冬木市の外れにある、一軒の小屋。
ここにとあるキャスターが目をつけ、その地下に広大な「工房」を築いた。
そこには数々のトラップと様々な使い魔が配置され、侵入者を迎え撃つ準備がしっかりと整えられていた。
だが現在、その全てが無に帰そうとしていた。
◆ ◆ ◆
「なんなんだ……。なんなんだあいつは!」
水晶玉を通して工房内の様子を見ながら、キャスターはヒステリックに叫んだ。
彼が見ていた光景は、まさに悪夢。
工房に乗り込んできた敵対サーヴァントにより、自慢のトラップも使い魔も片っ端から粉砕されていく様子だった。
「どういうことだ、キャスター! 貴様、この工房に籠もっている限り我々に怖い物はないと大口を叩いていたではないか!」
キャスターの傍らにいた壮年のマスターが、顔面を蒼白にしながらキャスターをなじる。
「黙れ、こんなことあってはならないのだ! 私が丹精込めて築いた工房が、あんな力任せのバカに……」
「黙るのは貴様だ! この役立たずが!
こんな所にいられるか! 私は脱出させてもらう!」
「待て、もう手遅れ……」
キャスターの忠告も、すでに意味をなさなかった。
マスターがドアノブに手をかけた直後、向こう側からドアを貫いてきた槍がマスターを串刺しにしたのだから。
「が……は……」
「マスター!」
慌ててマスターに駆け寄るキャスターだったが、すでに助からない傷なのは火を見るより明らかだ。
キャスターに流れ込む魔力が急速に減少しているのも、マスターの死が近づいているのを裏付けている。
「おいおい、マジか。まさかマスターの方が、前にいたとはなあ。
やっちまったぜ」
そこに響く、新たな声。
ドアの向こうから現れた、敵対サーヴァントだ。
槍と鎧で武装した、それなりに目鼻立ちの整った男だ。
だが、そんなことはキャスターにとってどうでもよかった。
彼の意識は、爛々と狂気を宿したおぞましい目に集中していた。
「マスターの方が先に死んだら、サーヴァントが勝手に消えちまうじゃねえか。
悪いが、消える前に死んでもらうぜ!」
そう言い放つと、サーヴァントは槍を振るう。
次の瞬間、キャスターの首は宙を舞っていた。
「この私が……バーサーカーごときに……」
最後の力を振り絞って呟いた、キャスターの言葉。
それを聞いたサーヴァントは、憮然とした表情で言う。
「俺はバーサーカーじゃねえよ。ランサーだ」
◆ ◆ ◆
「終わったようだね」
キャスターが完全に消滅した後、その場にスーツ姿の中年男性が姿を見せた。
彼こそが、ランサーのマスター。名を「内海」という。
もっとも、本名かどうかは疑わしいが。
「おう、マスター。ちゃんと数えててくれたか?」
「ああ、サーヴァントが一体に、マスターが一人。使い魔が13体だ」
内海が告げたのは、この度の戦いでランサーが倒した敵の数だ。
「マスターは強そうじゃなかったし……5点くらいでいいか。
じゃあ、今回は235点だな。使い魔が多いせいで、だいぶ高得点になったぜ」
「あのさ、倒した敵数えるためだけに僕を最前線に連れてくるのやめてくれない?
僕、自衛手段何もないし。それに、死体とかすごく苦手なんだよね。
サーヴァントとか使い魔は消えてくれるからまだマシなんだけどさ」
足下に転がる敵マスターの死体を視界に入れないようにしながら、内海が言う。
「まあ、別に数えるくらいは戦いながらでもできるんだがな。
でも、他に数えてくれるやつがいるならそっちの方が楽じゃねえか」
「本当に自分の都合ばっかりだよね、君……」
ランサーからの返答に、内海はたまらず溜息を漏らした。
◆ ◆ ◆
聖杯戦争というイベント自体は、なかなか面白い。
歴史上の英雄と組み、最強を目指す。何とも心躍るではないか。
だが今のところ、自分がまったく勝敗に関与できないというのは大きな不満だ。
キャラクターがプレイヤーの操作を無視して暴れ回るゲームなど、誰が楽しいと思うのか。
そういう意味では、自分の引き当てたサーヴァントはハズレだ。
こちらの言うことなど、聞きやしない。
だが、彼が召喚されたことには納得するしかない。
自分が楽しむことだけを考え、他人の迷惑を考えない。
その点だけ見れば、自分とランサーは同じなのだから。
「まあ、だからといって現状に甘んじるつもりはないけどね」
「ん? なんか言ったか、マスター」
「いやいや、こっちの話だよ」
顔に笑みを貼り付け、内海は悪びれずに言った。
【クラス】ランサー
【真名】森長可
【出典】Fate/KOHA-ACE 帝都聖杯奇譚
【性別】男
【属性】混沌・悪
【パラメーター】筋力:B- 耐久:C 敏捷:D 魔力:E 幸運:D 宝具:C
【クラススキル】
対魔力:E
魔術に対する抵抗力。一定ランクまでの魔術は無効化し、それ以上のランクのものは効果を削減する。
Eランクでは、魔術の無効化は出来ない。ダメージ数値を多少削減する。
【保有スキル】
精神汚染:B
精神が錯乱しているため、他の精神干渉系魔術をシャットアウトできる。ただし、同ランクの精神汚染がされていない人物とは意思疎通ができない。
このスキルを所有している人物は、目の前で残虐な行為が行われていても平然としている、もしくは猟奇殺人などの残虐行為を率先して行う。
血塗れの蛮勇:A
攻撃を続けるごとに攻撃力が上昇するが、防御力が低下するスキル。
【宝具】
『人間無骨』
ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:1 最大捕捉:1人
身の丈ほどある巨大な槍。
穂先には展開ギミックが仕込まれており、真名解放と同時に攻撃力を強化した解放形態となる。
通常時は直槍だが、解放形態では槍先が開いてチェーンソー状の刃が出現し、ちょうど十字槍の形状を取る。
本来の用途は、相手に突き刺した状態で強制的に槍を開き、相手を内部から破壊することだとか。
「どんなヨロイも紙クズ同然」と豪語する通り、防御無視の効果を持っており、人間の肉体を容易に輪切りにできる。
消費魔力も少なく、単純ながら実戦においては極めて強力な宝具。
『百段』
ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:― 最大捕捉:―
ランサー、ライダーで召喚されると所有する合体騎乗宝具。
史実での長可の愛馬であり、長可の居城である金山城の石段100段を駆け上るほどの名馬というのが名前の由来。
【weapon】
『人間無骨』
【人物背景】
日本の戦国時代の武将で織田信長の尾張統一前からの功臣であった森可成の次男で、信長の寵童として有名な蘭丸の兄。
父譲りの槍の名手で、父の死後は森家の当主となり、信長の息子である織田信忠旗下で多くの武功を立て、『鬼武蔵』の異名を取った猛将。
信長没後も羽柴秀吉に属して美濃を席巻したが、小牧長久手の戦いの際に銃弾を受けて若くして命を落とした。
生前から非常に旺盛な闘争心の持ち主で、初陣で自ら27の首級を挙げたのを皮切りに前線での戦いを好み、
高遠城の戦いでは腰から下が満遍なく血塗れになるまで敵兵を殺し回ったとされる。
一方で平時でも異常なまでに気性の激しい人物で、気に入らぬことがあればすぐに手討ちに及んだり、
織田軍の関所であっても放火して押し通ったりととにかく暴力的な逸話が多く残されている。
【サーヴァントとしての願い】
存分に戦う
【マスター】内海
【出典】機動警察パトレイバー
【性別】男
【マスターとしての願い】
聖杯戦争を楽しむ
【weapon】
特になし
【能力・技能】
優れた頭脳を持つ策略家。
リーダーとしてのカリスマはそこそこあるが、その性格ゆえ外部には敵を作りやすい。
【ロール】
重機会社の社員
【人物背景】
レイバー制作会社「シャフト・エンタープライズ・ジャパン」の企画7課課長。
外見はいつもヘラヘラとした笑みを浮かべている、うさんくさい中年男性。
内面は享楽主義者で自己中心的、裏社会に精通した危険人物。
香港支社時代は「リチャード・王」を名乗っており、「内海」という名前も偽名である可能性が高い。
殺人や暴力は好まないが、単に自分の目で見たくないだけであり、自分の目の前でなければ自分の行動でどれだけの人間が死のうが気にしない。
【方針】
聖杯にあまり興味は無いが、死にたくないのでいちおう優勝狙い
最終更新:2017年04月18日 15:44