151 :スレタイより :2006/09/11(月) 21:47:50.20 ID:R+SCyDD1O 
君と共に過ごす秋 
秋の雨がアスファルトを強くたたく。外で働く人は大変だなぁと思う。 
それでも、私は、この雨に感謝する。部活が雨で中止になった彼と、一緒に下校出来る幸せ。 
彼は、今から映画を観にいこうと言う。黒い傘をさした彼と、赤い傘をさした私が、映画館へと向かって歩きだす 。 
「この映画を観たら、クー、泣いちゃうかもなぁ」 
おどけながら、彼は言葉を続ける 
「ま、泣きたくなったら、俺の胸で泣きな」 
彼の言葉を聞きながら、一抹の不安を覚える私。そして、私の悪い予感はよく当たる。 
「・・・うっ、うっ」 
映画館で嗚咽を必死にこらえているのは、彼の方。情けないなぁ。肩でもさすってあげようか。 
大体、今時、難病の少女と彼女に恋する少年の話なんかで、感動する方が不思議だ。竹取り物語の時代でも、もう 少しひねった展開を考えてたんじゃないかな。 
映画が終わり、泣き腫らした目の彼と、喫茶店で反省会。 
「俺の胸で泣きな、って言ってたのは、誰だったけなぁ」 
「そっ、それは」 
「ま、泣けない私が冷血漢なだけかもしれないけどね」 
「いやっ、クーは、確かにクールだけど、冷血漢ではないぞ」 
「えっ?どうして、そう思うの?」 
「それは、その・・・例えば、その赤い傘」 
「・・・」 
「付き合い始めた頃、夏休みにバイトして貯めたお金で買ってあげたものだよな」 
「うん」 
「安物だけど、クーはとっても喜んでくれた。私の為にバイトして、何かを買ってくれるなんて、これ以上ない幸せだって」 
「うん」 
「ずっと大事にすると言って、その言葉通りに、今日まで大切にしてくれている。こんないい娘が冷血漢だなんて、俺は思わないぞ」 
「うん・・・ありがとう」 
心の底から、彼にありがとうと言う。誉められるのは苦手だけど、彼に誉められるたびに、強くなれそうな自分がいる。 
(私が泣きたくなるのは、こうゆう時なんだよなぁ・・・) 
喫茶店のガラス越しに、まだ強く降る雨。出来ればもう少しだけ降り続いて欲しいと思う。 
君と共に過ごす秋。出来れば、今日は、傘をさして歩きたい。 
最終更新:2006年09月12日 23:28