538Disco
Elysium/ディスコエリジウム2022/06/12(日)
07:51:20.95ID:ge1i2+oe0
■ Disco Elysium/ディスコエリジウム
● 前置き
3周クリア。作中テキスト全体のおそらく約9割は読んだ。
英語は私の母国語じゃないし辞書や機械翻訳やそれでもわからない単語はGoogle検索に頼ったので間違ってる箇所があってもご容赦を。
・登場人物
Harrier Du Bois/ハリアー・デュボワ
主人公。通称ハリー。アルコール中毒及び薬物中毒の刑事。41分署/管区所属。
この主人公、各ゲーム紹介サイトの記事では記憶喪失という説明がされる。が、これは嘘である。
実際は記憶喪失者を演じているだけ。貧困、酒、ドラッグ、*ex-something* --
失恋によって彼の心と体は壊れ*全てを忘却した*という体裁を得ないと警官としても人間としても機能しなくなったのだ。
彼の壊れた心は脳や脊髄、使い古したネクタイが喋りだし、知性や知覚などの24の思考(ビリー・ミリガンは無関係)が語りかけてくるようになった。(側から見ればアル中の中年刑事が一人でブツブツ言ってるだけ)
このアル中を単なるダメ刑事にするのか、あるいは超人刑事/Detective Godにするかはプレイヤーのロールプレイ次第。
上記説明の如く駄目人間という根本は変わらないのだが。
Kim Kitsuragi/キム・キツラギ
ハリーとは別管区57分署の刑事。本作におけるハリーの相棒で実質は介護人。本人曰く「臨時的なもの」。
プレイヤーの選択と行動の成否次第で共同捜査がなくなる場合もある。
Klaasje Amandou/クラシエ・アマンドゥ
ハリーが宿泊しているホテルの2つ隣の部屋に長期滞在している若い女性。
ゲームの二日目以降に事情聴取する事になる企業スパイ。息をするように嘘をつく女。実際、クラシエという名前すら定かではない。
彼女の嘘を許すか、許さず逮捕するかはプレイヤー次第。
THE HANGED MAN/絞首刑の男
ゲームの発端である殺人事件/THE HANGED MAN事件の被害者。
本名Ellis Kortenaer。傭兵。
本編開始前、ある企業に雇われてレヴァショルのストライキに対し工作活動していた。
クラシエと同郷で職業柄も近いからか彼女と関係を持つようになる。
クラシエとセックス中、何者かに殺され死体となった彼はホテルの裏庭に吊るされてしまう。
Deserter/脱走兵
絞首刑の男を殺した犯人。本名Iosef Lilianovich Dros。レバショルにかつて存在した共産党軍の元政治将校/兵士。
潜伏(浮浪)中にスパイとしてレヴァショルに潜入してきたクラシエを発見。その美貌から彼女に固執するようになる。絞首刑の男とクラシエのセックスを目撃し嫉妬、絞首刑の男を自前のライフルで狙撃
-- 殺害した。
・ゲームシステム
ニューゲームをクリックすると主人公のタイプを4つから選べる。
左から数えて1番目はTHINKER、知性派刑事。探偵物ではおなじみの知性派で器用。反面、身体能力もメンタルも弱い。
2番目はSENSITIVE、直感派刑事。論理的思考に基づかない直感及びメンタルと身体能力を持つ。反面、馬鹿で不器用。
3番目はPHYSICAL、肉体派刑事。頑強かつ手先も器用。反面、馬鹿でメンタルも弱い。
最後にCREATE YOUR OWNでこれは自由にステータス値を振り分けできる。
スキルは大別して4つあり、知性、精神、身体能力(頑強)、運動能力(機敏)から更に細分化され4かける6の計24個のスキルがある。
捜査を進めていく内に経験値が溜まり100EXPを取得する毎に1ポイント分スキルに割り振り出来る。
つまり、スキル値を上げれば上げるほど読めるテキストが増える。大枠では1のTrivialから12のImpposibleまであり、11以降は完全に趣味の世界だ。10のGodlyが事実上の上限値だと思われる。
街の至る所に配置されている装備品でもスキル値は上下する。着ている服によって会話が劇的に変わることはほとんどない。エンディングだけ例外的に各装備毎にテキストが変化する。
消費アイテムは体力値と精神値の回復剤2つと4つのドラッグ。タバコで知性、ピロリドンと呼ばれる薬物で精神、アルコールで身体能力、スピード/覚醒剤で運動能力がそれぞれ上がる。
使用すると能力上昇と引き換えに-1分だけ体力と気力が下がるがこれも薬品で回復可能。まれに会話などで回復する事がある。
薬物使用によるデメリットはほぼ皆無だが酒だけは分岐に影響する。
以上のスキル値の高低は全てダイスロールの成否に関わっている。
2つのチェックがあり、一つはパッシヴ(受動)チェックで文章上の行間を縫うように文章が挿入される。前述のスキル値に応じてスキル値が高ければ高いほど情報量や力の入ったテキストが展開される。
例えば以下。
HALF LIGHT [Trivial: Success] - 前置き長い上につまんねえぞ!さっさと本題のストーリーを説明しろよクソ野郎!
COMPOSURE [Easy: Success] - まあまあ落ち着いて。
EMPATHY [Medium: Success] - 彼は彼なりに真摯で丁寧な説明を試みています。
ELECTROCHEMISTRY [Formidable: Success] - 落ち着くには酒が一番だよ。
INLAND EMPIRE [Godly: Success] - 飲酒そのものに意味はありません。
HORRIFIC NECKTIE - 無意味だからこそ楽しいものもあるよね?*Bratan*!
CONCEPTUALIZATION [Trivial: Success] - Bratan --
このゲームの造語かつ、この狂ったネクタイが口にするハリーの愛称。Brotherを意味する。
こんな感じだ。
もう一つは選択肢を選ぶ時に行われるスキルチェック。これはスキル値とプレイヤーの行動によって得た情報や行動によって得た補正値を加えてダイスロールで判定されるチェック。
大半のダイスロールチェックは失敗してもやり直せる。これがホワイトチェック。やり直し出来ないのがレッドチェック。
例えば以下。
[Inland Empire - Challenging 12] 「教えてくれネクタイ。このゲームの世界観やストーリーはどんな感じなんだ?」
+3 ゲームを3周した。
+1 ネット上にある本作の英語記事を読み漁った。
+1 酒気帯び。
-2 英語は母国語じゃない。
-1 ここに論理はいない。
Inland Empire - Challenging 12
VERY HIGH
97%
これはレッドチェックだ。再試行(ダイスロール)はできない。
CHECK SUCCESS
INLAND EMPIRE [Challenging: Success] HORRIFIC NECKTIE – Here we gooooooooooo!
*Bratushka*!
ENCYCLOPEDIA [Easy: Success] - Bratushka -- ロシア語で兄弟を意味する。
・テーマと世界観
このゲームの世界には独特の歴史・思想・政治・宗教・技術があり、それらをWikipedia並の情報量のテキストがで埋めこまれている。
*独特*と言っても所詮は私たちが知る現実世界の -- とりわけヨーロッパの反映に過ぎない。つまり深く考える必要は無い。
実際、あるキャラクターは言う。「この世界に意味なんてない」と。そして、主人公(とその思考)はその意見に同意する。
本作の世界は政治思想、とりわけ共産主義に注目されがちだが政治的に見ればアナーキズム(作中でのアナーキズムへの言及はごく僅か)が前提にあり、個人レベルで見れば実際はニヒリズム、うつ病、アルコール依存等の特色の方が強いと私は思う。あとディスコだ。
このゲーム上での政治と政治思想は文章上で嘲笑されるオモチャだ。
そして、何よりもハリーがどれだけ政治や社会の事を論じても彼の心を占めるのは女性の事だ。
・ストーリー
ゲーム開始前
400年の歩みと2度の革命を経たディスコエリジウムの世界。
共産主義革命は失敗し長い年月が経ったある日、Revacholと呼ばれる忘れられた街でストライキが起き戦争へと発展しようとしている。
火がつけば爆発する情勢の中、ホステル兼カフェテリアの裏庭で殺人事件が発生し一人の刑事が派遣される。
その刑事がHarrier Du Bois、本作の主人公ハリーだ。
事件現場に派遣された時にすでにハリーは泥酔していた。
同僚達に「消え失せろ!」「俺は探偵の神だ!」「全てを犯し、全てが燃える」「Detect or
die!(検出か死か!)」と怒鳴り散らして捜査から追い出し、ホステルで暴れ回り、質屋に拳銃を売り、署から割り当てられた車を身分証である警官バッジごと海に沈めた。
車両をスクラップにしたハリーはホステルの一室でディスコミュージックを大音量で流しパーティーをする。しばらくするとディスコミュージックから一転、悲しい曲が流れ始める。
「もうこんな動物でいたくない!」
泣き喚き部屋中を暴れ回るハリー。やがて彼は意識を失い闇に沈んでいった。
1日目から2日目
ここからゲーム開始時点。
起床したハリーは部屋中に散らばった服と靴(靴の片方は割れた窓の向こう側にある)を回収し部屋を出る。(全裸のままクリアする事も出来る。)
ホステルの入り口に立っているアジア系男性に話しかける。別の管轄区の要請で派遣された刑事で名前はキム・キツラギというらしい。
ここからこの*臨時の*相棒と共同捜査をしていく事になる。
このゲームの初日から2日目は探索出来る場所が限定されている。なぜか?ホテル南に位置する河川を渡れないからだ。なぜ渡れないのか?河川をひしゃげた広告看板が塞いでいるからだ。
なぜ看板が河川を塞いでいるのか?どこかの狂った酔っ払いが車を爆走させ看板を壊したからだ。
したがって、初日と2日目はマップ全体の半分程度しか探索出来ない。
堅実な捜査を進める場合、被害者の遺体を検死していく常道のプレイになるだろう。(遺体に一切触れずに事件を解決する事も出来る。実績「What
body?/死体って何のこと?」まである。)
検死の為に木から遺体を下ろす時、ハリーは絞首刑の男に問いかける。
ハリー「お前を殺したのは誰だ?」
絞首刑の男「共産主義だ」
そこから現場周辺の事件目撃者を探したり、街で起きているストライキの当事者などに事情聴取を行うなどして捜査を進めていく。
3日目
閉鎖されていた河川の先の区画へ行けるようになる。だが捜査範囲が広がるものの出来る事もやる事も変わらない。
度重なる意味の有無を問わない捜査が続く。(プレイヤーにとっては文章を読む事とポイント&クリックだ。)
紆余曲折の末に容疑者の一人を見つけ出す。この容疑者と対峙すると後戻りは出来ないので事前に未解決のタスクは消化しておく事。
容疑者と対峙した後、ホステルがある区画に戻るとTHE HANGED MANを吊るした港湾労働者とTHE HANGED
MANの部下である傭兵達の銃撃戦が起こる。(争いに至るまでの紆余曲折はややこしいので割愛する。大体は真犯人と嘘つきクラシエのせい。)
THE MERCENARY TRIBUNAL/傭兵裁判だ。ここの立ち回り次第で捜査のパートナーが変わったりする。
ここでどんなに上手く立ち回ってもハリーは銃撃され気を失ってしまう。
4日目(TRIBUNALの翌日)
丸一日寝たきりになる。
5日目以降(TRIBUNALの翌々日)
TRIBUNALでうまく立ち回るとキムがそのまま捜査に同行する。
失敗すると地元の悪ガキCUNO/クーノがついてくる。拒否する事も出来る。
捜査を再開しハリーは本事件の真犯人が事件現場から数キロ離れた小島にいると推定する。
地元の漁師からボートを借りて小島へ向かい犯人と対峙・尋問する。犯人の正体は前述の通りで付け加える事はない。
ハリーの妄想あるいは直感の通り、犯人は共産主義だった。
[尋問の終盤、事件とは大枠では関係ないが重要な*出来事*が起こるが割愛。]
尋問を終えると犯人の身柄確保の手配をするために一時的に小島から戻る事に。
ボートを降りると3つの人影が。
エンディング
ゲーム開始前にハリーが拒絶し捜査から追い出した同僚達が待っていた。ハリーの*本来の*パートナーであり上司のJEAN
VICQUEMARE/ジャン・ヴィクメア、同僚のJUDIT MINOT/ジュディ・ミノー、外部派遣員であるTRANT
HEIDELSTAM/トラント・ハイデルスタム。
彼らにハリーとプレイヤーがどのように事件を捜査/迷走し、どんなスタイルで、どんな政治思想を持ち、成功/失敗したのかを考察/判定評価される。
ここでキムかクーノが同行していれば基本的にはグッドエンドであり大きな違いはない。
ハリーが警官として -- あるいは人間として重大な問題を抱えていても事件を解決した事は確かであり、JEANはハリーを罵しりながらも評価せざるを得ない。
ハリーの頑張りによってストライキと傭兵裁判による戦争への突入は一時的に回避され、その発端である事件は解決された。しかし、レバショルは依然危険な状態であり問題も山積みだ。
次回作への伏線的な文章が挿入されつつ、レヴァショルに春がやってくる。それが流血を伴うのか単なる混乱なのか秩序をもたらすものなのかは誰にもわからない。
しかし、一つだけ確かな事がある。ハリーは重大な欠陥を抱えつつも -- 自分を取り戻し -- 警官を続ける事になった。ハリーは*帰還*したのだ。
最後のダイアログをクリックする。
対峙するハリーとJEAN。JEANはハリーに近づいていく。
TRIBUNALで負傷し歩行困難なハリーの肩を抱え車両に乗せるJEAN。自身も車両に乗り込みドアを閉めるとエンドロール。
エンディング分岐とその条件一覧
キムグッドエンド
グッドコップポイント(道徳的に正しい選択肢を選ぶと貯まるポイント、逆に悪い事をすれば減る)を一定数貯めてエンディングでキムを勧誘する。
キムノーマルエンド
キムを勧誘しないかグッドコップポイントが低いうちに勧誘する。
クーノグッドエンド
クーノを相棒にした上でエンディングで勧誘する。グッドコップポイントは関係ない。
クーノノーマルエンド
キムが傭兵裁判で撃たれた後、クーノを仲間にして勧誘しない。
相棒なしエンド
キムとクーノのいずれのパートナーを拒否。プレイ中に一度も酒を飲んでいない状態でエンディングを迎える。飲んでしまった場合はWaste Land of
Reality/現実の荒野思考を内面化あるいは入手している事。
バッドエンディング
キムとクーノのいずれのパートナーを拒否。酒を一度でも飲んだ状態でWaste Land of Reality/現実の荒野を入手していない事。
ゲーム途中にあるその他のバッド/デッドエンドは省略。
以上、2019年に発売されたDisco Elysiumの要約。
作品テーマに関わるコアな部分や2021年配信のFINALCUT版で追加された政治クエストは割愛。
いまだに和訳されてないからか誰も要約してないので、ざっくりと本筋だけ書いた。
個人的には本筋よりも脇道の方が面白いゲームだと思う。