アリーナが白亜に入ってわかったことは。

  白亜入門ガイド
 1.総勢2名。(ギルド長レオンとファリエル)
 2.すごく意外にそこそこ有名。(歩いてたら指さされた)
 3.ギルドには年金がある。(1人1500G)

ということだった。
ちなみに年金があるというのはアリーナにとっては大問題である。
「年間1500G!?換算すると剣3本っ!?」
「はい。ちなみに、ギルド長はそれ+1000Gなのですよ。」
「はぁっ!?3500G!?換算すると剣7本──っ!?」
そんな大パニック中のアリーナに、声をかけるヤツがいた。
「なに騒いでんだ。まさかアリーナ、知らなかったのか?」
レオンである。
しかしそんなレオンにアリーナは牙を剥く。
「これが騒がずにいられるかっ!!剣7本だぞっ、7本!!」
「ギルドは維持するために金がかかるんだよ、それに遊びでやるヤツがいないようにもな。だがまぁ、メンバーが増えれば払う料金もさがるぞ。」
それを聞いたアリーナの目は輝きだした。
「さがるのかっ!!」
そして「メンバー探してくるっ!」といってとっとと部屋を飛び出してしまった。
そしてその名残を見ながらファリエルが
「アリーナさんって、素直で元気でいいですね・・・。」
と言った。しかしレオンは
「それ、褒めてんのかけなしてんのかよくわかんねぇな。」
とつっこんだ。

「私の短所って、素直で元気なところだよね・・・」
勢いづいて部屋を飛び出してきたアリーナは、後悔していた。
「メンバーって誰でもいいのかなぁ・・・条件とかあるんじゃ・・・?でも私の時はおもしろいってだけで入団させたし、ギルド長の意見を聞かなきゃ・・・でも、すごすご帰って行くのも癪に障るしなぁ・・・」
アリーナの短所は素直なところと元気なところと意地っ張りなところである。
「ぅ、ん・・・頭、痛いなぁ・・・」
そして、少し頭が悪いこと。
昨日の冒険者入職テスト(アリーナはもう忘れているギルドの年金のこととか、魔物の種族のこととか。)に受かるために、もう1ヶ月も前から勉強していたのだ。しかし、それでもギリギリだったのだ。
「このごろ、いろいろあり・・すぎて・・・」
やがて、アリーナの瞼はさがっていった。
「も・・か、して、アリ・ナ!?」
誰かが自分を呼ぶ声が、聞こえた気がした。

「ふぇ・・・?」
気がつくと、また知らない部屋だった。
「あ、アリーナ気がついた?びっくりしたよ、アリーナを見つけたと思ったら急に倒れるんだもん。」
そして、知らない少年が話し掛けてきた。
「ここ、どこ?あなたは・・・誰?」
アリーナがそう聞くと、少年は凍ったように動きを止めた。
「アリ・・・ナ?俺だよ、ケイト!」
「私の、知り合い・・・?」
アリーナが今度はそう聞くと、ケイトは怒ったように詰め寄ってきた。
「そうだよ!村で家が近くて、毎日遊んでたじゃねぇか!」
「幼なじみ・・・?ごめんね、私、昔の記憶がないの・・・。」
「記憶がない!?」
ケイトはウソだ、と思った。
ケイトとアリーナが幼なじみなのは確かだ。だって、アリーナがつけている頭飾りと首飾りは昔アリーナの誕生日にケイトがプレゼントしたものだからだ。
そして今もアリーナのコトが忘れられなくて、さっき街中で再開したときは本当に嬉しかったのに。それが、記憶喪失?
「なんで、だよ・・・昔は仲良かったのにアイツに離れ離れにされて、今度は記憶喪失?冗談じゃねぇよっ!!」
アリーナはケイトが急に怒鳴ったのでビクッと体を強張らせた。
「・・・ケイト?私の記憶がなくて、怒ってるの・・・?」
「そうじゃ、ない・・・そうじゃない!アリーナは悪くない、悪いのは・・・アレンだ!」
「アレン・・・?」

─「アリーナ・フォースはどいつだ?」
 ある日突然そいつはアリーナの村に来て、アリーナの名前を呼んだ。
 「私、呼ばれてる・・・」
 ケイトと遊んでいたアリーナはそう言って、そいつの方に行こうとした。
 が、ケイトがアリーナの服の裾を掴んでそれを阻んだ。
 「ケイト?」
 アリーナは不思議そうにケイトを振り返った。
 「あのおじさん、嫌な感じ・・・アリーナ行ったら、ヤダ・・・」
 ケイトは泣きそうな顔で首を振った。
 「大丈夫だよ、すぐ戻ってくるから。泣いたらダメだよ?」
 アリーナは無垢な笑顔でそう答えて、ケイトを抱きしめた。
 「アリーナが言うなら、泣かない。待ってる・・・。」
 ケイトも精いっぱい笑ってアリーナを見送った。
 しかし、アレンはアリーナをケイトから奪い、何も言わずに立ち去ってしまったのだった。
 でも、ケイトはアリーナとの約束を守って。
 泣くのを堪えて、ずっと玄関でアリーナの帰りを待った。
 ずっと、帰ってくると信じて。

「アレン・・って、師匠のこと?」
アリーナはまだ痛む頭で聞き返した。
「師匠?師匠って、あいつアリーナの何なんだよっ!?」
「え・・・、私の何って、銃剣術を習ったみたいだけど、それだけでしょ・・?」
それに、そんなこと聞かれたって記憶がないのだから答えられない。
「そう、か・・・。」
ケイトは下を向いて何かブツブツ言ったが、納得したのかまたアリーナの方を向いた。
「それでアリーナ、今どこに住んでるんだ?」
「え・・・っとぉ、今までは宿屋を転々としてたけど、いまは白亜の集会所かなぁ?」
「白亜・・・?アリーナ、ギルドに入ってるのか?」
アリーナはレオンとファリエルの顔を思い浮かべて少しクスリと笑った。
「うん、つい昨日からね。」
するとケイトは即答してくれやがった。
「かわいい女の子、いるっ!?・・・じゃなくて。怪しい男はいないなっ!?」
「・・・今ので私の、ケイトに対する好感度はグ───ンとさがったよ・・」
アリーナはふてくされたように頬をふくらませた。
「助けてくれてありがと。みんなが心配するから、私帰るね。」
アリーナはスパッとそう言ってベッドから立ち上がった
つもりだった。
「ぅわ・・・っ?」
頭がクラッときて、後ろに倒れそうになった。
しかも後ろからケイトにトン、と抱き留められてしまった。
「まだ熱あるんだから、動き回っちゃダメだろ。その、集会所?まで送ってくから、場所教えてくれ。」
そしてケイトに肩に担がれてしまった。
「はっ、は──な──せ──っ!!っていうか重いでしょ、降ろしてっ!」
ケイトの肩の上でジタバタと暴れるアリーナに、ケイトはにっこりと天使のような悪魔の笑みで切り返してきた。
「ぜんぜん?っていうか想像してたより軽い。それよりー、暴れたら熱上がるんじゃない?気ぃ失ったら何されるかわかんないし、大人しくしといた方がいいと思うけどなー・・ま、俺としては気ぃ失ってくれた方がいいんだけど♪」
「ぅッ・・・」
アリーナのもう1つの短所。それは、論理や理由をつけられると反論できないこと。
結果的にアリーナに抗議の余地はなく、大人しく白亜の集会所(というかレオンとファリエルの住んでる家)のアリーナの部屋(空き部屋がたくさんあったのでもらった一室)まで担がれたまま案内したのだった。
人々の視線が痛かった。
最終更新:2009年05月11日 23:34