「エルね、途方の点んるを・・・?ぁあ゙っもぅ、わっかんねぇっ!」
アリーナはそう叫んで持っていた暗号と鉛筆を放り出した。
「そもそも私頭悪いし!セツモンとかシャクとか読めなかったし!私には無理だって!」
しかしそんなアリーナをケイトが宥める。
「まぁまぁ。どうせ暇なんだし考えてみればいいじゃん。頭も良くなるかもよ?」
「そんなにすぐ良くなったりしたら苦労しないよっ!!」
アリーナはガオゥとほえた。
「アリーナさん、差し入れです」
その時ドアがノックされ、おぼんを持ったファリエルが入ってきた。
「あっ、メロン──!」
あいつが昨日置いて行ったメロンは結局食べなかったので、今日ファリエルに切ってもらったのだ。
「えへへ・・・お見舞なので、果汁100%のメロンジュースとか作っちゃいました・・・」
「ほんとーっ!?ファリエルありがとーっ!」
今のアリーナは、子犬がシッポを振っている感じである。
いつもこんなのだったらかわいいのに・・・とケイトは内心でボソッと呟いた。
「ファリエル料理上手だねー。」
「いえ・・、いつもレオンと2人だったから、料理を作るのは私だったので・・・」
「んー・・ソウシソウアイってヤツ?」
アリーナがスプーンを銜えながらそう言ったとたん、ファリエルの白すぎて不健康的な顔が、これまた赤すぎて不健康的に染まった。
「相思って、え・・そんな、ちがいます・・・私とレオンは、まだそんな・・・」
「ちょっとマテ、アリーナ。相思相愛ってイミわかってんのか?」
「え?な・・・仲が良いって意味じゃないの?」
「ぅあ、アリーナさぁん・・・」
ファリエルが涙目でアリーナの間違いを訴えた。
「へ!?何か違うの!?」
「意味知らないのに適当に使うなよ・・・」
ちなみに「相思相愛」は。
夫婦などが愛し合っている様子 のこと。
「えーっと?」
アリーナがオロオロしているところに、ケイトが小声で耳打ちした。
「ま、とりあえず謝っとけ。」
「あ、うん。ファリエルごめ・・・」
「アリーナ入るぞー。」
その時、完璧なタイミングでレオンの声がした。
「ぅあっはい、どうぞっ!?」
「バカ、待ってもらえよっ!?」
「だだだって、とっさにぃぃ~」
今度はアリーナが涙目になってケイトに訴えてきた。
ので、ケイトはそれ以上アリーナを責めることができなくなった。
「どうしたんだお前ら?」
アリーナの病室に入ってきたレオンが、潤んだ目でケイトに取りすがっているアリーナとそれに顔を赤くして対応しているケイトとお盆を持ったまま泣きそうになっているファリエルに聞いた。
「ああぁっ、なんでもないからっ!気にしたら負けだぁっ!!」
「あ・・そうなのか?というかそれ以前に何に負けるんだ?」
「気にしたら負けだからっ!!」
必死になって場を取り繕うケイトにレオンは「・・・そうか。」と頷いた。
「あ、そうだ。レオンもメロンジュース飲むか?ファリエル、人数分あるんだよな?」
ファリエルはそのケイトの問いかけに何度もコクコク頷いて返した。
「ファリエルが作ったのか?」
ファリエルはそのレオンの問いかけにさっきより4倍ぐらいコクコク頷いて返した。
いや、頷きすぎだって。首がカクカクいってるし。
「メロンだー」
アリーナも顔をゴシゴシこすってからメロンジュースを飲んだ。美味だった。
「あ・・・そうだ。」
レオンはここへ来た用件を思い出して、持っていた紙を拡げた。
「頼まれてた五十音表を持ってきた。」
「んー・・レオンは何か思いついた?」
「全くダメだ。」
ケイトはそんなアリーナとレオンの会話を聞きながら、アリーナが放り出したままだった暗号と鉛筆を拾ってきた。
「エ・ル・ネ・ト・ホ・ウ・ノ・・・だろ?」
ケイトは暗号と五十音表を見比べながら単語に丸をつけていった。
「やっぱわかんないねー」
アリーナは目で丸をつけるケイトの手を追いながらぼやいた。
「そう簡単には解けないか・・・」
ケイトも溜息をついた。
「でも、これはアリーナさんが知りたい事だって言うですし、がんばって解きましょう!」
ファリエルはそんな2人を勇気づけるように言った。
「・・この暗号作ったヤツ、ひねくれてるな・・・」
レオンのそんな呟きに、アリーナも
「はいはいっ!私もそう思うっ!!」
と、わざわざ手まで挙げて声高々と主張した。
それからみんなでうーんと悩むこと約2時間。
やっぱり解けずにもう9時なのでみんなには帰ってもらった。
ただケイトは残ったが。
こいつは病院の消灯時間まで毎日残っている。(消灯は10時。)
「ふわぁぁ~」
あくびをついたのはアリーナ。さすがにずぅっとこれだと退屈にもなってくる。
「ウ・リ・ヌ・テ・ヘ・イ・ネ・・・」
「なにそれ、アリーナ?」
アリーナは涙の出た目を擦りながら答えた。
「暗号を1つ前にずらして読んだヤツ。んでちなみに後ろにずらすとー・・・」
ケイトはそのアリーナの言葉を苦笑いしながら聞いていた。が、
「オ・レ・ノ・ナ・マ・エ・・ハ・・・っ!?ケイトっ、これっ!?」
そのアリーナの言葉に目を見開いた。
「マジッ!?」
「ほんとだよっ!ほらぁっ」
「お・れ・の・・・ほんとだ・・・。」
「次よもっ、次っ!」
アリーナはそう言いながら、ケイトの持っている五十音表を横からのぞきながらその次を読んでいく。
「俺の名前は、ア・レ・ン・ダ・・・?うそ・・・っ」
アレンって・・師匠の名前?
「マ・サ・カ・シ・ショ・ウ・ノ・コ・ト・マ・デ・モ」
やっぱり師匠のことなんだ・・・。
「ワ・ス・レ・テ・イ・タ・ト・ハ・シ・ン・ガ・イ・ダ」
「アリーナの記憶が無いって知ってんのか・・・」
「えぇっと・・ワ・レ・ハ・カ・ナ・シ・イ・・・だとぉっ!?」
アリーナは思わず暗号をクシャリと握り潰した。
「こいつ何様のつもりだあぁっ!!私で遊んでんのかっ!?ふざけた暗号寄越しやがって!!」
─俺の名前は、アレンだ。まさか師匠の事までも忘れているとは心外だ。我は悲しい・・・。
うん。確かにアリーナで遊んでいることは間違いないと思う。
くそっ、にっくきアレンめ・・・アリーナで遊んでいいのは俺だけだ!!
「何かとてつもない時間の無駄遣いをしたような気がする・・・!」
アリーナはワナワナ震えていた。
そして、ベッドから勢いよく飛び降りた──ってえぇっ!?
「アリーナ!?まだ入院して3週間ぐらいしか経ってないのに・・・!?」
「3週間もありゃ充分だ!治った!とゆーかもう我慢できない大人しくするなんてっ!」
アリーナは右手を天に向かって突き出した。
「ケイト!ムシャクシャするから敵倒しにいこっ!ダンジョン潜るぞぉっ、体なまってるかもしれないし!」
「これからっ!?っていうかそれはさすがに担当医が許してくれないんじゃ・・・」
するとアリーナは振り返って頬を膨らませた。
「ケイトは真面目だよ。黙ってればいいのにー。・・・まぁケイトが言うなら仕方ないかぁ・・レオン家に帰ろっ!」
アリーナは元気な笑顔でそう言った。
「あとさ、やっぱり頭は良くなんなかったよ?」
そして、意地悪っぽくそう笑った。
最終更新:2008年07月26日 23:51