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2日目【大家と囲う華麗なる朝食♪】 - (2007/08/26 (日) 04:29:05) の1つ前との変更点

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大家出会い部分 【背景:主人公の部屋】 大輔「……っく!」 布団から飛び起きる。 また"あの夢"だ。 朝からこうとは、気分が沈む。 最近よく見る気がするが、久しぶりに他人と知り合ったからだろうか。 いい加減、引きずりたくは無いのだが…… まだまだ難しいようだ。 大輔「とりあえず、顔洗うか……」 のそのそと洗面所へ向かい、顔を洗う。 冷たい水が顔にかかっていく毎に、思考がクリアになっていく。 大輔「あー……、目ぇ覚めた」 呟きながら服を脱ぎ、洗濯籠へ。 パンツ一枚になったところで、服を取りに居間へ ???「おはよー。目が覚めたなら、さっさと朝食作っといてー」 ……行こうとしたところで背後から声が。 気のせいだろうか。 でも確かに声が…… ……いやいや。 俺、一人暮らしだし。誰か居るはず無いし。 そう、この部屋には俺しか居ない。さっきのは空耳。 うん、きっとそうだ。いや、絶対に。 そう納得したところで振り返る。 大輔「……あー……」 イタ。イマシタヨ。 しかも、よく見知った顔が。 どうみてもアパートの大家さんです。本当にありがとうございました。 実は大家さんの部屋だったとか…… いや、それはないな……常考。 大輔「……なんでここに居るんですか……?」 とりあえず、一番の疑問をぶつけてみる。 大家「へ? だって、私大家だし。それよりも朝食作ってよ」 はい? 意味が分かりませんが。 「だって、私大家だし」 ……もしかするとこの言葉には、とても深い意味があるのかもしれない。 ……いや、どう考えても無いな。 大輔「……言葉の意味がわかんないんですけど」 大家「……お腹が空いたから、朝ごはんを作って欲しいって頼んでるんだけど。まだ寝ぼけてんの?」 大輔「いや、そっちじゃなくて。なぜここに居るのかと……『私大家だし』って理由になってないですから」 うん、俺おかしくないよな。まともなこと言ってるよな。 当然の反応だよな。 でも、なぜこの人はキョトンとしているんだろう。 まるで俺がおかしいことを言っているみたいじゃないか。 大家「大家だし、鍵開けて部屋入っても問題ないでしょ?」 ……なんですか、この俺ルールは。 つーか、マジだよこの人。本気でそう思っちゃってるよ。 大輔「いや、駄目ですからね。犯罪ですよ、それ」 まぁ、ちゃんと注意しておけば問題ないだろう。 大家「あー、そうなん? 気に留めておくわー」 面倒くさそうに、そう答えた。 反省の色無し。絶対に再犯するよ、この人。 大家「んで、問題解決したところでさ、朝食作ってよ」 ……なんかもう、どうでもいいや。 っていうか、この人の朝食に対する執着心は異常。 大輔「分かりましたよ。作りますから、ちょっと待っててください……」 とりあえず居間へ戻り、服を着てから台所へと向かう。 大家「あら、裸族に目覚めたのかと思ったら、服着るのね」 何か言ってるが、華麗にスルー。 いちいち対応しても疲れるだけ。ちぃおぼえた! ……さて、何を作ろうか。 と考えたところで、材料は大家さんが持ってきたものだから、作れるものは限られてくるんだが。 とりあえず、冷蔵庫を確認する。 卵と……卵と……ああ……卵だけか…… スクランブルエッグでいいかな…… 冷蔵庫から卵を2個取り、調理を開始した。 料理をしていると、日々、料理スキルが上昇していくのが感じられる。 ……まぁ、それも大家さんの所為なのだが。 キュウリと調味料だけ持ってこられて、「これで美味いもの作れ」なんて言われたら嫌でも料理が上手くなる。 そういえば、こうして大家さんが料理を要求してくるのは、いつからだっただろうか。 引きこもり始めてから、ある程度落ち着いてきた頃だったと思うが…… いつの間にか、大家さんが材料を持ってきて、俺が作る(強制)という関係が築かれていた。 このままだと、知らぬ間に奴隷化していきそうだ。恐ろしい。 ……そういえば、梨亜も料理とかするんだろうか。 もしそうなら、少しは話がしやすいかもしれないな。 ……と、いつの間にか料理が出来ていた。 というか、出来すぎていた。大分、焦げついてるよ。 考え事をしながら作るものじゃないな。 ……まぁ、あの人なら気にせず食うだろう。多分。 明らかにマズそうだし、俺は食わないけどNA! 大輔「……はい、できましたよっと」 居間に皿を運び、机に置く。 大家「……いつもより前衛的な出来ねー。別にいいけどさ」 ぼやきながら料理を食べ始める。 やっぱり、焦げてても気にしなかったか。微妙に体に悪そうだけど、自己責任だよな。 大家「うわ! マズ!」 ああ、やっぱり。 っていうか、見て分からなかったのだろうか。 それでも大家さんは、全て食べてしまった。 この人って、味には拘るくせに、どんなに不味くても、結局全部食べるんだよな…… 嬉しいと言えば嬉しいが。 ふと、時計を見る。 ……もう10時か。 いつもなら、大家さんも帰る頃なんだが、今日は一向に帰る気配が無い。 何か用事でもあるんだろうか? とりあえず、尋ねてみるか。 大輔「えっと、大家さん? 何か用でもあるんですか?」 大家「あー、大輔さー、公園で何かあった?」 大輔「は、はい? な、何でですか?」 ああ、明らかに動揺してるよ、俺。 大家「いや、最近帰るの遅いからさ。それに、珍しく料理失敗してたし」 ああ、確かに。 梨亜と話したりしてたせいで、帰るのが遅くなってたしな…… 別に隠すことでも無い気がするが、何となく嫌なんだよなー。大家さんに話すの。 ここは、誤魔化しておくか…… 大輔「い、いや、少し遠くまで歩いてみてるんですよ。だから遅く―――」 大家「女?」 俺が言い終わらないうちに、重ねてくる。 しかも、当たってるしね! 誤魔化せてないSHINE! 本当、なんなんだこの人は…… なんかもう、どうあがいても隠せる気がしないし、話すしかないか…… 大輔「……何で分かるんですか。あー、えーっと、一昨日の話なんですけど……」 大家「あ、冗談のつもりだったんだけど、本当に女絡みだったんだ」 ……自爆した。 仕方ないので、そのまま続けて一部始終を話した。 脚色なんてしてないです。……少ししか。 大家「んでさ、大輔はその女の子が好きなわけ?」 ニヤニヤしながら、尋ねてくる。 だから嫌だったんですよ、この人に話すのは。 大輔「い、いや、そういうのは……よく分からん……と思う……」 大家「ふーん、ま、別にいいけどね。前に比べると、随分進歩したじゃん」 【場面転換】 【背景:黒】 確かに……あの頃に比べたら、かなりマシになった。 俺が引きこもり始めたのは、大学に入学してしばらく経った頃。 原因は、大学での人間関係の縺れ。 引きこもるのはこれが初めてではなかった。 俺は高校時代にも、両親が死んだことで、引きこもっていた。 それでも、克服することは出来た。 それは多分、友人の支えがあったからだと思う。 だけど……今回の場合は……ケースが違う…… 今まで築き上げてきたものも全て壊れてしまった…… 友人たちも全て……失った。 でも、ただ一つ、大家さんとの関係だけは無くならなかった。 大家さんは俺が引きこもっている間、ずっと支えていてくれた。 俺が公園に出るようになったのも、大家さんに言われたからだ。 あれは確か、俺の引きこもりも大分落ち着いてきた頃…… 【場面転換】 【主人公の部屋】 大家「そろそろ、外に出てみよっか?」 夏ももう終わりか。 なんて、ぼうっと考えているところに、飛び込んできた言葉。 また、冗談か何かかと思って聞き流そうとしたが、大家さんはどうやら本気らしい。 俺が引きこもり始めてから、数ヶ月。 初めのうちは、毎日やってくる大家さんを鬱陶しく思い、突っぱねていたが、今では大分落ち着き、普通に接することが出来ている。 ここまで立ち直れたのも大家さんのおかげだし、今でも俺の引きこもりを克服させようとしてくれている。 しかし、これは幾らなんでも急すぎないだろうか。 大家さんとは、今までどおりに接することが出来るようになったものの、それでも未だ他人を見るだけで幻聴が聴こえてくる。 そんな状態で外に出れるわけがない。 大輔「……い、いやぁ……、ま、まだ無理……だと思います……」 大家「まだやってもないでしょ? 無理なら無理で直ぐに部屋に戻ればいいしさ。……外に、出たくない?」 ……外には出たい。 今までみたいに、堂々と人の居る場所を歩きたい。 ……けど、他人会うのが怖い。 大輔「出たくないことも……ないですけど……、で、でも、やっぱり無理っていうか……怖いっていうか……」 俺がハッキリしないでいるのに痺れを切らしたのか、大家さんは立ち上がり、俺の手を掴んで、そのまま玄関へと向かった。 大輔「ちょ、ちょ、ま! ス、ストップ!」 必死に静止するが、華麗にスルーされる。 大家「どうせ今は夜中だし、人居ないでしょ。大丈夫大丈夫」 そう言われて、結局俺は外に連れ出されてしまった。 【場面転換】 【背景:アパートの外】 何ヶ月ぶりだろうか。 食事なども大家さんの世話になっていたため、引きこもり始めてから一度も外に出ていない。 久しぶりに見た外の世界。 月や星が綺麗だ。以前は、こういうものに目を向けていなかったことな…… 当たり前に感じていたものも、今では新鮮に見える。 大家「ほら、出てみてよかったでしょ?」 その言葉に自然と頷く。 大家「明日からさ、夜に散歩するようにしなよ。最初はアパートの周りだけ。その後で、少しずつ距離をのばしていけばいいからさ」 突然の提案。 少し考えたが、俺は深く頷いた。 久しぶりに外に出たことで興奮していたし、外の世界に魅力を感じていたのもあったと思う。 それに今は深夜。アパートの辺りを通る人なんて殆ど居ない。 俺に、外に出ることが案外、何でもないことなのだと錯覚させるには十分だった。 ……こうして、夜の散歩が始まった。 【場面転換】 【背景:主人公の部屋】 夜の散歩を始めて、もうすぐ一年…… 散歩を始めてから、初めて他人に出合ったときは、正直挫折しそうになった。 元々、雰囲気に流されて始めたようなもの。 そこでやめても、おかしくなかったと思う。 それでも、散歩を続けようとしたのは、やはり大家さんが励ましてくれていたからだ。 だから俺は今でも散歩を続けているし、距離も徐々にだが、のばせている。 もしも大家さんが居なければ、俺は今でも引きこもり始めた時のままだったと思う。 大輔「……ありがとうございます」 ……そんなことを考えていたせいか、自然と感謝の言葉が出ていた。 顔を見て言えるほどの度胸はなかったので、俯いたままだったが。 ふと、疑問が出てきた。 なぜ、大家さんは俺のために、ここまでしてくれたのだろう。 元々、めちゃくちゃ仲が良かったわけでもない。 それなのに、なぜ? 顔を上げ、大家さんに尋ねようとする。 ……が、そこには既に大家さんは居なかった。 いつの間に帰ったのだろうか。 まぁ、いいさ。今度会った時に聞けば。 そう思ったが、何となく誤魔化されそうな気がした。 引きこもり始めや、外に出始めた時期とかがよく分からなかったので、その辺りは適当に設定しておきました。
【背景:主人公の部屋】 【BGM:すずめのちゅちゅん】 大輔「……っく!」 布団から飛び起きる。 また"あの夢"だ。 朝からこうとは、気分が沈む。 最近よく見る気がするが、久しぶりに他人と知り合ったからだろうか。 いい加減、引きずりたくは無いのだが…… まだまだ難しいようだ。 大輔「とりあえず、顔洗うか……」 【SE:水流】 のそのそと洗面所へ向かい、顔を洗う。 冷たい水が顔にかかっていく毎に、思考がクリアになっていく。 大輔「あー……、目ぇ覚めた」 呟きながら服を脱ぎ、洗濯籠へ。 パンツ一枚になったところで、服を取りに居間へ ???「おはよー。目が覚めたなら、さっさと朝食作っといてー」 ……行こうとしたところで背後から声が。 気のせいだろうか。 でも確かに声が…… ……いやいや。 俺、一人暮らしだし。誰か居るはず無いし。 そう、この部屋には俺しか居ない。さっきのは空耳。 うん、きっとそうだ。いや、絶対に。 そう納得したところで振り返る。 【BGM:ハッピースキップ(変更可能性大)】 大輔「……あー……」 イタ。イマシタヨ。 しかも、よく見知った顔が。 どうみてもアパートの大家さんです。本当にありがとうございました。 実は大家さんの部屋だったとか…… いや、それはないな……常考。 大輔「……なんでここに居るんですか……?」 とりあえず、一番の疑問をぶつけてみる。 【大家:立絵】 大家「へ? だって、私大家だし。それよりも朝食作ってよ」 はい? 意味が分かりませんが。 「だって、私大家だし」 ……もしかするとこの言葉には、とても深い意味があるのかもしれない。 ……いや、どう考えても無いな。 大輔「……言葉の意味がわかんないんですけど」 大家「……お腹が空いたから、朝ごはんを作って欲しいって頼んでるんだけど。まだ寝ぼけてんの?」 大輔「いや、そっちじゃなくて。なぜここに居るのかと……『私大家だし』って理由になってないですから」 うん、俺おかしくないよな。まともなこと言ってるよな。 当然の反応だよな。 でも、なぜこの人はキョトンとしているんだろう。 まるで俺がおかしいことを言っているみたいじゃないか。 大家「大家だし、鍵開けて部屋入っても問題ないでしょ?」 ……なんですか、この俺ルールは。 つーか、マジだよこの人。本気でそう思っちゃってるよ。 大輔「いや、駄目ですからね。犯罪ですよ、それ」 まぁ、ちゃんと注意しておけば問題ないだろう。 大家「あー、そうなん? 気に留めておくわー」 面倒くさそうに、そう答えた。 反省の色無し。絶対に再犯するよ、この人。 大家「んで、問題解決したところでさ、朝食作ってよ」 ……なんかもう、どうでもいいや。 っていうか、この人の朝食に対する執着心は異常。 大輔「分かりましたよ。作りますから、ちょっと待っててください……」 とりあえず居間へ戻り、服を着てから台所へと向かう。 大家「あら、裸族に目覚めたのかと思ったら、服着るのね」 何か言ってるが、華麗にスルー。 いちいち対応しても疲れるだけ。ちぃおぼえた! 【背景:主人公部屋天井隅みたいの】ひだりからおしだし ……さて、何を作ろうか。 と考えたところで、材料は大家さんが持ってきたものだから、作れるものは限られてくるんだが。 とりあえず、冷蔵庫を確認する。 卵と……卵と……ああ……卵だけか…… スクランブルエッグでいいかな…… 冷蔵庫から卵を2個取り、調理を開始した。 【SE:料理】 料理をしていると、日々、料理スキルが上昇していくのが感じられる。 ……まぁ、それも大家さんの所為なのだが。 キュウリと調味料だけ持ってこられて、「これで美味いもの作れ」なんて言われたら嫌でも料理が上手くなる。 そういえば、こうして大家さんが料理を要求してくるのは、いつからだっただろうか。 引きこもり始めてから、ある程度落ち着いてきた頃だったと思うが…… いつの間にか、大家さんが材料を持ってきて、俺が作る(強制)という関係が築かれていた。 このままだと、知らぬ間に奴隷化していきそうだ。恐ろしい。 ……そういえば、梨亜も料理とかするんだろうか。 もしそうなら、少しは話がしやすいかもしれないな。 ……と、いつの間にか料理が出来ていた。 というか、出来すぎていた。大分、焦げついてるよ。 考え事をしながら作るものじゃないな。 ……まぁ、あの人なら気にせず食うだろう。多分。 明らかにマズそうだし、俺は食わないけどNA! 【背景:主人公部屋】【立絵:大家】 大輔「……はい、できましたよっと」 居間に皿を運び、机に置く。 大家「……いつもより前衛的な出来ねー。別にいいけどさ」 ぼやきながら料理を食べ始める。 やっぱり、焦げてても気にしなかったか。微妙に体に悪そうだけど、自己責任だよな。 大家「うわ! マズ!」 ああ、やっぱり。 っていうか、見て分からなかったのだろうか。 それでも大家さんは、全て食べてしまった。 この人って、味には拘るくせに、どんなに不味くても、結局全部食べるんだよな…… 嬉しいと言えば嬉しいが。 ふと、時計を見る。 ……もう10時か。 いつもなら、大家さんも帰る頃なんだが、今日は一向に帰る気配が無い。 何か用事でもあるんだろうか? とりあえず、尋ねてみるか。 大輔「えっと、大家さん? 何か用でもあるんですか?」 大家「あー、大輔さー、公園で何かあった?」 大輔「は、はい? な、何でですか?」 ああ、明らかに動揺してるよ、俺。 大家「いや、最近帰るの遅いからさ。それに、珍しく料理失敗してたし」 ああ、確かに。 梨亜と話したりしてたせいで、帰るのが遅くなってたしな…… 別に隠すことでも無い気がするが、何となく嫌なんだよなー。大家さんに話すの。 ここは、誤魔化しておくか…… 大輔「い、いや、少し遠くまで歩いてみてるんですよ。だから遅く―――」 大家「女?」 俺が言い終わらないうちに、重ねてくる。 しかも、当たってるしね! 誤魔化せてないSHINE! 本当、なんなんだこの人は…… なんかもう、どうあがいても隠せる気がしないし、話すしかないか…… 大輔「……何で分かるんですか。あー、えーっと、一昨日の話なんですけど……」 大家「あ、冗談のつもりだったんだけど、本当に女絡みだったんだ」 ……自爆した。 仕方ないので、そのまま続けて一部始終を話した。 脚色なんてしてないです。……少ししか。 大家「んでさ、大輔はその女の子が好きなわけ?」 ニヤニヤしながら、尋ねてくる。 だから嫌だったんですよ、この人に話すのは。 大輔「い、いや、そういうのは……よく分からん……と思う……」 大家「ふーん、ま、別にいいけどね。前に比べると、随分進歩したじゃん」 【場面転換】 【背景:黒】(もやもやと暗転) 【BGMSTOP】 確かに……あの頃に比べたら、かなりマシになった。 俺が引きこもり始めたのは、大学に入学してしばらく経った頃。 原因は、大学での人間関係の縺れ。 引きこもるのはこれが初めてではなかった。 俺は高校時代にも、両親が死んだことで、引きこもっていた。 それでも、克服することは出来た。 それは多分、友人の支えがあったからだと思う。 だけど……今回の場合は……ケースが違う…… 今まで築き上げてきたものも全て壊れてしまった…… 友人たちも全て……失った。 でも、ただ一つ、大家さんとの関係だけは無くならなかった。 大家さんは俺が引きこもっている間、ずっと支えていてくれた。 俺が公園に出るようになったのも、大家さんに言われたからだ。 あれは確か、俺の引きこもりも大分落ち着いてきた頃…… 【場面転換】 【主人公の部屋】(もやもやと) 【BGM:なつかしいあの頃】【画面効果セピア】 大家「そろそろ、外に出てみよっか?」 夏ももう終わりか。 なんて、ぼうっと考えているところに、飛び込んできた言葉。 また、冗談か何かかと思って聞き流そうとしたが、大家さんはどうやら本気らしい。 俺が引きこもり始めてから、数ヶ月。 初めのうちは、毎日やってくる大家さんを鬱陶しく思い、突っぱねていたが、今では大分落ち着き、普通に接することが出来ている。 ここまで立ち直れたのも大家さんのおかげだし、今でも俺の引きこもりを克服させようとしてくれている。 しかし、これは幾らなんでも急すぎないだろうか。 大家さんとは、今までどおりに接することが出来るようになったものの、それでも未だ他人を見るだけで幻聴が聴こえてくる。 そんな状態で外に出れるわけがない。 大輔「……い、いやぁ……、ま、まだ無理……だと思います……」 大家「まだやってもないでしょ? 無理なら無理で直ぐに部屋に戻ればいいしさ。……外に、出たくない?」 ……外には出たい。 今までみたいに、堂々と人の居る場所を歩きたい。 ……けど、他人会うのが怖い。 大輔「出たくないことも……ないですけど……、で、でも、やっぱり無理っていうか……怖いっていうか……」 俺がハッキリしないでいるのに痺れを切らしたのか、大家さんは立ち上がり、俺の手を掴んで、そのまま玄関へと向かった。 大輔「ちょ、ちょ、ま! ス、ストップ!」 必死に静止するが、華麗にスルーされる。 大家「どうせ今は夜中だし、人居ないでしょ。大丈夫大丈夫」 そう言われて、結局俺は外に連れ出されてしまった。 【場面転換】 【背景:アパートの外】ひだりからめくり 【SE:扉】 何ヶ月ぶりだろうか。 食事なども大家さんの世話になっていたため、引きこもり始めてから一度も外に出ていない。 久しぶりに見た外の世界。 月や星が綺麗だ。以前は、こういうものに目を向けていなかったことな…… 当たり前に感じていたものも、今では新鮮に見える。 大家「ほら、出てみてよかったでしょ?」 その言葉に自然と頷く。 大家「明日からさ、夜に散歩するようにしなよ。最初はアパートの周りだけ。その後で、少しずつ距離をのばしていけばいいからさ」 突然の提案。 少し考えたが、俺は深く頷いた。 久しぶりに外に出たことで興奮していたし、外の世界に魅力を感じていたのもあったと思う。 それに今は深夜。アパートの辺りを通る人なんて殆ど居ない。 俺に、外に出ることが案外、何でもないことなのだと錯覚させるには十分だった。 ……こうして、夜の散歩が始まった。 【場面転換】 【背景:主人公の部屋】 (もやもやと)【BGM:すずめのちゅちゅん】 夜の散歩を始めて、もうすぐ一年…… 散歩を始めてから、初めて他人に出合ったときは、正直挫折しそうになった。 元々、雰囲気に流されて始めたようなもの。 そこでやめても、おかしくなかったと思う。 それでも、散歩を続けようとしたのは、やはり大家さんが励ましてくれていたからだ。 だから俺は今でも散歩を続けているし、距離も徐々にだが、のばせている。 もしも大家さんが居なければ、俺は今でも引きこもり始めた時のままだったと思う。 大輔「……ありがとうございます」 ……そんなことを考えていたせいか、自然と感謝の言葉が出ていた。 顔を見て言えるほどの度胸はなかったので、俯いたままだったが。 ふと、疑問が出てきた。 なぜ、大家さんは俺のために、ここまでしてくれたのだろう。 元々、めちゃくちゃ仲が良かったわけでもない。 それなのに、なぜ? 顔を上げ、大家さんに尋ねようとする。 ……が、そこには既に大家さんは居なかった。 いつの間に帰ったのだろうか。 まぁ、いいさ。今度会った時に聞けば。 そう思ったが、何となく誤魔化されそうな気がした。

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