「完全に囲まれたな・・・。」
レオンが「白亜」の四方を囲むサムトたちを見てそう言った。
「んなのん気な事言ってる場合じゃないだろ!!」
ケイトが弓でサムトを射抜きながらそう言った。
「ど、どうしましょう・・・」
ファリエルがオロオロしながらそう言った。
「ま、1つわかった事は──」
アリーナが銃でサムトを乱射しながら言った。
「アリの巣は、つつかないほうがいい・・・ってことだね。」
その言葉に白亜全員が頷いた。
事の発端は、アリーナがこう言った事にある。
「ダンジョン行こう!」
ケイトはそれまでのことすじを知っているので苦笑いしていた。
「ふむ・・、白亜全員でダンジョンへ行ったことはまだなかったよな・・。よし、アリーナの退院祝いも兼ねてどっか行くか。」
レオンはすんなりそれを認めた。・・っていうか退院祝いって、普通何か食べにいくとかじゃないのか・・・?
ファリエルはレオンの意見に反対する気なんて無いみたいで、コクリと頷いた。
「それじゃぁどこに行くかだよねー・・・。」
アリーナはうーんと考え込んだが、冒険暦1ヶ月未満(しかもその内の約3週間は病院暮らし)なので、良い案なんて浮かんでこないというか、あったとしても思い出せない。
「あ・・、そうだ。18-2のとこなんてどう?」
ケイトがある情報を思い出して言った。
「18-2って、確か南西のほうのとこだよね?」
アリーナが一生懸命記憶をたどって聞き返した。
「そうそう、結構昔のヤツ。」
この世界にある公式ダンジョン(国に認められているもの)は場所ごとに番号がついていて、現在は1-1から63-45まである。そしてその番号は古い順からついているので、18-2はもう古いほうである。
「そこに手軽に稼げるサムトが繁殖してんだって。」
サムトというのは確か、アリの仲間のことだったはず。
アリーナの記憶が正しければの話だが。
でもアリか・・・。それなら確かに手軽そうだ。というか、踏んだら殺れるんじゃないのか?
「私賛成!稼げるならなおよしっ!」
アリーナはハイハイッと挙手して主張した。
「ふむ。俺も別にかまわんが。」
レオンも賛成してくれた。
なら、ファリエルの意見は聞くまでも無いだろう。
そして思ったとおり、ファリエルも頷いてくれた。
「じゃ、早速出発するか。」
ケイトが言った。が、ファリエルが
「え・・、今から行くんですか?」
と引き止めた。
「ん?何かファリエル用事あんの?」
「いえ、別にそういうわけではないのですが・・・魔法石の用意をしておいたほうが、属性魔法が使えるので苦戦をしないかと・・・」
そのファリエルの言葉にあぁナルホド・・とアリーナは思った。
この世界のほとんどの魔法は触媒を使って発動するものだ。魔法の種類は呪文の長さや発動の仕方によって変わるが、その触媒の種類によってもいろいろと変わる・・らしい。
ちなみにこの情報はある魔術師とその弟子らしき人が話していたことを盗み聞きしたものだ。しかしたぶん、魔術師が言うのだから確かだろう。
でもアリごときにそんなに用意しなくてもいいだろう、とアリーナは思った。だから
「別に主な魔法が使えたら大丈夫でしょ。」
と言った。
「そうでしょうか?ならよいのですが・・・」
とファリエルも納得してくれた。
「んじゃ、今度こそしゅっぱ~つ!」
ケイトが威勢良くそう言った。
ダンジョン 18-2
「確かに、古い・・・」
アリーナはそのダンジョンを前に溜息をついた。
ダンジョン18-2はほとんど整備がされておらず、雨のせいかジメジメと湿っていた。
アリの好きそうな場所だ。と、現実味がわくほど。
「ケイト、今日はどの武器だ?」
するとレオンがケイトに問いかけた。
「どの武器・・って?」
アリーナはキョトンとした顔で聞き返した。
「俺は剣と槍と斧と弓が使えるんだ。ちなみに今日は槍を使う。」
ケイトがそう答えたので見ると確かに背中には槍を背負い、右の腰には剣をつけ、左の腰には斧を吊り、ジャケットの内には折りたたみ式の弓がしまってあった。
「4つも使えるんだ・・」
アリーナがまじまじと見ていると、隣で「シャキッ」という音がした。
振り返るとレオンが抜き身の大刀を構えていた。
「うわ、私の剣と同じぐらいじゃん・・」
アリーナは背中につけている愛剣と同じぐらいの長さなので驚いた。
そしてファリエルを振り返ると先端にクリスタルっぽいのがついた細い杖を握っていた。
それを見て、改めて今日初めて「白亜」全員で戦うんだと実感がわいてきた。
「うっし、がんばるか!」
アリーナは太もものキャノンストックから銃を出し、背中から大剣を抜き、そう気合を入れた。
「サムトは集団で襲ってこなければ、何ともない敵だ。」
洞窟内部で、レオンが先頭を歩きながらそう言った。
今歩いている道はちょうど大人2人が並べるぐらいの広さなので、先頭にレオン、その二つ後ろにファルエル、ファリエルの右斜め前をケイト、ファリエルの左斜め後ろをアリーナが歩いている。
ちなみにまだサムトには会っていない。本当に繁殖しているという情報は正しいのだろうか?ケイトの情報なので、ますます怪しい気がする。早く敵を倒したいのに!
アリーナは前を行くケイトの背中をジィ───ッと恨めしげに見詰めた。
するとそれに気がついたのか、ケイトが振り返ってアリーナを見た。
アリーナはアッカンベをしてやろうとしたが、何かに足を取られてバランスを崩してしまった。
「っとと、あぶねー・・」
アリーナは自分をこかそうとした原因のものを振り返った。
するとそこには、大きな穴があいていて。
「何、これ・・・」
中を覗いてみても、途中で右や左に折れ曲がっていて、奥まで見通せない。人工的に作られた物のようだ。
「・・・」
アリーナは今のムシャクシャを発散するように、近くにあった手頃な石を3つぐらい投げ込んでやった。
「ん?どうかしたか?」
レオンがついて来ていない後ろの3人に気が付いて振り返った。
ケイトはアリーナを見ていたし、ファリエルは止まったケイトにつられて後ろを振り返っていたし、アリーナは穴に石を投げ込んでいた。
その光景は、自由気侭の自分勝手って感じ。
「・・・。」
レオンはこのギルドの将来に少し不安を覚えてしまった。
「なぁ、アリーナそれサムトの巣・・・じゃないのか?」
ケイトが恐る恐る聞いてきた。
そぉんなバカな。アリの巣にしてはでか過ぎるだろう、いくらなんでも。
しかしレオンも相槌を打った。
「あぁ、確かにサムトの巣だな。」
「へ?うそでしょ、こんなでかいのにアリが・・・」
するとケイトとレオン(とファリエル)が哀れんだ様な目でアリーナを見た。
「え、何!?もしかしてまた私違うの!?」
アリーナは3歩ほどあとずさった。
「アリーナ、サムトってどれぐらい?」
ケイトが聞いてきたのでアリーナは、右手の親指と人差し指で小さな丸を作って見せた。
「アリーナさん・・、人は誰だって間違うときがあるのです・・・」
ファリエルが励ましてくれた。
ああぁ・・・、私やっぱりまた違うんだぁ・・・
アリーナは泣きたくなってきた。
「ま、とにかく逃げるぞ。さっき石を投げ込んだんだろう?」
レオンの言葉にアリーナは首をかしげた。
「確かに石は入れたけどさ、なんで逃げるの?」
「昔から言うだろ?蜂の巣突付けばなんとやらって・・。要するに蟻も同じってことだ。」
いやあの、肝心なとこが「なんとやら」だと説得力全然無いんですけど・・・。
アリーナのその心の中の突っ込みに答えたのはレオンではなかった。
突如「ドドドド・・・」と地面が揺れ出したのだ。
最初は地震かな、とも思ったがそれはただの
現実逃避っていうヤツだ。
それはたぶん・・・こちらに怒って向かって来ているであろうサムト達の足音。
なんせ、1匹に6本も足がついているのだから。そりゃあ人間が4人来るよりアリが4匹来る方がうるさいだろう・・とか考えちゃうのも現実逃避ってヤツで。
「走れ!」
そのレオンの掛け声で逃避したい現実に引き戻されたアリーナは、あまり体力の無いファリエルを必ず前におきながら力の限り走るのだった。
「あいつら・・頭良いみたいだ。」
無我夢中で走る中、ケイトがポツリと呟いた。
どういう意味だろう・・・とアリーナが考えていると、前のほう、つまりアリーナたちが行こうとしている方向から「ドドドド・・・」という足音が聞こえてきた。
つまり、回り込まれたんだ・・・。
「どお、するのぉっ!?」
アリーナは息切れのする中レオンに聞いてみた。
ファリエルはレオンに従うので黙っているのではなく、もう喋ることもできないほど辛いのだろう。髪が乱れるのも構わず必死で走っているのだが、最初よりスピードが落ちているのは傍目でもありありと伝わる。
「・・迎え撃つしかないんじゃないのか?」
レオンがアリーナが思いつく唯一の、そして最低最悪の打開策を口にした。
「・・逃げてみるか?」
ケイトが一応そう言ったが、四方八方から足音が聞こえてきて望みがかなり薄い事はみんなもう百も承知だ。
「よし、じゃあファリエルを背中に三人で囲め。ファリエルは広範囲の指定魔法の準備を。ケイトは最初に弓を用意しておいてくれ。アリーナは俺が前に出るから銃で敵を狙撃、フェリエルから離れないでくれ。」
「はい・・・。」
「おう!」
「うん」
こうして「白亜」VS「アリンコ軍団」の壮絶(?)な戦いが始まった。
最終更新:2008年08月21日 22:51