深夜の冬木市に、けたたましいサイレンの音が響く。
数台が縦に連なって走行するパトカーが追いかけているのは、色あせた塗装の乗用車。
それを運転するのは、緑のジャケットを羽織った面長の男だ。
その容貌を見れば、誰もがこう言うだろう。あれは大泥棒ルパン三世だ、と。

「やれやれ、この世界の警察もなかなか優秀じゃねえの。
 ちょいと油断しすぎたぜ」

うっすらと汗を浮かべながら、「ルパン」は呟いた。
だがその語調には、まだ余裕がうかがえる。
今の状況も、彼にとっては想定の範囲内だったのだから。

「頼むぜ、相棒」

「ルパン」が、道路脇の空きビルに視線をやる。
その直後、ビルから爆音が響いた。
「ルパン」の通過した道路に、がれきと化したビルの壁が降り注ぐ。
先頭を走っていたパトカーは、ブレーキが間に合わずガレキに激突。
後続のパトカーも、次々と玉突き事故を起こした。

「イエーイ! タイミングばっちり!」

追っ手がなくなったことを確認すると、「ルパン」は子供のようにはしゃいでみせた。


◇ ◇ ◇


約一時間後、アジトに帰還した「ルパン」は今回盗んできた宝石をじっくり眺めていた。

「わからんねえ」

そこに入ってきたのは、緑のマントを纏った美男子。
「ルパン」の召喚したサーヴァントである。

「おお、戻ったか、アーチャー! いい仕事だったぜ!」
「そりゃどうも。マスターの命令はきっちりこなすのがサーヴァントの使命なんでね」

ハイテンションの「ルパン」に対し、アーチャーと呼ばれたサーヴァントは仏頂面で返す。

「で、宝石なんて盗んでどうするんで? どうせここは、仮想世界っすよ?
 手に入れたところで、元の世界には持ち帰れない。
 そもそも聖杯に比べれば、その程度の宝石……」
「まあ、そう言うなって。何も盗まないルパン三世なんて、ルパンじゃねえんだよ。
 それに現実的な問題として、聖杯戦争を戦うにも軍資金は必要だろ?」

アーチャーの非難めいた言い方にも、「ルパン」は陽気な態度を崩さない。

「心配しなくても、聖杯戦争はきっちりやるさ。
 俺がルパンになるためにな」

そう、この男は本物のルパン三世ではない。
本物のルパン三世になるという野心を抱き、ルパン三世として振る舞っているだけの男だ。
それだけ聞けば、ただの狂人に思えるかもしれない。
だが、彼はそのばかげた妄想を貫いた。
結果として彼は、本物にすら一目置かれる男となっていた。

「やっぱりあんたの考えは、ピンと来ませんわ。
 そんなに有名な誰かになりたいもんかねえ」
「そりゃわからんだろうよ。
 歴史に名を刻んでる英霊様にはよ」
「俺の場合、そういうわけでもないんだけど……」
「は?」

アーチャーの意味深な言葉に、「ルパン」は怪訝な表情を浮かべる。
だがアーチャーは、それ以上語ることはなかった。


アーチャーの真名は、「ロビンフッド」。
だがそれは、彼の本当の名前ではない。
生前の彼は孤独に領主と戦った、無名の弓使いに過ぎなかった。
だが彼の功績はロビンフッド伝説の一部となり、彼は「英霊ロビンフッド」として座に登録されたのだ。

「英雄の名を欲する男」と、「英雄の名を与えられていた男」。
噛み合わない二人の聖杯戦争は、まだ始まったばかり。

【クラス】アーチャー
【真名】ロビンフッド
【出典】Fate/EXTRA
【性別】男
【属性】中立・善

【パラメーター】筋力:C 耐久:C 敏捷:B 魔力:B 幸運:B 宝具:D

【クラススキル】
対魔力:D
魔術に対する抵抗力。一定ランクまでの魔術は無効化し、それ以上のランクのものは効果を削減する。
Dランクでは、一工程(シングルアクション)によるものを無効化する。魔力避けのアミュレット程度の対魔力。

単独行動:A
マスター不在・魔力供給なしでも長時間現界していられる能力。
Aランクなら1週間現界可能。

【保有スキル】
破壊工作:A
戦闘の準備段階で相手の戦力を削ぎ落とす才能。トラップの達人。
ランクAの場合、進軍前の敵軍に六割近い損害を与えることが可能。
ただし、このスキルが高ければ高いほど、英雄としての霊格が低下する。


【宝具】
『祈りの弓(イー・バウ)』
ランク:D 種別:対人宝具 レンジ:4-10 最大捕捉:―
アーチャーが使用する緑色の弓。彼が生前に拠点とした森にあるイチイの樹から作ったものであり、射程距離より近場での暗殺に特化した形状をしている。
イチイはケルトや北欧における聖なる樹木の一種であり、イチイの弓を作るという行為は、「森と一体である」という儀式を意味する。
また、イチイは冥界に通じる樹ともされる。
標的が腹に溜め込んでいる不浄(毒や病)を瞬間的に増幅・流出させる力を持ち、
対象が毒を帯びていると、その毒を火薬のように爆発させる効果がある。

『顔のない王(ノーフェイス・メイキング)』
ランク:不明 種別:対人宝具 レンジ:― 最大捕捉:―
彼の着ている緑の外套による能力。完全なる透明化、背景との同化ができる。
伝承防御と呼ばれる魔術品でもあり、光学ステルスと熱ステルスの能力をもって気配遮断スキル並の力を有するが、
電子ステルスは有していない為、触ってしまえば位置の特定は可能。
外套の切れ端であるものを使い指定したものを複数同時に透明化させたり、他人に貸し与えても効果は発動する。
これを解除させるには、対軍クラスの攻撃をさせることが有効。


【weapon】
「短剣」
接近戦用の武器として、まれに使用することがある。
また、狩猟に使う道具ならたいてい使いこなせるらしい。

【人物背景】
「ロビンフッド」として語り継がれる、幾人かの英雄の一人。
領主の圧政に立ち向かうため手段を選ばずに戦い続け、若くして死んだ一人の弓使い。

【サーヴァントとしての願い】
英雄にふさわしい戦い。


【マスター】ヤスオ
【出典】ルパン三世GREEN vs RED
【性別】男

【マスターとしての願い】
本物の「ルパン三世」になる

【weapon】
「ワルサーP38」
本物のルパン三世が愛用するのと、同型の拳銃。
偶然これを手に入れたことで、彼の人生は大きく変化した。

【能力・技能】
やや詰めの甘い部分はあるが、潜入能力などは少し前まで一般人だったとは思えないレベル。

【ロール】
「ルパン三世」

【人物背景】
いつまでも定職に就かず、ラーメン屋でバイトしながら目的もなく毎日を過ごしていた青年。
だがある日、スリルを求めて行ったスリでワルサーP38を入手してしまったのがきっかけで、
「緑ジャケットのルパン」として活動するようになる。
同時期に大量出現した偽ルパンの中でも異彩を放つ存在で、次元ですら「本物になり得る」として行動を共にしていたほど。
また五ェ門や銭形も、本物に近い何かを感じ取っていた。
自らが本物のルパンになることに固執し、「赤ジャケットのルパン」に対抗心を燃やすが……。

今回はナイトホークス社に潜入する直前からの参戦。

【方針】
聖杯狙い。

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最終更新:2017年03月31日 15:23