【相合傘でも】素直でクールな娘【しようじゃないか】
- 1名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/15(金)
23:57:51.23 ID:T/K4QMrJ0
- ここは素直クールに萌えるスレです。
「素直クール」とは
・冷静沈着で感情的になることはまずない
・完全自立型
・表情が薄いあるいは無表情
・ガチで愛してくれている一途
・愛情表現がストレート
・照れが少ないあるいはない
・「素直」と「クール」の矛盾したアンバランス感が最高にいい
▼投下時ルール
・多くレスを使う投下は、投下前後に開始・終了の旨を書いたレスを入れるのが好ましい。または「何レス目/総レス」を名前欄に
・投下許可を求めない。ダメなんていう人はいません
・作品投下が終わった後の自虐は、読み手が不快に感じるので書かない
・投下前は、他作品への割り込みを防ぐ為必ずリロードしよう。
・コテは投下時にだけ付ける
・性描写(エロ)は空気を読んで程々に。 過激なSSについてはtxtうpを推奨
・Wikiに保管してほしくない人、それから批評がほしい人は投下と一緒に要望を伝えてください。 批評は避難所の批評スレで聞けます
▼2ちゃんねるのおやくそくについては
http://info.2ch.net/before.html
初めての人は保管庫をのぞいてみて下さい
*特に荒らしは徹底スルー
- 2名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/15(金)
23:59:10.52 ID:T/K4QMrJ0
- ■前スレ
【君無いところに】素直でクールな娘【私は立たぬ】
http://wwwww.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1181569389/
■ほの板
【好きなもの?】素直でクールな娘【キミだ】
http://human7.2ch.net/test/read.cgi/honobono/1169035252/
●初めての人は軽くでいいので保管庫を見てみて下さい
■素直クール保管所Wiki
http://sucool.s171.xrea.com/
http://www16.atwiki.jp/sucool/
■素直でCOOLな娘避難所
http://yy17.kakiko.com/sucool/
■あぷろだ@素直クール保管所
http://sucool.s171.xrea.com/up/
携帯からはこのへん
写メうpろだ http://kjm.kir.jp/index.php
@ぴた http://pita.st/index.html
■素直クール過去ログ保管所
http://sucool.skr.jp/kakolog/
■お題/性格ジェネレーター
http://udonkari.run.buttobi.net/
- 3名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/15(金)
23:59:53.49 ID:T/K4QMrJ0
- ●●お知らせ●●
避難所等で以下のような提案と話し合いがありました
・週二回スレ立て
・月曜日と金曜日
・スレが落ちたら次のスレ立て日まで待つ
現在試験運用中につき
何か意見のある方は避難所へどうぞ
- 4名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/16(土)
00:07:35.45 ID:8Z8hDnBM0
-
>>1
乙ですー
- 5名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/16(土)
00:08:13.75 ID:yydfqSbbO
- ラピュタ乱立
- 6名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/16(土)
00:14:23.17 ID:8Z8hDnBM0
- 宮崎アニメのヒロインってわりと素直クール気味じゃないかなあ。
ラナとか。
って自分の目が偏ってるだけかもしれないけどw
- 7名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/16(土)
00:24:10.09 ID:dclKVCMZO
-
>>1乙
>>6
例えば?
- 8名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/16(土)
00:24:21.93 ID:8Z8hDnBM0
- ☆
- 9名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/16(土)
00:26:45.77 ID:8Z8hDnBM0
-
>>7
んー。
ラナ以外はダメかなあどうかなあ。クラリスとかどう?
- 10名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/16(土)
00:33:08.16 ID:nf7UaFw7O
-
>>1乙
- 11名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/16(土)
00:35:03.32 ID:AeM6c3UiO
- バロンとか
- 12名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/16(土)
00:37:58.68 ID:KlvzJsrcO
- 榊さん榊さん
アッー
- 13名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/16(土)
00:41:07.24 ID:dclKVCMZO
-
>>9
宮崎アニメは見てないやつもあるから、できればそれっぽい言葉とか
行動とかがあれば、教えてもらえるとありがたい
- 14名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/16(土)
00:42:46.71 ID:8Z8hDnBM0
- 投下しますね。
3レスくらい。
- 15名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/16(土)
00:43:57.47 ID:Ddtq2Esp0
- 【真っ白な雲を見上げて】
「平和だなー」
「そうだね」
昼休み。オレとクーは屋上に寝転んで、ゆっくりと流れていく雲を眺めていた。ここは割と穴場で(なぜならオレがここの鍵の所有者だからな)、オレとクー以外今は誰もいない。
先週、大雨の日。オレとこいつはふとした拍子にお互いのことを好きだと言い合った。まあ、いわゆる両思いというやつなのだろう。
それからというもの、オレはクーといつも一緒に過ごすようになった。登下校も、休み時間も、昼食のときも、休日も。
だからといって恋人同士になったつもりは無いのだが、周囲はそう思ってくれてはいないようだ。
こいつ、校内ではかなりの人気者で有名人なのである。その分、やっかみもあるし、興味本位の人間も多い。
『二人は付き合っているのか』などといらんことを尋ねてくる新聞部やらなにやらに追い掛け回され、ほうほうのていで逃げ出した先がここ、というわけだった。平和を噛みしめたくもなるというものだ。
大勢の人間にやっかまれるだけあって、クーはかなり美形だった。長い黒髪が印象的だ。
いつもかけている黒縁の眼鏡が、クールな彼女にはどこか不釣合いな子供っぽさをかもしだしていて、オレはそんなところも気に入っている。
- 16名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/16(土)
00:45:02.03 ID:Ddtq2Esp0
- 「オレとお前、恋人同士なんだとよ」
「そうらしい。なんだろうね、一体」
「わからんよな。どうでもいいだろそんなこと」
「恋人、ね。私が君を好きで、君も私を好きで。それだけじゅダメなのだろうか」
ばかばかしいくらい青く高い空を、白い雲がゆっくりと流れていく。いい天気だ。
「……みんな、不安なのかもな」
「不安?」
「自分たちの関係に、特別な関係なら、特別なりの名前をつけないとさ。ただの知り合いじゃなく『恋人』なんだと言い張らないと、その関係が壊れてしまいそうに思ったりとかな」
「ふむ」
「お前は不安にはならないのか? 例えばオレが他の誰かを好きになってしまうこととかに」
「ならない。それは君の問題だから」
クーは白い雲を見つめたままきっぱりと言い切る。
「君が誰を想っているとしても、そんなことで私の気持ちは変わらない。一緒に過ごせない時間が寂しいとは思うだろうけれど。それに、正直今はそれどころじゃないんだ」
「うん?」
「今は自分自身の君への気持ちが強すぎて、それだけで手一杯なんだ。君からの気持ちを斟酌するのは、私が自分の気持ちに折り合いをつけたその後で、ということになるのだろうな。まだまだ私は子供だから」
- 17名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/16(土)
00:45:42.38 ID:Ddtq2Esp0
- 「ぷ、わははははっ」
オレは大声を上げて笑いだした。
クラスの誰よりも大人びたこいつが、今こちらに見せている横顔だってオレよりずっとずっと大人っぽいこいつが、真面目くさった顔で自分を子供と評するとは思わなかった。その表情も仕草もなんとも可愛らしくておかしくて、オレは笑いころげた。
「……君も大概失礼な男だな。人が真面目に話しているというのに」
「すまん、悪かった。その、『真面目』がおかしかったんだ。クー、お前は子供なんかじゃないだろ。お前が子供ならオレたちみんな幼稚園児だ」
「いや、子供だよ。人を好きになることについては、本当に子供だ」
「そうかい。まあそういうことにしといてやるか。でも、その子供っぽさ、オレのためだけに見せてくれると嬉しい」
何気なくオレがそう言うと、彼女の顔がみるみる真っ赤に染まった。照れるこいつは妙にかわいらしいが、しかし一体、なんでだ。オレ、何か言ったか?
こいつのツボ、どの辺りにあるのかさっぱりわからん。
「君は失礼なだけじゃなくズルい男だ。私ばっかりこんなにドキドキさせて」
そう言いながら、クーはオレの頬をつついてくる。
んなこたねーよ? オレだってかなりドキドキしている。お前との会話は結構スリリングだ。
こいつが子供なら、オレもまた子供なのだろう。
互いを好きだと認めつつも恋人同士とは言わない。今のオレたちには、こんな距離感が似合っている。
- 18名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/16(土)
00:47:19.84 ID:Ddtq2Esp0
- 以上ですよ。
# 自分 14 ですが ID変わってるけど気にしないでね
- 19名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/16(土)
00:51:47.73 ID:dclKVCMZO
-
>>18
見ていて微笑ましい2人ですね
GJ!!
- 20名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/16(土)
00:55:20.49 ID:e2JtHC0a0
- 遅くなったけど
>>1乙
>>18
雰囲気がいいなぁ…
GJ
- 21名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/16(土)
01:05:36.43 ID:dclKVCMZO
- 守
- 22名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/16(土)
01:05:54.97 ID:+dMCYgT90
- ☆
- 23名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/16(土)
01:12:26.85 ID:e2JtHC0a0
- ほし
- 24名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/16(土)
01:20:38.20 ID:+dMCYgT90
- ☆
- 25名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/16(土)
01:20:53.60 ID:3CthFHNBO
- ほ
- 26名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/16(土)
01:32:41.27 ID:e2JtHC0a0
- ほし
- 27名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/16(土)
01:42:11.85 ID:3CthFHNBO
- ほ
- 28名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/16(土)
01:51:27.71 ID:QvKS84wF0
- ほしゅ
- 29名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/16(土)
01:58:26.28 ID:e2JtHC0a0
- 保守代わりに
つ【映画に影響されたクー】
- 30名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/16(土)
02:00:29.19 ID:e2JtHC0a0
- ク「これはこれは男ではないか。お弁当を持ってきたぞ。一緒にお昼を食べよう」
男「ありがとう。あれ?クー?朝はそんな服着てたっけ?」
ク「友達が通販でサイズをミスったらしく、私にくれたのだ。君を驚か
せようと思って着替えたのだ。流行りの服は嫌いかな?」
男「普段のクーとは違って新鮮だよ」
ク「ふふ。君に褒めてもらえるのは嬉しいぞ。さて、ここで食べようか」
男「うーん…。いつもの事だけど、人通りの多い中央広場か…」
ク「日当たりも良く、素晴らしい場所だ。最高の場所だと思わんかね?」
男「確かにそうだけどね…」
ク「じゃあ、食べようか。君の好きな玉子焼きを今日も作ってきたぞ」
男「クー。いつもありがとう。でも、僕なんかよりずっと良い男はいると思うん
だけど、いつもクーは僕に優しくしてくれて嬉しいよ」
ク「何を言う、他の男など君に比べればゴミのようだ。所で、男よ。食べさせて
あげよう。口を空けたまえ良い子だから。さあ」
男「あの…///…皆こっちを見てるよ。恥ずかしいよ…///」
ク「君も男なら聞き分けたまえ」
男「心の気持ちがさ…///」
ク「よし。心の整理をつけるため、3分間待ってやる」
男「…あのさ、クー。昨日、一緒に見た映画に影響されているでしょ?」
ク「まあ、そうだな。彼のことは噂には聞いていたが、実際に全編を通して見たら
実に生き生きしていた。無論、君は彼のようになって欲しくは無いが」
男「確かにあの人は生き生きしていたよね」
ク「彼を見ていたら、思わず影響されてしまった。…む。時間だ。答えを聞こう」
男「まだ、3分経ってないよ…クー」
ク「男よ。お願いだ。君に食べさせてあげたいのだ。口をあけてくれないか」
男「うーん…クーにじっと見つめられたら、断れないよ…///…あーん…」
ク「私の願いを聞いてくれて嬉しいぞ。私は君から離れては生きられないのだ」
- 31名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/16(土)
02:01:19.71 ID:e2JtHC0a0
- ということでつ【映画に影響されたクー】は終了
良く見たら変なところで改行されていた
申し訳ない
>>6辺り見ていたら突然思いついた
とはいえ、帰ってきたのが0時位なんで
今晩その映画は見ていないんだけどね
- 32名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/16(土)
02:17:44.45 ID:34w5DlC30
-
>>31
GJ!!!
いやぁ~甘いなぁ
- 33名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/16(土)
02:36:27.78 ID:34w5DlC30
- ☆
- 34名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/16(土)
02:56:39.94 ID:UcGVmD5CO
- 保守
- 35名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/16(土)
03:16:41.25 ID:e2JtHC0a0
- お題くれるとうれしいな
- 36名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/16(土)
03:56:28.50 ID:34w5DlC30
- 【長雨で暇を持て余すクー】
【衣替え】
【保母さんクーと保父さん男】
- 37名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/16(土)
04:36:08.78 ID:tpfZ2Wy2O
- 干す
- 38名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/16(土)
04:47:06.88 ID:dpgN4kDB0
- ho
- 39名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/16(土)
05:04:48.28 ID:+dMCYgT90
- ☆
- 40名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/16(土)
05:08:14.71 ID:+dMCYgT90
- ☆
- 41名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/16(土)
05:20:42.45 ID:Fw0P/RbnO
- 【田舎の河原でホタル】
【ゲーセン】
【天気予報師】
【アジサイを見に行こう】
- 42名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/16(土)
05:24:27.25 ID:YbhFcxLt0
- 男「……なぁ」
クー「何を言わんとしているのか見当は付いているが、敢えて聞こう。何だ?」
男「お前って何で英語だけこんなに点数悪いの?」
クー「日本語さえ理解できれば君と会話できるからだ」
男「親指立てんな」
男「……で、何で俺に英語の教科書を押し付ける」
クー「読んでくれ」
男「俺に読ませずとも、教材のCDが有るだろうが」
クー「CDより、君が読んでくれる方がやる気がでるからな」
男「ダブルで親指立てんな」
男「……Do You Have A Pen?」
クー「ノゥ。アイハブトム」
男「片言にも程があんぞ。というかトムって何だトムって」
クー「気にするな。じき慣れてくるはずだ」
男「そうか。じゃあ……Can You Speak English?」
クー「ん……あいきゃんのっとすぴーくいんぐりっしゅ」
男「おいおい、余計酷くなってるんだが」
クー「難しいんだから仕方ない」
男「ハァ…………Do You Love Me?」
クー「Yes. It loves all over the world than anyone.」
男「……なんでこんなのだけ綺麗に喋れるんだよ」
クー「How about you?」
男「…………」
クー「…………」
男「…………Me too.」
- 43名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/16(土)
05:45:50.61 ID:dclKVCMZO
-
>>42
……オチに萌えた
GJ!
- 44名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/16(土)
06:49:48.40 ID:dclKVCMZO
- ほ
- 45名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/16(土)
07:15:55.54 ID:PKK0Ol5LO
- 急にペラペラになるのは卑怯だ(´Д`*)
- 46名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/16(土)
07:26:26.44 ID:J6dmCfES0
- 投下しますね。
ちょいと長くなりそうなので前編。5~6レスくらい。
先月投下した↓これの続きです。
前の話を読まなくても大丈夫なつもりですが、良ければこちらも。
http://www16.atwiki.jp/sucool/pages/116.html#R100
- 47名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/16(土)
07:27:24.92 ID:J6dmCfES0
- 【告白対決!(前編)】
オレは自室のベッドの上に正座し、真剣に考え込んでいた。今後の作戦を真剣に検討しているところなのだ。
目下の悩みはクーの告白である。
今日、クーはあろうことかオレに告白してきやがった。それも全校放送を使って、だ。
あいつ、アホだろ。
うちの高校の何十年かの歴史でも、全校放送を告白に使ったやつはおそらくクーが始めてで、そして最後に違いない。
オレは別にクーが嫌いな訳じゃない。いやむしろ好きだ。クーはヘンなやつだがすこぶるいいやつで、正直オレは彼女に惚れている。
しかしだからといって、オレはクーの恋人になる気はなかった。恋愛関係なんて面倒なこと、真っ平ごめんだ。オレはクーと、今までどおり親友の関係でいたいのだ。
クーからの告白を聞いたとき、オレは「やられた」と思った。負けを意識した。
告白を受けようが断ろうが、一度耳にしてしまったら彼女とは親友のままではいられない。クーの告白を聞いてしまうことは、そのままオレの敗北を意味していたのだ。
だが幸い、まだ面と向かって告白はなされていない。校内放送で間接的に行われたにすぎない。
放送を聞いた直後、オレは学校を飛び出し自宅に逃げ帰ってきた。今ならまだ、放送を聞いていないと言い張れば告白はノーカウントだ。そう、まだ負けてはいない。あきらめたらそこで試合終了なのだ。
さて、これからどうするか。
おそらくもう少しすると、クーはオレに会うためにここへとやってくる。直接告白されてしまえば、今度こそ負け確定だ。対策を練る必要があった。
- 48名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/16(土)
07:28:21.70 ID:J6dmCfES0
- こんなのはどうか。
クーからの告白よりも先に、こちらからクーに恋愛相談をしてしまうのだ。
クーは気のいいやつだ。必ずオレの相談に乗ってくれる。そうすれば、その相談のカタがつくまで自動的にクーの告白は棚上げになる。
クーが『結果はともかく思いだけはオレに伝える』と言い出す可能性は捨てきれない。だがそのときには「今はほかの事を考えられない」とでもいって、あいつの科白を遮ってしまえばいいのだ。
よし、これだ。これしかない。
ほどなくして玄関のチャイムが鳴る。
クーだろうな。今度は負けるわけには行かないぜ。
◇◆◇
「ナオ、急に帰るなんてどうしたのかと思ったが」
オレの部屋に入ってくるなり、開口一番クーが初手を放ってきた。
告白時のオレの行動について探りを入れてきたのだろうが、相変わらずポーカーフェイスなやつだった。表情が読めやしない。
「いやなに突然腹が痛くなって腹痛になってな。今はもうぜんぜん平気なのだが」
うわははは、とオレは笑ってみせたのだが、クーは訝しげにこちらも見るばかりだ。そりゃそうか、タイミングが良すぎるからな。
「……」
「……」
オレとクーとの間に、妙な緊張感が漂う。いよいよ勝負の時ってやつか。
- 49名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/16(土)
07:29:21.38 ID:J6dmCfES0
- 「昼間の校内放送のことなのだが――」
来たっ。
「放送といわれても何のことかわからんがそれよりも先にクーには相談に乗って欲しいことがある。聞いてくれ、実は女の子を好きになったのだ」
オレはクーの科白を遮り、とにかく早口でまくしたてた。ヤツの告白の話題にだけはしてはならない。
「何? どういうことだ」
クーは問い返してくる。よし。ここで会話の主導権を握ってやる。
「惚れた女子に告白したいのだが、どうすべきか相談に乗って欲しいのだ」
「……ナオ。君がこの恋愛音痴の私に、恋の相談だと? 気は確かなのか」
クーは首を捻る。
そりゃそうだろう、普段のオレなら間違っても朴念仁のこいつに恋愛相談などはしない。こいつにコイバナなんてするくらいなら、うちのポチを相手にしたほうがはるかにましだ。向こうには発情期があるからな。
だがそんな内心はおくびにも出してはならない。オレは先を続ける。
「クーだって女子の端くれだろ。ラブレターだってアホみたいに大量にもらっているそうじゃないか。オレにはお前くらいしか相談相手がいないんだ。頼む」
「嘘は無いな」
「無いぞ」
一つ、隠し事はあるがな。
「ま、よかろう」
うむ、乗ってきた。ここからが問題だ。
「で、どんな相手なのだ。背格好は」
なに、相手の背格好だと?
それは考えていなかった。まずいな。
だがここで口ごもることは許されない。即座に反応する必要がある。
- 50名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/16(土)
07:30:38.31 ID:J6dmCfES0
- ホームズ、ポアロ、明智、神津、京極堂、バーロー。
古来名探偵と呼ばれる人たちは皆、必ずこう言っている。
『嘘は真実の中に一つだけ織り交ぜろ。それが嘘つきの極意だ』と。
その言葉が頭の中にあったのだ。
オレは反射的に脳内の想い人の特徴をそのまま口にしていた。無意識にオレの口は名前以外の真実を語っていく。
「そうだな。背はオレと同じくらいかチョイ下、女子にしてはかなり高目だ。腰近くまでのストレートの黒髪て、黒縁の眼鏡をかけている。美人だ」
「ふむ。年は」
「オレと同い年」
「性格は」
「クール、と皆に言われているな。一見そのとおりだが、オレには情け深く義侠心のあるいいやつに見える」
「いつからどんな交友を」
「昨年くらいから、妙にウマがあってな。親友と言っていいだろう」
「名前は」
「言えるか。察してくれ」
……このあたりでオレは事態に気が付いた。正気に返った、といったほうが正しいか。
アホだろオレ。そんな条件にあうやつ、こいつ以外いないじゃねーか。
ちくしょう、探偵の言うことなんて聞かなきゃよかったぜ。やつらは嘘を暴く側で嘘つきの側じゃねーもんな。参考にすべきはルパンだった。どうするよ不二子ちゃん。
- 51名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/16(土)
07:32:03.80 ID:J6dmCfES0
- 「ほう」
クーは目を細める。
「なあ、ナオ」
「なんだよ」
「そんな条件にあう女など、一人しかいないと思うのだが。どうだろうか」
クーのやつ、真剣な目でこちらを見てきやがる。そんな目でオレを見るな、恥ずかしいだろ。まずいな、めちゃめちゃ意識してきた。
「ままままあ待て落ち着け慌てるな。オレは別にお前が好きだと言っているわけじゃないぜ」
「こちらも該当者が私だと言ってはいないのだがね。ではどこの誰だ」
「内緒だ」
「ずいぶんと私にそっくりだな」
「そうだな」
「では、私相手ではどうだ」
「なんだと」
「それだけそっくりなら代わりに私を恋人にしても同じことだ、構わんだろう、と言っている。ナオ。実は私は君のことが好」
「待て待て待て待て。今はお前の話はしていない。オレの相談のはずだ。オレがどのように告白すればいいか、その話に集中してくれ」
今こいつ、どさくさにまぎれてオレに告白しようとしなかったか? 危ねえ危ねえ。油断も隙も無いやつだ。
「それでは、私を練習相手にしてはどうかね」
「なに?」
「告白の練習をするのだ。それだけ私に似ているのであれば、私相手に練習すれば本番も滞りなく勤めるというものだろう」
「はあ? なんだそりゃ。そんな必要無いんじゃねーのか」
「練習もできないのか? それはやはり、君の好きな相手が私だか」
「待て待て待て待てわかった早まるな了解だ。やってやろうじゃないか」
- 52名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/16(土)
07:32:51.83 ID:J6dmCfES0
- 以上ですよ。
後編はまた後で。
- 53名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/16(土)
07:39:00.11 ID:dclKVCMZO
-
>>52
気がつくとやりとりにニヤニヤしてた俺ヤバスww
続きwktk
- 54名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/16(土)
08:23:50.97 ID:UcGVmD5CO
-
>>52
GJ!
- 55名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/16(土)
08:28:38.80 ID:dclKVCMZO
- ほ
- 56名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/16(土)
09:06:26.52 ID:dclKVCMZO
- ほ
- 57名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/16(土)
09:31:35.52 ID:QvKS84wF0
- ほしゅ
- 58名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/16(土)
09:43:12.15 ID:uXDdP3Ha0
- クーは結婚したら呼び名あなたで敬語ですよね
ほ
- 59名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/16(土)
10:13:52.46 ID:QvKS84wF0
- ほしゅ
- 60名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/16(土)
10:15:24.33 ID:dclKVCMZO
-
>>58
むしろ毎日呼び方を替えて、新鮮さを維持しようとしても良いんじゃないか
と妄想
- 61名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/16(土)
10:43:42.82 ID:B369lysRO
- 保守
- 62名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/16(土)
11:16:32.92 ID:WTyMcUpE0
- よし!俺今日中に短編一個作ってみせる!
- 63名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/16(土)
11:26:16.85 ID:34w5DlC30
- よし!俺wktkして待ってる!
- 64名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/16(土)
11:53:02.25 ID:34w5DlC30
- ☆
- 65名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/16(土)
12:08:13.77 ID:+zX7eO6RO
- 保守
- 66名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/16(土)
12:11:41.13 ID:WTyMcUpE0
- よし、初めて作ってみた。すごく中途半端な三レスいただきます
- 67名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/16(土)
12:12:42.19 ID:WTyMcUpE0
- 男「最近、なんだか不安なんだよなー」
女友「なにが? クーちゃんとなにかあったの?」
男「特に何もないよ」
女友「ならいいじゃない」
男「いや、何もないから逆に不安なんだ」
女友「はい?」
男「クーはいつも俺に好き好き言ってくるじゃんか」
女友「それがどうしたの、最高じゃない」
男「それが薄っぺらく感じるんだよ、取り合えず『好き』って言ってきてる感じがしてさ」
女友「ふーむ……クーちゃんが本心で男に好きって言ってるか不安なんだ?」
男「そうなんだよ……一回そう思っちゃうとさ、クーの笑顔もなんだか作りものみたいに感じちゃって」
女友「それはイカンねぇ」
男「うん……」
女友「ならさ、実験してみない?」
男「実験?」
女友「そう、いい? つまりゴニョゴニョゴニョ」
男「ほうほう」
- 68名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/16(土)
12:13:22.84 ID:WTyMcUpE0
- 放課後
クーはいつものように男のクラスに向かった。
教室のドアを開けるとそこには男と、クーの友人の女友が楽しそうに話していた。
女友「ねぇ男、今日一緒に帰らない?」
男「いーよ、なんか最近クーと帰るの飽きちゃってさぁ」
クーはその言葉を聞くと男の背に伸ばそうとした手を止めた。
男も女友もクーがいるのにもちろん気づいていた。
クー「そうか、男はそう思っていたのだな」
男「えっ!!クーいたの?!(棒読み)」
女友「全然気づかなかったよ!(棒読み)」
男「ごめん、クーじょうだ
パンッ!
クー「もういい、分かった。男の気持ちは分かった」
クー「女友と仲良くやってくれ……ッ」
クーはかばんを投げ出し教室を飛び出していった。
ビンタされた男は数瞬呆然としていたが、女友の「まずっちゃったねぇ」という表情を見て
クーを追いかけるため走りはじめた。
廊下に飛び出ると階段を乱暴に駆け上がっていく音がした。
その音を必死に追いかけると、屋上の扉にたどりついた。
罪悪感でいっぱいの中、男は扉を開けた。
クーは手すりに手を置き、空を眺めている。
- 69名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/16(土)
12:14:07.58 ID:WTyMcUpE0
- クー「何しに来た」
いつもの声とは違う、冷たい声。
やらなきゃよかった事をやってしまったのだと改めて思い知らされる。
男「ごめん」
クー「なにがだ。君は私に飽きたのだろう?」
自嘲気味に笑うクー。
男「違うんだクー」
男はクーに事情を説明した。クーは黙って話を聞いている。
男「そういう訳なんだ。ごめん、僕がバカだった」
クー「男、目を閉じろ」
男「(グーでパンチかなぁ)」
何かが近付いてくる気配。
男はギュッと目を閉じる。
唇に何かが触れる。
キスだ、と男が思う間もなく舌が歯列をなぞるように入ってくる。
舌を絡み合わせると、クーは少し震え、自分からも絡ませてきた。
唾液を交換する音が耳を打つ。しばらくそうしていた。
口と口が離れると、糸がつながかっていた。
クー「バカが」
そういって抱きついてくるクー。
男「ゴメン」
クー「いいや許さん、私は深く傷ついた」
男「どうしたら許してくれる?」
クー「毎日一緒に手をつないで登下校、一日合計三回以上のキス」
男「厳しいね」
クー「なんだ、文句があるのか?」
男「ないないないない!」
扉の隙間から女友が彼らの様子を見ていた。
女友「(結果オーライ、か)」
- 70名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/16(土)
12:42:27.16 ID:8Z8hDnBM0
-
>>69
GJ!
一個といわず、どんどん書いてほしいな
- 71名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/16(土)
12:44:10.25 ID:QvKS84wF0
-
>>67
GJ!!!
- 72名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/16(土)
13:07:33.25 ID:8Z8hDnBM0
- ☆
- 73名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/16(土)
13:17:13.38 ID:hET3Ht1EO
- 保守
- 74名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/16(土)
13:26:18.83 ID:bKYt8j2/0
- い、いきてる!!なんと珍しい。
保守
- 75名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/16(土)
13:32:40.87 ID:ca6OzOejO
- ☆
- 76名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/16(土)
13:44:25.27 ID:QvKS84wF0
- 保守
- 77名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/16(土)
13:46:39.70 ID:KiUUKXqp0
- 畜生、畜生、男め……毎度毎度なんとうらめやましいッ……!
- 78名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/16(土)
14:00:57.07 ID:l18pzZXfO
- 保守
- 79名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/16(土)
14:12:37.70 ID:PKK0Ol5LO
- ほし
- 80名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/16(土)
14:27:32.88 ID:e2JtHC0a0
- 今起きた
ほし
- 81名前:男主観で進む敬語なクール娘 ※微糖にしかなりえない:2007/06/16(土)
14:32:29.24 ID:vYczVeyE0
- 「良い国、作ろう……」
どもー、只今勉強中です
まぁ今日は一応それほど重要ではないにしろ用事もあったんだけどクーがどうしてもって言うんで付き添ってます
「良い国、作ろう……」
で、さっき数学の勉強してたはずなんですけどね?いつの間にか教科が変わるこの現象、どうしましょうか
「良い国作ろう…………室町幕府」
「鎌倉幕府だから」
「むぅ……」
………僕の記憶によれば小学生で習う内容のはずなんだけど
「………クーってさ」
「はい?」
「何でテストの時だけ点良いの?」
実際、クーは頭が良い。……筈
学年の順位は上の方らしいからね
しかし何故かテストの時だけ
「それは前にも言ったとおり、テストで悪い点取ると補習になりますし……」
「あとほら、テストは成績に関係するじゃないですか」
「うん」
「でも、自主勉強とかは別に公に評価されませんよね」
「まぁ……そだね」
「だったら、正直やるだけ無駄だと思いません?」
- 82名前:男主観で進む敬語なクール娘 ※微糖にしかなりえない:2007/06/16(土)
14:34:00.95 ID:vYczVeyE0
- ………だったら、その無駄な事につき合わされてる僕って何さ?
「じゃあ、ご褒美とかあれば真面目に出来るわけ?」
「くれるんですか?」
「まぁ、ねぇ?」
「………解りました」ゴォッ
………あれ?何か出た?
まぁ、適当に問題見繕ってみますか
「じゃあ、十問全部正答でご褒美って事で」
「望むところです」
「第一問。紀元前5世紀ごろ、『悪法も法である』という言葉を残s」
「ソクラテス!」
おぉ、即答。伊達じゃないって事か
「第二問。政治権力も法に従わなければならないt」
「1776年アメリカ独立宣言、1789年フランス人権宣言!」
「第三問。社会権を初めて憲法で保障s」
「1919年、ワイマール憲法!」
こんな生き生きしたクーを、僕は見たことが無いよ。そして、クーの望む「ご褒美」とやらに不安を覚えるね
………バーサークモードでお持ち帰りか?何言ってるだろ、僕
「第四問。我輩は」
「猫である!」
「第五問。この中に」
「宇宙人、未来人、異世界人、超能力者がいたら、あたしの所へ着なさい!」
- 83名前:男主観で進む敬語なクール娘 ※微糖にしかなりえない:2007/06/16(土)
14:35:58.87 ID:vYczVeyE0
- 「第十問。3択-ひとつだけ選びなs」
「答え-③ 答え③ 答え③」
………コレで十問連続正解な訳だ。途中から面倒くさくなったのは否定しない
「さて、男さん?約束でしたよね?」
獲物を捕らえた豹の眼だ。さて、何をやらされるんだろ?
ぼふっ、っという感じの音と共に、胡坐をかいた膝の辺りが重くなる
「………クー?」
「今から少し眠るので、膝枕しててください」
クーはすーすーと寝息を立て始めた。………早いな
が、数秒もしないうちに目覚めた
「………男さんに襲われても、私は本望ですよ?」
「はいはい………」
ガチャリ。軽快な音を立てて扉が開く
「クー、いい加減俺が貸してた本………って」
「あ、クーのお兄さん。お邪魔してます」
「あー、どうも。…………スマン、ごゆっくり」
ガチャリ。あー、何か誤解与えた気がする
………でも、まぁ、良いけどね。別にそれほど誤解って訳でもないだろうからさ
fin
- 84名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/16(土)
14:39:50.69 ID:tD6BH5ImO
- gj!
- 85名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/16(土)
14:40:04.67 ID:dXSgpHTV0
- http://www3.fumi23.com/chat.php3?room=5010&name=%88%C9%89E%89q%96%E5%83%60%83%83%83b%83g&image=004&bg=10f098
おいここの蓮斗って奴厨房丸出しだぞ
「蓮斗って馬鹿っぽいよねww」って言ってみw
- 86名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/16(土)
14:48:25.28 ID:QvKS84wF0
-
>>81
gj!!
- 87名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/16(土)
14:54:21.82 ID:e2JtHC0a0
-
>>83
GJ
ということでお題消化
つ【保母さんクーと保父さん男】
こんなお題出されたら消化するしかあるまい
- 88名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/16(土)
14:56:45.31 ID:e2JtHC0a0
- 男「クー。ありがとう。幼稚園の手伝いしてくれて」
ク「気にするな。君と一緒にいられることが私の一番の幸せだ」
男「でも、クーは研修の僕と違ってあくまでボランティア扱いだから、お給
料も出ないんだけど、それでいいの?」
ク「ああ、君のかんばっている姿を見られて、かつそれに協力できるのな
ら、それは金銭以上の報酬だ」
男「ごめんね。バイト代入ったら、ケーキおごってあげるよ」
ク「すまないな。でも、楽しみにしてるぞ」
男「…あ、皆、そろそろお昼寝の時間だよ。はい、布団敷いて」
えみ「わたし、よしくんの隣」
よし「えー、えみ来るなよー」
男子「ひゅーひゅー。よし。本当はえみちゃん好きなんだろ」
よし「うるせぇ!俺は別にえみなんか…」
えみ「わたしが隣じゃだめ?」
よし「しかたねぇなぁ…///。好きにしろよ」
えみ「わぁい。うれしいなぁ。よしくん大好き」
男「ほほえましいね。クー。…ところで、クーも布団敷きなよ」
ク「私は不要だ」
男「でも、一応僕達も寝たふりはしなくちゃいけないんだよ」
ク「無論だ。ということで…」
男「クー…///…僕の布団に入ってこないで…///」
ク「好きな人の隣で寝るのはほほえましいことなんだろう?」
男「だけど…ここは幼稚園なんだし…///…それに同じ布団じゃ…」
ク「なら、なおさらだ。幼稚園は友愛を教える場所だ。我々教員が率先し
て手本を見せねばなるまい」
えみ「あっ!せんせー、一緒に寝て、パパとママみたいだ」
男「僕達はまだ…じゃなかった…えみちゃん、早く寝ようねー!」
ク「男よ。さあ、子供達に友愛とは何かをだな…」
男「クー…お願いだから…明日は来ないで…」
- 89名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/16(土)
14:58:06.23 ID:e2JtHC0a0
- ということで【保母さんクーと保父さん男】は終了
しかし、一晩中星見ていたからまだ眠い…
- 90名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/16(土)
15:22:06.28 ID:H6CiHB+8O
- GJ
- 91名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/16(土)
15:33:31.97 ID:+dMCYgT90
- ☆
- 92名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/16(土)
15:59:07.18 ID:nf7UaFw7O
- ほ
- 93名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/16(土)
16:04:37.93 ID:QvKS84wF0
-
>>88
GJ!!
- 94名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/16(土)
16:27:46.51 ID:8Z8hDnBM0
-
>>89
GJ!
というか、
>一晩中星見ていたから
リアルで何かお題めいた楽しそうなイベントなわけですがw
- 95名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/16(土)
16:47:13.32 ID:QvKS84wF0
- 保守
- 96名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/16(土)
16:47:34.06 ID:8Z8hDnBM0
- ☆
- 97名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/16(土)
16:47:55.82 ID:e2JtHC0a0
- ほし
- 98名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/16(土)
16:57:30.46 ID:PKK0Ol5LO
- シュール落ちてた…
- 99名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/16(土)
17:10:18.67 ID:8Z8hDnBM0
- シュール、クールどっちも生き延びるのはかなり難しい感じだね……
- 100名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/16(土)
17:27:53.75 ID:e2JtHC0a0
- 素直クールは滅びぬ
ほし
- 101名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/16(土)
17:30:49.28 ID:vYczVeyE0
- 何度でも蘇るさ
ほす
- 102名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/16(土)
17:44:36.26 ID:QvKS84wF0
- ほしゅ
- 103名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/16(土)
17:44:33.39 ID:8Z8hDnBM0
- んでは、
>>47
の後編、投下しますね。
6~7レス、くらいかな。
- 104名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/16(土)
17:46:04.62 ID:ha3WmNZd0
- 【告白対決!(後編)】
おかしなことになってしまった。
クーの告白を絶対に避けたいがそのために、オレはクーに告白することになったのだ。なんだこのメビウスの輪、さっぱり意味がわからんよな。まあ練習ってことではあるのだが。
それで、だ。
オレは先ほどからクーに告白のダメだしをくらっていた。
「君の真摯な言葉でなければ相手には届かないだろう。練習であっても心からの言葉で告白したまえ。いつ、どこで、どんな彼女を好きになったのだ。具体的に、明確に」
なるほどそれは道理だろうな。
しかし詳細を語ってしまうと、オレがこいつを好きなことがばれてしまうのだ。なるべく状況はぼやかさなくてはるまい。かといって、全くの嘘では真実味が無い。微妙なラインを狙う必要があった。
まあそもそも、クーはかなり鋭いやつで、オレの嘘など簡単に見破ってしまう。だからオレは、隠し事はしても嘘はつかないつもりだった。
告白の元ネタにと、クーに惚れたときのことを思い出してみる。
それは昨年の夏、まだお互いを見知らぬ頃のことだ。一目惚れだった。
その頃、オレは駅前の喫茶「茜色」に入り浸っていた。そこのコーヒーがべらぼうに旨いのだ。
下校時にはいつもそこに立ち寄り、一杯のコーヒーを飲むのがオレの日課だった。
- 105名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/16(土)
17:46:53.07 ID:ha3WmNZd0
- ある日のことだ。
いつものように極上のコーヒーの香りを楽しんでいると、この店の客層にそぐわない男が乱暴に扉を蹴りつけ来店してきた。
20代半ば、パンチパーマにアロハシャツ。言葉遣いも態度も服装も、持つものすべてが絵に描いたようなチンピラの男だった。
店内の客は女子高生がほとんどである。その意味ではオレも浮いている存在なのだが、こいつはそれどころではない浮きっぷりだった。秋葉に迷い込んだ外国の水兵さんみたいに目立ちまくりだ。
男は店員の制止も聞かず、店内を歩き回って女性客の一人一人をなめるように見回していく。そしてとある女子高生の前で立ち止まり、その腕をむんずとつかみあげた。
逃げた女を追ってきたといったところなのか、何するのよ、いいから俺と来い、といった、2時間ドラマにでも出てきそうな三文芝居の科白が大きく店内に響きわたる。
やれやれ。水でもぶっかけてやろうか。
そう思い駆け寄ろうとしたそのときだ。絡まれている女子高生の隣にいた娘がおもむろに立ち上がり、男の頭へと冷水をぶちまけた。おお、やるな。
そう、それがこいつ、クーだった。
「止めないか。嫌がっているだろう」
と、クー。
なにを、と更に激高し、殴りかかる男に向かい左フック一閃。クーの左拳は男の顎先を掠めていた。脳震盪を起こすという有名な例のアレで、チンピラ男はあっけなくその場に崩れ落ちる。
おおっ。どこからともなく店内で拍手が巻き起こった。
クーは店員となにやら話し、チンピラ男を引きずって店の奥へと消えていく。多分警察にでも突き出すつもりなのだろう。
その姿はあまりにも格好良かった。
とにかくあいつと知り合いになりたい、と、そのとき強くそう思った。そう、その瞬間オレはクーに惚れていたのだ。
その後も「茜色」には足しげく通っていたが、クーを見かけたのはこの時一度きりだった。
彼女と校内で再会するのは、もうちょいと後のことになる。再会とはいってもこちらが一方的にそう思っているだけで、単なる一ギャラリーのオレのことなどクーが覚えているはずもなかったが。
- 106名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/16(土)
17:48:04.85 ID:ha3WmNZd0
-
余談だが、「茜色」はどうやら執事喫茶とかいうやつだったらしい。なるほど道理で客層が女子ばかりのはずだよな。そういえばあの店、ウェイトレスは一人もいなかったし。
まあそれはさておき。
オレはクーをモデルとした架空の脳内娘に対し、アホらしくも告白の練習を続けていた。
「んじゃ、もいちど練習いくぞ。……昨年の夏、下校途中の喫茶店だった。隣に座る女友達が絡まれたときに、敢然と立ち向かう君を見かけて、凛とした仕草が印象的で、ずっと心に残ってた。好きだ、付き合ってくれ」
「嘘だな」
「嘘じゃねーよ。なぜそうなるんだよ」
「下校はずっと私が共にしていたじゃないか」
「アホか。昨年夏の話だぞ。お前と知り合う前だ」
「そうか。実は昨年、私はちょっとした気の迷いで君にストーカー行為を働いていたのだった。しかし私の見る限り、君はそんな娘とは出会っていなかったのだった。おかしいなー」
「んあ? どういうつもりだ、そのあからさまな嘘」
「おや。なぜ嘘だとわかる」
「そんな戯言本気にするやつがいるか。ストーカーったって、大体お前、その頃オレの前に姿を見せてたじゃねーか」
「どこで」
「あのな。オレはまさにこの喫茶店でお前を見かけたことがあるんだぜ」
「ほほう。それはもしかして、駅前の喫茶『茜色』のことか」
「ああ」
- 107名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/16(土)
17:49:16.01 ID:ha3WmNZd0
- あ、あれ。勢いで言っちまった。クーはにやりと笑う。
まずいか? いや、まだ大丈夫だ、セーフだよな。こいつに渡した情報はまだ「オレの想い人との出会いは喫茶『茜色』だった」ということだけだ。
「そうだよ『茜色』だ。それがどうかしたか」
「惚れた相手に出会った場所が『茜色』。嘘ではないな」
「くどい。本当だ」
「……くっくっくっく」
クーは突然壊れた機械のように笑い出した。おいおいおいおい、なんだよどうしたんだよ。クーの笑いはいつまでも続き、オレは不安に駆られる。
「クー、なんのつもりだよその宮崎アニメの悪役みたいな笑いは」
「はっはっはっはっ。……ナオ。それは私だね」
「はあ? 何言ってるんだ」
「君が今練習している告白の本番相手。その正体は私だ、と言っている」
「どうしてそうなる。オレは、『茜色で出会った女に一目惚れした』『そいつはクーと似た背格好と容姿』と言っただけだぜ」
「ありえないんだ」
「は? 何が」
- 108名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/16(土)
17:50:30.84 ID:ha3WmNZd0
- 「『茜色』に昨年夏、私に似た女性が来店して君に会うことは絶対に無いんだ。それは私でしかありえないんだ」
「どうしてだよ」
「実はね。去年の夏、私はずっとあの店でバイトしていたんだ。もし仮にそこまで私に似た女が来店していたなら、どう考えても私の記憶に残っているはずなんだ」
「はあ? オレはお前に似たウェイトレスなんて見たこと、な、かった、ぜ」
――『茜色』は執事喫茶。
迂闊にもその時、オレはすっかりそのことを失念していた。頭の中が真っ白になる。
「そう、男装して、ウェイトレスではなくウェイターとして、ね。だから君は私に気づかなかったのだろうな。私は君の事、よく覚えているよ。毎日のようにうちの店に来ていたよね」
おいおいなんてこったい。うちの店、だと? そういや、やけに長い髪の男がいたような気がするが、アレがクーだったのか。
「……いやいやいやちょっと待て。だが、クーが店に居ないときの出来事、ってことも普通に考えられるだろ」
オレは食い下がる。まだだ。まだ終わらんよ。
「いいや。それもまた、ありえないんだよ」
クーは左の五本指を額に当て、ゆっくりと首を振る。何、その仕草、お前は古畑か。
「先ほど君はこう言ったね。『隣に座る女友達が絡まれたときに、敢然と立ち向かう君を見た』と」
「ああ、そう言った。二人座っていた女の子の片方だ。だけど、揉め事なら店の誰かが覚えているはず、ってのは無しだぜ。ささいないざこざで店の者は気が付かなかったということもありえるだろ」
- 109名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/16(土)
17:51:46.55 ID:ha3WmNZd0
- 「そうじゃないそうじゃない」
クーはなおもわざとらしく首を振る。
「何度も言うが、あの店は執事喫茶だ」
「ああ、そうだな」
「君は男性だから気づかなかったかもしれないが、あの店のシステムは特殊でね。女性客の隣にはウェイターが座り、そこでお客さんをもてなすんだ」
「まあそんなものだろーな」
「だからあの店では、女性客が二人並んで座ることは絶対に無いんだ。必ず隣は開けておくんだ。《スタッフである私を例外として》。この意味がわかるかい」
「んなっ」
オレは二の句も告げなかった。なんだそりゃ。なんだよそりゃーっ。
「よって先ほどの『隣に座る女友達が絡まれたときに敢然と立ち向かう君』は私ってことになるわけだよ」
クーはニヤニヤ笑ってオレを見つめる。こんちくしょー、こんちくしょーっ。オレは睨み返すが無論何も反論はできない。
「ふふ、で、どうする。練習は止めて、このまま告白の本番と行くかい」
クーのニヤニヤ笑いは止まらない。
もう、オレの負けだ。好きにしてくれ。
この瞬間、オレの敗北は決定した。
- 110名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/16(土)
17:53:25.64 ID:ha3WmNZd0
- 以上ですよ。
- 111名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/16(土)
17:55:31.64 ID:dclKVCMZO
-
>>110
理詰めで迫るクーカッコヨス
GJ!!
- 112名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/16(土)
17:57:30.45 ID:tSMXSzTj0
- 素直とクールって別に矛盾してないんじゃ
- 113名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/16(土)
17:59:13.35 ID:e2JtHC0a0
-
>>110
これはいい
GJ
- 114名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/16(土)
18:04:16.25 ID:qHMRiiGu0
-
>>110
GJです!
- 115名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/16(土)
18:06:16.66 ID:KiUUKXqp0
- ちょっと遅れてしまったが、一晩中夜空を見上げていたというロマンチストな(?)>>89に贈る。
以下、5レス程頂く。
- 116名前:「星」その1:2007/06/16(土) 18:07:33.58
ID:KiUUKXqp0
- 私が>>89に好意を持つようになったのは、文化祭の最終日、最後のプログラムである
校庭でのフォークダンスが終わろうという時、>>89がやたらと空を気にしていたことが
発端だった。
自慢ではないが私はかなりモテる方だ。周囲からクールビューティーなどと呼ばれ、特
定の異性が居ないためか毎日のように男子から(時によっては女子からも)告白を受ける
ほどだ。
そんなワケでフォークダンスの際も、多くの男子たちは踊りの輪の中でパートナー交代
時に私と組めることを喜び、私と離れるのを残念に思ってくれているようだった。しかし、
そんな中で>>89だけは違った。彼はどこか上の空で、一緒に踊っている間も私以外の何か
に気を取られ、始終頭上の方――澄み切った秋の夕暮れ、星の瞬きが見え始めた蒼穹――
ばかり見上げていたのだ。
私は恋愛には興味が薄い方だと自己分析していたのだが、どうやら自分自身でも知らな
かった虚栄心を持っていたらしい。>>89が自分以外の何にそんなに夢中になっているのか
気になった。そして一度気にしだすと、何故かどうしてもそれを知りたくなった。
私は文化祭の総てのプログラムが終わった後、生徒会の面々や多くの男子生徒たちからの
「会長、一緒に打ち上げに行きませんか?」といった誘いを全て断り、>>89の姿を探し、
校舎内を独り歩き回った。
自分でも、何故こうまでムキになっているのか判らなかった。大体、文化祭も終了し後片
付けで大分遅くなってしまったのだから、>>89もすでに下校した後に違い無い。そのことに
気付いた私は、奇妙な喪失感のようなモノを覚えながら暗い廊下をぼんやり歩きだした。
>>89は私が知る限りではクラス内でも目立たない大人しい人物で、私とはこれといった接
点もない。彼が天文部の部長として生徒会に顔を出すまでは、彼が何部なのかすら知らなか
ったのだから。
と、そこで私は思い当たった。
天文部――彼はずっと頭上を見上げていた――屋上だ!
- 117名前:「星」その2:2007/06/16(土) 18:09:23.08
ID:KiUUKXqp0
- いつもなら屋上への扉はカギがかけられ、閉ざされている。しかし文化祭の間は荷物置場
として生徒会を通せば利用できることになっていることを思い出した私は、>>89がそこに
居ると確信めいた思いをもって駆け出していた。
無造作に開け放たれていた屋上への扉をくぐり、夜風の中に立ち入った瞬間、私は目の前
の光景――真摯な瞳で夜空を見上げる>>89の横顔――に心奪われてしまった。
何のことはない、ただの高校生の一生徒が屋上で空を見上げているというだけの光景にだ。
しかし、そんな冷めた眼で事実を客観視するいつもの自分の中に、何処か得体の知れない
感情的な自分が居ることに私は気付いた。
これは何だ? 私は……どうなってしまったのだ……?
鼓動が早まり、自分の耳に心音が聞こえる程にそれが高まるのを感じ、声を失っていた。
そんな状況が数分――もしかすると一瞬のことだったのかも知れないが――続き、何とか
落ち着いて冷静さを取り戻した私は、静かに深呼吸をして>>89のそばに歩み寄った。
「……何をしているの?」
彼は答えなかった。私の声が聞こえなかったはずもないが、彼は沈黙したまま、真剣な面
持ちで夜空を見つめ続けた。
他人から無視されることに慣れていなかった私は(冷静に振り返ってみれば、やはり私は
大勢の人間にちやほやされることを当たり前に感じていた傲慢な人間だったのだろう)、自
分でも気付かぬ内に>>89の肩を掴んで自分の方を振り向かせようと手を伸ばしていた。
その時だった。>>89は夜空の一点を指差し、声を弾ませて言ったのだ。
「……ホラ! アレだ!」
- 118名前:「星」その3:2007/06/16(土) 18:10:58.96
ID:KiUUKXqp0
- 驚いた私が彼の視線を追って空を見上げると、澄み切った夜空の青い静寂を横切るように、
金色の美しい輝きを放つ細い帯――流星群――がいく筋もの光の軌跡を描いていく様子が眼
に飛び込んできたのだった。
私はその静かな、だが驚異的な光景を目の当たりにし、>>89が何に心を奪われ、ずっと上
の空になっていたのかを理解した。そして思った。
こんなにも美しい光景に勝てるわけがない……。
自分の心の内の声をハッキリ認識した時、私は自分が何に苛立っていたのか、何故ムキに
なって>>89が気にしていたモノの正体を知りたがっていたのかに気が付いた。
私は、自分を見てくれない、自分を見ても喜んでくれなかった>>89に苛立ち、彼の注意を
惹き付けていた何かに嫉妬していたのだ。自分の独占欲と醜さに呆れ、嫌悪感すらこみ上が
ってきた。
何やら後ろめたい気持ちになってちらりと横を見ると>>89の横顔は無邪気な喜びに満ち、
その両目は流星群の輝きを照り返しているかのようで、純粋な、あまりにも純粋な感動の光
にあふれていた。
私は自分が恥ずかしくなった。よりにもよって、夜空の星々に嫉妬していたのだ。だが、
>>89に並んで夜空を見上げているうちに、大空に弧を描く黄金色の奔流は私の汚れすら洗い
流してくれたかのようで、私は心が軽く、以前よりも綺麗な人間になれたように感じた。
「……綺麗ね、とても……」
素直に口から滑り出た言葉に、今度は彼も返答してくれた。
「うん……本当に……」
私は何となく嬉しくなって>>89の方を見たが、びっくりして思わず声を上げそうになって
しまった。夜空を見上げていたはずの>>89は、何時の間にか、星ではなく私のことをじっと
見つめていたのだった。
- 119名前:「星」その4:2007/06/16(土) 18:12:06.35
ID:KiUUKXqp0
- 静けさを取り戻していた胸の鼓動が、再び激しくなっていくのを止められなかった。>>89
の優し気な視線には、まぎれもない賞賛と羨望が込められていた。一瞬、またもや自惚れか、
という自身の心の声も聞こえたが、私はあえてそれを無視し、>>89の視線を正面から受け止
めた。彼の示してくれた真摯さに自分も応えたかったのだ。
いや、正直な気持ちを告白すると……彼に見つめられることが嬉しくて仕方なかったのだ。
しかし、>>89は不意に我に帰ったかのような様子を見せ、真っ赤になってそっぽを向いた。
彼は自分の素直な気持ちを吐露してしまい、それに正気付いて照れているのだ、ということは
私にもすぐに分かった。そして心の内から、かつて覚えたことのない暖かな気持ち、嬉しくも
切ない愛おしさが溢れた。
私は今、この地上に星を見つけたのだ。>>89という、小さな、しかし誰よりも純粋で優し
気な輝きを放つ星を。
私は手を伸ばし、>>89の二の腕にそっと触れるようにして言った。
「ずっと流星群を気にしていたのね。ダンスの時もずっと上の空だったでしょう?」
「う、うん……き、今日は数年に一度のチャンスだったんだ。文化祭の最中であまり話題には
ならなかったみたいだけど……」
私が腕に触れていることが気になるのか、彼は落ち着かない様子だった。しかし、決して嫌
がっている風ではなく、ただ単に慣れていないだけだろう、赤くなって視線がさまよっている。
そんな様子すら私には好ましく思え、彼の腕に自分のそれを絡ませるように滑り込ませた。
- 120名前:「星」その5:2007/06/16(土) 18:13:41.78
ID:KiUUKXqp0
- 「かっ、か、会長も……ほ、星が好きなの?」
「今日までは余り興味が無かったわ」
「り、流星群を見て興味が湧いた?」
「えぇ。とても、ね。もっと色々知りたくなったカンジ」
「そ、そうなんだ? よ、良かったらいつでも天文部に遊びに来てよ。歓迎するよ」
「じゃぁ、お言葉に甘えてお邪魔しようかしら……>>89という星について興味津々なの」
「……え?」
私はどんな勝負であれ、勝つのが好きだ。彼を、>>89を星から自分の方に振り向かせ、心を
奪うためには、今が勝負の時であると私には判っていた。
私は絡ませていた腕を解き、背伸びして目を丸くしている>>89の頬に唇をそっと触れさせた。
「……ッ!?」
私は真っ赤になって佇んでいる>>89に手を振り、彼を後に残したまま屋上の扉をくぐり抜け、
ことさらゆっくりと階段を降りて行った。
もう、彼の前ではどんな失態も見せまい。何しろ私のライバルは大空で輝く星々なのだ。彼の
想いを独占するには永遠の輝きをもつ星の光にも負けない美しさ――そう、外見だけではなく、
内面の美しさ――こそ必要なのだから。
「>>89、私は……貴方という恒星に相応しい、もっとも近くに居る惑星になってみせるわ」
私は明日以降の学園生活、>>89という星を中心に回る日々を今から心待ちにしていた。
- 121名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/16(土)
18:14:50.21 ID:KiUUKXqp0
- ……以上、「星」はこれでおしまい。>>89並びに読んでくれた人、楽しんでくれたら幸い。
- 122名前:89:2007/06/16(土) 18:18:08.59
ID:e2JtHC0a0
-
>>121
すごくうれしいくて
居ても立っても居られないから
床を転がってみてもいいかな
ちなみに昨晩はかなり空気が澄んでおり絶好の観測日和でした
6月にしてはなかなか当たり日だったよ
後、惑星では木星が相当接近しているらしく異様に明るかった
昨晩、ここ見ながら観測してたんだけど
別のスレッドで謎の光を見たっていうスレも立っていた位明るかったよ
- 123名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/16(土)
18:19:06.03 ID:8Z8hDnBM0
-
>>121
GJ! 超GJ!
というか、>>89に嫉妬w
- 124名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/16(土)
18:20:16.22 ID:+dMCYgT90
- ☆
- 125名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/16(土)
18:28:51.92 ID:+dMCYgT90
- ☆
- 126名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/16(土)
18:35:04.93 ID:PKK0Ol5LO
-
>>89テラウラヤマシス
俺も星見上げてくるわ
- 127名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/16(土)
18:43:32.77 ID:+dMCYgT90
- ☆
- 128名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/16(土)
18:58:19.07 ID:e2JtHC0a0
- ほし
- 129名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/16(土)
19:09:23.75 ID:7HDxpRlC0
- ゅ
- 130名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/16(土)
19:20:00.07 ID:e2JtHC0a0
- 今日も見てみるかなぁ…
ほし
- 131名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/16(土)
19:26:15.20 ID:8Z8hDnBM0
- 投下しますね。
7~8レス、くらいかな。父の日ネタ。
今日はこんなのばっかりで申し訳ないですが、
やはりこれも先月投下した↓この母の日ネタの続きです。
これも前の話は読まなくていいつもりですが、よければこちらも。
http://www16.atwiki.jp/sucool/pages/114.html#R322
- 132名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/16(土)
19:27:37.33 ID:7WVRxE3V0
- 【父の日に会う】
「今度の父の日、君の父上に会わせてくれないか」
そうクーに頼まれて僕は戸惑った。
『いずれ私の父になってくださる方だから、ぜひともお会いしたい』などと言われてはテレもする。
だけど、戸惑ったのはクーのせいではない。僕の問題だった。父とはもうずっと疎遠で、僕にとって彼は家族でさえ無かったのだ。
仕事人間の父は、僕が物心ついてすぐ単身赴任で都会に出ていた。顔をあわせるのは月に一、二度あればいいほうで、子供の頃の僕は父とどう接すればいいのかわからなかった。それは結局今でもわからずじまいなのだけれど。
母が亡くなる少し前から、さらに父とは連絡が途絶えがちになった。数ヶ月自宅に顔を見せないこともざらなのだ。母はなんでもない風を装っていたけれど、内心寂しかったに違いない。
決定的だったのは、仕事のためと言って父が母の葬儀に欠席したことだ。
父は僕に顔を見せることさえなかった。葬儀の手続きなどもすべて、仕事上の部下という女性に任せっきりにしていた。
後から人づてに、この女性が父の浮気相手で、そのために僕の両親が不仲になっていたという噂を聞いた。
何も証拠は無いし真偽を尋ねてもいない。ただ、さもありなん、とは思う。仕事を優先し、長年連れ添った妻の葬儀にさえ出席しない父だ。そんなことがあっても不思議はない。父は僕と母を捨てたのだ。僕はそう思っている。
母の死後、父と顔をあわせるのは事務的なやり取りをする時のみになった。自宅で父と会うこともまったく無い。僕が「会いたくない」と告げたからだ。父は「そうか」とただ一言だけを言った。
父からは毎月律儀に学費や生活費が送られてくるが、僕はそれには一切手をつけずにいた。高校を卒業したら全額つき返すつもりでいる。
- 133名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/16(土)
19:28:43.55 ID:7WVRxE3V0
- ◆◇◆
クーとはもうずいぶん長いつきあいになる。彼女は僕の恋人だ。
常にクールで理性的な判断をする彼女を、僕はいつも頼りにしていた。いつだって僕が彼女を頼る格好で、逆に彼女が僕を頼ることはまるで無い。こんな僕が、彼女のお願いを断れるはずもなかった。
クーの御両親は二人ともとうに亡くなっている。彼女はずいぶん前から天涯孤独の身だった。
僕の家族がまともだったら、もちろんすぐにでも父と引きあわせてあげたい、たとえ義理でも家族と一緒に居る感じを享受させてあげたい、と思うところだろう。
しかし、今の父と僕との関係を彼女に見せたくはなかった。
かなり気が進まなかったけれど、仕方なしに僕は父に電話をかけた。
クーに会って欲しいこと、身寄りの無い彼女に、真似事でもいいから父親として付き合ってあげて欲しいことを依頼して、早々に電話を切る。
ありていに言えば、僕は父に、クーのために家族の演技をしてくれと頼んでいるわけだ。だけど、父はともかく僕にその演技ができるのだろうか。あの父と仲の良いフリができるだろうか。正直そんな自信はない。
電話での父の答えは、「わかった」とやはりただ一言だけだった。
◆◇◆
日曜の正午過ぎ。
待ち合わせ場所の改札口にはすでに父の姿があった。
今日は外で食事しながら話でも、ということになっている。
僕は微笑みながらクーと父とを引き合わせた。
我ながら寒々しい空虚な笑みだ。他人の心の動きにはあきれるくらい敏感なクーだ、こんな演技が彼女に通用するはずもない。だからといって、そうしないわけにもいかないのだけれど。
- 134名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/16(土)
19:29:52.35 ID:7WVRxE3V0
- 「君は、私の妻をご存知なのかな」
「はい。素敵な方でした。私の恩人です」
「……そうか。妻も息子も、私には過ぎた家族でね」
レストランへの道すがら、父とクーは母の話をしていた。
二人の共通の話題は僕かあるいは母だ。こんな話の流れになるのも理解はできる。だけど、その会話の中身に僕はどうにも納得ができずにいた。
あべこべな話なのだが、父の言葉や仕草が、演技ではなく本気で僕や母を大切にしているように見えて、どうしてもそれが許せなかった。
あなたは僕と母を捨てたのではなかったか。ずっと仕事にかまけて、自宅に帰ってくることも無かったではないか。母が亡くなっても顔さえ見せなかったではないか。
そのあなたが、どうして『私には過ぎた家族』などと言えるのか。
苦痛だった。とてもじゃないが、これ以上この場にはいられない。
父に家族として振舞って欲しいと頼んだのは僕だ。我ながら理不尽だとは思う。それでも、我慢ができなかった。
「クー、ごめん」
それだけを言って、僕はその場から走って逃げ出した。
「――」
父もクーも何か言っていたようだったが、どちらの声も僕の耳には届かなかった。
◆◇◆
中学校の裏山。
いつの間にか、僕はここに来ていた。ここは母との、そしてクーとの思い出の場所だった。
「――やはりここだったか」
「……クー」
しばらくそこで佇んでいると、クーがやってきた。おそらく僕を探し回ったのだろう、彼女の額には汗が浮かんでいる。クー、ごめん。今はそれしか言えない。
「やれやれ。君は本当に子供だね。逃げ出すとは思わなかったよ」
クーは肩をすくめる。
確かに、僕は子供だ。いつだって彼女はしっかりとした大人で、僕は頼りない子供だった。早く彼女を支えられるような大人になりたいといつも思っているのだけれど、どうしても大人になることができずにいた。自分でもわかっているんだ。
- 135名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/16(土)
19:31:21.47 ID:7WVRxE3V0
- 「クー。悪かった。ごめん」
「謝る相手が違うよ」
彼女はきっぱりと言う。
だけどそれには僕は承服できなかった。クーには本当に申し訳ないと思ってる。でも僕は、父に悪いことをしたつもりはこれっぽっちも無い。
「話はおおよそ聞いてきたよ。母子ともども父上に捨てられた、とでも考えているのだろうけれど。少しは自分の父親を信じてあげてもいいんじゃないかな」
「だって」
「本当は口止めされているのだけれど」
クーは僕の言葉を遮り、委員長じみた口調で続ける。
「どうも黙っていてもいいことは無さそうだ。私の話を聞いてくれるかい」
「え、ああ」
「君は昔、大病を患ったそうだね。大きな手術をしたとか」
「……うん、そうだけど」
僕は小さい頃心臓の手術をしていた。かなり大変な手術で、命にかかわるものだったと聞く。
小学生の僕はずっと入退院を繰り返していたものだが、成長するにつれてそれも無くなり、中学に上がる頃には健康な人と変わりなく暮らせるようになっていた。
- 136名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/16(土)
19:32:39.63 ID:7WVRxE3V0
- 「その手術費用のために、君の父上は多額の借金を抱えたそうだ。そのためにずっと、それこそ馬車馬のように働いている」
「――そんな」
「ご自身は言いたがらなかったので職場の方に尋ねてみた。今でも食うや食わずのかなりひどい暮らしをなさっているそうだよ。収入のほとんどは、借金の返済と君への仕送りに費やされているのだろう」
僕は大きく目を見開いた。
クーは何を言っているのだ。そんなこと、知らない。聞いていない。父も母も僕にはそんなそぶりさえ見せてはくれなかった。
「待ってくれ。そんなこと僕には一言も」
「知らせてない、だろうね。君の負担にならないように。君は父上を仕事人間と責めているようだけれど、そのような見方は気の毒ではないだろうか」
「でも、母の葬儀の時は」
「その時は、君の父上も病院のベッドの上だったそうだ。過労が元で重篤だったと伺った。とても動ける状態じゃなかったらしい。
……その、自らの入院を君に知らせない、というのも、どうやら亡くなった君の母上との約束だったようだ。
君に何も言い訳をしないのは、亡くなった妻との約束を今でも律儀に守り続けているからなのだろうね。やはり君の父上だ。君に似て、不器用だけど真っ直ぐな方だと思うよ」
「……そんなの」
僕はその場に膝をついた。ゆっくりとかぶりを振る。
「そんなのは、ひどいだろ。僕の気持ちはどうなるんだよ。一言、教えてくれたっていいじゃないか」
父のことをどう思えばいいのか、どう感じたらいいのか、まるでわからなかった。
「……そうだね。真実を知らないで苦しむのは切ないね。そのことについては、怒るべきだと思う。君にはその資格がある。君のこれまでに過ごしてきた時間を考えると本当にそう思うよ。でも、それでも」
クーはゆっくりと優しく話す。
いつもはクールで冷たいと評されることの多い彼女だ。
だけどこんな時、彼女はどこまでも優しくなる。切ないくらいにどこまでも優しくなる。
そんな彼女だからこそ、僕は。
- 137名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/16(土)
19:33:51.69 ID:7WVRxE3V0
-
「怒りをぶつけるのは、相手が亡くなってからもできることだ。でも、許してあげるのは、許しを与えるのに意味があるのは、相手が生きているうちだけだ。……許してあげるべきじゃないかな。
私には、君たち親子が、お互いを思いやることのできる本当の家族に見える。うらやましいほどに」
僕ははっとクーを見上げた。そう、彼女の両親はすでにこの世にないのだ。
なんてことだ。父との関係をよりによってクーに相談しているなんて。本当は逆に、僕が彼女を元気付けたかったはずなのに。
やはり、彼女は大人で、僕はどうしようもない子供だ。そして、子供のままでいいわけもないんた。
「うん。そうだな、クーの言う通りだ」
深呼吸を一つして、僕は立ち上がる。走り出すために。
「父を迎えにいってくる。クーは待っていてくれないかな、僕の家で」
「そうだね、それがいい。夕食の支度をして待っているよ。行き先は――」
「大丈夫、わかってる。じゃあ、行って来るよ」
僕は駆け出した。目的地は一つだけ。
この街で父が行きそうなところなんてそうはない。自宅以外だと、そう、母の墓前くらいしかないのだ。父は必ずそこにいる。
- 138名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/16(土)
19:36:08.26 ID:7WVRxE3V0
-
気が早いかもしれないが、僕は今からクーの作ってくれる夕食が待ち遠しかった。せっかくの父の日だ。外食なんて味気ない食事よりは、手料理の方がいいに決まってる。
父さんもそれがいいと言ってくれるはずだ。だから僕は精一杯走る。それともう一つ、何年分ものお帰りを言うためにも。
父さんに会っても、あらためてごめんなんて謝る気は無い。ただ、一緒に帰るだけのつもりだ。それだけで、構わないだろうと思う。父さんならわかってくれる。
――だって、僕らは家族なんだから。
- 139名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/16(土)
19:37:12.11 ID:7WVRxE3V0
- 以上ですよ。
- 140名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/16(土)
19:45:03.53 ID:8Z8hDnBM0
- ☆
- 141名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/16(土)
19:47:22.45 ID:e2JtHC0a0
-
>>139
GJ
感動ものだなぁ…
- 142名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/16(土)
19:52:23.03 ID:dclKVCMZO
-
>>139
GJ!!!
- 143名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/16(土)
20:03:39.53 ID:8Z8hDnBM0
- ☆
- 144名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/16(土)
20:14:30.62 ID:e2JtHC0a0
- ほし
- 145名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/16(土)
20:24:20.29 ID:e2JtHC0a0
- うまくまとまらない…
ほし
- 146名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/16(土)
20:38:05.08 ID:e2JtHC0a0
- ほし
- 147名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/16(土)
20:52:03.86 ID:/dAVHk+50
- 今誰もいないのかな…
ほし
- 148名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/16(土)
20:52:44.01 ID:Vu8EbOGTO
-
>>139
GJ
- 149名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/16(土)
20:55:44.17 ID:Fw0P/RbnO
-
>>139
GJ!
ちょっぴり泣いた
- 150名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/16(土)
21:00:47.84 ID:/dAVHk+50
- あれ?ID変わってる?
どうしたんだろう?
ほし
- 151名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/16(土)
21:01:48.96 ID:PKK0Ol5LO
-
>>139
感動した。GJ!
やはり月曜に比べて人多いな
- 152名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/16(土)
21:15:44.36 ID:dclKVCMZO
- ほ
- 153名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/16(土)
21:15:46.76 ID:l18pzZXfO
- 保守
- 154名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/16(土)
21:24:35.24 ID:QvKS84wF0
-
>>139
素晴らしい!!
感動したよ~GJ!!!
- 155名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/16(土)
21:29:32.05 ID:+dMCYgT90
- ☆
- 156名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/16(土)
21:44:37.34 ID:8Z8hDnBM0
- ☆
- 157名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/16(土)
21:54:46.15 ID:/dAVHk+50
- ほし
- 158名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/16(土)
22:01:30.70 ID:+dMCYgT90
- ☆
- 159名前:◆jbRVZhkrpA:2007/06/16(土) 22:02:35.05 ID:J0AxNV0Y0
- 長編を投下します。一月程度で完結させるつもりですので、暫しの間お付き合いをば。
また念の為この長編専用のトリップを用意しました。お目溢し頂ければ幸いです。
それでは「めぐりめぐる」目次から投下致します。15レス程頂きます。
- 160名前:めぐりめぐる◆jbRVZhkrpA:2007/06/16(土) 22:03:35.60
ID:J0AxNV0Y0
―― めぐりめぐる ――
― Contents ―
Prologue 君が目覚めるその前に ←New!
#1 朝焼けの風
スリープ/リスタート/スタート ←New!
【始まりは淑やかにただ流れる】
#2 真昼の風景
Interlude 君の声/涙と身体
#3 夕凪の匂い
#4 真夜中の音
Interlude 熱の花/棘に毒
#5 巡り巡る
Epilogue 眠りに就いたその後で
- 161名前:めぐりめぐる◆jbRVZhkrpA:2007/06/16(土) 22:04:44.37
ID:J0AxNV0Y0
Prologue 君が目覚めるその前に
微睡みの中に揺蕩っていた。ぷかぷか、ぷかぷか、ぷかぷか、ぷかぷか。
ここには自分しかいない。だからここは、安全で、とても寂しい。知っていた。
気が付いたら微睡みは随分と浅くなっていて、だから立った。
遠くにマングローブが見えた。行かなくちゃいけないことを思い出して、歩いた。
嘘だった。本当は、行っちゃいけないんだ。分かっていた。
空は水色で、太陽は黄色くて、雲はとてもとても淡いベージュで、砂浜は仄かに緑が混じっていて、でもモノクロだった。
色はなかった。ただ、感じていただけ。それだけだ。
鳥の声も、魚の跳ねる音も、しない。自分の鼓動すら聞こえなくて、ほっとする。
生い茂った木々の隙間を歩く。素足なのに何の感触もない。気づきそうになって、すぐ忘れた。
さあ、怖いのに近づいているぞ。引き返すなら今のうち。
もちろん、ただの言い訳だ。
知っていた。分かっていた。それだけだ。
大木の根元。よりかかった一つの影。
モノクロの君がいた。静かに眠る君がいた。切り離された世界に、自分だけの世界に、それでも彼女は確かにいた。
そっと唇を重ねる。君が目覚める、その前に。
- 162名前:めぐりめぐる◆jbRVZhkrpA:2007/06/16(土) 22:05:53.46
ID:J0AxNV0Y0
- #1 朝焼けの風
―スリープ―
目が覚めて最初に感じたのは喉の渇きだった。
枕元に置いてあるはずの携帯電話を手探りで見つけ出して、ぼんやりと霞がかった視界でどうにか液晶に表示された時刻を読み取る。
「……六時?」
思わずそう呟いていた。一眠りしようと思い立ったのが午後の四時。たった二時間の睡眠でこれほどまでに喉が渇くだろうか。
そこまで考えたところでいよいよ水分が切に欲しくなった。布団から這い出てパジャマを着替えようとしたところでその必要がないことに気づく。
道理で足が痺れたような感覚がするはずだ。せめてこれがジーンズではなくカーゴパンツだったなら、と考えて直ぐに打ち消した。ジーンズですら多少くしゃくしゃになってしまうのに、それがカーゴだったなら目も当てられない。
幸いなことにシャツはきちんとハンガーにかかっていた。
眠る前に脱いだのか、それとも眠った後で脱いだのか記憶にない靴下を履き、シャツに袖を通す。
部屋の扉を開けるとすぅっと冷気が僕の身体を撫でていった。
しんと静まり返った廊下を歩く。ここは間違いなく僕の生家なのに、それでも部外者のように感じてしまうのは、二年近く帰っていなかったことの代償なのだろう。
出来るだけ音を立てないように階段をおり、台所の棚からコップを一つ拝借して蛇口から水を汲む。一息に煽って喉が潤うのと同時に強烈な寒気が全身を包んだ。
それでようやく脳味噌が正常に稼動しはじめる。台所と繋がっている茶の間の掛け時計は矢張り六時少し過ぎを指していた。
「十四時間も寝ていたのか」
そう一人ごちる。
家族が目を覚ますのは七時を過ぎてからだろう。それまで布団に包まっているだけ、というのも味気ないものがあるし、そもそも二度寝が出来るとも思えない。
手洗いを済ませ歯を磨き顔を洗いタオルの保管場所が変わっていないことに安堵して、さてどうしようかと思案する。
とりあえず玄関先のコートをひったくって羽織った。春先とはいえまだまだ冷えるようだ。地元の空気は久方ぶりにこの地を訪れた僕を手荒く歓迎してくれているらしい。
ちゃりん、と硬貨の音がした。コートのポケットの中を探ると、丁度缶ジュース一本分の小銭。
何だか天啓めいたものを感じて、外に出かけることを決めた。
おろしてから大分時間の立つ革靴を履いて鍵もかけずに玄関を潜る。途端にざくざくと凍りついた大気が肌を刺した。
空には幅が広くて淡い雲が佇んでいて、それが斜めから照らす朱色の光を浴びて赤く染まっていた。仄かに残った白がとても綺麗で、どうしてだろうか、心が痛んだ。
白い息を吐きながらあたりを散策する。途中で覚えのない自販機を見つけ、ホットココアを買った。蓋は開けずに両の手で交互に持ちながら、ああこのまま真っ直ぐ進めば公園があるなと思い出してそこを目的地にすることを決めた。
- 163名前:めぐりめぐる◆jbRVZhkrpA:2007/06/16(土) 22:06:44.81
ID:J0AxNV0Y0
- 正直にいえば、少し不安だった。もしかしたら知らない自販機が増えていたのと同じように、知っている公園がないかもしれないと。
それは杞憂で済んだ。緑色のネットが増えたのと遊具が薄汚れたのを除けば、そこは間違いなく僕の記憶にある公園そのままだった。
ベンチに積もった雪を素手で払いのけて腰を下ろす。昔の僕だったらそんなことをせずに雪の上に直接腰を下ろしただろう。
二年という期間は思ったよりも長かったようだ。僕にとっても、彼女にとっても。
一歩一歩迷いなくこちらに向かってくる影。一目見ただけでそれが誰なのかわかった。そして、彼女が次に漏らす言葉も。
「おかえりなさい」
「うん、ただいま」
二年ぶりに耳に届いた声は、二年前に聞いた声の面影を残しながら、それでも全く違った。鈴の音を思わせる響きはなりを潜め、ただ静やかに甘い。
背は伸び、痩せぎすだった身体はコート越しにもわかるくらいにふっくらと女性らしいラインを描いていた。
まだ僅かに拙さの残っていた空想上の面影は、ごく当たり前に上から塗りつぶされてしまう。
真っ白な彼女のコートは空に浮かぶ雲と同じように朱色に染められていて、同じように仄かに白が残っていて、そして同じように綺麗で、心が痛んだ。
「随分朝が早いんだな」
「今日は特別です。保くんはどうして公園へ?」
「久しぶりにあたりを散策してみようかと思ってね」
ふむ、と彼女は納得したような表情を浮かべて、僕の隣へ腰掛けた。ぎゅっ、と下敷きにされた雪の軋む声が聴こえる。
「久しぶりの地元はどうですか?」
「どうって?」
「すっかり変わったな、とか、全然変わっていないな、とか、何か思ったことはありませんか?」
「さっき見覚えのない自販機を見つけてこれを買ったよ」
手の中のホットココアを軽く振ってみせる。
「後は、そうだね、家の近くにコンビニが立ってた。便利になった」
「元はお米屋さんだったところですね。つい三ヶ月前に立ったばかりですよ」
「ああ、そういえばそうだったね。前に何があったのかすっかり思い出せなくて」
それきり会話は途絶えた。久しぶりに会ったのに、すっかり変わってしまっているのに、それでもこの場の居心地はどうしようもないほど良くて、無意識にホットココアの口を開ける。一口飲んで、彼女がこちらをじっと見つめているのに気がついた。
- 164名前:めぐりめぐる◆jbRVZhkrpA:2007/06/16(土) 22:07:33.52
ID:J0AxNV0Y0
- 「飲む?」
「頂きます」
少し冷めてしまったココアを手渡すと、まるで宝物を扱うかのように両手に包んで、そのまま口へと運ぶ。こくり、と一口。
「あたたかい、ですね」
「もっと飲んでいいよ」
小さく頷いて、そのままこくこくと口をつけ、まるで今思い出したかのように彼女は言った。
「そういえばこれは間接キスですね」
心にわけのわからない思いが舞い広がる。冷静を装って一言。
「そういえばそうだね」
そして、また、無言。
何か別の言い方はあったかな、と考えても、特に思い浮かばなかった。
世界はただ静かに朝焼けの風をこの街へ運んでいた。眠りを解き、命を与える、なにものにもかえがたい始まりの風を。
「静は随分綺麗になったね」
馬鹿みたいだ。いいや、真実馬鹿だった。それは、誰にとっても利にならない愚者の一言。
なのに彼女は仄かに口元を緩めて、当たり前のようにこう言った。
「ありがとうございます。保くんは、私が初めて出会った時からずぅっと格好いいですね」
- 165名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/16(土)
22:07:50.58 ID:UcGVmD5CO
- 回避
- 166名前:めぐりめぐる◆jbRVZhkrpA:2007/06/16(土) 22:08:22.88
ID:J0AxNV0Y0
- ―リスタート―
その後。
他愛のない会話を幾つかして、コンビニへ行くという静と家の前で別れた。
部屋に戻って向こうから持ってきた文庫本をぱらぱらとめくっているうちに「ごはんだよー!」という懐かしい母さんの声が。
食卓に赴くと、やっぱり懐かしい我が家の献立がテーブルの上にきちんと並んでいた。
相変わらず母さんの料理は美味しい。そんなことを言うと「これは私が作ったんじゃないよ」と辛辣な突っ込み。
それ以降大した会話もないまま、黙々と食事を進める。食事の際にあまり言葉を交わさないのは我が家のルールみたいなものだ。
だから、これが、僕にとってかけがえのない家族の団欒なんだろうと思う。
食事を終えて、何気なく自分の部屋を漁ってみようと思い、とりあえず箪笥の中を覗いた。
……何もない。
掃除機をかけている母さんに「僕の下着がないんだけど」と尋ねると、あっさり「捨てた」と一言。
どうして捨てたのか、とか僕はそれがまだ残っているものだとしてここに帰ってきた、ということを出来るだけ分かり易く説明すると、とたとたとどこかに去っていき、戻ってきてぽんと僕の手の上に一万円札を一枚。
「買え、と」
「ん」
「でも一万円もいらないし、それくらいのお金はあるけど」
「冷蔵庫の中がスカスカなんだよ」
「ああ、了解。何がいる?」
「保は車の運転と荷物持ちだけしなさい」
なるほど、合理的だ。
準備に時間がかかるだろうし、車の暖気も兼ねて先に乗り込んで待っていた。
4WDを運転するのは久しぶりだ。そもそも雪の道に対する感覚を忘れてしまっているかもしれないな、なんてことを思っているうちにするりと助手席に滑り込む影。
道すがら、何が増えた、とか何がなくなった、という地元トークに花を咲かせる。
先にユニクロに寄って下着を買い揃え、そのままスーパーへ。思ったより時間を食ってしまって、太陽は既に頂上を過ぎていた。
こりゃ母さんに叱られるかもな、なんてことを思いながら生鮮食品売り場でカートを転がす。
- 167名前:めぐりめぐる◆jbRVZhkrpA:2007/06/16(土) 22:09:06.39
ID:J0AxNV0Y0
- 「何だ、保も帰ってきていたのか」
背後から聞き慣れた声。実はそれ自体が異質。この場で本来『聞き慣れた声』が聴こえるはずがないのだから。
手提げ袋を提げているところを見ると、もう買い物は終えているようだ。
背は僕と同じくらい。体重は三分の二程度なんだろうけど。相変わらず髪は長くて、前に回ってしまった束を後ろへひょいっと直す。
眼鏡の奥の眼光は水面に映る太陽を思わせた。ゆらゆらと照明の光で鳶色の欠片が舞う。
「……しぐれか。里帰り?」
「他に何がある。一昨日の飛行機で戻ってきたんだが、保は?」
「僕は昨日だ」
「てっきり今年も帰らないものだと思っていたからね。どうせなら同じ便にすればよかったな……と、揃ってお出かけだったのか。こんにちは」
「こんにちは。お久しぶりです、古館先輩」
古館しぐれ。僕の高校のクラスメートであり、中学でもクラスメートであり、小学と幼稚園こそ免れたものの大学でも同期という腐れ縁。科が違うのが救いか。
「食材の買出しか、偉いね。親孝行は出来る時にしておくべきだ」
「そういうしぐれはどうなんだ」
「何、大体同じだろう。一人娘が戻ってきたんだ、手料理の一つでも振舞ってやろうとね」
「あの味のない唐揚げでも作るつもりか」
「失礼な。確かにあれは失敗だった、それは認めよう。しかしあれ以来君は私の料理を食べていないではないか。今では君を凌ぐ腕前になったと自負している」
「へえ」
「む、信じていないな。どれ、来月にでも弁当を作るから食べてみてくれ」
「来月? しぐれも院に行くのか?」
「ああ。研究が中途半端な段階でね、出来れば私の代で結果を出してしまいたいんだ」
相変わらず真面目だ。と、そんな僕の思考を読んだのか
「別に義務感に駆られているわけではないよ。半端な状態で誰かの手に受け渡すのが嫌なだけだ」
「大学の研究なんてそんなもんじゃないか?」
「確かにそうだが、出来るところまではやりたいね。残り二年で結果が出ればいいのだが。教授を目指すつもりはないしな」
「割と似合ってる気がするけど」
「私も面白いだろうとは思う。けれども私の夢は別にあるからな」
はあ、と一つ溜息。
- 168名前:めぐりめぐる◆jbRVZhkrpA:2007/06/16(土) 22:09:52.42
ID:J0AxNV0Y0
- 「またそれか。しぐれの夢、そろそろ教えてくれないか」
「断る。教えるとなったら最初の相手は保になるだろうから、期待しないで待っていてくれ」
「適度に期待しつつ待ってるよ」
「む、プレッシャーだな。努力はしよう」
真剣な顔でうむ、と一人頷く。相変わらずだなと思っている僕からちらりと視線を隣へ向けて
「そういえば静はどうなんだ? 進学希望と聞いたが」
隣でじっと佇んでいた静に話題を振った。
「はい、大学へ進学します」
初耳だった。そもそもここ数年まともに言葉すら交わしていないのだから当たり前かもしれない。普通こういう時には母さんから一言くらい話が出るものだと思うのだが、僕が静の話題を避けていることに気づかれていたのだろうか。
「ほう。どこへ行くんだ?」
「青京大学です」
僕としぐれがそれぞれ顔を見合わせる。そうなのか? いや、初耳。何故知らない? 聞いてなかったからだ。何故青京大学なんだ? だから知らないって。
そんな目だけでの会話をしていると、静がぼそりと呟いた。
「何か問題でも? お二人が通っている大学でしょう?」
「……いい大学だと僕は思ってるけど。学科は?」
「経済学部です」
「確かに実績はあるが……行こうと思えば静なら東大だって行けるだろう? どうして青大へ?」
「逆にお聞きしますが、古館先輩だって行こうと思えば行けたでしょう? 何故行かなかったんです?」
「学閥が嫌いだからだ」
「なるほど。私と同じですね」
そんなものなのだろうか。彼女たち二人は僕とは頭の出来が違うから、より深い考えでもあったのかもしれない。
「でもそれだけが理由ではないですよ。青大なら兄さんと一緒にいることが出来ますから」
ざくり、という音が聞こえた気がした。切れ味の鈍ったナイフで喉元を突かれたような気分だ。
「地元を離れるのは不安か?」
「そんなことはありませんが、より安心出来ますから」
その言葉に他の意味が混じっている気がして恐ろしくなる。嫌われた、と思っていた。或いは嫌おうと頑張っているのだと思っていた。朝の会話は彼女が吹っ切った証拠だと思っていた。さっきから心の声が五月蝿い。嘘吐きめ、と盛大にがなり立てている。
知っていたのに。分かっていたのに。他にどうすればよかった?
- 169名前:めぐりめぐる◆jbRVZhkrpA:2007/06/16(土)
22:10:44.24 ID:J0AxNV0Y0
- 「確かに親御殿にしてみればより安心だろうな。……気づいている、とは思うが」
しぐれの一言で、全身に鳥肌が立つ。やっぱり彼女たちは異世界の住人らしい。
「改めて宜しくお願いしますね、古館先輩」
「こちらこそ。何か問題があったら存分に頼ってくれ。私と保が力を合わせれば解決しないことなど殆どないさ」
「ありがとうございます」
深々と頭を下げる静。妹の立ち居振る舞いは昔と殆ど変わっていない。
ただ、牙を隠すのをやめただけなんだろうと、そう思う。
「所で」
ほら来た。僕だって飛びぬけて頭が回るわけではないけれど、人の行動の大体は読める。
「保くんと古館先輩は付き合っているんですか?」
「いや? どうしてそう思った?」
「昔から仲が良かったですし、お似合いに見えますから」
「仲がいいことと付き合うことは別だよ。どれだけ仲が良くとも、同姓の友人に恋愛感情を抱くことは普通ないだろう? それと同じだ」
「つまり古館先輩にとって保くんは同姓と変わらないような存在、ということですか?」
「ただの例えだ。私は保を異性として認識しているよ。じゃあこういう例えはどうだ? どれだけ仲が良くとも、兄妹に恋愛感情を抱くことはない。これなら静にも理解できるだろう」
「……ああ、なるほど。良く分かりました」
淡々とした会話。冗談の一つも飛ばせない。しぐれがこの状態を完全に気づいていることを理解出来ただけでもしめたものか。
「お話の邪魔をしてしまい済みませんでした。保くん、私は買い物を済ませて来ます。どうぞお話を続けてください」
「付き合うよ」
「大丈夫です。終わったら携帯に掛けますので、どうぞごゆっくり」
そのままカートを転がしていく。柔らかさはそのままに、立派な棘も得た彼女を無言で見送った。
- 170名前:めぐりめぐる◆jbRVZhkrpA:2007/06/16(土)
22:11:37.17 ID:J0AxNV0Y0
- 「追わなくていいのか?」
「追ったら逆効果だろ」
「今更だな。思うに君は裏目裏目へと物事を運ぶ才能があると見た」
「……僕を苛めて楽しいか?」
「ああ、済まない。そういうつもりはないんだ。ただ、あれは危うい」
「知ってるよ」
「本当に? いや、君は絶対に理解していない。君と彼女では土俵が違いすぎる」
「どういう意味だ」
「それを私から語ることはしたくない。どう足掻こうともこれは君と彼女の物語だ」
「それはわかってる」
「一つだけ述べるとしたら、君は悪くない。いや、誰も悪くなんてない。唯一悪いものをあげるとするならば」
そこでしぐれは言葉を切った。目で訴えてくる。覚悟はいいか、と。
それこそ今更だ。非がどこにあるのか、僕はずっと知りたかったのだから。
僕の視線を真っ直ぐに受け止めて、しぐれははっきりとした声で最後通牒を突きつけた。
「運が、悪かった」
がっくりと弛緩する。やっぱりそこに行き着くのか、と。
「せいぜい大切にしてやれ」
「それをしたらまた裏目に出るだろ」
「それをしなくても裏目に出たんだろうと私は思っていたのだが、違うのか?」
大正解。
- 171名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/16(土)
22:14:50.30 ID:/dAVHk+50
- 回避
- 172名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/16(土)
22:21:25.15 ID:WTyMcUpE0
- パシュンッ
雨音を切り裂いて銃音が響く。
前を歩いていた男の体がゆっくりと倒れていった。
クー「大丈夫か男!?」
男「クー大尉、狙撃です。 はやく、はやく、僕のことは置いて行って下さい」
クー「そんな、男を置いてなど!」
男「そうしないと隊が全滅してしまいます! 大尉には、責任があるんです、よ……」
クー「しかし、しかし……」
その時クーの頬を何かが高速で掠めていった。
血が頬をつたう。
男「ほら、クーさん、狙撃されちゃいます、よ」
クー「くっ! 男、お前のことは」
男「僕もです。 来世で会いましょう」
クー「…男、男ォー!」
クー「という夢を見た」
男「はぁ……」
クー「私は絶対に見捨てないからな」
男「あ、ありがとう」
男「でもさぁ」
クー「なんだ?」
男「抱きつきながら言うことかなぁ」
クー「私の愛を直接つたえるためには致し方ないんだ」
男「そうかなぁ」
クー「私に抱きつかれるの嫌なのか?」
男「そういうわけじゃないけど」
そういう保守
- 173名前:代理:2007/06/16(土) 22:28:49.64 ID:xqjH89Na0
- 「運が悪いとなったら僕に出来ることは一体何だ」
「それを自分で考えるのが彼女に対する礼儀というものだろう。静が君のことを保くんと呼ぶあたりそうではないかと思ってはいたが。せめて君が」
「それ以上言うな」
「初めから言うつもりはないよ。今はただ保が幸せになれる未来があるよう祈っている」
「それはどうも」
皮肉にもほどがある。一番の親友が何一つアドバイスをするつもりがないのだから。
「アドバイスをするつもりはないがね、解決策の一つなら教えてあげられる」
またもやこちらの心を読む。げんなりしながら続きを促した。
「何、簡単だ。静に保を諦めさせればいい」
「どこがどう簡単なのか、端的に説明してくれると嬉しいんだけど」
「私と付き合えばいい」
どうだ、簡単だろう? と自信たっぷりに言い切った。
「……その程度で諦めるとは思えないんだけど」
「失礼だな。まあ確かに『誰かと付き合う』だけならそうだろう。だが相手が私なら勝ち目はある。何より」
そこで間を置いて、静かに宣言した。
「そうなったら保と静の問題ではなく、保と私と静の問題になるだろう? 介入権があるのなら私は絶対に誰にも負けないよ」
仰る通りで。何だか馬鹿らしくなってきたな、と思ったところで携帯の着信音が鳴った。
「考えておくよ。ああ、それと冗談はほどほどにな」
「冗談? いつ私が冗談を?」
もう突っ込む元気もない。ひらひらと手を振ってその場を後にした。車の前で待っているだろう静を迎えに行く為に。
- 174名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/16(土)
22:32:11.08 ID:/dAVHk+50
- ほし
- 175名前:めぐりめぐる 代理:2007/06/16(土) 22:36:52.29
ID:xqjH89Na0
- 済みません、さるさんに引っ掛かって投下することが出来なくなってしまいました。
このまま長々と場を占拠するのも申し訳ないですし、続きはまた後日お届けします。
支援ありがとうございました、大変助かりました。
重ね重ね本当に申し訳ありませんでした。
- 176名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/16(土)
22:39:39.14 ID:/dAVHk+50
-
>>175
続き期待しているよ
あと、もし長くなるならあぷろだにうpするのも勧めてみる
- 177名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/16(土)
22:49:44.62 ID:34w5DlC30
-
>>175
乙です。続きまってます。
- 178名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/16(土)
22:57:22.21 ID:UcGVmD5CO
- ほ
ほ
時間が変わったので173の続きを投下します。
残り5レスですので、お相手頂ければ幸い。
―スタート―
大量のビニール袋を手にぶら下げているのを自動ドア越しに確認して、慌ててリモコンで車のドアを開錠した。
けれども当然静一人でドアを開けられる状況ではなく、駆け足で車に近づいて後部座席を開く。
「鍵をお借りしておけば良かったですね」
「いや、僕が悪い。こんなに荷物が多くなるとは思わなくて。買い物が終わった時点で連絡をくれればよかったのに」
「これくらいへっちゃらです。見た目より腕力はあるんですよ」
「よくその状態で電話が出来たね」
「袋に詰め終わった後ワンコールしてここまで来たんです」
極めて合理的だ。確かにそれなら車以外に落ち合う場所はないだろう。
荷物を積んで車に乗り込みいざ発進。何だか気まずくて言葉を発せずにいると、向こうから話しかけて来た。
「さっきはごめんなさい。本当はあんなことを言うつもりではなかったんです」
「何のこと?」
しらばっくれる。これくらいしか今の僕に出来ることはないだろう。
けれども、静は僕の予想以上に覚悟を決めていたようだった。さらりと、まるで野菜が安かったことを報告するように
「随分前から気づかれているでしょうけれど、明言しておかないといけないことはありますから。私は保くんのことを異性として愛しています」
表情は伺えない。車の運転をしているからだ、と誤魔化してはみたけれど、例えそうでなくとも今の僕には彼女の顔を直視する勇気はなかっただろう。
ひゅう、と掠れた音。自分の呼吸音だと気づく前に静は更に語る。
「本当はですね、向こうで……大学に入学してから文字通り押しかけ女房をやるつもりだったんです。
保くんは二年以上私と連絡を取っていないわけですし、あの頃に比べて私は女性としてある程度の魅力を持つことが出来たと思います。きっと男性としては耐えられないようなシチュエーションだろう、と」
全くだ。それを実行されていた時のことを考えると背筋が寒くなる。
「でもやっぱりそれは私の性に合いませんし、何より思いをはっきりと伝えたい、というのはずっとあった願望でしたから、ああやって発露させてしまいました。それに、あそこで明言しておかないと、後々もっとやっかいになるだろうと思って」
しぐれのことを言っているんだろう。さっきのは誰がどう聞いても宣戦布告だったから。
「本当に僕としぐれは付き合ってないよ」
「知っています。ただ、こちらの立場を明確にしておきたかっただけです。あれこれ心配して画策される前に、お二人に事実を伝えておこうと思いました」
「余計な邪魔が入るのを除外した、ってことでいいかな?」
「その通りです。随分会っていませんでしたけど、古館先輩も相変わらずですね」
静は変わっていない。本当に、少しも変わっていなかった。こちらの発言に動じる素振りなど少なくとも声には全く出していない。気圧されて、逃げ道へと誘導された。
「そうか? 見慣れているから変化があるのかないのか解らない」
「全然変わっていませんよ。聡明で、理知的で、よく出来た人です」
「確かにそこは昔から変わらないね」
なあなあの会話。相手から返ってくる言葉なんてわかりきっている。そこを見計らって、ほらまた
「ところで、先程の告白へのお返事は頂けないのですか?」
刃を振るわれた。
「返事、と言われても。僕としてはありがとうしか言えないよ」
「ああ、それでは言い方を変えますね。私は保くんのことが好きです。付き合ってください。いえ、明確に言葉にするならば、私と恋人関係になってください」
引かないことはわかっていた。それでも逃げたのは、もしかしたらという淡い期待があったからだ。
馬鹿か僕は。可能性のない期待に何の意味がある。相手がナイフを振るうなら、こちらはそれ以上の武器、ナタや日本刀で相手をするしかないじゃないか。
「それは無理だね」
「どうしてです? 保くんが私のことを嫌いだと言うのなら、大人しく引き下がるしかありませんけれど」
それを僕の口から言わせるのか、と思った。彼女の発言には一言一言意味と意図が篭められていて、僕はきっととっくに絡め取られている。それでも言わなければならない。
回避
「兄妹は恋人になれない」
「知っています。けれど、恋人になってください」
滅茶苦茶だ。理論も何もあったもんじゃない。
「母さんが悲しむと思うよ」
「それも知っています。でも、付き合って欲しいんです」
「僕に拒否権はないのか?」
「ありますよ。私を納得させるだけの正統な理由があれば」
「兄妹だから、は理由にならないのか?」
「なりません。端的に言って、私が聞いているのは一つだけです。保くんは私のことを異性として好きですか?」
脳を、心臓を、脊椎を、直接切り裂かれたような気分だ。どれを取っても致命傷。挙句に追い討ち。
「嘘をつきたければついても構いませんよ。知っておいて欲しいだけですから。私は本気だって」
そんなことは随分前から知っていた。例え本気であろうとも、時間が風化させてくれるって、そう言い訳して逃げていただけだ。
「ごめんなさい、意地悪が過ぎました。今すぐ答えを貰おうとは初めから思っていないんです。ただ、一つだけお願いがあります」
丁度赤信号に捕まったところでそう言われた。ありったけの勇気を振り絞って静を直視する。
そしてそこにはやっぱり変わらない彼女がいた。水気をたっぷりとたたえた瞳に見つめられて、まるでこれでは蛇に睨まれた蛙だ。
「私のこの思いが変わることはありません。だから、きちんと私を見てください」
拷問だ。日ごと美しくなっていくだろう妹から必死で目を背けていたのに、それと向き合え、と。
絶句していると、彼女はさも当然のようにこう続けた。
「さて、大学進学に当たってそろそろ住まいを決めに向こうに行くのですが、2LDKと1DKどちらがいいですか?」
「……どうして僕に聞くの?」
「前者なら一緒に住むことになるからです」
「後者がいいと思う」
「あら、どうしてですか? 家事も家賃も分担出来ますし、いいことづくめだと思うのですが」
反論出来ず困っている僕を一頻り眺めた後、静はさも当然そうにこう続けた。
「私としては本当に一緒に住みたいくらいなんですが、それで保くんが帰ってこなくなるようでは本末転倒ですし、きちんと一人暮らしをしますのでご心配なく」
「だったら今の質問の意味は?」
「もしかしたら受け入れてもらえるかもしれないと思って。告白の前にするべきでしたね」
笑みさえ浮かべずそう言い放つ静に対して、僕はどんな顔をすればいいんだろう。こんなにも追い詰められていて、笑える要素なんて一片もないのに、どこかコミカルに思えた。
後ろからクラクションの音。前を向くと信号は青に変わっていた。慌ててアクセルを踏み込む。
勢い良く発進する車内の中、ああ本当に僕はどこで間違えたんだろうと頭を悩ませる。
いや、本当に悩んでいるのはきっと別のことだ。つまるところ、僕は僕がどうしたいのか、良くわかっていないのだろう。
思い出すのは今朝見た夢。あそこにいたのは誰だったんだろうと、そんなことを思いながら車を走らせる。
帰り道は続く。朝焼けの風が撫でていった世界は、すっかりその姿を変え、活発に動き出していた。
― #1 了 ―
支援
以上です。次回は早ければ来週にでも。
それまでにさるさんの回避策を考えておきます。いやもう本当にごめんなさいorz
>>176氏
アドバイスありがとうございます。アップローダーを使うかwikiに直上げしてしまおうかと考えています。
時間をまたぐとさるさんのカウントがリセットされる、との噂があるので、それを利用してスレにあげるのも手なのですが、
調整がますます難しくなりそうですし考えどころです。一先ず来週まで保留、ということでどうかご勘弁を。
それではまたお会いしましょう。
ほしほし
ほし
最終更新:2007年06月17日 00:22