マリアとイヴ以外の宗教的モデル……聖書の登場人物マグダラのマリア
11c悔悛運動の台頭にともなって、悔い改めによって女性もその罪をあがなえるとの考えが徐々に浸透
→悔悛して更生したマグダラのマリアは、あらゆる結婚したことのある女性一般の宗教的モデルに
11・12c隠修士の活躍によってマグダラのマリア崇拝が隆盛する
隠修士……罪の意識と悔悛の情にとらわれ、マグダラのマリアにたいする強い帰依心をもつ
娼婦をはじめとする俗人女性に神の慈悲を教え贖罪を説いた
⇒早い時期に女性の魂の救いを考えたことの画期性
娼婦の悔悛の方法は①修道女となること ②結婚すること
教会法学者の定義における娼婦:金銭や他の報償をみかえりに多くの男の欲望をみたすため、無差別に、おおっぴらに性関係をもつ女性
←原則的にはきびしく禁止したが、不完全な世界に必然的に付随する社会的必要悪として存在をみとめた
cf.「理想的娼婦」……社会秩序や霊的秩序を安定させる
低い法的・社会的地位、特定区域への集中隔離、役人による売春宿の運営・監督・規制
⇔パリなどの主要都市には娼婦のギルドも存在、場合によっておおきな社会的影響力……都市当局や国王による取り込み
たんなる社会的事実から組織化された制度への変貌←教会の監視を離れ都市の真正の社会制度へ脱皮
13c末-14c 公的赤線区域の設置によって確立……娼婦の権威づけ
世紀中世の受動的な寛容から積極的な組織化と規制への変化
一種の都市ビジネス
地中海世界にひろく展開していただろう都市当局の娼婦政策
制度としての売春と並行して娼婦更生のための宗教施設がさかんに設立
→16c都市の制度としての売春の解体とともに衰退
娼婦たちがキリスト教社会に占めるすこし特異な位置……罪深いながらも「必要悪」
ユダヤ人や異端者、他の犯罪者と異なる扱い
11・12c以降、マグダラのマリア像に重ねあわされる娼婦たち……貴く聖なる後光
←男性の無意識の罪意識の投影?
近世の宗教改革の時代……性や結婚の賛美
女性は妻となり母となるべき、よりきびしい売春の断罪へ
←宗教改革熱が衰えると売春も盛り返し
18cイギリス やむなく娼婦となる下層女性の更生と自活のため、洗濯工場やカーペット工場をもうける案
⇒売春=女性だけの問題との考えは抜本的改革の実現をさまたげた
しかし娼婦たちでさえ救われるという12c以降のモデルの確立は、世俗の一般の女性の救いとなった
最終更新:2010年06月22日 21:22