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体中が、痛い。
その中でも特に右足が。
「ふぅ・・」
これはさすがに動けないなー・・と思いながらアリーナは軽く嘆息した。
アリーナがいるのはもちろん、穴の中。ちょっと小さいが、歩きまわれる位の広さはある穴だ。
まぁ歩きまわれるといっても、今のアリーナに確かめる術は無いが。
足を少し動かすぐらいはできるが、立ち上がって歩くなんて無理だ。しかもご丁寧に頭のえらーいサムト君は手枷足枷までしてくれている。絶望的だ。
でも多分、みんなが助けに来てくれる。
白亜のみんなが。
その中でも約二名はお人好しなので確実だし、あとの一名はさっき落ち込ませてしまったがアリーナのことが本当に好きなら来てくれるだろう。
とゆーか、もし来なかった場合にはこのストレスの解消も兼ねてブッ飛ばす!
「とか気楽に思ってられんのもあいつらのおかげだな・・・」
感謝だな、とアリーナは小さく呟いた。
と、その時何かの気配を感じてアリーナはすぐさま穴の入り口を睨んだ
「あら、気付かれたの?」
そして、唖然とした。
入り口から入ってきたのはアリーナと同い年かそれ以下に見える格好の少女だった。
いやあの、この風景にはビックリするほどアンマッチです。はい。
フリルのスカート+クルクルの金髪。
見た目、どっかのお嬢様って感じ。
現実、なんでサムトの洞窟にいるのって感じ。
「あら、そんなに驚かれなくても。」
少女はコロコロとお嬢様笑いっぽいのをしたが、無理。絶対。
少女はアリーナのすぐ近くまで寄って来て、ストンと隣に腰を降ろした。
「・・あんた、誰?」
「あ、もおあの子達ったら!」
しかし少女はアリーナの問いには答えず、アリーナの手枷と足枷を見てそう言った。
そしてそれらに手を当て、あっという間に外してしまった。
「え・・今、どうやって・・?っていうか、敵じゃないの!?」
アリーナに付けられていた枷は縄だったがすごく頑丈で、アリーナも試してはみたが全く緩まなかった。
「ふふ、それは秘密ですわ。私の名前はシャルトス。あなたのお名前は?」
そして例のごとく、アリーナの問いには答えずに質問してきた。
「え、あ・・アリーナ・・。」
アリーナはその笑い顔に悪意が感じられず、素直にそう答えていた。
「まぁ、ではアリーナ様ですね!私のことは気軽に『シャル』とでもお呼び下さいな。もしくは『犬』でも別によろしくてよ?」
「ぇあ、い、犬・・・?」
「ワン。・・もうアリーナ様ったら、ご冗談を言って・・。」
現在アリーナは頭の上に数えきれない「くえすちょんまぁく」を浮かべている。もうすぐ頭がショートしそうだ。ていうかホントに、この子誰!?しかも犬って。
「シャ、シャル・・って、何でここにいるわけ?私みたいにサムトにつかまったの?」
「んー・・、アリーナ様、それは違いますわ。」
シャルトスは困ったような笑みを浮かべた。
「それより、サムトに襲われた時にお怪我をなさいましたよね?とくに右足のほうがひどいようでしたけど、治療をいたしますよ。」
「治療・・シャルは魔法が使えるんだ?」
アリーナはシャルトスのペースに巻き込まれそうになっていた。こう性格的に、口達者な人とは合わない。
「はい。少しですけれど、きっとアリーナ様のお役に立てると思います。」
シャルトスは口元に微笑を浮かべて呪文の詠唱をはじめた。
この時アリーナは気付かなかったが、シャルトスは気の集中を行っていなかった。
そして、使われた魔法に関してもアリーナは知る余地もなかった。
「ごめんなさい、アリーナ様。でも私、あなたを気に入ってしまって・・。」
シャルトスは“スリープ”の魔法によって意識を失い、自分に倒れこんだアリーナにそう囁いた。

「ホントにこの奥にアリーナがいるんだな!?」
ケイトは走りながら前を並走するレオンにそう聞いた。
「あぁ、たぶん蟻妖王のところだろう。」
レオンは走る・喋る・敵を薙ぐの三つの事を一度にしていた。
「ぎおう・・何だそれ?」
「まぁその名のとおり蟻の王様なんだが・・」
「だが?」
ファリエルを抱えたケイトは聴き返した。するとその答えは下から返ってきた。
「人間、なんです・・。極一部の人しか、知りませんが・・現・蟻妖王は小さな女の子なんです・・」
「かわいい子っ?」
「・・・・ケイトさん・・そんなだからアリーナさんにあんな事、言われるのです・・。」
「あぁああ、それを思い出させるなぁっ!!」
ケイトは首をぶんぶん振った。
「おぃ、もうすぐ着くぞ!ファリエルは魔法の準備をしておけ!」
レオンはファリエルに振り返らずにそう指示を出した。
ケイトはファリエルが気の集中をし始めたので、真面目に前を向いて走った。
果たして、その蟻妖王とやらは強いのだろうか?そして・・
強いのなら、アリーナは大丈夫なのだろうか?
そしてまもなく。
「止まれ。」
レオンのその短い一言で、ケイトは抱いていたファリエルを地に降ろした。
レオンの前に拡がる穴は、今までの穴とは違い部屋、とギリギリ言える位の作りと大きさだった。
「ギルド『白亜』だ。さっさとアリーナを放せ、蟻妖王シャルトスっ!」
レオンはまるで知り合いのようにそう言い放った。
そして穴の中にいた、ケイトが予想していた『蟻妖王』などとはまるで違う蟻妖王シャルトスも親しそうに返してきた。
「白亜・・あぁ、何年振りかしら。アリーナ様を助けに来るってことは、アリーナ様も白亜なの?・・・いえ、そういえばあなた達は赤の他人でも助けに来るお節介ギルドでしたね。」
かなり侮辱されている様な気がするが。
と言うか、「アリーナ様」?アリーナを様付けって、どういう関係なんだ?と言うか・・・
「アリーナっ!」
ケイトの目に蟻妖王シャルトスに倒れ込むアリーナの姿が目に入った。
ケイトは反射的に体が動いて、アリーナのほうへ走り寄っていた。が・・
「ケイト戻れっ!」
途中でレオンにそう指示された。
「え、ちょっ、戻れって!?」
ケイトはアリーナまっしぐら(全速力)だったので、すぐさま止まろうとしても体が言うことをきいてくれない。
するとシャルトスはツイッと腕を上げ、ケイトを指差した。そして抑揚のない声で呟くと
「蟻妖王シャルトスの名の元に命じる。大地よあの者を捉えろ。」
ケイトの周りの土が盛り上がって覆い被さってきた。
「───っ、ア・ラ・シュヴァル・シルフィード。阻め、囲め、崩せ!」
対抗する様にファリエルもケイトにも聴き取れる言葉でそう魔法詠唱した。
するとケイトを捉えようとしていた土の周りに一陣の風が起こり、土の進行を阻んだ。そして詠唱どおり囲み、土を崩そうとしたが・・
「ケイト・・さん、すみまっ・・やられ・・逃げ、て・・っ」
ファリエルが息も絶え絶えにそう伝えた次の瞬間、ファリエルの喚んだ風が敗れて吹き飛んだ。
「そん、ムリだから───っ!!」
ケイトは涙声交じりにそう叫びながらも、一応土に風が足された魔法から逃れようとしてみた。
「ケイト、伏せろ」
そして逃れられないことを覚悟し目を瞑った瞬間、ケイトの耳に用件だけを伝える簡潔な言葉が聞こえた。
ケイトは誰の声かもわからず混乱しながらも、指示通りすぐさま伏せた。
声の主のレオンは刀を横構えにし、すうっと息を吸った。
アリーナが2人に初めて会ったラフィアの魔空洞の時と同じく、あり得ない速さで進みながら。
レオンはケイトの元まで一瞬で辿り着くと、土と風の中に刀を無造作に放り込んでしまった。
そして、呟いた。短く
「レジスト」
と。
刀は一瞬だけ、眩く光った。
最終更新:2008年09月02日 18:51