きっかけは、指輪だった。
まるでそれが当たり前のように、いつもはめていた美しい指輪。
しかし、いつどのように手に入れたかまったく思い出せない。
それは、あまりに不自然なことだ。
それについて考え続けた結果、彼は記憶を取り戻した。
自分は、世界の命運をかけた戦いの真っ最中だったことを。
◆ ◆ ◆
「基本世界から枝分かれた世界じゃなく、根本から異なるパラレルワールドか……。
そういうのもあるんだな……」
時刻は深夜。入江正一は机に突っ伏し、聖杯から与えられた情報を反復していた。
「どんな願いでも叶える、ねえ……。たしかにその力があれば、白蘭さんに対抗できるかもしれないけど……。
なんでよりによって、こんな切羽詰まったときに呼ぶんだよ!」
入江は世界を支配しつつある組織・ミルフィオーレファミリーの幹部であった。
だがその目的は、ボスである白蘭を内部から討つことにあった。
白蘭が異能に目覚め世界の独裁者になったのは、少年時代の彼の行動が原因だった。
その罪を精算するために、彼は打倒白蘭に全てをかけてきた。
だがその計画が重要な段階にさしかかっているタイミングで、入江は聖杯戦争に巻き込まれてしまったのだ。
あらゆる願いを叶えるという聖杯は、彼にとって紛れもなく魅力的な代物だ。
その力を使えば、人知を超えた力を持つ白蘭も労せず倒せるだろう。
だが、それを手に入れるための戦いで自分が死んでしまえば本末転倒だ。
すでに計画は動き始めているとはいえ、自分というピースが欠ければどう転ぶかわからない。
白蘭を倒すチャンスが、永遠に失われるかもしれないのだ。
「どうすればいいんだ……。ああ、またおなか痛くなってきた……」
腹部を押さえながら、入江は苦しそうに呟く。
その時、机の上に乗っていた鉄片が光を放ち始めた。
(ああ、サーヴァントとやらの召喚が始まるのか……。
思えば研究室に落ちていたこれをうっかり拾い上げなければ、こんなことには……。
今さら言ってもしょうがないけどさ)
後ろ向きな考えを抱きながら、入江は鉄片を見つめ続ける。
やがて、鉄片は軍服を着た青年の姿となった。
「あんたがマスターか。俺は正義超人……おっと、名前は伏せておいた方がいいんだったか?
セイバーのサーヴァントだ。よろしくな」
◆ ◆ ◆
「なるほどなあ。そりゃまた、複雑だなあ」
しばらく後、入江から事情を聞かされたセイバーは、そう呟いた。
「聖杯は手に入れば確実に楽になるが、なくても何とかできる。
そして自分が死んだら、世界はおしまいになる可能性がある。
そりゃ誰だって困るぜ」
「セイバーはどう思う?」
「ん? 俺か?」
入江に意見を求められたセイバーは、顎に手をやって考え込む。
「そう言われても、俺はあまり頭のいい方じゃねえからな……。
ただ、俺はいちおう正義の味方だ。
マスターが聖杯を手に入れるために罪のない人間を傷つけようって言うなら、俺はあんたに逆らわざるを得ないぜ」
「そうか……」
そこから数秒の沈黙を挟み、入江は再び口を開く。
「ありがとう、セイバー。おかげで覚悟が決まったよ。
僕は、優勝は狙わない。生きて元の世界に帰ることを最優先にする。
まあ、向こうから襲ってくる連中には手加減するつもりはないけどね」
「そうか、俺としてもそう言ってくれると嬉しいぜ。
マスターの安全に関しては、安心しろ。俺が絶対に守ってやるからな」
満足できる回答が得られたことに、セイバーは快活な笑みを漏らす。
「さて、方針が決まったところで……。さっきから気になってたことを聞いていいかな?」
「なんだ?」
「君はセイバー、つまり剣士のサーヴァントなんだろう?」
「ああ、そうだ」
「だが見た感じ、君は刀剣の類を持っていない。
どういうことだい? 必要なときだけ出てくるとか?」
「いや、そうじゃねえ。まあ俺がセイバーってのも、こじつけみたいなもんだからな。
いいぜ、見せておいてやる。俺の宝具をな」
そう言うと、セイバーはすっと立ち上がった。
そして入江に背を向けると、右手を突き出し力を込め始める。
程なくして、その手から炎が吹き出した。
(これは……死ぬ気の炎!? いや、それとはまた違う力なのか?)
驚く入江の前で、セイバーは壁に向かって右手を振るう。
「ベルリンの赤い雨ーっ!」
次の瞬間、壁には大きく切り裂かれた跡が刻まれていた。
「これが俺の剣、ってわけだ」
「なるほど、生身でこれほどの破壊力とは……。君の戦闘力、身に染みて理解できたよ。
ところで……」
咳払いを一つ挟んで、入江は言う。
「どうするのさ、壁壊しちゃって」
「あっ」
【クラス】セイバー
【真名】ブロッケンJr.
【出典】キン肉マン
【性別】男
【属性】中立・善
【パラメーター】筋力:B+ 耐久:C 敏捷:B 魔力:D 幸運:C 宝具:C
【クラススキル】
対魔力:E
魔術に対する抵抗力。一定ランクまでの魔術は無効化し、それ以上のランクのものは効果を削減する。
Eランクでは、魔術の無効化は出来ない。ダメージ数値を多少削減する。
騎乗:E
乗り物を乗りこなす能力。
特に乗り物に関する逸話を持たないため、申し訳程度の効果しかない。
【保有スキル】
超人レスリング:A
超人として生まれ持った才覚に加え、たゆまぬ鍛練と実践経験を重ねたリング上で闘う格闘技能。
Aランクでようやく一人前と言えるスキル。
戦闘続行:B
名称通り戦闘を続行する為の能力。
決定的な致命傷を受けない限り生き延び、瀕死の傷を負ってなお戦闘可能。
【宝具】
『ベルリンの赤い雨』
ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:1-2 最大捕捉:1人
ブロッケン一族に伝わる、伝統の必殺技。
見た目は単なる大振りのチョップだが、強靱な超人の肉体をも切り裂くその威力はまさしく「手刀」である。
この技を受けた敵から噴き出した血が、まるで雨のようにリングへ降り注ぐことからこの名がつけられた。
特に力を込めた一撃の際は、手が炎に包まれたり刃そのものに変化するといった現象が見られることもある。
【weapon】
「リモコンハット」
ブロッケンが普段からかぶっている帽子。「リモコンキャップ」と呼ばれることもある。
持ち主の意志によって自在に宙を舞い、かく乱のために使われたりする。
「ドクロの徽章」
ブロッケン一族は生まれたときは人間であり、厳しい鍛錬に耐えた者だけがこの徽章を与えられ超人となる。
これを捨てることは、超人の肉体を捨て人間に戻ることを意味する。
ステータス的には、幸運以外の全ステータスが大幅に低下し、宝具が使用不能となる。
【人物背景】
ドイツの名門、ブロッケン一族出身の超人。
超人オリンピックでラーメンマンに殺害された父・ブロッケンマンの後を継いで超人レスラーとしてデビュー。
後に正義超人の主力メンバーである「アイドル超人軍団」の一人として、数々の敵対勢力と死闘を繰り広げる。
若さゆえの荒々しい戦闘スタイルが特徴的だが、同時に自分の使命は命に替えても果たす使命感を持つ。
【サーヴァントとしての願い】
マスターと弱者を守る。
【マスター】入江正一
【出典】家庭教師ヒットマンREBORN!
【性別】男
【マスターとしての願い】
元の世界への帰還
【weapon】
「晴のマーレリング(偽)」
世界の均衡を守る3種×7個の秘宝「トリニセッテ」の一種である「マーレリング」の一つ。
……と現時点での入江は思っているが、実際には白蘭が用意したレプリカ。
ただしレプリカといってもAランク相当のリングなので、秘められた神秘はかなりのもの。
【能力・技能】
「晴の炎」
筺(ボックス)兵器の使用に必要な生命エネルギーの一種。
晴の炎は「活性」の効果を持つ。
入江は筺兵器を持ち込んでいないため十全に効果を発揮することはできないが、
サーヴァントに注ぎ込めば効率的な回復ができる可能性がある。
「機械工学」
世界でトップクラスのエンジニア。
現在の常識を超越した機械の製作が可能。
ただし、冬木市で資材が充分に調達できればの話であるが。
【ロール】
大学院生
【人物背景】
10年後の世界を牛耳るミルフィオーレファミリーの幹部で、日本攻撃の責任者。
元は沢田綱吉の近所に住むごく一般的な少年だったが、
わずかな間10年後の自分と入れ替わる「10年バズーカ」の弾を偶然手に入れ暴発させてしまったことで、タイムスリップを経験。
自分の未来を理想通りに改変しようと企むが、その過程で偶然出会った青年・白蘭に「平行世界の自分と記憶を共有する」異能に目覚めるきっかけを与えてしまう。
能力を使い白蘭が独裁者と化したことに責任を感じ、幾度も歴史改変を試みるも失敗。
最後の希望として綱吉と結託し、唯一白蘭を倒せる可能性のある10年前(現在)の綱吉たちを召喚。
自らは敵として彼らの前に立ちはだかり、成長を促す。
組織内では冷静な司令官として振る舞っていたが、本来は温厚で気の弱い青年。
神経性の腹痛が持病のようで、トラブルが起こる度に「おなか痛い」と呟いている。
今回は、綱吉たちがメローネ基地に突入する直前からの参戦。
【方針】
聖杯に魅力は感じるが、脱出を優先
最終更新:2017年04月12日 17:44