アットウィキロゴ

       →検索結果一覧表示画面へ戻る

事件番号     昭和46(オ)411
事件名     否認権行使による損害賠償請求
裁判年月日     昭和49年04月26日
法廷名     最高裁判所第二小法廷
裁判種別     判決
結果     棄却
判例集巻・号・頁     第28巻3号503頁

原審裁判所名     東京高等裁判所 
原審事件番号    
原審裁判年月日     昭和46年01月28日

判示事項     相続財産の限度での支払を命ずる判決が確定した場合における判決の効力
裁判要旨     被相続人に対する債権につき、債権者と相続人との間の前訴において、相続人の限定承認が認められ、相続財産の限度での支払を命ずる判決が確定しているときは、債権者は相続人に対し、後訴によつて、右判決の基礎となる事実審の口頭弁論終結時以前に存在した限定承認と相容れない事実を主張して右債権につき無留保の判決を求めることはできない。
参照法条     民法921条,民法922条,民訴法199条1項,民訴法545条2項

主    文
本件上告を棄却する。
上告費用は上告人の負担とする。

理    由
一、上告人の上告理由第一点について。
被相続人の債務につき債権者より相続人に対し給付の訴が提起され、右訴訟において該債務の存在と
ともに相続人の限定承認の事実も認められたときは、裁判所は、債務名義上相続人の限定責任を明らかに
するため、判決主文において、相続人に対し相続財産の限度で右債務の支払を命ずべきである。
ところで、右のように相続財産の限度で支払を命じた、いわゆる留保付判決が確定した後において、債
権者が、右訴訟の第二審口頭弁論終結時以前に存在した限定承認と相容れない事実(たとえば民法九二
一条の法定単純承認の事実)を主張して、右債権につき無留保の判決を得るため新たに訴を提起すること
は許されないものと解すべきである。けだし、前訴の訴訟物は、直接には、給付請求権即ち債権(相続債務)
の存在及びその範囲であるが、限定承認の存在及び効力も、これに準ずるものとして審理判断されるのみな
らず、限定承認が認められたときは前述のように主文においてそのことが明示されるのであるから、限定承
認の存在及び効力についての前訴の判断に関しては、既判力に準ずる効力があると考えるべきであるし、ま
た民訴法五四五条二項によると、確定判決に対する請求異議の訴は、異議を主張することを要する口頭弁
論の終結後に生じた原因に基づいてのみ提起することができるとされているが、その法意は、権利関係の安
定、訴訟経済及び訴訟上の信義則等の観点から、判決の基礎となる口頭弁論において主張することのでき
た事由に基づいて判決の効力をその確定後に左右することは許されないとするにあると解すべきであり、右
趣旨に照らすと、債権者が前訴において主張することのできた前述のごとき事実を主張して、前訴の確定判
決が認めた限定承認の存在及び効力を争うことも同様に許されないものと考えられるからである。
そして、右のことは、債権者の給付請求に対し相続人から限定承認の主張が提出され、これが認められ
て留保付判決がされた場合であると、債権者がみずから留保付で請求をし留保付判決がされた場合である
とによつて異なるところはないと解すべきである。
これを本件についてみるに、原審の適法に確定したところによると、本訴請求中「被上告人Aに対し金一
五九万五〇〇〇円及び内金二二万三〇〇〇円に対する昭和三〇年三月二五日以降支払ずみにいたるま
で年五分の割合による遅延損害金、被上告人B、同Cに対し各金一〇六万三三三三円三三銭及び内金一
四万八六六六円六六銭に対する前同日以降支払ずみにいたるまで年五分の割合による遅延損害金」の支
払を求める部分については、先に本件上告人を原告とし亡Dの相続財産管理人Aを被告とする前訴(東京地
方裁判所昭和三一年(ワ)第五八六七号、東京高等裁判所昭和三五年(ネ)第一〇八九号、最高裁判所昭
和三九年(オ)第八八〇号、第八八一号)において、「相続財産の限度で……支払え」との給付判決が確定し
ており、Dの相続財産管理人に対する右判決の効力が相続分に応じDの相続人である右被上告人らに及ぶ
ことは明らかである。そして、上告人が本訴で主張する法定単純承認の事由は、前訴の第二審口頭弁論終
結時以前に存在していた事実であるというのであるから、上告人の右主張は前訴の確定判決に牴触し、また
これに遮断されて許されず、本訴請求中前記部分は不適法として却下を免れないといわなければならない。
以上のとおりであるから、これと結論を同じくする原判決は正当として是認し得るのであつて、論旨は採用
することができない。
二、同第二点について。
訴訟記録に照らすと、本件控訴状には被控訴人として第一審被告Eの氏名、住所の記載はなく、控訴の
趣旨にもEに対する請求は記載されておらず、その他記録上控訴期間経過以前において上告人がEに対し
ても控訴を提起する趣旨であることを窺わせるに足りるものは一切なかつたのであるから、原審が、Eに対す
る関係においては、適法な控訴がないまま第一審判決が確定したものとし、控訴期間経過後にされた上告
人の「控訴状補正申立」を容れなかつたのは正当である。原判決に所論の違法はなく、論旨は採用すること
ができない。
三、同第三点について。
被告に対し金銭給付を求める原告の請求を一部棄却した第一審判決に対し、原告(控訴人)が右敗訴部
分の取消しを求めて控訴を申し立てたが、控訴の趣旨として、右取消しのうえ被告(被控訴人)に対して右棄
却された金額全額ではなく、単にその一部の支払を請求するにすぎないときは、第一審判決の請求棄却部
分のうち、原告(控訴人)において右支払を求めなかつた部分については、原告(控訴人)の控訴はなく確定
したものと解すべきである。
これを本件についてみるに、原審の適法に確定した事実によると、前掲前訴の第一審において、原告(本
件上告人)は被告である前記Aに対し「金四〇〇万円とこれに対する昭和三〇年三月二五日以降支払ずみ
にいたるまで年五分の割合による損害金」の支払を求めたところ、第一審は「被告は原告に対し、相続財産
の限度で金六六万九〇〇〇円とこれに対する昭和三〇年三月二五日以降支払ずみにいたるまで年五分の
割合による金員を支払え。原告のその余の請求は棄却する。」との判決をし、原告は右敗訴部分の取消しを
求めて控訴したが控訴の趣旨において、原告(控訴人)は被告(被控訴人)に対し第一審判決で棄却された
金三三三万一〇〇〇円及びこれに対する前述のごとき損害金のうち、金三三三万一〇〇〇円のみについて
支払を求め、損害金についての支払は求めなかつたというのであるから、第一審判決中右損害金を棄却し
た部分については、原告より控訴はなく、第一審判決が確定したというべきである。
そうすると、これと同旨の原審の判断は正当として是認すべきであり、論旨は採用することができない。
よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。
最高裁判所第二小法廷
裁判長裁判官    岡   原   昌   男
裁判官    小   川   信   雄
裁判官    大   塚   喜 一 郎
裁判官    吉   田       豊

最終更新:2008年01月28日 04:13