「はぁ……」

冬木市内にある、とある中学校からの帰り道。
いかにも幸薄そうな少女、ゆんゆん――――念のため断っておくが本名である――――はため息をつきながら家路に付いていた。

「なんで誰も私に話しかけてくれないんだろう……すっかりトランプタワーの名人になっちゃったよ」

そう、この少女は、学校で孤立していた。別に虐められてるわけではないが友達がいない。いわゆるボッチである。
さて、何故この少女が学校で孤立しているかというと、先ほど彼女が呟いたトランプタワーが原因である。

自分から話しかける勇気はないが周囲からボッチだと思われたくない彼女は、学校の休み時間は誰かが話しかけてきてくれることを期待しながら何かしらの一人遊びに興じることにしている。
余りにも真剣に一人遊びをしているため、周囲の人間が話しかけるのを憚ってしまうのだ。

「次は何をしようかな、ルービックキューブはすぐクリアできるようになっちゃったし……」

誰も話しかけてこないから一人遊びをして、一人遊びの腕に磨きがかかり、より一層周囲が遠のくという悪循環であった。

と、その辺の公園で小さな子供たちが携帯ゲーム機を持ち合って遊んでいるのが見えた。

(うーん、学校にゲーム機持っていくのはちょっとな……)

根が真面目な彼女は、同級生と会話が弾みそうだなと思いつつも学校に不要物を持ち込む気にはならない。

(いいなぁ、私も学校が終わった後に友達とゲームとかしたいな……)

羨みながら公園でよく分からないゲームの用語らしき言葉を連呼している小さな子供たちを眺める。

「ねぇこの敵防御力高すぎじゃない?」
「あー、その敵は魔法使えばすぐ倒せるよ」
「じゃあエクスプロージョンでいいか」

(うんうん、ああいう会話とか友達としたいなぁ。
でもエクスプロージョン――――爆裂魔法なんてネタ魔法覚える子はちょっとな……
あれ?爆裂魔法?)

「ねぇゆんゆんさn」
「あーーーーーーーー!!!!!!」





「なんで同級生が話しかけてきた時に限って記憶が戻るのよ―――!」

ライバルの使うネタ魔法の名前を聞いたことで記憶を取り戻し、聖杯戦争についての情報を手に入れたゆんゆん。突然の記憶の奔流に思わず大声を上げてしまうのも無理はない。
しかし、ボッチなゆんゆんを気にかけて声をかけてくれた同級生は、そんな彼女を見てそそくさとその場を離れてしまった。なお、これが噂になり、彼女は学校でより一層孤立することになる。

この娘、筋金入りのぼっち体質であった。鉄片を手に入れたのも、『鉄屑とも友達になれる本』を真に受けて、アクセルの町のとある魔道具店で『不思議な鉄片』を買ったからである。


「まぁ元気出しなさいよ、どうせ本当の同級生じゃないんだし」

扇情的な格好をした魔女――――キャスターはそう言って慰めてくれるが、本当の同級生じゃなかろうと友達は欲しい。

「あ、キャスター……さん、ありがとうございます」

口元をニマニマさせながらやけに嬉しそうに答えるゆんゆん。家族以外とまともに会話すること自体久しぶりなので、相手が人間でなかろうと嬉しいのだ。

「で、ゆんゆんだったかしら?……ねぇ、ほんとに本名なの?」
「本名です!えっとですね、私たち紅魔族はみんな周りとは変わった名前を持っていまして、みんな性格も変わってるんです。みんなは私が変わってるって言うんですけど、絶対私が変わってるんじゃなくて里のみんなが変わってるんだと、あ、里っていうのは紅魔の里のことで」

「ちょちょ、ちょっと待ちなさい!マスターの身の上話は後で聞くわ!」

よほど話し相手ができて嬉しいのか、聞いてもいない身の上話を長々と始めるゆんゆん。互いの親睦を深める前に、聖杯戦争についてしっかりと意思を伝えておく必要がある。

ちなみに、話している場所はその辺の公園である。
ゲームに飽きた子供たちはボールを持ってどこかに行ったので、一人で喋っている(ように見える)少女がいても奇異の目で見られることはない。

「最初に言っておくと、私は戦争って大嫌いなの!だから、この聖杯戦争もめちゃくちゃにしてやるつもりよ!」
「えっと、私は特に願いとかないからいいんですけど……」

「だからマスターも願いを叶えられn……え、願いないの?」

「友達は欲しいですけど、流石にそれで聖杯を手に入れる気はないですね。あ、でも、同じ状況に巻き込まれた子と友達になれるかもしれない!
野菜が飛ばない妙な世界に飛ばされた同士、友情が芽生えて、互いのサーヴァントと一緒に欲望に目が眩んだ悪人と力を合わせて戦う……どうしようキャスターさん、この状況って意外と悪くないかもしれません!」

ゆんゆんはこれでもモンスターと命の取り合いをする冒険者だ。命の危機を感じたことなど一度や二度ではない。まぁ命の危険を感じる程のピンチには、大抵爆裂魔法なんてネタ魔法を使うライバルが関係している気もするが……。
とにかく、そんな素性もあって、願いをかけた殺し合いに巻き込まれたことによる混乱は少ない。
余談だが、一般的には野菜が飛ぶ世界の方がよっぽど妙である。

「そ、そう。とにかく!しばらくは使い魔を放って他のマスターを探すわよ!良い奴そうだったらとりあえず接触してみて、悪そうな奴だったら夜を待って使い魔を寝床に送るわ」

「えっと、寝起きを襲っちゃうんですか?」

「違うわよ、いやある意味違わないか……えーとね、アルテミス!説明お願い!」

何故か顔を赤くしたキャスターが叫ぶと同時に、ボワン、と煙が巻き起こる。
煙が晴れた先には、キャスターよりよっぽど扇情的な格好をした女性がいた。

「ちょっとマリアー、こんなことで魔力無駄にしてんじゃないわよ」

「うるさいわね、アンタこそ真名言ってんじゃないわよ」

「マリアなんて名前、普通は聖母の方を想像するからばれちゃっても平気よ平気」

「えっと……?」

会話から置いてけぼりになってボッチ気分をまた味わってしまっているゆんゆん。と、そんなゆんゆんを見て妖艶な笑みを浮かべる使い魔――――アルテミス。

「他のマスターが悪そうな奴だったら、夜に私が骨抜きにするの」

「ほねぬきっ!?」

実は意外とむっつりスケベの気があるゆんゆんは、その言葉を聞いて頬を赤くする。

「マリアが活躍した時代ではね、軍に雇われた魔女が夢魔を放って、相手の指揮官を骨抜きにするなんて日常茶飯事だったのよ」

「そ、そうなんですか」

「でもねお嬢さん、マリアったら面白いのよ」

「ちょっとアルテミス!」

「マリアはね、毎夜夢魔を放って男を骨抜きにした、キリスト教が忌み嫌う淫らな魔女だけど、同時にキリスト教が最も神聖視している……処女なの」
「アルテミスゥうううううう!!!!」

キャスターが杖を振るうと、再びボワンと煙が舞い、使い魔は消えた。
後には、処女なんて犬にでもくれてやると大声で喚く魔女と、顔を赤くした少女がいるのみであった。


【クラス】
キャスター

【真名】
マリア@純潔のマリア

【ステータス】
筋力:D 耐久:D 敏捷:C 幸運:B 魔力:A 宝具:C

【属性】
混沌・善

【クラススキル】
陣地作成:B
 魔術師として、自らに有利な陣地を作り上げる。
 “工房”の形成が可能。

道具作成:B
 魔力を帯びた器具を作成できる。

【保有スキル】
使い魔(梟):A
梟を使い魔として使役できる。
使い魔の梟は夢魔としても活動でき、サキュバスのアルテミスとインキュバスのプリアポスの二匹を呼び出せる。余談だが、プリアポスはインキュバスのくせに‟付いてない‟

飛行:B
魔法のピッチフォークによって空を飛ぶことができる。

【宝具】
『剣よりも花を(フラワー・オブ・ライフ)』
ランク:C 種別:対軍宝具 レンジ:1~99 最大捕捉:1000人
彼女が生前(ピッチフォークによる飛行を除けば)最後に使ったであろう魔法が宝具と化したもの。
百年戦争の最中、ある戦場でフランスとイングランド両軍の剣を花に変えた逸話から生まれた。
剣だけに留まらず相手の武器を花に変えることができる。しかし、宝具の場合は同ランク以上の宝具には効かない上に、そもそも相手の宝具が武具と関係ないものだった場合も無効など、制約も多い。

【人物背景】
処女。百年戦争の時代に活躍した魔女。戦争、そして戦争を止めようとしないカトリック教会を嫌っている。
本来、魔女は軍から依頼を受けた際は夢魔を送って敵の指揮官を骨抜きにするものだが、マリアは魔物を召喚して無理矢理戦争を止めるため、他の魔女からも厄介者扱いされていた。
なお、今回の召喚では魔物の召喚は再現されず、あくまで『百年戦争当時の魔女』として平均的な飛行や夢魔の召喚のみ(宝具は例外)再現された。
ちなみに、純潔のマリアはアニメ化しているが、大量のアニメオリジナルキャラクターの投入など一部展開が原作と違っている。一応マリアの把握ならばアニメ版でも概ね問題はないかと思われるが、1クールのアニメを見るよりは単行本3冊(外伝を含めても4冊)の原作の方が手もかからないと思われる。

【weapon】
魔法のピッチフォーク

【サーヴァントとしての願い】
なし。戦争を止めさせること自体が目的。

【マスター】
ゆんゆん@この素晴らしい世界に祝福を!

【マスターとしての願い】
特にないけど、友達が欲しいなぁ

【人物背景】
ぼっち。アークウィザードにして、上級魔法を操る者。やがては紅魔族の長となる者。
中二病だらけの紅魔の里において唯一の常識人だが、そのせいで周りからは変わり者として扱われていた。
土下座して一回でいいからデートして下さいと頼めば(彼女のライバルの邪魔が入らない限り)デートしてくれるくらいチョロい。
ちなみに、最悪本編を読まなくても角川スニーカー文庫の公式サイトで無料で読める『この素晴らしい世界に爆焔を!』を読めば把握は可能だと思われる。

【weapon】
なし
一応腰に短剣を指しているが、滅多に武器として使わない

【能力・技能】
紅魔族特有の高い魔力
中級魔法
上級魔法

【参戦時期】
3巻で初登場してから4巻のラストまでの間。

【方針】
とりあえずは使い魔を放って他の主従を探す。聖杯狙いらしき者がいたら、夢魔を送って骨抜きにする。

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最終更新:2017年03月13日 20:55