142名前:職業訓練指導員(アラバマ州):2007/04/29(日) 16:13:19.39 ID:ICWOW1Xb0
 【ゴールデンウィークは予約済み、の、ちょっとした続き】

  空は焦っていた。予想外の事態だった。
  二人きりの時間は貴重なのに、いつのまにか眠ってしまっていたのだ。今、空の頭は春香のひざの上にある。

  春香が飼い犬の話などをし始めたのが問題だった。
  正直興味はこれっぽっちももてなくて、聞き流しつつ春香の顔に見とれていたら、いつのまにか睡魔に襲われたらしい。
  春のぽかぽか陽気と、一定のリズムで刻まれる電車特有の揺れ。眠りに誘われるには十分の条件だ。危険性を想定していなかった自分のミスだ。

  いやまて。空は考え直す。
  これはかねてからやってみたかった「ひざまくら」を味わう絶好のチャンスではなかろうか。なにしろすでにその状況なのである。
  こんなタナボタは滅多にないわね。
  口の中で呟きつつ、空は微妙にポジションを変えて春香のぬくもりを堪能することにした。もちろん眠っているふりは忘れずに。
  うん、やはりこれは素敵だ。止めどきに困りそうになる。


 143名前:職業訓練指導員(アラバマ州):2007/04/29(日) 16:14:28.25 ID:ICWOW1Xb0
  しばらくして。
 「ふふ。空ちゃん可愛いなーっ」
  そんな春香の声とともに、なにか暖かいものが唇に軽く触れたのを、空は感じた。
  あ、これは。
  空は飛び起きた。ぐいっと顔を近づけ春香の瞳を覗き込む。
 「わ、空ちゃん、起きてた、の?」
  春香の赤らんだ頬が、たまらなく可憐に見える。
 「今、起きた。……春香、私にキス、してたよね?」
 「あのね、その、空ちゃんの寝顔があんまり可愛くて、つい、そのね。ごめんねごめんね、怒ってる、よね?」
 「怒っているはずない。でも、寝ている時に不意打ちは卑怯よ。私にもさせてよね」
 「え、空ちゃん? あっ」
  有無を言わさず、空は春香に深く甘いキスを落とした。
  春香から口付けをしてきたのだから、これでこちらからいつどこでキスをしても構わなくなった。キス解禁だ。
  春香の唇の感触を確かめつつ、空はそんな判断をする。
 「春香の方が、ずっと可愛い。ついキスしちゃいたくなるわよ」
  これでゴールデンウィークはかなり楽しめそう、と、そう空は思った。
 『いつどこで』が結構重要なのだということを彼女が学習するのは、もっとずっと後の話になる。

  田舎の鈍行列車は、二人を乗せてのんびりのんびり走っていた。

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 以上ですよ。

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最終更新:2007年05月04日 17:39