頬を、冷たい物が伝っている・・
2人の少女が、僕を覗き込んでいる・・
──心配、シテクレテイルノ・・?
ほら、やっぱり、僕は幸せだ・・
「・・大丈夫。心配無いよ・・」
僕は、その優しい少女達にこれ以上気を遣わせない為に、微笑みながらそう伝えた。
「でも、純・・ずっと、泣いてた。夢見、悪かったの・・?」
「・・うん、そんなとこ。・・えっと、今何時?」
僕が話題を変える為そう尋ねると、華美月がちらっとテントの外に目をやった。
「7刻半過ぎ・・と言った所だ。」
「・・へ?何・・時計とか、あるの?」
僕は何故、華美月が外を見ただけで時間が分かったのか理解出来なくて、そう聞き返した。
「違う違う、太陽の位置だよー。」
笑って答えてくれたアイリのまた意味が分からない説明に、僕が顔に疑問符を浮かべる前に、ローが付け足してくれた。
「我等ハ、太陽ガ昇ルト同時二起床スル。ソコデテントヲ東向キニ張ッテオキ、朝日ガ入ル様ニシテアルノデ、ソコニ太陽ヲ見ル事ガ出来ル。ソレデ、華美月ハ太陽ノ位置ヲ確認シ、時刻ヲ当テタノダ。」
それはまた・・良く考えてやっているんだなぁ、と感心した僕に
「即ち、お前は寝坊したのだ。・・出発するぞ」
と、クロ-クが声を掛けた。
確かに太陽は今地平線より上にあり、「朝日が昇ると同時に起床」は出来なかったが、クロ-クの言動にはいちいち皮肉が込められている感じがする。しかし、これは寝坊したこちらに非があるので、僕はサッと目の辺りを拭って、そそくさと起き上った。
「今日は、西南の方角を行く。少刻が過ぎれば森に入るはずだ。心得ておいた方が良い。」
華美月が、僕に今日の予定をそう話してくれた。
「森?また、何でそんな所を・・?」
「純、私達の最優先事項は、ラナ様に従う事。そのラナ様が、純を連れて来てって言った。だから、私達は純を連れに来たし・・フィリックに奪われない様に、護る。分かるよね?」
アイリが顔の前に指を立てて、そう言った。・・何時もは意味が分からないアイリの説明も、何故だろう。「ラナ様」の事になると詳しくなり、意味も分かる。
まぁ、そう言う訳で意味は分かったので、僕はアイリの「分かるよね?」と言う問い掛けに、頷いて返した。
「ラナ様は我等に、定期的に連絡して下さる。故に我等は、次にラナ様が連絡を下さるまで、純を守護する。ならば我等はフィリックに襲われない・・見付からない場に居るべきだ。」
「分かったのなら行くぞ。お前は我等に着いて来ていれば良いのだ。考える事等何も無いだろう?」
「クロ、言い過ぎだよぉっ!ジュン、気にしなくて良いからね?ほら行こっ」
華美月の、相変わらずな無駄を省いた言動。クロークの、棘のある言葉。アイリの、気遣いの慰め。其の肩から主人を黙って見守る、ロー。
そして・・ポン、と背中を軽く叩かれて・・──あぁ、これが現実で、僕は、戻って来れたんだ・・・──という実感が、やっと湧いて来た。
──こっちの世界が夢ではなくて、現実で、僕は今嬉しいのか?喜んで、いるのだろうか?
・・分からない。今の僕ではまだ、答えは出せない。
そう、その答えを出すには、やはりまずラナとフィリックに会わなくては。まずは、其れからだ。そうでないときっと、僕はまた棒に頼る事になると思う。
じゃあ、ラナに会うためには・・僕は、この人達に着いて行くしかない。守ってもらう事しか出来ない。
今、僕が選べる選択肢はそれしかない。それが正しいのかどうかなんて、僕には分からない。
しかし僕がそれを嬉しく思い、喜んでいるのは、確かだと思う。
最終更新:2008年09月01日 19:09