Part73-527-531
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- 527scratchessage▼2022/05/25(水) 11:30:37.41ID:7LeD9Mwd0[1回目]
- マイケル・アーセイトは処女作が爆売れした新人作家であり、長年の夢でもあった田舎町のさらに郊外にある古式な大邸宅を買った。
かつてここに住んでいたブラックウッド氏の謎を解き明かし、理想的な続編(完結編)を作るための材料にしようとしているのだ。
かつての館の主人ジェームス・ブラックウッドは狂気に駆られて妻を殺し自殺したらしいが、事件の詳細を知る者はもはやいない。
それらの事件の真相を調査するためにマイケルが向かったその館では、長年そこに眠っていた邪悪な力が目覚めようとしていた……
【ジェームス・ブラックウッド】……かつての館の主人で、友人が少なく偏屈ながらも地元の名士で高名な建築技師であった。
【クリストファー・ミルトン医師】…ジェームスの数少ない親友で事件を知る人であり、かつては敬愛された優秀な医者だった。
【マイケル・アーセイト】……人気の新人ホラー作家であり、自身が作家として一発屋になるか連作できるかをこの計画に賭けている。
【ジェリー・P・カーター】……マイケルの古くからの親友で不動産屋であり、このヴィクトリア調の館を発見しマイケルに売った。
【ブラックウッド邸】……ジェームスの死後にミルトン医師が所有し、彼が行方不明となってからはある公共団体によって所有されていた。
二階にジェームスの収集展示室があり、地下には巨大な熱源設備とその排煙装置があるのが特徴である。
【礼拝堂】……庭に建つ豪華な礼拝堂で晩年のジェームスはよく籠りきりになっており、噂ではここで妻殺しを計画していたらしい。
(以上は説明書から要点を意訳)
【一日目】
自動車をとばして館に着いた時はまだ朝で、ジェリーからの電話を受けることはできたものの電力不足で灯りが点かなかった。
ジェリーはすぐに電気技師が来ると言っていたが、なんと私が二階の自室に荷物を置いている数分の間に入れ違いで帰ってしまった!
大邸宅だからといって、なんという奴だ!
ところでジェリーの手紙によると、この館は奴の友人である医師が5年間を住んだ後に手放して全米企業連合の管理になっていたそうだ。
さらにその医師はバーで飲んだくれた末に行方不明となった上に、管理されるべき館もほとんど放置されたままになっていたらしい。
そこから入手したジェリーはしつこく『中に放置されたままの貴重品の権利は一部折半だぞ?』とも書いていたが、がめつい奴だ。
6年間も住人がいなくて埃だらけだった内部を清掃した者によると、厄介なことにネズミが番をしてくれていたそうだな。
その医師のものと思しき書き残しや日記を見ると、展示室にある異様な何かを閉じ込めたことや地下室からの異音に悩んでいたことがわかった。
何より目を引いたのは『ジェームスは正しかった』という、殺人事件を起こしたはずのかつての館の主人に対しての結びの部分だ。
しかしそのジェームスの書斎で発見した彼のアフリカ日記に、ホラー作家である私は興奮を禁じ得なかった。
ジェームスは南アフリカでの建築事業の折に、ある古代の部族とその儀式を発見しそれに魅入られてしまっていたのだ。
その部族はある異様な仮面を巡って生贄の儀式を行っていたらしいがその生贄の儀式というのが信じ難い内容で、
簡単に言うと……
『彼らはある仮面を中心にして戦歌を歌い踊っていたが、やがて一人がゆっくりであるが確かに自らの意思で中央のそれに近付いていった。
そしてしばらくの沈黙の後、部族の幾人かがさっきまで共に歌い踊っていたその者に素手で飛びかかって惨殺したのだ!
それはまるでその者が何らかの禁を破ったというより、仲間のいずれか一人がそうなるのを予め分かっていたかのように!』
見ていたジェームスは大いに焦燥する一方、儀式の中心となった―彼の感覚で美しい―仮面のことが頭から離れなくなっていたようだ。
その後もこの新居を調査してみたが、名画なんかは所狭しと掛けてあるくせに……なんと蝋燭一本すらどこにもない!
しかも霧で電気を点けたままだったのを忘れて放置したせいでバッテリーが切れて、灯りを買いに行く車まで動かない!
仕方なく、少し早いが今日は眠ることにした。
その夜、何かを引っ掻くような音(以下『scratches』)で夢から覚めた。
音は自室の暖炉から聞こえてきており、真下にある一階の暖炉に行くとさらに音は大きくなった。
どうやら地下室から熱源設備を通して響いているようだが、灯りのないまま地下室に行くのは危険すぎる。
諦めて部屋に戻るとちょうど音が消えていたのでまた眠ったが、これが先住の医師を悩ませた地下室の異音なのだろうか?
- 528scratchessage▼2022/05/25(水) 11:38:39.02ID:7LeD9Mwd0[2回目]
- 【二日目】
目覚めると激しい嵐でとても庭に出ることはできず、せっかちな電気技師も援けに行くと言っていたジェリーも来られそうになかった。
三階の工房にあった館の見取り図には、二階を改装してできた入り口のないはずの部屋があった。
入口はレンガで固められていてとても入れなかったので―外は嵐だというのに―仕方なくロープを垂らして窓から入ってみたんだが……
そこは封印という事実からは想像し難い、赤ん坊の部屋であった!
ブラックウッド夫妻には、子供がいたのだ!
部屋には出生証明書もあり、おそらくロビンという名のその子は当時の新聞を見ると死産であったらしい。
死因まではわからないが、いくら死産といえど部屋を塞いで存在しなかったことにまでするだろうか?
これはジェームスの狂気と関わりがあるのだろうか?
もう一つの封印された部屋であるところの展示室の小部屋に、『それ』はあった。
明らかな邪気を放ちながら小部屋の中に鎮座していた仮面こそ、ジェームスの手記にあったあの部族の仮面に違いなかった!
さらに傍らにあった文書には、ジェームスが『不適切な』手段で仮面を手に入れたこととそれによる邪気に悩んでいることが書いてあった。
この館の先住にして親友のミルトン医師もまた同じことを感じていた以上、この邪悪な仮面こそが全ての元凶に違いない!
私の頭には―それこそ仮面でも被ったかのように―ちょっとした新しい発想がもたらされ、その日は少し執筆を進めて眠った。
その夜もあの『scratches』が聞こえてきたため、今度はランプを手にして地下室に降りてみた。
そして巨大な熱源設備の中の排煙孔を這い蹲って進んだ先で……信じられないものを見た!
小さな格子戸の奥だが、確かに歩く人影があった!
あれは巨大なネズミなんかではない!
私はもう何も考えずに部屋に逃げ帰り、そのまま布団を被った。
間違いなく、ここにはもう一人の住人が居るのだ!
- 529scratchessage▼2022/05/25(水) 11:44:30.15ID:7LeD9Mwd0[3回目]
- 【三日目】
外は嵐が止んでいたので納骨堂に入ってみると、なんと夫妻の棺には片方しか遺体が入っていなかった!
それならば昨夜に地下で見た人影は、実は罪を逃れるために死んだことにして生きていたジェームスに違いない。
だがそれをジェリーに告げても信用せず、事件当時の担当刑事に電話してみても同じような反応だった。
しかし……
「女中は見たんだ。ジェームス・ブラックウッドが庭の穴に何かを引き摺り落としていた。彼の妻キャサリンの死体だったよ。
だが女中は彼女の喉が切り裂けて開いているのを見ただけだ。私達は荘園の中に踏み入ることはできなかった」
事件は公判に入ることなく被疑者死亡のままで闇に葬られ、ジェームスはもちろん夫人の検死も行われていなかった。
当の女中の残されていた手紙を見ても、あのミルトン医師がジェームスになんらかの協力をしていたのは確実なようだ。
だが一方で、“書斎の机で”発見した手紙では、彼の妻とミルトン医師は実際にはジェームスの仮面の執着を狂気と懸念していた。
また手紙の二年前の夫妻の子供ロビンの死産に関しても、妻とこのミルトン医師もまた長く影響を受け苦しんでいたようだ。
そこで礼拝堂の隠し部屋でジェームスの最後の記録を見付けた時、その狂気の理由はやっとわかった。
あの南アフリカの部族の仮面の儀式は、正確には『生贄』ではなかった。
太古の昔、かの部族はある長い爪を凶器とする悪魔の『生贄と引き換えに力を与える』という誘惑を賢明にも拒んだ。
そしてかの部族は逆に悪魔をあの仮面に封じ込め、代々続く儀式によって多くの『犠牲』を払いながらも封印し続けていたのだ。
仮面は今はこの館にあって暫く儀式は行われておらず、ジェームスはなんとしても生者の犠牲と儀式の完遂を必要としていた。
妻キャサリンとミルトン医師が実は彼を危ぶんで精神病院に送ろうとしていたとしても、少なくとも彼はこれを信じていたのだ。
これがジェームスが妻キャサリンを殺した理由なのだろうか?
庭を掘ってみると確かに夫人と思われる死体が埋まっていたし、館を継いだミルトン医師も―私もまた―あの仮面に悩まされている。
それとも納骨堂にあったのがミルトン医師の死体で、ジェームスはやはりまだ生きている?
だがこれでジェリーは信じるだろうかと電話をかけてみたところ、彼は一笑に付すどころか豹変して私の身を案じていた。
「ジェームスがその家のどこかに隠れている、危険なんだ。すぐに本の執筆を止めるんだ。休息を取れ。すぐにその場所から離れるんだ!」
何事かと思い郵便受けを見てみると、その理由を嫌でも知ることになった。
「マイケル・アーセイト様 ジェリー・カーターを通した貴方の不動産取得過程が違法であるため即刻退去を命じます」
ジェリーの奴が『不適切な』手段でこの館を入手したせいで、調査をするどころかすぐに館ごと手放さなければならなくなった!
ミルトン医師の気持ちが少し分かったというもんだ……
私はバッテリーをなんとか直して車を動くようにしたが、ふとこのまま館を放置して立ち去ることに責任や正義感が沸いてきた。
そこでジェームスの遺物と夫人の遺体などを利用して、簡素ながらも儀式を行ってみることにしたのだ。
そしてその目論見は成功し……仮面から放たれていた邪悪な気配は―例えそれが一時的にせよ―明らかに治まったのを感じた。
だが車に戻ろうと一階へ降りた私の耳に……昼間だというのに、あの音がまた聞こえてきた!
あの『scratches』が!
この音の正体を突き止めない限り、ここから帰ることはできない……
音が最も大きく聞こえる一階の暖炉を調べると、地下への入り口が見付かった。
忘れられたその秘密の空間にあったのは地下牢で、その前にはあの排煙孔の出口があった。
昨夜見たのは、この地下牢の中だったのだ!
鍵を開けて中に入ると、何者かによる簡素だが確かに生活した跡と引き裂かれたテディベアを見た。
そして壁に開いていた大穴を覗き込む直前、全てが繋がった。
『彼女の喉が切り裂けて開いているのを見た』
ジェームスが存在を消したがっていて、ずっと妻キャサリンとミルトン医師をも悩ませていた息子ロビンの死産
長い爪の悪魔
止むことのない『scratches』……
- 530scratchessage▼2022/05/25(水) 11:50:03.59ID:7LeD9Mwd0[4回目]
- (以下ED)
私は大穴から飛び出してきた奇形の怪人の爪を間一髪で避けて逃げ、地下牢の鍵を閉めて館から逃げ去った。
その後も何度かその奇形の怪人の悪夢に魘されることはあったが、館には足を踏み入れていない。
しかし今となっては、感謝もしているのだ。
当初の計画通り、この体験を元にして次々と作品を生み出すことができたのだから……
- 531ゲーム好き名無しさんsage▼2022/05/25(水) 11:54:28.66ID:7LeD9Mwd0[5回目]
- これでゲーム終了であり、地下牢の壁を壊し掘り進めた大穴がついに地上と繋がった映像の後でスタッフロール
さらにDirector`s Cut版では後日談があり、マイケルの話を聞いたある記者が取り壊されることになった館へ最後の調査に訪れます
そこで記者(ちなみにジェリーは服役中でマイケルに絶交された)は仮面とあの奇形の怪人に遭遇してしまいますが……
「ロビン、私を赦してくれ!死ぬ前に君にもう一度会わないといけないと思って……」
突如現れたミルトン医師が犠牲になる形で記者は逃げ帰り、あの怪人が奇形ゆえに隠されて育てられていたロビンであることが説明されます。
以上が未解決にある『scratches』でした
これも公式の日本語版は無いので有志と自分の翻訳で書きました
謎はまだ残っていますが、一番の謎は食糧を持ち込んでいないし水も三日目にならないと出ないのに平然としているマイケルです
多くのプレイヤーから『こいつは三日間飲まず食わずか?』とよく突っ込まれていますw
最終更新:2022年05月31日 03:57