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「・・・ヒマ」
今日も今日とて病院暮らし。しかも動けないときたらそりゃあヒマでヒマでしょうがない。
「アリーナ、それで32回目。」
この自分としたことが「離れるな」とか何とか言っちゃったおかげで、ケイトはずぅ────っとアリーナについてるし。
「だってほんとにヒマなのに!」
そう言ってアリーナは手をジタバタさせた。
「あ───もぅっ!!なんかおもしろいことないのぉっ!?」

「アリーナさん、ケイトさんっ!」
そう言ってアリーナの病室に入ってきたのはファリエルだった。
「慌ててどうしたの?こけるよ?」
「あ、はい。そうですね・・・じゃなくてです!レオンが勝手に1人で先日の洞窟に入っちゃったんですぅ!」
「先日の洞窟?」
そう聞き返したのはケイトだった。
「『ラフィアの魔空洞』っていうウルフルが何匹も住んでる危険なところなのです!」
「ゲッ、魔空洞に1人で?そりゃヤバイな・・・」
ケイトは相槌をついた。
「はい!だから助けに行きたいんですけど、私1人では無理なのでケイトさん、一緒に来て下さいっ!」
「あぁ、もちろん!けど・・・」
「アリーナが・・」とは言わなかったけど、言いたいことはわかった。
つまり、助けに行けば当然動けないアリーナは1人になって、約束を破ってしまうと言いたいのだ。全く本当に一途なヤツめ。
「・・・別に、行ってもいいけど。」
「!よかった、じゃぁ行くけど、大人しく待っとけよ!必ず帰ってくるから!」
「大人しくって言ったって、どうせ動けないじゃない!」
「まぁ、そーゆーとこは気にすんな!じゃーなっ!」
そう言ってファリエルとケイトは部屋を出て行ってしまった。
それにしてもケイトのヤツめ。
 アリーナは人の行為をむざむざと無駄にできないので、あんなにされると「キライ」と言えないではないか。全く本当に一途なヤツめ。
「・・・ヒマ」
アリーナは33回目を呟いてみた。

───夜。
一時間ぐらいは我慢して起きていたが、さすがにずっとは我慢がきかないので、アリーナは寝ていた。人の行為を無駄にできないので、ちゃんと大人しくしていたのだ。
しかし、微かな「カタンッ」という物音でアリーナは目を覚ましてしまった。
「眠りが浅いのかな・・・。小さな音でも耳に入る・・・」
アリーナは極小さな声で独り言を言うと、上半身を起こした。
時刻は夜7時半過ぎ。ケイト達が帰ってきたわけではないだろう。
ケイトはもっとウルサイ。
しかしアリーナは一応室内をきょろきょろ見回して、誰もいないことを確認した。
「・・・やっぱり、隣の部屋の音とかだよね。誰もいるハズ・・・」
「あるぞ。」
「うわあぁぁっ!?」
アリーナは突然背後からかかってきた声に心臓が飛び出そうになった。
そいつは何か変声機とかを使っているのか、聞き覚えがあるのかどうかよくわからない声だった。だからアリーナは後ろを振り返って顔を確かめようとしたのだが、首根っこをガシッと掴まれた。
「──~っ!?」
「大人しくしとけ。さもないと握りつぶすぞ。」
「・・・あんた、誰?怪我人にちょっと酷くない?何の用?」
アリーナは不機嫌そうに聞いた。
「おっ、俺のこともちゃんと忘れてるな。というかお前はこの位ではくたばらん。だがその前に、わざわざこの俺がお前の見舞いに来てやったんだ、少しは喜べ。」
「この俺って、誰だかわかんねぇよ!てゆーかこれは絶対見舞いじゃないっ!!」
アリーナは何かこいつ気にくわねーっと思った。
「相変わらずだな。もう少し女らしくしろよ、でないとケイトクンに嫌われるぞ。」
「ウルサイッお前には関係ねぇだろ!!」
「えー、そうでもねぇだろ。」
そしてそいつはアリーナの前にメロンを差し出した。
「確か、好きだったよな?」
「・・・なんで、知ってる・・?」
確かに、メロンはアリーナの大好物だった。でも、こいつがそれを知っているのは気にくわなかった。
「アリーナ、起きてるー?」
その時ちょうど、ケイトの声がした。あとファリエルとレオンの声も。
「んじゃ、俺はもう帰るぞ。」
そいつはそれを聞いてそう言うと、「ヒマな時に解いてみろ」とかいう意味不明な言葉を残して消えた。消えたというのは本当に一瞬でパッと消えたのだ。多分、魔法か何かを使ったのだろう。
「ゲホッ──コホッ──」
アリーナは急に首を圧迫していた物が消えたので、咳き込んでしまった。
「アリーナ、どうした?」
部屋に入ってきたレオンがそう聞き、ケイトが背中を擦ってくれた。
「───~~あんにゃろーっ」
アリーナは恨めしげな目線であいつがいたであろう場所を睨んだ。
「あいつって、誰か来たのか?」
「すげー失礼なヤツ!首絞めて見舞い来たとか言いやがって!・・・メロンくれたけど。」
アリーナは枕元に置いてあるメロンをジ──ッと眺めた。
「アリーナさん・・・食べたいんですね。わかりました。今切りますから、少し待ってください。」
「やったぁっ!」
アリーナは手を上げてバンザイをした。
「アリーナってメロン好きなのか?」
「好きっ!大好物っ!」
アリーナは嬉しそうに笑った。
「あら・・、このメロン、手紙がついてますよ・・?」
ファリエルはそう言って、1枚の紙切れをアリーナに渡した。
「手紙?」

そのお手紙には、こんな事が書いてあった。

  親愛なるアリーナへ
 活発明快なそなた、大変に暇を持て余している事であろう。	
 しかし此の頃はケイト氏との愛を育んでいる様にて大変に結構。
 して、ここに一つの設問を残さん。汝の釈したい事柄である。
 エルネトホウノ、ンルヲゾ。ホコオサシュイネケテホヅメロシルツアソテノサヲボアゴ。
 ロルノオトサア・・・。
 ケイト氏と仲を良くして解いてくれ。以上。	

「愛をはぐくむ、だとぉ~?」
アリーナの怒りは、湯気が見えるほど凄かった。さっきのメロンの喜びは何所へやら。
「まぁそれは無視しろ。」
ケイト的にはあんまり無視してほしくないのだが、レオンが言った。
「そうですね・・・句読点の後に『ん』がくることから、普通の読み方では、解読出来なさそうですね・・・」
ファリエルはレオンの指示通りそこは無視して、冷静に暗号を分析しようとしている。
「そうだな。でもこいつ、なんでアリーナがこの病院に入院してるとか知ってんだ?」
ケイトが聞いた。
「私と喋る時、変声機っポイのを使ってたけど。」
「変声機?」
「うん。でもまぁ、何はともあれ・・・」
アリーナはニヤリと不敵な笑みを浮べた。
「『ヒマ』は33回目で終わりそうだね。あのクソヤロー見てろよ、絶対解いてやるから!」
「おいアリーナ、女の子がクソヤローとか言うもんじゃないぞ。」
「!おまえ、あいつと同じ様なこと言って・・・いやな事思い出した!」
アリーナはふて腐れたような顔で言った。
「やっぱり今日は、最低最悪な日だぁっ!」
アリーナは全部あいつのせいだと思うことにした。
最終更新:2008年06月20日 23:32