――――生きた心地がしない。




そのような感情・ストレスは、彼女/アンジェラ・ラングレーにとって初めての経験ではない。
アンジェラの立ち場は複雑である。
異常現象、現実改変者、その他、あらゆる奇妙な産物。
『SCP』と称されるそれらを確保し、収容し、保護を行う組織『財団』に所属する博士。
摩訶不思議なアイテムを鍵かけたロッカーに保管する程度ではない。

収容が万全ではない。
未だに収容手順か完全ではない。
そもそも収容が不可能。

故に、アンジェラ自身生命の危機に晒される機会は幾度もあったとも。
むしろ、安全である財団関係者も少ない。
既に財団に所属している時点で、いつ収容違反により被害に巻き込まれる確率が数%でもあるのだ。


現在。アンジェラはまさしく異常事態の渦中に居る。
『聖杯戦争』と呼ばれる殺し合い。
『Chaos.Cell』なるもので再現された場所。
ここが電脳世界であり、何故か身に覚えないアンジェラが巻き込まれた訳だ。
財団に所属する彼女も『聖杯戦争』『Chaos.Cell』『サーヴァント』etc
……を聞き覚えある単語として記憶には皆無であったのだから。

そして、彼女は『夢』を見るまでは記憶を失い。
『Chaos.Cell』にある学校の教師を営んでいたとは、俄かに信じがたい事実である。



―――最悪だわ。



覚醒も全てが最悪だった。
博士の地位にある分際ながら、初歩的なミーム汚染の影響下に置かれて、滑稽にも道化を演じてた事。
それもそうだが。
記憶を取り戻したのは、あるSCPの収容違反……もとい、暴走の惨劇を夢で再現された為だろう。
切っ掛けなんて些細なものでいいのに。
一体どうして『あの時』を。

嗚呼。
悲劇は始まっていたのか。神は我を見捨てたのだと、アンジェラが(内心で)嘆くのは。
彼女が、いよいよマスターとして召喚したサーヴァントと対面した時。

アンジェラは、自らが呼び寄せたサーヴァントに恐怖した。
赤黒の禍々しい気配を纏った『狂戦士』は、魔術師でないアンジェラが扱うには手にあまる。
否。
会話が成立するか怪しい『狂戦士』なのが欠点じゃなく。
『あの時』の。夢で見た暴力の化身を彷彿とさせる。残虐性を醸しだす男と似たりよった雰囲気なのだ。




―――きっといつか殺される!



アンジェラは心底恐怖で凍てついた。
ガタガタ震える小動物のように、バーサーカーを眺めながらも恐る恐る喋る。
相手を怒らせぬ為、慎重な丁寧口調で。

一方で、バーサーカーとは対話が成立できた。
謙遜なアンジェラとは裏腹で、バーサーカーはアッサリするほど淡白だ。
格別アンジェラに殺意を向ける様子は(現時点で)なく。
ただ。


「お前は俺の敵を指示せ」


と言う。
逆を返せば、それだけだった。酷く無頓着で、機械ほど感情がない訳ではないが……
面倒なことにバーサーカーもあの『SCP』同じく『戦士』であるから、やるべきことはやると宣言してきた。

『戦士』。
結局、あの『SCP』の精神構造も理解不可能だった。
彼の言う『戦士』も理念も、何ら共感すら抱けないもの。
財団は結論した。
二度と彼の『SCP』に干渉を試みる事はしない、と。

だったらバーサーカーに関しても同じだ。
彼に必要以上な命令も干渉もしなければ危険度クラスで例えれば『Safe』に分類する。
いや、早計に判断してはならない。暫定基準『Euclid』が安牌か。

アンジェラは『聖杯戦争』と称される異常現象に対し、可能な限り記録を残す事にした。
一先ず、現時点で己のバーサーカーと対話を文面で……
録音媒体でインタビューを残すべきだろうが、バーサーカーのようなタイプで、
かつ安全性が確立されていない状況下でハメをはずした行為は、推奨されなかった。
異常現象や異常性体に対して、仮初のSCP番号を割り当て呼称するべきなのだろうが。
インタビューを除けば、そのままの用語を使用すればいいとアンジェラは判断する。

報告書としてあげるなら、後でも改竄は容易だし。
周囲に合わせる為に、ここでは『普通の』マスターとして振舞った方が適切だ。
そのような決断を表明した文面を記録媒体に完成させ、アンジェラは休息を取った。



相も変わらず生きた心地がしない。
いつ、敵対対象のマスターとサーヴァントに命を狙われるかより。
自らのサーヴァントに寝首を刈られる不安が圧倒していた。







バーサーカー……クー・フーリンからすれば、マスターであるアンジェラの方が奇妙な人物であった。
彼女は、まるでマスターではなかった。
魔力の繋がりや令呪が刻まれている等、証拠がなければ酷い話――ただの一般人だ。

否、魔術師ではない怪奇と縁も所縁もない人間がマスターだったとしても。
アンジェラがした対応は『ありえない』。
彼女はまるで馴れている風に、バーサーカーと対話し、当たり障りもない質疑応答をして。
「……では本日はここまでにしましょう」と講義を終えた教授っぽい締めくくりをする。

確かにバーサーカーへ不快感を与えないよう配慮をする。賢明な態度だろう。
しかし、それをマスターである彼女が行うかは別だ。
アンジェラは、どこか客観的で、聖杯戦争と無関係な第三者のような様子である。

何より、アンジェラは恐怖していた。
生命の危機ではない。バーサーカーへ畏怖の感情があるにしろ、単純な恐怖ではないと
バーサーカーにも理解しうる。

アレがマスターなのか。
そう、バーサーカーは僅かに疑念を覚えるほどだったが。
直ぐ様、疑念はかき消した。マスターの人格は大した問題ではないから。


己はただの戦闘機械に過ぎない。



【クラス】バーサーカー
【真名】クー・フーリン〔オルタ〕@Fate/Grand Order


【ステータス】
筋力:A 耐久:B+ 敏捷:A+ 魔力:C 幸運:D 宝具:A

【属性】
混沌・悪

【クラススキル】
狂化:EX(C相当)
 聖杯への願望によって誕生したバーサーカークラスなため、Cランク相当でありながら、論理的な会話は可能。
 しかし如何なる詭弁を弄しても効果がなく、目的に向かって邁進する以外の選択を行わないため、
 実質的に敵対者との会話は不可能であるといえる。


【保有スキル】
戦闘続行:A
 往生際がとことんまで悪い。獣の執念。戦闘を続行する能力。
 決定的な致命傷を受けない限り生き延び、瀕死の重傷を負っても戦闘が可能。

精霊の狂騒:A
 クー・フーリンの唸り声は、地に眠る精霊たちを目覚めさせ、敵軍の兵士たちの精神を砕く。
 精神系の干渉。敵陣全員の筋力と敏捷とパラメーターが一時的にランクダウンする。

ルーン魔術:B
 北欧の魔術刻印ルーンの所持。
 この状態で現界するに当たって、クー・フーリンは「対魔力」スキルに相当する魔術を自動発動させている。

矢避けの加護:C
 飛び道具に対する防御効果。魔術に依らない飛び道具は、目で見て回避する。
 狂化されているため、大幅にランクダウンしている。

神性:C
 神霊適性。太陽神ルーの子であるクー・フーリンは、高い神性適性を有する。
 オルタ化しているため、神性が通常よりランクダウンしている。


【宝具】
『抉り穿つ鏖殺の槍(ゲイ・ボルク)』
ランク:B++ 種別:対軍宝具 レンジ:5~50 最大捕捉:100人
 ホーミング魔槍ミサイル。自らの肉体の崩壊も辞さないほどの全力投擲。
 敵陣全体に対する即死効果があり、即死にならない場合でも大ダメージを与える。


『噛み砕く死牙の獣(クリード・コインヘン)』
ランク:A 種別:対人宝具(自身)レンジ:- 最大捕捉:1人
 荒れ狂うクーフーリンの怒りが、魔槍ゲイ・ボルクの元となった紅海の怪物・海獣クリードの外骨格を一時的
 に具象化させ、鎧のようにして身に纏う。攻撃型骨アーマー。
 着用することで耐久がランクアップし、筋力パラメーターはEXとなる。
 この宝具を発動している最中は『抉り穿つ鏖殺の槍』は使用できない。



【人物背景】
ケルト・アルスター伝説の勇士。
赤枝騎士団の一員にしてアルスター最強の戦士であり、
異界「影の国」の盟主スカサハから授かった無敵の魔槍術を駆使して勇名を馳せた。
通常とは異なりバーサーカーとして現界している。





【マスター】
アンジェラ・ラングレー@SCP Foundation


【マスターとしての願い】
なし。
しいて挙げるなら聖杯戦争を『SCP』として報告する為、生存する。


【人物背景】
SCP財団所属の20代半の女性。
良くも悪くも、正しき財団の博士。
彼女は狂戦士を殺戮者と影を重ねて恐怖している。
狂戦士を理解してはならない戒めを抱いて。


【捕捉】
クリエイティブ・コモンズ 表示-継承 3.0に従い、
SCP FoundationにおいてKain Pathos Crow氏が創作されたTaleに関連するキャラクターを二次使用させて頂きました。

ttp://ja.scp-wiki.net/of-able

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最終更新:2017年05月08日 23:41