何かが光で照らされている限り、影は必ず現れる様に。
ヤクザがどしんと座り込んでいる事を除けば基本的に平和そうなこの冬木市にも、裏の世界と言う物は存在する。
此処は、その裏の世界の人間が入り浸る、夜間営業のバーである。

見てみれば、其処には沢山の人達で溢れ返っている。
多種多様な入れ墨に、物騒な傷跡。
如何にも、と言ったような雰囲気を構えた裏社会の人間が、このバーに集まると言う。
例えば彼処の席では、複数のグループがトランプやボードゲームに勤しんでいる。
恐らく金でも賭けているのだろう、幾らかは分からないが。

そして―あちらの席では―

「はぁ、全くどうしたもんかねぇ。」

ボロボロのコートを身に纏った中国人のオッサンが一人、グラスに注ぎ込まれたビールをグビリと口にする。
男の名は阿伏兎。
偽られた混沌の演算装置の中に巻き込まれたマスターの一人である。

「オイオイ、どうした?」

隣りで酒を飲む、「同業者」と「設定された」男性が、気軽そうに声を掛けてくる。
阿伏兎がこの聖杯戦争にて与えられたロールは、「中国マフィアの一人」だそうだ。
因みにこの夜兎族専用義手は「戦いで腕を負傷したことが付ける理由」になっているそうだ、全く台本の書き方が上手な物だ。

「いや、別に。」

素っ気なく誤魔化すように、ジト目で阿伏兎は誤魔化すように言う。
そうか、と言って同業者は口を閉じる。

「しっかし、きつかったな、今日の姉さん。」
「幾ら御見舞が失敗したからと言ってな。」

酒を飲んだ勢いからか、つい口から愚痴が溢れる。
同業者の話は、自分達が雇われている組織のリーダーのことだ。
美人なのだが、しかし御見舞がしょっちゅう失敗してしまい、その度にヤケクソになって自分達部下に八つ当たりをけしかけてくると言う。
今回被害にあった同僚の数は相当だ、飲む機会が無かった事に感謝。

(面倒くせぇ上司、ねぇ……)

ふと、元の世界での上司の姿が目に浮かぶ。
神威。
宇宙にその名を轟かし、数多の星を飛び回る夜兎族の中でも、特に夜兎らしいとされた人物。
年下で有りながら春雨の幹部に就いた程の実力を持ち、えいりあんはんたーの血を引くだけあって相当に強いのだが―

(彼奴、ぜってぇ何かやらかしているだろ、こりゃ)

―心配だ。
彼はべらぼうに強いしそこからなるカリスマ性に自身も惹かれている。
だが彼は―問題児だ。それも立派な。
例えて言うならいきなり転校してきた学校で「殺しちゃうぞ☆」と言って喧嘩を売ってくるような奴だ。
正にB-BOP神威くんだ、不良だ、超の付くほどのクソガキだ。

そして、そんな彼を補佐するのが、この自分の役割なのである。
しかし一週間前、仕事で訳の分からない鉄屑を手にしたこの阿伏兎は、今補佐の役割から切り離されてしまったのである。
これじゃぁ、あの脳筋ウサギは確実に何かをやらかしてしまう。
いや、仕事から切り離されて、自由だ、とは実際感じているが。
例えて言うなら学校を休むのと引き換えにインフルエンザの疲れと吐き気に苦しむ感覚、これに似ている。

(つーか、こんな俺に願い……ねぇ……)

阿伏兎に願いといえる願いは無い。
強いて言うのなら、この聖杯戦争からの脱出。
今の自分に叶えたい願いは無い。
ならばこの世界からとっととトンズラしてやる。
それが阿伏兎の、この聖杯戦争における方針だ。

「おーい、餃子食うかい?其処のチャイナ二人組。」

気のいい店主の声が聞こえてくる。
結果、阿伏兎はニンニクとビールと男臭の混じった臭いを撒き散らし、このバーから出るのであった。


◆  ◆  ◆



「あ―……イテテテ……。」

フラフラと頭を抱えながら、阿伏兎は公園の入口に入り込む。
さっきから飲んだ勢いで頭にズキンズキンと来る。
天下の夜兎族もお酒には弱いのか、鳳仙様は良く飲めたモンだ、と考えながらも、阿伏兎は倒れかけるようにベンチに腰掛ける。

「よいしょっと。」

ベンチに体重を掛け、背もたれに背中を任せる。
ふぅと落ち着いた所で、阿伏兎の直感に何かが干渉してきた。

「!?」

この感覚を阿伏兎は、既にChaos.Cellに来て何度かは経験している。
それは威圧。
それは恐怖。
それはオーラ。
あのアホ団長とも、キレた団長の妹さん、果ては鳳仙にまで匹敵するほどの、この気迫。
それは最強の戦闘種族たる己にしてみても、酔い覚ましとしては丁度良いぐらいの寒気だ。
覚めた顔を引き締め、口を開く。

「出てきなよ、バサカちゃん。」

阿伏兎のその言葉に呼応し、眼の前で光の粒子が収束する。
出現したのは、この夜に溶け込みそうな程に真っ暗な色をした―異形の怪人だった。
しかし異形の怪人は、しゅるしゅると形を変え、人間の姿を形作る。
西洋風の軍服を身に纏っているが、阿伏兎を圧倒するその気迫は、未だに衰えていない。
彼に与えられたクラスは「狂戦士(バーサーカー)」。
この聖杯戦争にて、阿伏兎とお供することとなる「サーヴァント」だ。

「で、成功したのか?2時間で300人、って云うのは。」

バーサーカーの真名、ゴ・ガドル・バ。
殺した人間の数を競い合う戦闘民族「グロンギ」の頂に立たんとした戦士。
彼が所属するグロンギは、一定時間内に決められた人数分だけ人を殺す「ゲーム」にて頂点を極めんとした種族だ。
その逸話から、このバーサーカーの様にグロンギ族のサーヴァントは、ゲームを成立させることにより能力を向上させることが可能、だそうだ。
勿論、殺した時間が短ければ短いほど、殺した数が多ければ多い程、報酬は上がっていく。

「……いや、失敗だ。」
「!?」

阿伏兎の目が見開く。
有り得ない、と言いたげな表情と共に。
気迫からして、バーサーカーの実力は本物だと言って差し支えないだろう。
そのバーサーカーが、ゲームに失敗したと言う事実に、阿伏兎は驚きを見せる。

「ゲゲルは確かに順調ではあった。
だが、残り数人と言う所で襲撃してきた一人のサーヴァントによって時間が遅れ、ゲゲルは失敗した。」
「んで、そのサーヴァントはどうした?」
「倒した。」
「へぇ。」

当然だと言い切るように仏頂面を崩さぬバーサーカーに、やはりか、と驚きの表情を見せる阿伏兎。
しかしバーサーカーは、何処か思うように、言葉を続ける。

「倒したセイバーは、見事な英雄であった。
嘗てのリントの様に争いを拒む事は無かった。
が、きゃつの実力は、あのクウガにも劣らぬ物であった。」

……と、バーサーカーは強い者と戦う、と言う事が至高の喜びだそうだ。
強者と鎬を削り合い、死闘の果てに掴んだ勝利に酔う。
それがゴ・ガドル・バの生き様だと、阿伏兎の目にはそう映った。

(はぁ……団長と言い此奴と言い、何で俺はこんな奴に縁があるのかねぇ……)

今後も面倒な付き合いになりそうだ、と考え、阿伏兎は布団干しのようにベンチの背もたれに胴体を引っ掛ける。




【クラス名】バーサーカー
【出典】仮面ライダークウガ
【性別】男
【真名】ゴ・ガドル・バ
【属性】混沌・悪
【パラメータ】筋力A 耐久A 敏捷B 魔力B 幸運C 宝具C+(格闘体)

【クラス別スキル】

狂化:E
理性と引き換えに自身のパラメータを向上させる能力―
のはずだが、グロンギ族の精神は最早狂っていると言って差し支えないので、基本的に狂化の恩恵は受けない。
後述のスキル「殺戯の功」によってゲゲルを成功させる事で、闘争本能とパラメータを向上させることは可能であるが。

【保有スキル】

勇猛:B
威圧、混乱、幻惑などの精神攻撃を無効化する。
また、格闘ダメージを増強させる効果もある。

戦闘続行:A+
グロンギは戦う生物。
その体が朽ちるまで戦い続ける。
金のクウガの封印パワーや神経断裂弾を耐えられる程度の実力。

破壊のカリスマ:A
ゴ集団最強の戦士としての風格。
対象にBランクの威圧を与える。

殺戯の功:B
ゲゲル・グゴガ。
ゲームで殺した人間の数を誇りとするグロンギ族の「ゲーム」の再現。
殺す時間と人数を指定することでこのスキルは発動し、その間「人」属性の英雄に対し補正が掛かる。
もしゲームに成功すればパラメータは一定期間上昇するが代わりに失敗すればパラメータは一時減少する。
ゲームは宝具が埋め込まれているバックルを起動することが掟となっており、本来ならラ・バルバ・デの指輪が鍵となっていたが、
サーヴァント化したお陰で自由に押せる。


【宝具】

「強さ求める甲王の霊石(ゲブロン)」
ランク:C+ 種別:対人宝具 レンジ:― 最大捕捉:1
バーサーカーのベルトのバックルに埋め込まれている霊石。
グロンギ族にとって最も特徴的な物質で、これがなければグロンギは只の人間である。
バーサーカーの全身の神経に接続されており、バーサーカーの肉体を構成する一部と化している。
魔力源としての役割も果たしており、これにより消費する魔力は其処まで多くはない。
この他、魔力以外にもバーサーカーに様々なパワーを与えている。
「モーフィングパワー」と呼ばれる物質変換能力を与え、剣や弓、槍等を生成する力を有している。
また、バーサーカーの身体を変化させる能力、電撃を吸収する能力なども保有しており、バーサーカーはこの影響で「電撃体」に変化する能力を手にした。
ただし、スキルでこの宝具がゲーム開始時にセットされた状態で魔力がこの霊石に引火した瞬間、バーサーカーは爆裂四散する。

【Weapon】

「勾玉」
バーサーカーの肉体に付いている装飾品。
これをネックレスから千切り取る事で、モーフィングパワーで武器を生成できる。
バーサーカーは各フォームに併せて、槍、弓銃、剣の三つの武器を使いこなす。

【人物背景】

人間を殺戮する「ゲーム」によって地位を確立する戦闘民族「グロンギ」。
その最強の座を手にする「ファイナルゲーム」に最も近い「ゴ」の位を持つ者の中でも最強の存在を確立させている男。
自他ともに認める「破壊のカリスマ」で、その姿には多くのグロンギがひれ伏す。
クウガとの戦闘においてもそのクウガに似た力で翻弄するが、「究極の闇」の一歩手前となったクウガに倒される。

寡黙だがプライドが高く好戦的な性格。警察官を「リントの戦士」として見ている。
人間態では軍服姿、カッコいい。

【聖杯にかける願い】

リントの英霊と戦う。
もし聖杯が手に入ったなら、ザギバスゲゲルを再開するのも悪くはないのかもしれない。




【マスター名】阿伏兎
【出典】銀魂
【性別】男

【参戦経緯】

春雨での仕事で偶々鉄片を手にした。

【Weapon】

「日傘」
夜兎族が所持する特殊な日傘。
日光に弱い夜兎族が日中でも行動出来るようにするために作られた代物だが、しかしこれは只の日傘ではない。
傘の素材が異常に硬く、殴棒や盾として優れた役割を果たす。
因みに先端はマシンガンとなる。弾切れは起こるようだが、何処から充填しているかは不明。

「義手」
夜兎族はその性質上、身体の一部が千切れる者も少なくはない。
四肢はその治癒能力でも治せない為、義体の技術が発達している。
彼の左腕に付いている。


【能力・技能】

  • 夜兎族
傭兵三大部族の一つに数えられる戦闘種族。
異常な程の戦闘力を誇り、数多の星を潰していったと伝えられている。
しかし日光に弱い事が祟り、今では闇ルートで売れるレベルで希少になっている。
日光に弱いため、日傘と透き通ったような白い肌が特徴となる。

【人物背景】

宇宙シンジケータ「春雨」の第七師団副団長にして、夜兎族の生き残り。
団長にして同胞の神威に振り回される苦労人だが、一方で神威の持つ特別な魅力に惹かれつつある。
神威の実力には一目置いており、神楽が暴走した際には神威の面影を垣間見た。
鳳仙が放った一撃で隻腕となっており、夜兎族専用の義手を付けている。
飄々としているが、意外と夜兎族にしては常識人(と言うより神威が異常すぎるからか)で、一族同士の闘いを好まない。
でもやっぱり夜兎族は夜兎族、彼も彼で好戦的な性格ではある。
吉原炎上篇後からの参戦。

【聖杯にかける願い】

帰る、向かってくる敵は倒す。

【把握資料】

バーサーカー(ゴ・ガドル・バ):
彼自身は2クール目(ズ集団が減少し、ゲリザギバスゲゲルが近づくことが示唆される所)から姿を表していますが、
戦闘シーン及び基本的な性格は最低限37~38、44~47話のみで把握可能。

阿伏兎:
吉原炎上篇(原作25~26巻)のみで把握自体は可能。
只、ちょっとしたエピソードで彼の苦労ぶりが見られるので、良ければそちらも。

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最終更新:2017年03月18日 00:02