……はい、私は無能であります。先日、麾下の艦隊において、特別好意を抱いていた艦娘に対し、私的な関係を要求いたしました。
某日某時刻に、海軍将官がこぞって利用しているホテルにて、彼女を呼び足した挙句に婚礼衣装に着替えることを強要したのです。
あくまでも私的な関係であると主張しつつ、自らの立場を盾に関係を迫りました。
彼女は立場上これを受け入れざるを得ず、上司による性的な嫌がらせにより多大なる心理的ストレスを蓄積、
結果ソロモン海域における戦闘において判断ミスが偶発され、彼女……駆逐艦吹雪は轟沈しました。
この件に置きまして私の過失は明らかであります。どうか適切な処分をお願い致します。
134: 提督&アーチャー ◆mMD5.Rtdqs :2017/03/14(火) 03:37:17 ID:DFfMEpfU0
なるほど、日常とはこうであった――。背の高い建物を騒々しい看板が彩り、行きかう人に気を使って道を歩く。
何の気もなしにに覗いたファーストフード店で、青少年たちがくだらない話で盛り上がり、女子が声を潜めて後、揃えて笑った。
人々はどこかに浅い空白を抱え、そこらに軽い異常を探し、路地近くの空を眺める男性を、浸っているよとバカにする。
そんな光景はおおげさ、とっても大袈裟に言ってしまえば人類の築き上げた幸福の基準点だ。空を見ていた男は思う。
少し気恥しくなってしまうような表現で、浸っているのは間違いないのだろう。ただそんな気取ったものも使いたくなる。
男は視線を動かす、路地の先の大通り、これまた繁栄の象徴のようにせわしなく車が行きかう交差点、その中心に同じく空を見つめる男がいた。
彼は、(間違いなく轢き飛ばされるだろう位置で――) 交通の妨げになっていること甚だしい位置で、一身に空を、ビルによって切り取られた空を見る。
黒い眼には何の感情を映していないように見せながら、奥に込みげてくるものを押しつぶして。交差点の男――アーチャーは空を見ているのだった。
霊体化しているアーチャーの格好は近未来の兵士のようだ。おおよそこんな現代の街頭には似合わない姿。
それは路地の男からみたとしても、どうにも拭い切れない違和感の存在する光景だ。日常に馴染まない異物、アーチャーもこの風景の一員だったのに。
……自分はどうだろう? 路地の男は自分の身なりを確かめた。一般的な成人男性の格好だ、奇怪な行動をしなければ溶け込めるだろう。
少なくとも変には思われないはずだ、自分はずれていない。ずれていない、ずれていない。そのはず……。
――しれいかーん
ああ、だめだ。此方の認識はもう浸食されてしまっている。何の変哲もない街の風景のほうにこそ違和感を拭うことができない。
無意識に、容姿端麗で、特徴的な性格を持ち人に好かれる雰囲気を纏ったセーラー服の少女たちを探してしまう。
人懐こくって、何をしても許してくれて、人類のために尽くしてくれる、……そのように造られた――新生物たちの姿を。
アーチャーは空を見ている。彼は日常のために戦った兵士だ。不意に襲来した悪い異星人との闘いにおいて、超人的な働きを示した兵士。
異星人たちはアーチャーの過ごしてきた世界をめちゃくちゃに叩き潰した。完膚無きにまで破壊される町々、風景は戻せたとしても人命は戻せない。
街頭にこうやって、騒々しい声を取り戻すことが、彼の原動力だったのかもしれない。決して元通りにはならないと知っていながらも。
あの交差点の光景はきっと、アーチャーの、ストーム1の、戻りたかった世界とどうしようもなくずれてしまった世界なのだ。
……それでも彼は最後まで戦いきった。戦友たちを次々と亡くして人類種自体がギリギリまで追い込まれてしまうような状態になりながら、
彼は戦い抜いて、彼という希望の下、EDFという希望は形を保ち続けた。そして、最終決戦においては何の区分もなく人類自体がEDFの名の下で一つとなって戦ったのだ。
路地の男は思う。アーチャーの偉業はどうしようもなく胸を熱くさせ、燃え上がるような感動を覚える。しかしそれと同時にひどい羨望も湧き上がってくるのだ。
どうしてそんなに単純な世界だったのか? こちらの世界ではもうどうやってもそんなことはできない。
――我らの人類は頭の奥まで艦娘に冒されきってしまった。
路地の男、ある鎮守府の提督は視線を切り一瞬空を見た後に、歯を食いしばりながら歩き出した。
この世界の空には、妖精さんの軍用機なんて、きっと浮かばない、噂にもならない戯言なのだろうな、と……。
135: 提督&アーチャー ◆mMD5.Rtdqs :2017/03/14(火) 03:38:07 ID:DFfMEpfU0
深海棲艦と呼称される敵対生物に追いやられつつある世界、立ち上がったのは過去の艦船の記憶を持った少女たち、通称艦娘。
可憐な容姿に重厚な装備を持った彼女たちは、人類の守護者として今日も深海棲艦と戦うのだ。
そして、彼女たちを率いるのは――優しくてカッコいい提督たち。先天的素質によって艦娘たちへの命令権を得た彼らは、
旧来の軍隊出身者、口うるさい上に彼女たちをないがしろにする参謀たちに悩まされながらも積極果敢に支持を出す。
艦娘と提督の絆は、参謀たちの頑迷な脳よりももっと硬い。それに感化された理解力のある参謀だけが今の海軍には残っていない。
そしてその素質は彼らの血族だけに脈々と受け継がれる、気高さの象徴なのだ。
民間もみんな艦娘たちのことが大好きだ。たどたどしく買い物に来る彼女たちを皆が笑顔で迎える。
食料燃料問わずついつい食べ過ぎてしまうという欠点さえも民間人は愛しているのだ。
本土の女性たちよりもかわいらしいものだから、最近では結婚する男性が減っているともっぱらの噂だ。
その程度といったらついつい自分たちの分まで差し出してしまうほど。もっと食べてほしいと最近本土では畑が増えた。
そして、艦娘と提督たちのためとして、摩天楼を次々利用するのだから、商魂たくましい人々ときたら……。
そんな善良な人々を艦娘たちは責任感と義務感を持って守るのだ。
忘れてはならない――むしろ彼女たちの最大の美点として、艦娘たちの性格の良さが挙げられる。
まるで彼女たちが生まれてきたような海のように広い心を持ち、一部悪態をつく艦娘もいるけれど、献身的に提督を支える。
彼女たち自身戦場に出ることが不安でたまらないはずなのに、たとえ提督がどんな醜態をさらしたとしても彼女たちは受け入れてくれる。
だから、提督はこんな健気な艦娘たちを自分の仲間、親友、家族と思い、彼女たちが伸び伸びと過ごせるように環境を整えなければならない。
だが、我々がやっているのは戦争だ。もしかしたら――彼女たちが昏い海の底へと沈んでしまうことがあるかもしれない。
艦娘たちが冷たい感情に捕らわれ、姿を変えてしまうこともあるかもしれない。けれども、我々は彼女たちを信じ続けなければならない。
信じていれば、その絆は、きっと冷たい水の底に行ったとしても途切れることはないのだ。
そうだ。我々人類は艦娘がために、深海棲艦と戦わなくてはならない。過去の会いに来てくれた艦船の化身と、過去の艦船の名前を持つ彼女たちと、
過去の記憶を持つと語る艦娘と名付けられた者たちと。減り続けるか弱き人類は、絶対数の減らない強い新生物たちと、生存競争に勝たなければならないのだ!
136: 提督&アーチャー ◆mMD5.Rtdqs :2017/03/14(火) 03:39:54 ID:DFfMEpfU0
「私が彼女たちに選ばれたのは……いや、そもそも提督たちの選出自体が、ある遺伝子的形質の有無で行われています」
彼女たちは群体に共有能力を持ち、一個の生命体として機能しています。人類の次の支配者となるために、そして人類の社会構造について恐ろしく熟知しています。
その遺伝子を彼女たちが受け入れることで、新生物たちにとっての致命的なリスクを回避できる……。そのために我々は子芝居まで打って生かされています。
提督はうつむきがちに、アーチャーに語った。彼があてはめられたのは、そこそこのアパートに住む、中小企業の社員。
良くも悪くも、深海棲艦が現れなければこの程度の能力しか持たない、平凡な男性だった。
「私たちが日常が切り替わる前の最後の世代です。私の後の人々は守護者無き世界のことを知らなくなる……」
私も盲目的に親愛をささげてくれる彼女たちに、幾度となく心を揺らされました。彼女たちと共に生きていたいと、そのために彼女たちを守らなければ……と。
上層部はすでに彼女たちの虜、突飛な行動で彼女たちの不気味の谷をあらわにさせなければ、使命を天秤にかけてしまっていたかもしれません。
しかし、それも限界です。そして私自身、彼女たちから排除されつつあります。
提督と、その名称がどれだけ滑稽なことか分かっている男は、拳を強く握り、震えながら、あえぐように声を出す。それが、一層等身大の彼を露にした。
「私は……ッ! じ、人類のために、そのために抵抗して死にたいのです」
男は旧来の常識を未だに引きづり続けていた。現状の提督というものがどれだけかけ離れているか、彼女たちが彼を甘やかすたびに、軸ががくがくと揺れる。
「もしかしたら、私は、強い自己愛の下にこのようなことを、言っているのかもしれません」
強いこだわりがために、新生物たちを未だに彼女たちと呼んでいるのはその表れかもしれません。ただ、ただ。
提督が憧れていた軍人だったら、人類を尊厳の下に生かそうとしたはずだ。提督は、その男は強く信じていた。
「わかっています。あなたは異星人との闘いにおける英雄。人類全体にとっての英雄です。……人類を撃つことがタブーであるということも」
アーチャーが提督の目をじっと見た。深い目だった。
あなたという英雄にそのようなことはできません。それでも、途中で敗れたとしてもいい。それでも、人類のために死にたい。
つっかえつっかえになりながら、艦娘たちにはきっと見せなかった狼狽しきった態度。それでも、彼はやっと心の底を明らかにできたのだった。
アーチャーはそんな彼にゆっくりと、ゆっくりと近づいた。そして、彼に強くビンタを張った。提督は鼻血を吹き、けれども倒れこまない。
それは修正の一撃、提督にとって初めての――能動的に道を示してくれたビンタだった。
提督はしばらく震えた後、ありがとうございますと、絞り出すように呟いた。大きな声が出せない。それほどまで響いた修正。
再びあえぐような礼を言って、男泣きに泣きつづける。アーチャーの手が彼の肩に落ちた。
137: ◆mMD5.Rtdqs :2017/03/14(火) 03:41:02 ID:DFfMEpfU0
【クラス】
アーチャー
【真名】
ストーム1@地球防衛軍3
【パラメーター】
筋力C 耐久D 敏捷B 魔力E 幸運A+ 宝具EX
【属性】
秩序・中庸
【クラススキル】
対魔力:E
魔術に対する守り。無効化は出来ず、ダメージ数値を多少削減する。
単独行動:B
マスターからの魔力供給を断ってもしばらくは自立できる能力。
ランクBならば、マスターを失っても二日間現界可能。
【保有スキル】
心眼(偽):B
直感・第六感による危険回避。
異星人の侵略に当たって、彼が生き残ってこれたのは敵の攻撃を体で感知できたからだろう。
勇猛:B
威圧・混乱・幻惑といった精神干渉を無効化する能力。
EDFは敵を恐れない。防衛軍の精神を彼は体現している。
射撃:B
銃器を扱う才能を示すスキル。
あらゆる武器であらゆる戦況に対応しあらゆる敵に対応しなければ、生き残ることはできなかった。
【宝具】
『我ら、地球防衛軍(Earth Defense Force)』
ランク:E~A+++ 種別:- レンジ:- 最大捕捉:-
地球防衛軍の兵士、その象徴としての宝具。
使用してきた武器を魔力を消費することで出現させ、使いこなすことができる。
ただし、一度に呼び出せる武器は二つまでであり、弾は魔力によって補充され、リロードを行う必要がある。
性能が高ければ高いほど消費魔力は上がり、最強のジェノサイド砲に至っては令呪三つの補助を必要とする。
『希望の一と無銘兵士たち』
ランク:EX 種別:- レンジ:- 最大捕捉:-
ストーム1。一人で地球を偽りもなく救った彼は紛れもない地球の希望である。
侵略者たる異形、ロボット、昆虫相手は与えるダメージ量が増大し、希望である彼を信じる者たちは精神汚染を無効化。
さらに、彼がストーム1である限り、幸運 敏捷、筋力、その他スキルが上昇する。
彼がストーム1である限りは。
ストーム1は、英雄なき近未来においてあまりにも超絶した戦果を残しすぎた。
結果、アーチャーの存在を人々は疑いだしてしまった。ストーム1は非常に脆い幻想となってしまった。
アーチャーがストーム1らしからぬ行動、つまり人類に対する攻撃やそのような風評が立ったとき、
アーチャーはどんどん無銘の兵士に近づき、全スキル全ステータスが下降、最後には消滅する。
ストーム1は異星人から地球を救った英雄。決して人類間の戦争の英雄ではないのだ。
【weapon】
宝具で呼び出した銃器
【聖杯への望み】
マスターの世界の人類のために戦う。そのためには禁忌も踏む。
138: 提督&アーチャー ◆mMD5.Rtdqs :2017/03/14(火) 03:42:01 ID:DFfMEpfU0
【マスター名】提督
【出典】艦隊これくしょん~艦これ~(アニメ)
【性別】男性
【能力・技能】
ほぼ一般人と同等。
【人物背景】
ほとんど不明。アニメの描写においては無能のように思われるが、その行動の裏にはこういう理由があったんだよ!
色々ガバガバに解釈できるのがアレのいい所だと思いました。
【聖杯にかける願い】
『新生物(艦娘および深海棲艦)』の消滅
【方針】
今はただがむしゃらに聖杯を目指したい。
最終更新:2017年03月15日 15:36