドラゴンに乗ったが、主人公はこの場に残って魔物達と共闘しようとした。しかしグァーテラーは「笑止千万!何を勘違いしている!力無き者が我等を助けたいと願うなどおこがましいにも程がある!貴様の力など一切必要無し!そしてその力の使い道はここではないはず!理解したならば早く行け!」と促した。主人公はグァーテラーに礼を言ってドラゴンに乗った。カフィオールは「行かせてはなりません!」と精霊の勇者に命令するが、グァーテラーが阻止し、ドラゴンは4人を乗せて魔王城まで飛んで行った。カフィオールは「…逃がしませんよ」と呟くのだった。

 

542勇者 鎧を きる2020/11/24(火) 06:34:01.76ID:2IX86syp0
4人はドラゴンの背に乗って魔王城の中腹に降り立った。ここまで飛んで来たドラゴンだが、精霊の勇者にやられたダメージにより牙や爪、鱗が剥がれ落ちてしまう。しかしドラゴンは、それはお前達に与えると言った。ドラゴンの強い魔力がこもった牙や爪を受け取った仲間達3人は大幅に強くなり、エクセールに至っては炎の精霊魔法まで使えるようになった。ドラゴンは少し休んだらまた精霊の勇者との戦いに戻るので、主人公達は先に進む様に言う。仲間達3人は依然記憶が戻りきらず、先ほどのカフィオールとの会話から主人公が元勇者である事と世界を何周もしている事は分かったものの、主人公が魔王に会おうとする理由は理解しきれていなかったが、それでも主人公を放っておけず、共に戦う事を約束してくれた。こうして再び4人パーティーとなり、魔王の間を目指す事になった。
魔王の間まで行く最中、カフィオールのけしかけた覚醒霊が城内の魔物を吸収して力を得て、主人公達に襲いかかって来るが、主人公達のチームワークにより撃退する事で経験値を得て4人はどんどんレベルを上げていき、魔王の間の直前に着く頃にはレベル72になっていた。

 

543勇者 鎧を きる2020/11/24(火) 06:35:25.61ID:2IX86syp0
いよいよ魔王の間に入ろうとしたところ、精霊の勇者が現れた。ドラゴン達を倒して追いついて来たのだ。仲間達は圧倒的な力の差にたじろいだが、主人公は前に出て精霊の勇者の電撃魔法を先ほどの様に無効化した。その光景を見ていたレーチェが、主人公が電撃魔法を無効化できる特性を、結界魔法に変換すれば4人全員が電撃魔法を無効化できる事を思いついた。エクセールとアルトが精霊の勇者を足止めしている間、レーチェは主人公の体を解析し、新たな結界魔法「電撃結界」をその場で習得。早速電撃結界を張って、電撃魔法を無効化した。
戦局は大きく有利になったかに思われたが、精霊の勇者は雄叫びをあげつつ怪物の様な姿に変身し、突如ファイアブレスや虫攻撃、機械攻撃を繰り出して来た。倒したドラゴン、ソリューバ、ゴーレムを覚醒霊の様に取り込み、攻撃方法を吸収し、もはや勇者を超えた「大勇者」へと変貌を遂げたのだ。電撃結界が無意味になってしまったことに加え、仲間達は人類の希望である勇者が化け物となった事にうろたえるが、主人公は「もう良いんだ…お前を含めた、この世界で生きるあらゆるものが『勇者』という存在に踊らされるなんてもう沢山だ!お前が勇者だろうと勇者じゃなかろうと僕には関係無い!僕は僕自身の為、そして僕を信じてくれた仲間達の為に、お前を倒して先に進むんだ!」と言い切った。
主人公の言葉を聞いて、「勇者」という存在に囚われていた仲間達は迷いを捨て去った。エクセールは炎の精霊魔法によりファイアブレスや虫攻撃によるダメージを大幅に軽減。レーチェは超☆退魔結界で大勇者の行動を一時的に封じた。そしてアルトは「今なら出来そうな気がするぜ…自分の強さを誇示するためじゃ無く、仲間を守るための究極奥義…!」と言い、1週目の世界と同じく獣神獄炎斬を放った。突然の新技に驚くレーチェに、この技は命を完全燃焼して放つ奥義だと説明するアルト。レーチェはアルトが死んでしまうと思い泣きそうになるが、アルトは「この技は国や仲間を守りたいと心から願う魂を燃え上がらせ、文字通りその魂を消耗させる…だがな、そんなものはいくらでも溢れてくるんだよ!お前達を守りたいって想いに限りなんてねぇんだ!そしてその気持ちにドラゴンの牙が呼応して俺に力をくれるんだ!お前達の為なら今の俺に出来ない事は何もねぇっ!」と力強く言い放った。大勇者との戦いは熾烈さを極めたが、遂に勝利し、主人公達のレベルは99まで上がった。4人は勝利に喜びつつ、魔王の間に入り、遂に魔王と対面した。

 

544勇者 鎧を きる2020/11/24(火) 06:35:58.83ID:2IX86syp0
魔王は主人公の顔を見ると、「これで貴様と会うのは3度目…いや、ネズミの姿を借りていた時を含めると4度目だな」と言い出した。自分を2度も負かした主人公を忘れられ無かったのだと言う。そして、外ではカフィオールが暴れていたようだが、一体何をしにここまで来たのかと主人公に聞いた。
主人公は、自分はもう勇者の役目を解かれたが、この世界における勇者と魔王との戦いとは何なのか、何故人間と魔物は戦わなければならないのかを問い質した。魔王は、悪意の塊という強大な存在を長い間封印していたのだと語り出した。魔王の玉座の奥にある扉が、悪意の塊を封じている空間に通じているのだと言う。もし自分が討たれ、悪意の塊が解放されれば、人間の心の悪意が増幅されて世界は滅亡してしまうため、魔王は討たれる訳にはいかず、人間と戦わなければならないのだと説明した。仲間達はそれを聞いて、今までの魔物との戦いが無意味だった事に愕然とし、もしそれが事実なら何故カフィオールは勇者を生み出しているのかと疑問を口にした。
「…そうなんだ、カフィオールなんだ」と主人公は言い出し、「カフィオールが何だと言うのだ?」と魔王は聞き返した。主人公は、1周目の世界で魔王を倒した際、カフィオールから「自分は魔王に封印されていた」と言われていた事を告げた。先ほどの魔王の説明と合わせると、悪意の塊とは即ちカフィオールのことなのではないかと推測した。魔王は自分が封じていたのは悪意であり、カフィオールが封印されていたなどと知らぬ事だと驚愕しつつも、本当にカフィオールが封印されているのか確認しなければならないと断じた。
その時、魔王の間に大勇者が現れた。仲間達は、自分達が必死に戦ってやっと勝った相手がもう復活して追ってきた事に恐怖を感じたが、魔王は目の前の相手が勇者であると聞いて戸惑った。「これが勇者だと?…我は今まで数多くの勇者と戦ったが、勇者には例外無く、『人々を守りたい』『世界を平和にしたい』という強い意志があった。しかし今ここにいる信念無き空虚な瞳の持ち主は、大精霊のただの傀儡!魔王を…勇者を侮るな!」魔王の必殺の一撃を叩き込まれ、大勇者は再起不能となった。今の魔王が自分達の敵でなくて良かったと言うエクセールに、魔王は「人間と勇者の宿敵である魔王が、本当に敵でないかどうかは分からぬぞ」とうそぶきつつ、その魔王によって倒された勇者は、いくら大精霊の加護があるとは言え安易に復活出来ないだろうから、今の内に悪意の塊の正体を確認しようと言った。世界の真実を知る覚悟を決め、5人は玉座の奥にある閉ざされていた扉の先に進んだ。

 

545勇者 鎧を きる2020/11/24(火) 06:36:30.73ID:2IX86syp0
果たしてそこにあったのは、主人公が何度も訪れた大精霊の神殿であり、カフィオールが待ち構えていた。
「私は大精霊カフィオール。勇者よ、貴方が来るのをずっと待っていました」と言い出した。アルトが「その割には覚醒霊や大勇者をけしかけて来たじゃねえか!どういう事か説明しやがれ!」と怒鳴り、カフィオールは今までの敵は主人公に与えた試練だったのだと答えた。「私は貴方に最高の勇者になって欲しかった。だから敢えて勇者の資格を剥奪したのです。ですがもし貴方が世界の平和を心から望むのであれば、例え勇者でなくなろうとも魔王城に向かうと私は考えました。とは言え平和を望む意志だけでは人々を救うことは出来ません。ですから私は貴方に敵を送り、鍛える事にしたのです。その思惑通り、貴方はもう最大レベルの99に到達し、見事私の試練を乗り越えたのです。おめでとうございます!今の貴方なら魔王にも勝てます!」そう言って勇者の鎧を出現させた。「さあ、勇者よ!勇者の鎧を着て魔王を倒すのです!それが貴方の、勇者としての使命なのです!」
そこへ魔王が割って入った。「茶番はそこまでにするのだな、カフィオールよ…」カフィオールは魔王に怒りの目を向け、「魔王…。この美しい世界に悪意を振りまく忌々しい存在!さあ私の勇者よ、早く勇者の鎧を着るのです!」と詰め寄るが、魔王は「ふっ…『勇者の鎧』などとよく言ったものだな」とせせら笑った。「何が言いたいのです?」と聞き返すカフィオールに魔王は答えた。「勇者が低レベルで勇者の鎧を装備すれば魔王は倒せないが、高レベルで装備しようとすると多大な犠牲が出てしまう。そう…『勇者の鎧』とは、まさに『悪意』そのものではないか!」魔王の言葉にハッとする主人公。「魔王の言葉などに耳を貸してはいけません!さあ、勇者の鎧を着るのです!そして魔王を倒すのです!」カフィオールが叫ぶ中、2つの選択肢が現れる。
1つ目は「勇者の鎧を着る」。選ぶと勇者の鎧を装備してしまい、場面転換して、主人公は1人、魔王の間で魔王と対面する。戦闘態勢に入る主人公に、魔王は問いかける。「貴様達人間は魔物を全て殺し尽くしたが、人間達も全て死に絶えた。この世界で生きているのは最早我と貴様の2人だけだ。何をしても、何もせずともこの世界は滅び去る。この状況で貴様は何の為に戦うのか?」魔王は更に、「そして一体どれだけ我と貴様は戦い続けなければならぬと言うのだ…!勇者よ…答えよ!」と力無く言って終わり、世界が何度も繰り返されるバッドエンドとなる。

 

546勇者 鎧を きる2020/11/24(火) 06:37:03.36ID:2IX86syp0
2つ目は「勇者の鎧を『きる』」。選ぶとカフィオールが「…?今何と言いました?」と聞くので、「勇者の鎧を斬る!」と返し、カフィオールの制止の声を無視して勇者の鎧を剣で斬った。「何という事を…」カフィオールが呆然とする中、主人公は言い放つ。「そうだ…全ての元凶は勇者の鎧だったんだ!こんなものが無ければ誰も苦しまなかった…。そしてその元凶を生み出した大精霊カフィオール!お前こそがこの世界を悪意で包み込む者の正体だ!」
カフィオールは暫く黙っていたが、やがて高笑いをあげながら、悪意の塊の正体は自分だと認めた。エクセールは「何故!?どうして世界を導く大精霊カフィオール様が人々を苦しめるような事をするのです!?」と問い詰め、カフィオールは答えた。「何故、ですって?…楽しいから。だってそうでしょう!?勇者と魔王の戦いに人々が巻き込まれ、もがき苦しむ様には胸が踊ります!何より私を信じる勇者が私に裏切られているとも知らず、傷つき、倒れ、絶望する光景は、私を絶頂に導くのです!」他の5人が絶句する中、カフィオールは嬉々としてこれまでの主人公への仕打ちについて語った。「貴方は本当に最高の勇者でしたよ。何せ歴代の勇者が出来なかった魔王討伐を初めて成し遂げたのですからね。貴方を中心に世界は動き、多くの人間達が犠牲となり、助けられる命など最早無いのに、それでも形なきものに縋り付いてまで念願の魔王討伐を果たして、貴方は何を得ましたか?残念!何も得ませんでした!
そんな惨めで素晴らしい貴方をたった一度だけで手放す筈が無いでしょう?強いまま最初からやり直せた世界はどうでした?最高だったでしょう?…魔王を倒すまでは。ですが魔王を倒したことで人々の心が私の悪意に侵され、信じていた人々に裏切られて、結局自分の手で世界をぐちゃぐちゃにしてしまった気分は、どうでしたか?ねえ、どうでしたか!?貴方の苦痛と絶望が、私の心を慰めるのです!」余りにも予想外な欲望に、レーチェは「コイツ…本物の変態じゃんか。最悪だ…」と呟いた。

 

547勇者 鎧を きる2020/11/24(火) 06:38:43.91ID:2IX86syp0
カフィオールは続けた。「…ですが、貴方にはもう一度チャンスを与えようと思ったのに、何ですか、コレは?何故勇者を捨てるのです?貴方の代わりとして精霊の勇者を作り出しましたが、あんな玩具では私の心と体は満ち足りませんでした。さあ、だから早く絶望して下さい!私の勇者!」今までの悲劇が全てカフィオールの私欲のためだと知り、激しい怒りを持つ主人公。カフィオールは「ふふふ…貴方は本当に良い顔をしますね。ですがもっと貴方の顔を歪ませたい!だから良い事を思いつきました…!」と言い、力を振るった。
世界中の人間達の心に「人々よ…聞こえますか…。私は大精霊カフィオール。貴方達に勇者にまつわる大切な話があります…」と語りかけ、大精霊の神殿の光景が見えるようにしたのだ。人々は突然聞こえた声に戸惑いつつも、常日頃信仰しているカフィオールが声の主だと分かり、ある人は大精霊が実在した事に驚き、ある人は目の当たりに出来た事に喜び、ある人は世界中に交信する凄まじい魔法に感嘆していた。それは森の国の王、獣人の国の獣人王と獣人女王、魔導の国の長老デリン、人間の国の人類王といった各国の代表者達も同様で、固唾を飲んでカフィオールの言葉を聞いていた。主人公達の方も世界中の人々が見えており、カフィオールの魔法に驚いていた。
カフィオールは「人々よ、ここに居るこの者達が見えますか…?」と主人公達4人を見せながら、「勇者はこの者達に殺されました」と言い放った。主人公達や人々が衝撃を受ける中、カフィオールは続けた。「この者達は人間であるにも関わらず、大精霊である私に牙を剥き、勇者をその手にかけたのです。そして今もこの私を魔王と共謀して殺そうとしているのです。人類の母たる私に剣を向けるなど、人類の敵であるも同然」煽られた人々から怒りの矛先を向けられ、世界中から罵詈雑言を浴びせられる主人公達。
森の国王はエクセール、獣人王と獣人女王はアルト、デリンはレーチェ、といった自分の身内が大精霊に歯向かう愚行をした事に失望し、糾弾していた。エクセール達は自分達の国の代表者にそれぞれ身の潔白を主張したが、聞き入れて貰えなかった。カフィオールは人々から勇者が殺された事の嘆きの声を受け、「人々よ…今の私は魔王に力を封じられています。ですがこの大精霊の神殿では祈りを捧げ、信仰心を向けられる事で強い力を得る事が出来ます。だから私にこの者達を粛正するよう祈るのです。貴方達の平和を望む祈りが力となるのです」と告げた。人々は言われるまま祈りを捧げ、カフィオールは途轍も無い強さとなり、姿形も美しい女神から形容し難い異形のものとなり、「大覚醒霊カフィオール」と名乗った。
大覚醒霊となったカフィオールは人々に主人公達4人を粛正という名目で殺害する事を宣言し、攻撃を仕掛けた。力の差は歴然であり、一瞬で倒される主人公達。仲間達は人々から殺意を向けられ絶望していた。カフィオールは悦に入りながら「ああ、なんて惨めで汚らしくて愛おしい表情でしょう…。守ろうとしてきた人々から憎まれ、殺意を向けられている気分はどうですか?貴方のやってきた事はね…全てムダ。貴方も仲間達と同じく絶望に満ちた顔を見せて下さい」と主人公に言った。しかし主人公は尚も戦意を失わず、反撃した。「負けない…僕はもうお前の勇者じゃない!お前の言いなりになるもんか!」その攻撃が届く事は無かったが、カフィオールは主人公の態度に反感を持った。「は?…何ですか、その顔は。信じていた人々からは蔑まれ、圧倒的な力の差で剣は私に届かない!さあ、絶望して下さい!貴方は私の玩具なのですから!」そう言って主人公を痛めつけていくカフィオールだが、それでも主人公は諦めなかった。

 

548勇者 鎧を きる2020/11/24(火) 06:39:37.09ID:2IX86syp0
やがてカフィオールは「…飽きました。もう捨てましょう。そしてもう一度新しい世界で新しい玩具を探しましょう!」そう言って主人公にとどめを刺そうとするが、その時大精霊の神殿にかすかに主人公達を応援する人々の声が届き、カフィオールが手を止めた。今までの世界で主人公達がサブクエストで助けてきた人々…薬草が無くて困っていた少年には自分の薬草を与え、恋人と死別したと思い込んでいた人を恋人に再会させ、親を失って悲しんでいた子供を元気づけてあげ、無実の罪で投獄されていた人を助け出す等、主人公達に感謝していた人々が、世界が巻き戻されても尚それを忘れる事なく主人公達に想いを届けていたのだ。その中には勇者の隠れ里に居る主人公の母と祖父の想いもあり、カフィオールと敵対しているのに、見知った少年では無いはずなのに、それでも主人公の無事を祈らざるを得なかった。
しかしカフィオールは意に介さず、「この大精霊の神殿は人々の想いが届く場所…。この者達を応援する者の祈りがごく僅かに届いているようですね。ですがこの程度の脆弱な光ではかえって絶望の闇を際立たせるだけ。大精霊への反逆者達に与する者達など、新しく生まれ変わる私の世界には不要です。反逆者もろとも絶望の底に導いて差し上げましょう。それではさようなら!」と言って今度こそとどめを刺そうとした。
その時「フハハハハ!素晴らしい出来栄えだ!我が最高傑作、ニセカフィオールよ!」と高笑いが大精霊の神殿に響いた。いつの間にか姿を消していた魔王が、主人公達の前に現れたのだ。「愚かなる人間どもよ、我こそは恐怖と暴力により世界を支配せし者、魔物の王にして人間の宿敵である、魔王である!」魔王の登場と、「ニセ」カフィオールとはどういう意味なのだとざわつく人々。
魔王は主人公を指しながら、「この男は確かに勇者を殺したが、かつてはこの男自身が勇者だった。この男は幾度となく我に挑みながら、傷つく度に強くなり、我を追い詰めてきた。それが可能だったのは、大精霊カフィオールの加護があったからこそ!だからこそ我は、大精霊カフィオールを自らの手で殺したのだ!そしてその残骸に力を込め、ニセカフィオールとして蘇らせたのだ!」と語り、その場の全員が驚愕した。魔王は続けて「貴様ら人間どもは我の作った偽者と気づかず祈りを捧げていたという訳だ!」と嘲笑った。カフィオールは予想外の事態に戸惑いながら、「何を馬鹿な事を…!人々よ、私は生きています!」と訴えるが、魔王は「素晴らしい演技力だ!これは本物を超えたやもしれんな!」と軽く流した。

 

549勇者 鎧を きる2020/11/24(火) 06:40:20.28ID:2IX86syp0
カフィオールと魔王が言い争いをしている間に隙を突いて、エクセールが全体回復魔法を唱え、4人とも怪我を治した。先ほどから事態が二転三転して混乱し始めていた主人公達だったが、それでも魔王の発言は自分達を助けるための嘘なのではないかと思い至った。また、人々からの祈りにより、エクセール・アルト・レーチェの3人は、かつての世界の記憶が戻り出していた。
人々は自分達が祈りを捧げたカフィオールが偽者であると言われ、動揺し、カフィオールを疑い始めていた。カフィオールは、このままでは自分に集まった人々の祈りの力が半減してしまうため、各国の代表者達に必死に訴えた。「貴方達も国の指導者であるならば、人々に祈りを捧げるように呼びかけるのです!この者達は世界に破滅をもたらす反逆者です!」
「それはテメエだ、カフィオール!」アルトが叫びながらカフィオールに飛び掛かった。「今完全に思い出したぜ!テメエのせいで獣人の国は滅んだんだ!あの時の借りをこの場で返してやる!」アルトは雄叫びをあげつつ、獣神獄炎斬を放ち、カフィオールに手傷を負わせた。アルトが獣神獄炎斬を使ったのを見て驚く獣人王と獣人女王。アルトは「この技は仲間を心から想う獣人だけが出せる技!この技を使う俺が、世界を破滅させると思うのかよ、なあ獣人の国のみんな!」と呼びかけ、獣人女王と獣人王は「アルト…お前という男は…」「お前こそ獣人の中の獣人だ!我等が間違っていた!許してくれ!」とアルトを認め、獣人の国の人々も「流石兵士長!」「信じてたぜ!」「次期国王はアルト兵士長に決まりだな!」と喝采を挙げた。
カフィオールは「この私に牙を剥くとは浅ましい犬の身で何という事を!こうなれば貴方から血祭りにしてあげます!」とアルトに攻撃しようとするが、その時レーチェが「させるかこんちくしょー!」と割って入り、「絶☆退魔結界」という新技を編み出し、カフィオールの動きを一時的に封じた。魔導の国の長老デリンは「まさか、それは開祖の長様の退魔結界!?」とレーチェの新技に驚いていた。レーチェは魔導の国の人々に語りかける。「アタシね、退魔結界はずっと『呪い』だと思ってたんだ。自分の心を削りながら恨み辛みをぶつけてそれが相手を封じ込めるんだって。でもそうじゃないんだ!退魔結界は『祈り』だったんだよ!大切な人を守りたいっていう、そんな祈りが結界になるんだ!あの時のアタシは完全におかしくなってた。けどもう大丈夫!あの時みたいにもう誰も死なせやしない!アタシは呪いじゃなくて祈りの力でみんなを守ってみせる!」魔導の国の人々は「さすがは大天才だ!」「これで魔導の国も安泰じゃな!」と喝采を挙げた。
カフィオールは「祈り…?祈りですって…?それは私に向けられるべきものです!人間の為でなく、この大覚醒霊の為だけに祈っていればそれで良いのですよ!」と叫んだ。そこへエクセールが水、土、風、炎の精霊に呼びかけ、カフィオールを精霊魔法で攻撃した。森の国王は「貴方は炎の精霊すらも味方につけたと言うのですか!?なんという娘だ…」と驚き、エクセールは森の国の人々に語りかけた。「…私達が愛を込めて祈りを捧げたカフィオール様はもうどこにもいません。今ここにいるのは世界の理から外れた悪魔です!最早貴方に大精霊と名乗る資格などありません!本当の精霊は私達人間と共にあります。そして私はあの時と同じように、精霊達の力を借りながらこの世界の為に戦います!」森の国の人々は「あなたこそ大精霊の生まれ変わりじゃ!」「精霊のご加護を!」と喝采を挙げた。

 

550勇者 鎧を きる2020/11/24(火) 06:40:59.28ID:2IX86syp0
カフィオールは絶叫しながら、エクセール・アルト・レーチェを一蹴し、3人を戦闘不能にした。「何故!?何故私に逆らうのです!どうして私を愛さないのです!私を愛さない人間など不要なのですよ!
人類王、貴方だけは違いますね!?世界の頂点に君臨する私と人間の頂点に君臨する貴方の考えは同じはず!」カフィオールから必死な様子で聞かれた人類王はこの状況を鑑みて、どちらに着くのかを決めた。「…皆の者!こやつはカフィオールの名を騙る偽者だ!さあ我が愛する民たちよ!ニセカフィオールと戦う勇敢なる者達を応援するのだ!」人間の国の人々は「そうだー!大精霊は偽者だー!」「頑張れそこの人!」「人類王って口だけは上手いよね…」「しーっ」と喝采を挙げた。
カフィオールは「な、なんですって…。まさか人間がこんなに愚かだとは…。これも全ては魔王の戯言が引き起こした事!やはり最後に頼れるのは貴方だけのようですね」と言って主人公に語りかけた。「勇者よ…私だけの勇者よ!今なら私に歯向かった罪は問いません。精霊の勇者として魔王を殺すのです!」主人公が答える前に魔王が反応した。「愚かな…精霊に選ばれた勇者は死んだ!貴様に見限られて死んだのだ!そこにいるのはただの何者でも無き者だ!しかしこの何者でも無き者は幾度となく魔王である我の前に、仲間と共に立ち塞がった!大精霊でさえ断ち切れぬ心の絆で繋がった仲間達だ!」仲間達3人はカフィオールの攻撃でボロボロになりながらもまだ諦めておらず、立ち上がった。主人公は3人の闘志に感銘を受けた。
魔王は人々に問いかけた。「人間どもよ!世界を救うべく勇気を持って魔王と戦う者を何と言う…?人々の為に正義の剣を振るう者を何と呼ぶ!?」人々は「それは…勇者?」「そうだよ!勇者だよ!」「魔王の作ったニセカフィオールと戦うあいつは…」「勇者なんだ…!」とざわつき、魔王は更に「その男が今、この魔王が全てをかけた最高傑作である、ニセカフィオールと戦っているのだ!もしもこの男がカフィオールに敗れた暁には貴様ら人間どもに未来は無いのだ!さあ、どうする人間どもよ!」と煽り、人々は主人公を勇者と呼んでカフィオールに勝てるよう応援の声を掛けた。

 

551勇者 鎧を きる2020/11/24(火) 06:42:30.12ID:2IX86syp0
しかし魔王は「否!この男は勇者にあらず!」と断定し、その場の全員が予想外の発言に驚愕した。魔王は「【勇者】とは大精霊によって作られた記号であり、大精霊の都合の良い役割に過ぎない。だがこの男は精霊に選ばれたからではなく、自らの意志で人々の為に勇気を振り絞り、仲間の為に勇敢に戦い、その行いが人間達に認められた!そう、この男こそ【真の勇者】!」と言い、主人公に「汝に問おう!貴様の名は何だ!?勇者という役割では無く、真の勇者と言う1人の人間であるならば、その名を名乗るがいい!」と言った。

主人公は「僕は…僕の名は…【マーグ】だ!」

とゲーム開始時にプレイヤーが付けた名を名乗り、ゲーム内の表記もこれまで「?」だったのが「マーグ」となった。仲間達も主人公の本当の名前がマーグである事を認め、人々は「真の勇者マーグ」の誕生に喝采を挙げた。勇者の隠れ里の母親と祖父は「そうよ…何故今まで忘れていたの!?あの子は私の子よ!…頑張るのよ、貴方は真の勇者マーグよ!」「頑張れ、マーグよ!お主はワシの自慢の孫じゃ!」と記憶を取り戻し、隠れ里の他の人々も「あいつも立派になったな!」「お前は俺たちの誇りだぜ!」「ここは真・勇者の里だ!」と喜びの声を挙げた。
今や世界中の人々からマーグに祈りの力が集まっていた。その強さは先程僅かに届いていたものと桁違いだった。暖かく優しい祈りを受けながら、マーグはどんどん強くなった。仲間達3人は先ほどのカフィオールの攻撃により共に戦う事は出来なかったが、マーグに祈りを込めて後を託した。
最後に魔王がマーグに向けて言った。「勇者よ…いや、真の勇者マーグよ。我は先程カフィオールを殺したと言ったな。あれは…嘘だ」「知ってるよ」マーグはあっさりと返した。「ふうむ、そうか…。だがあれがカフィオールの偽者である事はあながち間違いでは無いだろう。人類を導く大精霊が、自分の快楽の為に人間を苦しめる筈が無いであろうからな。そんな諸悪の根源を前にした時、真の勇者として貴様のとるべき行動は…」「僕がこの手で…カフィオールを倒す!」「よくぞ吼えた!ならばこの魔王の力も貴様にくれてやろうではないか!」魔王はそう言い、人間達と同様にマーグに祈りの力を託した。マーグの力はレベル99で勇者の鎧を装備した時よりも遥かに強くなり、オーラを纏いながら髪が黒色から金色に変わった。「これが…この世界に生きる者達の想いの力…!みんな…ありがとう…!」マーグは世界中の人々に礼を言った。
カフィオールは半狂乱になりながら、「もういらないぃぃぃ!全て全て全て、壊しまあああす!私の思い通りにならない世界なんて必要ありませんんん!」と絶叫した。マーグは「大覚醒霊カフィオール!この世界はお前の玩具なんかじゃ無い!人間を…魔物を…真の勇者を…舐めるなよ!」と言い、ラストバトルが始まった。

 

552勇者 鎧を きる2020/11/24(火) 06:43:05.57ID:2IX86syp0
大覚醒霊カフィオールはこれまで戦ったどの相手よりも強く、更に何体もの精霊の勇者を生み出して戦わせたが、真の勇者としての電撃魔法、真の電撃魔法を使える様になったマーグの敵では無かった。カフィオールは断末魔の叫びを挙げながらこの世から消滅した。人々はマーグの勝利で歓喜に沸いた。仲間達3人もマーグの無事を泣きながら喜んでいた。マーグはそんな人々に、「僕を信じてくれて…僕を真の勇者にしてくれてありがとう!」と感謝の言葉を送った。
魔王からも「真の勇者マーグよ…よくぞカフィオールを倒した」と称えられ、マーグは「僕が勝てたのはお前のお陰だ、魔王」と礼を言った。魔王は「魔王…か。魔王とは悪意を封じるための存在。悪意が討たれた今、魔王が居る意味はあるだろうか?…マーグよ、真の勇者として我を討つが良い。勇者と魔王の戦いは、魔王が討たれる事で完結する物語なのだから…」と言い出した。世界中の人間達は「そうだー!皆んなの仇を討ってくれー!」とマーグに声援を送った。
しかしその時、大精霊の神殿に人間とは別の祈りが届いた。「魔王様…」「負けないでください…」「俺たちのトップなんだから堂々としていれば良いんだ!」「さあ、皆の者!今度は我等が魔王様の助けになるのだ!」「魔王様に栄光あれー!」世界中に散らばる魔物達の祈りの声だった。魔王は魔物達に、「お前達…。まだ我を魔王と呼んでくれるのか…。しかしもはや魔王が生きる意味は…」と言うが、マーグは魔王に語りかけた。「僕はもう『勇者』という役割じゃない。同じように、お前だって『魔王』という役割じゃない!僕が人々の為に『真の勇者』になった様に、お前も魔物達の為に『真の魔王』になれば良いじゃないか!お前を信じる者達の為に生きれば良いんだ!」魔王はしばらく黙っていたが、やがて高笑いし、「真の勇者とは魔王にすら生きろと言う程の者だというのか!良かろう、その毒の様な甘さ、後悔させてやろう!」そう言って魔物達の祈りの力を受け、マーグと同様に遥かに強くなり、【真の魔王】となった。

 

553勇者 鎧を きる2020/11/24(火) 06:43:34.76ID:2IX86syp0
真の魔王は語る。「マーグよ…。貴様にその名があるように、かつては我にも名があった。大精霊によって与えられた、【世界を一つに混ぜ合わせる者】、『カフィ・ド・ブレン』…。しかし悪しきカフィオールが滅び去った今、『カフィ』の名に縛られる必要はもうどこにも無い…!そして人間の天敵たる『魔王』という記号である必要も無くなったのだ!今の我は、我を慕う魔物達の為に生きる魔物の王として、真の魔王を名乗ろうではないか!そう…我が名は真の魔王『ドーブレン』!貴様と同じくカフィオールに与えられた役割を捨て、自らの意志で選択して生きる者の名だ!この世界の歴史と共に始まった魔王と勇者の呪われし戦いの宿命…今ここで決着をつけてくれる!」マーグは「望むところだドーブレン!僕とお前の手で悪意の連鎖をすべて断ち切って、新しい歴史を作るんだ!」と応じた。
人間も魔物も、固唾を飲んで二人の戦いを見守った。マーグが放つ真の電撃魔法は、敵を討つのでは無く、関わった者の心を打った。ドーブレンが放つ闇の魔法は人々の心の闇を原動力とし、放たれるごとに悪しき感情を解放させた。激しい戦いに皆が熱狂し、人間達はマーグを、魔物達はドーブレンを応援したが、そこには最早敵対心は無く、両者を同時に応援する者もおり、いつしか人と魔物のわだかまりは溶けていった。
そして遂に決着がついた時、人間と魔物の間に【人魔不可侵条約】が締結された。ドーブレンがカフィオールを殺したという事はマーグ達の証言によって嘘だったことが明かされ、カフィオールによって仕組まれた悪意の宿業は終わった。新しく始まった世界では、人間も魔物も誰も争わず、自分たちの意志で生きていけるようになった。そして、この自由と平和の大地で、新しい歴史が始まった…!

 

554勇者 鎧を きる2020/11/24(火) 06:44:17.18ID:2IX86syp0
マーグ版エピローグ(作中の行動次第でエクセール版・アルト版・レーチェ版も見られる)
カフィオールとの戦いから1年の月日が流れた。人魔不可侵条約の締結により、人間と魔物の戦いは終わったものの、何百年も争い続けてきた者同士、互いに手を取り合う事は難しかった。
そのため、マーグは「人魔特区計画」を提案した。それはかつて勇者の隠れ里があった場所で、人間と魔物が同じ場所に住み、お互いの文化を取り入れ、より良い未来を創るための町。最初は人間と魔物はお互いに警戒しあっていたものの、徐々に信頼関係が生まれていった。各国の支援や、エクセール、アルト、レーチェの協力の元、ついに人と魔物の垣根を越えた夢の場所が生まれた。その名も「マーグ・ブレン」。マーグは人魔特区の区長、そしてドーブレンは副区長となった。慣れない事務処理に苦戦するマーグだったが、ドーブレンの手腕で補佐されつつ、平和の日々を満喫するのだった。

 

555勇者 鎧を きる2020/11/24(火) 06:44:57.76ID:2IX86syp0
おまけ編
エピローグの後、マーグは大精霊の神殿でカフィオールと出会う。実はカフィオールは元々は人間の幸せを願う善良な精霊だったのだが、遥か昔精霊として更なる高みを目指す為に、自身に残るごく僅かな悪の部分を消そうとした結果、失敗して悪の部分が生き残り、善の部分は粉々に砕けて世界中の精霊の一部となっていたのだと言う。マーグが悪のカフィオールを倒した事で、こうして元のカフィオールが戻ったのだと説明された。悪のカフィオールを倒してくれたマーグに感謝するカフィオール。
ここで「もっと話を聞きたい」という選択肢を選ぶと、この世界の成り立ちについて説明される。元々はエルサーバル大陸で多くの動物達に囲まれて平和に暮らしていたカフィオールだったが、ある時外海から1人の男が流れ着いた。男は記憶を無くしていたが、しばらくしてその男とカフィオールは恋仲になり、自分達に似た存在として人間を作り出し、人々と共に暮らしていた。
しかしカフィオールは自分の悪の部分を消そうとして失敗し、善の部分が完全に消える直前に、残った力を男に託した。カフィオールから力を渡された男は、いつの日か再び善と悪を一つに混ぜ合わせる者、「カフィ・ド・ブレン」となった。ブレンはカフィオールが善と悪に分かれた事を知らぬまま、カフィオールの帰りを待ち続けていた。
悪のカフィオールは世界に悪意を振り撒き、世界を混沌に陥れようとしたが、その為には大精霊の力を受け継いだブレンの存在が非常に邪魔だった。しかし元々が大精霊である悪のカフィオールには同じカフィの力を持つブレンを滅ぼす事は出来ず、また同様にブレンも悪のカフィオールには手出しが出来なかった。
よって悪のカフィオールはブレンを滅ぼす為、そして大精霊の愛した地上を汚すため、人間に悪意の種を植え付けた。悪意の種は人間の負の感情を養分として成長し、無軌道に拡大する悪意の力でブレンを飲み込もうとしたのだった。
そこでブレンは人間の天敵として「魔物」を生み出し、人間を襲わせる事で、魔物の親玉である自分を憎む様に仕向け、人間の悪意をコントロールし、封印を施した。しかし悪意は余りに強力で、ブレンはそこから動けなくなった。
悪のカフィオールはブレンに直接手出し出来ないため、人間にブレンを倒させる為に「勇者」というシステムを作り出したのだった。
マーグが悪のカフィオールを倒した事でその力は元々のカフィオールに還ってきたのだが、善の部分については既に世界中の精霊として散らばり、人々の生活に根付いているため、回収出来ないとカフィオールは語った。仮に戻ったとしても、辛い思いをさせて来たブレンに今更合わせる顔が無いため、自分はこの大精霊の神殿に引き籠ると言い、マーグには改めて感謝と共に、別れを告げるのだった。

 

556ゲーム好き名無しさん2020/11/24(火) 06:45:20.41ID:2IX86syp0
以上です。ちなみに、DLsiteでは完全版として、クリア後の追加シナリオも販売されています。
ありがとうございました。

 

557ゲーム好き名無しさん2020/11/24(火) 10:37:40.96ID:Rxzpyspd0
おつ!
予想より大量で笑ってしまった
本当にお疲れ様
あとでゆっくり読ませてもらいます

 

558ゲーム好き名無しさん2020/11/24(火) 12:39:24.19ID:sjT2qjx60
大作投下乙ですー
どんでん返しの天丼づくしの名作ですね!
古き良き時代のVIP系フリゲーみたいな雰囲気を感じました
こういうのがアツマールに投稿されてるのか

 

559ゲーム好き名無しさん2020/11/25(水) 19:52:08.87ID:YtBZoTEJ0
めっちゃ夢中になって読みました乙!
こりゃ凄いシナリオだわ

 

560ゲーム好き名無しさん2020/11/26(木) 18:11:05.34ID:XfYSpfHt0
乙でした!が、実は内容読んでませんw
充実した文章量と感想の評判の良さを見て自分でやりたくなりました
最終更新:2020年11月27日 23:47