冬木市内の、とある学校。
南野秀一は、その教室で帰り支度をしていた。

「じゃあな、南野」
「ああ、また明日」

クラスメイトと軽く挨拶を交わし、秀一は帰路についた。


◆ ◆ ◆


夕暮れ時の路地を歩く秀一の顔は、目に見えて冴えなかった。
どうも最近、心が晴れない。
何かとても大事なことを、忘れてしまっている気がする。
だがいくら考えてもそれが何かわからず、もどかしさだけが募る。
学校や母親の前ではなんとか平静を装っているが、一人になるとどうしても表に出てしまう。
おまけに今日は、空気まで重く感じる。

(あまり帰りが遅くなっても、母さんを心配させてしまうが……。
 今の顔を見せても心配されるだろうな。
 少しだけ気晴らしをしていくか)

家までの道筋から逸れ、秀一は郊外へ向かおうとする。
その時、強い風が吹いた。

「!」

その瞬間、秀一の顔つきが険しさを増した。
気づいてしまったのだ。風がほんのわずかに、血のにおいを運んできたことに。
反射的に、秀一は走り出していた。
なぜ自分はこんなかすかな血のにおいに反応できるのか、疑問を抱いたまま。


◆ ◆ ◆


「…………」

秀一は、たまらず絶句していた。
たどり着いた路地裏で見たのは、自分の通う学校の制服を着た少女。
その目には光がなく、すでに絶命しているのが一目でわかった。
そしてその首に噛みつき、血をすすっているのは自然のものではあり得ない、巨大なコウモリ。
何者かの支配下にある使い魔だろうが、今の秀一にはそれを知るよしもない。
秀一の存在に気づいたコウモリは、彼からも血を奪おうと飛翔する。
高速で迫る、死をもたらす存在。だがそれを目の当たりにしても、秀一は驚くほど冷静だった。

「ローズウィップ!」

次の瞬間、コウモリは全身をいくつもの肉片に分割され、血をぶちまけながらコンクリートの上に転がっていた。

「なんだ、これは……。俺はいったい今、何をした……!」

自らの手にいつの間にか出現した緑色の鞭を呆然と眺めながら、秀一は呟く。
直後、激しい頭痛が彼を襲った。


◆ ◆ ◆


そうだ、俺はただの人間じゃない……。
もう一つの名前は妖狐・蔵馬……。
現実世界の俺の母は、病で死の淵にいる。
彼女を救うために、俺は他の妖怪と共謀して霊界の秘宝を盗み出そうとした。
だが目当ての宝を手にしようとしたとき、横にあった金属片に手が触れて……。
そこで、記憶が飛んだ。


◆ ◆ ◆


「記憶が戻りましたか」

「蔵馬」の意識が過去から現在へと戻ってきたとき、目の前には一人の青年が立っていた。
ネイティブアメリカンを思わせる服装を纏った、温厚そうな若者である。

「ああ、すっかりね。同時に、自分が今置かれている状況も理解できた。
 あなたが、俺のサーヴァントということでいいのかな?」
「ええ、僕があなたのサーヴァントです。クラスはキャスターです。
 よろしくお願いします」

微笑を浮かべるキャスターに対し、蔵馬も笑みを返す。
だが、それはすぐに消えた。

「さっそくだが、俺は聖杯が必要だ。
 どうしても救いたい人がいる。その人を救うためなら、俺は手段を選ばないつもりだ。
 できるだけ犠牲は避けたいが、それでも非情な行いをしなければならないときもあるだろう。
 それでも君は、俺についてきてくれるか?」
「ためらいがある分だけ、容赦なく殲滅に走るような輩よりはマシでしょう。
 二流サーヴァントの僕にどこまでできるかわかりませんが、全力は尽くしますよ」
「ありがとう」

蔵馬が、キャスターに軽く頭を下げる。

「さて、まずはこの世界の自宅に戻ろうか。できるだけ急ぎたいところだが、まずは地盤を固めないといけない。
 落ち着ける場所で策を練らないとな。
 それに、いつまでも死体のそばにいるわけにもいかない」
「わかりました。では今のところは、霊体化して同行しますね」

キャスターの姿が消えたのを確認すると、蔵馬はきびすを返して歩き出す。
同時に、一輪の薔薇を放り投げた。
バラは吸い込まれるかのように、亡骸と化した少女の胸に落ちる。

「君が人だったのか、まがい物だったのか、今となっては知る術はないが……。
 どちらにせよ、安らかに眠れることを祈るよ」


【クラス】キャスター
【真名】タリム
【出典】シャーマンキング
【性別】男
【属性】秩序・善

【パラメーター】筋力:D 耐久:D 敏捷:D 魔力:A 幸運:D 宝具:C

【クラススキル】
陣地作成:B
魔術師として自らに有利な陣地な陣地「プラント」を作成可能。

道具作成:B
魔力を帯びた器具を作成可能。

【保有スキル】
パッチソング:C
「自己暗示」の派生スキル。
歌による自己暗示で、耐久と魔力を大きく上昇させることができる。
ただしタリムは実際に使用したかどうかが不鮮明であるため、ランクはあまり高くない。


【宝具】
『最弱の守護者たち(グリンシーズ)』
ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:1-30 最大捕捉:20人
種を媒介に具現化させた、植物の霊。
一つ一つの力は弱いが、それ故に魔力の消費も小さいため一度に大量の具現化が可能である。
それぞれの植物の特性を活かすことにより、多種多様な攻撃を行うことができる。

【weapon】
特になし。

【人物背景】
シャーマンファイトの運営をになうパッチ族の精鋭、「十祭司」の一人。
コーヒー豆にこだわりを持ち、カフェ「豆」を経営している。
当初は臆病で卑屈な男として振る舞っていたが、プラントでの戦いでは一転して悠然とした態度で葉たちの前に立ちはだかる。
多彩な植物を的確に使い分ける戦術で蓮、リゼルグ、ホロホロを封殺するも、
風を操る戦法を身につけたチョコラブに全ての植物を風化させられ敗れた。

【サーヴァントとしての願い】
パッチ族の繁栄


【マスター】蔵馬/南野秀一
【出典】幽遊白書
【性別】男

【マスターとしての願い】
病に冒された母親を救う

【weapon】
下記の能力により作成した武器

【能力・技能】
「植物操作」
その名の通り、植物を自在に操る能力。
髪の中に植物の種を仕込んでおり、それに妖力を送り込むことによって成長させ、使用する。
特にバラを変形させた鞭「ローズウィップ」を多用する。

【ロール】
高校生(穂群原学園の生徒ではない)

【人物背景】
名門校に通う高校生。学年トップの成績を維持し続ける、明晰な頭脳を持つ。
その正体はかつて魔界を震撼させた大妖怪、妖狐・蔵馬。
霊界のハンターに重症を負わされ人間界に逃げ込んだ際、一時避難としてある女性が身ごもっていた胎児に憑依。
しかしそのことによって魂が混じり合い、人間でもあり妖怪でもある存在として転生することになる。
人間として生きる中で妖狐だった頃の残虐性は薄れ、情け深い性格となっていく。
しかしあるとき、慕っている母が病に倒れ、死の危機に陥る。
彼女を救うため、使用者の命と引き替えにどんな願いも叶えてくれるという「暗黒鏡」を求め、飛影らと共に霊界の宝を強奪した。
今回はその途中からの参戦。

【方針】
聖杯狙い。しかし、犠牲は最小限にとどめたい。

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最終更新:2017年03月31日 15:24