コトコトと鍋の中身が煮える音。辺りに漂う良い匂い。鍋の中を見るともうじき出来る塩梅だった。
喜ぶかどうか少し考えるが、まあ問題は無いだろう。キャラじゃなくて本物の猫だし。
此処は冬木市深山町に有る一軒家。此処はこの聖杯戦争に巻き込まれたマスターとそのサーヴァントの拠点である。

「よ〜し、もうじき出来るね」

帰ってくるまでに出来そうだ─────多田李衣菜がそう思った矢先に、“ニャー”と聞こえた。
入って来たのは一匹の猫。純白の毛並みの猫は、真っ直ぐ李衣菜を見つめている。

「お帰り〜。どうだった」

猫に向かって話し掛ける。

「見つからなかった。夜光院でも無い身故に断言は出来ぬが、まあこの家の周囲にはさぁゔぁんとはおらんようじゃ」

返ってくる返答。猫が人語を話すなど有り得ないが、李衣菜は驚かない。
この猫こそ李衣菜のサーヴァント。クラスはセイバー、此の地で李衣菜の身を護り、敵を討つ刃。

「お疲れ〜。ご飯もうじきできるよ」

「なんじゃ?」

目線を向けてくる白猫に答える。

「カレイの煮付け」

「おお、礼を言うぞ主。」

嬉しそうに言う猫に、李衣菜の頬が緩む。

「良かった〜。魚嫌いじゃなくて」

やっぱりキャラじゃないと魚好きなんだな〜、と思う。
白猫がカレイの方に目を向けたまま、言葉を続ける。

「油断はするなよ。この程度の街、優れた魔術師にとっては、端から端まで指呼の間じゃ」

「ホント!?」

「私の知っている魔術師は、東京から東北までものの五分で飛んで来たぞ」

ゲッと李衣菜は仰け反る。まさか最弱のサーヴァントに該当する魔術師がそんな高性能だとは。

「まあ彼奴程の魔術師は、長い間生きた私も、他に見なかったからの。そう気に病む必要もないと思うが」

そう言った白猫の体が霞むと、その姿が徐々に変わり出した。
長い黒髪、紫紺の瞳、李衣菜が今までに見て来たトップアイドル達に匹敵する美貌。
出るところは出て、引っ込むところは引っ込んでいる、女である李衣菜ですら目を奪われる、流麗なラインで構成された白い裸体。
年の頃は李衣菜と同じくらいに見えるが、その所作は李衣菜より遥かに長い歳月を経たかの様なアンバランスさを感じさせる。

「……服毎変われないわけ?」

「無理じゃな」

すげ無く返ってくる返事。
何しろ元々が猫なのだ。服を着用していないのが自然なのだろう。
「文」とセイバーが言うと、セイバーと同年代に見える、和装の少女が姿を表した。

「エレエレエレエレ」

和装の少女の口から吐き出される衣服。腹の中に服と武器をしまっているらしいが、見るたびに引く。濡れている様に見えるのだが、毎度不快じゃ無いのかと疑問に思う。
セイバーが吐き出された衣服を着ると、“凛々しい”という言葉の見本の様な和装の美少女の姿が完成した。

「食事の時間じゃ」

開口一番に言うのが、食べることであったが。


〜夜〜


此の地に来る前から続けていたギターの練習を、李衣菜は欠かさず行っている。
李衣菜の目的は帰還である。元の世界に戻って、“ロックなアイドル”として輝く夢が李衣菜にはあるのだ。
尤も、こんな所にいるのはその夢の所為である。
まさか偶々買ったピックが『鉄片』だったとは。

「日々励んでおるのう、李衣菜」

「まあね、ほら、私は“ロックなアイドル”だからね。ギターが弾けないっていうのはね」

「しかしその楽器、音が出んようじゃが」

「…………き、近所迷惑だしね」

「そういう事にしておこう」

ニヤリと笑うセイバー。その笑みに李衣菜は僅かに怯む。このネコはどうも苦手だ。相方と違って。

「こういう事をやっている場合じゃ無いのはわかっているけど、けど私は、殺し合いなんてやりたく無い」

「勝利すればなんでも願いが叶うというぞ。とっぷあいどるとやらに成る事も容易であろう」

「……それも考えたんだけどね。自分の力で高みへ登って行くんじゃ無いと、ロックじゃないし。自分で自分を裏切るみたいで嫌だし。
うん、私はロックに行く。誰も殺さないで、巻き込まれた人達を元の世界に返して、聖杯を壊す。それが私のロック。そして私は私のステージに戻る。
私は“ロックなアイドル”を目指しているの。殺しあえと言われて『はいわかりました』って従うんじゃロックじゃない。
それにアイドルが後ろめたい気持ちでファンの前に立つわけにはいかないし」

「そうか。それが李衣菜の方針なら、私はそれに従うだけじゃ。主(ぬし)に襲い来る敵を討ち、李衣菜を立つべきステージに戻そう」

静かに、しかし強い意志を込めて語るセイバーに、李衣菜は問い掛ける。今まで聞きそびれていたが、この気に聞いておこう。

「セイバーに叶えたい願いは無いの?」

「無い。私の生に未練など無い。私は自分の成すべき事を成し、望外のものも得ることが出来た。私は自分の生で、本来得られる以上のものを得た。もう望むことは無い」

「なのに私の為に戦ってくれるの?」

「私は戦うことしか出来ぬ。この様な場には私の方が相応しい。じゃから私は戦う、そして李衣菜を相応しい世界に返す。生前やっていたことと変わらぬ。
じゃから気にするな。私が行うのは生前から変わらぬ私の役目じゃ」

「…ありがとう」

最初出逢った時は猫との腐れ縁に絶句したが、今にして思えば本当に良い相棒だと思う。元の世界の相方と同じ位に。

「それじゃあ“ロック”に行こう!」

セイバーの言葉に勇気を奮い起こす。私は“ロックなアイドル”目指すのだから、何処までもロックに行こう。そう決めた。




─────そうであろう、若殿。


声に出さず、胸中で呟く。それは遥か遠い過去に見送った男への誓約。
李衣菜を護り、元の世界に返すという聖約。
血風吹き荒び、骸が積み上げられる舞台に李衣菜は相応しくない。
李衣菜にはもっと相応しい、立つべき舞台が存在する。
そこに李衣菜を返す事を、きっと彼なら望むだろう。

─────若殿。私はこの仮初めの生を、李衣菜を禍から救う為に使う。若殿の護り刀は、幾星霜を経ても錆ぬ事を見届けてくれ



【クラス】
セイバー

【真名】
緋鞠@おまもりひまり
身長 157cm
バスト 88cm
ウェスト 56cm
ヒップ 85cm
胸のサイズ Fカップ
血液型 猫型


【ステータス】
筋力:D~B 耐久:D~C 敏捷:B~A+ 幸運:B 魔力:B 宝具:B

【属性】
秩序・中庸

【クラススキル】
対魔力:B
魔術発動における詠唱が三節以下のものを無効化する。
大魔術、儀礼呪法等を以ってしても、傷つけるのは難しい。

騎乗:E
騎乗の才能。大抵の乗り物なら何とか乗りこなせる。
乗り物に乗った逸話が無い為、クラス補正で辛うじて乗れるというだけである。



【保有スキル】
神性:E
神霊適正を持つかどうか。
ある地域で“猫神”と呼ばれた事から獲得したスキル。


妖猫:ー(E~A)
心眼(偽)・精神汚染・加虐体質・吸血を併せ持つ複合スキル。
セイバーは強力な猫の妖である。通常時は妖としての面を抑えている為に、獣としての本能である心眼(偽)をBランクで発揮する以外機能していないが、宝具を発動する事により、段階的にランクが増して行く。
Cランク以上から、精神汚染と加虐体質の複合効果で、ステータスアップを伴わない『狂化』スキルと同じ効果を発揮し出し、思考が混濁していく、本来は最終的に完全に妖となり、無差別に襲い、殺し、喰らう存在となるが、ある宝具の効果によりその状態になる事は無い。
ランクが高まる程に『獣』に対して効果の有る宝具やスキルに対し脆弱になる。


魔力放出:C(A)
武器ないし自身の肉体に魔力を帯びさせ、瞬間的に放出することによって能力を向上させる。
いわば魔力によるジェット噴射。


仕切り直し:C
戦闘から離脱する能力。
また、不利になった戦闘を戦闘開始ターン(1ターン目)に戻し、技の条件を初期値に戻す。
妖猫スキルがBランク以上になると消滅する。


怪力:ー(D~B)
一時的に筋力を増幅させる。魔物、魔獣のみが持つ攻撃特性。
使用する事で筋力をワンランク向上させる。持続時間は“怪力”のランクによる。
通常時は発揮されない。宝具を発動した際、段階的に上がって行く。
使う程に妖猫化が進んでしまう。



【宝具】
童子切安綱
ランク:B 種別:対人宝具 レンジ:1-2 最大補足:一人

平安時代に源頼光が酒呑童子を討ったさいに用いた刀。
鬼斬り役十二家の一つ、天河家に伝わり、妖怪退治に用いられて来た。
その為、魔に属するものに対して特攻効果を持ち、ランク以下の魔術や魔力放出に対し、貫通及び抵抗の効果を発揮する。
また、『童子切り』の由来ともなった最も有名な逸話から、鬼種に対しては特攻効果が倍になり、相手の防御力を無視して発揮する



発現せよ、我が獣性(妖力解放)
ランク:B 種別:対人宝具 レンジ:ー 最大補足:自分自身

日頃抑えている妖力を解き放ち、妖猫本来の能力を発揮する。
魔力放出スキルが()内のものになり、衝撃波として離れた敵を攻撃することも出来る。
ステータスやスキルランクが段階的に上昇、Bランク相当の戦闘続行スキルを獲得する。
反面魔力消費が大きくなる。



文車妖妃(文)
ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:ー 最大補足:ー

生前からセイバーに仕えていた妖怪文庫妖妃、水色の髪と浴衣が特徴の少女。本来の姿は封書。
腹の中に大量に物を入れて運ぶことが出来る。刀剣類や長柄武器が大量に収まっている。
出す時は口から吐き出すが、封書の姿の時は空中に出現させる。
火や湿気が苦手。


我が胸に宿る光(光渡し)
ランク:EX 種別:対人宝具 レンジ:ー 最大補足:自分自身

生前、セイバーが取り込んだ邪妖と、セイバーの獣の本性が混じり合ったモノに精神を侵された時に、セイバーの主であり心を通じた少年がセイバーに刻んだ光。
この光有る限り、セイバーの心は如何なる侵食にも、影響を受けこそすれ決して呑まれる事は無い。


【weapon】
童子切安綱:
宝具欄参照

文が腹に飲んでいる武器


【人物背景】
鬼斬り役十二家の一つ、天河家の先祖と先祖が盟約を結び、代替わりしつつ天河家に仕え続けてきた妖猫。
主人公の天河優人が十六になった時に、天河家が代々住んでいた野井原の地から、優人を護る“護り刀”としてやって来た。
本来の姿は白猫で、この姿でも会話は可能。
戦闘では主に刀を用い、速度を活かした戦い方をする。
本気で戦う時には猫耳と尻尾が生える。

【方針】
李衣菜を元の世界に返す

【聖杯にかける願い】
無い




【マスター】
多田李衣菜@アイドルマスターシンデレラガールズ(アニメ版)
【能力・技能】
歌って踊れるアイドル体力は人並み以上。
ギターは練習中

【weapon】
無い

【ロール】
女子高生

【人物背景】
ロックなアイドルを目指すアイドルだが、ロックの知識はそれ程無い。
性格は明るく、仕事に対しても真面目に取り組む。

【令呪の形・位置】
右手の甲に✳︎の形

【聖杯にかける願い】
帰還

【方針】
誰も殺さない。巻き込まれた人達を元の世界に返す。聖杯を壊す。

【参戦時期】
11話終了後からの参戦

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最終更新:2017年04月26日 21:30