223名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/04/30(月) 14:21:54.60 ID:I6H1etgp0
 【ゴールデンウィークはおべんと持って】

  春の日差しはぽかぽか陽気。
  ゴールデンウィーク初日。空は春香と二人、ハイキングコースを歩いていた。
  一時間ほど足を運んだ先の小高い丘で、おべんとうを食べるつもり。

  空の右手と春香の左手は恋人つなぎ状態だった。
  表情にこそ出さないが、重ねた手がやけに熱くて、空は胸がドキドキしていた。
  頬まで熱くなってきたけれど、確かに気候はいいけれど、この熱さは絶対気温のせいなんかじゃない。

 「空ちゃん空ちゃん、こっち見てー」
  不意に春香が立ち止まり、空にそっとささやいてきた。
 (あ、モンシロ蝶……)
  蝶が二羽、春香の髪の左と右に、まるで髪飾りのようにとまっている。
 「えへへー。可愛いでしょ?」
  確かに蝶はかわいい。
  でも空にとってはそれよりも、蝶がとまってくれたことを素直に喜んだり、蝶に逃げて欲しくなくて小さな声でささやいたりする子供っぽい春香の方が、ずっとずっと可愛らしく思えた。
  抱きしめたい、そう思い、空はつい春香を引き寄せた。そのせいか蝶は二羽とも風に乗って飛んでいってしまう。


 224名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/04/30(月) 14:23:23.67 ID:I6H1etgp0
 「あ、逃げじゃったよー」
 「あら、ごめんなさい。でも大丈夫、蝶なんていなくても春香は十分可愛いわよ」
  そういって、空は春香に口付けをする。
 「わ、や、空ちゃん? んんっ。んーっ。……はーっ。知らなかった、空ちゃんって結構キス魔だったのね」
 「そう? 変なスイッチが入っちゃったみたいね。でも、そのスイッチを入れたのは貴女だわ、春香。こういうのは、嫌?」
 「嫌じゃないよ。嫌じゃないけど、でも、あたし以外にはしないで」
 「え?」
 「そ、そんなことより、早く行こ行こっ。のんびりしてたらお昼過ぎちゃうよー。あたしもうおなかぺこぺこー」
  春香の科白は誰が聞いても照れ隠しだ。しかし恋愛感情の機微に疎い空にはそれはわからない。
 「そうね、急ぎましょうか」
  でも、急ぐのはもったいない。そんな考えが二人ともどこかにあって。のんびり歩くのも気持ちがよくて。

  春の陽気の散歩道。
  やっぱり二人はゆっくりと歩いた。

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 以上ですよ。

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最終更新:2007年05月04日 17:41