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         - * カケハシの渡りカギ * -


──流石に、疲れてきた・・・
 朝からずっと、歩きっ放しだ。下がコンクリートではなく、土な事がせめてもの救いか・・しかし、何十キロかと言うほど歩いたのに、景色が全く変わらないと言うのでは、流石に気も滅入ってくる。それに普段から外に出て、運動していなかった事も相まって、心身ともに僕はもう限界である。
 そう、僕は。
言い換えれば、僕だけ。
あえて言うなら、僕体力無さ過ぎ。
強いて言うなら、皆体力有り過ぎ。
──と言う、脳内独り言葉遊びにもそろそろ飽きて来た。
いや、でも本当に。こんなに何にも無い所では、自分の後ろ以外に、影なんて出来っこない。其の為、日本人特有の黒髪には直射日光がこれでもかと言うほど集まって、暑いことこの上ない。
此処が少し前まで都会があんなだった、なんて疑い今頃になって「嘘だろう」と本気で始めたの、だが・・・・あ ぁ・・もう、ちょっと 思考が・・・・───

「・・な・・わぃ・・・?」
──・・あ、れ・・・?
「ク・・な・で・・言う・・!」
「・・然・ろう。・い・・悪・・・」
──僕、如何して・・
「・も、・ュンは・・様が無・・っ」
「ガタ・タうる・・。なぜ・れ・・・」
──これは・・・アイリと・・クロークの、声・・?
 今聞こえている声がその2人の物だと分かった瞬間、僕は、実際に飛んだ事等は無いが──浮遊感、と言う感じの物を感じた。
 何故だろう、それに自分で歩いている訳でも無いのに、周りの景色が変わって行く・・・──って、ちょっと、待て。何故景色が変わるんだ?僕が今まで居たのは木も何も無い、ただっ広い草原だったはずだ。それが何で・・薄らと開けた目には、緑や茶色が映っている・・・
「・・気付いた。」
 その時、不意に僕の上から、そんな華美月の声がした。
──・・上?え、何で・・・
「ジュンッ!良かったぁ・・」
 華美月の言葉を聞いたアイリが、すぐさま傍に寄って来てホッと溜め息をついた。
「・・フン。こんな事で『鍵』に死なれたら適わん。軟弱ひ弱な・・此の世界の人間は、皆そうなのか。」
 クロークが僕を一瞥もせずに、冷たくそう告げた。
「そんな、事な・・」
「喋るな」
 僕がそんな事無い、僕だけだ・・と反論し様と口を開くと、華美月に鋭くそう制された。一聞すると冷たくも聞こえる言葉だが、それは僕を気遣って発せられた物だ。僕はそう分かっていたので、素直に口を閉ざした。
「びっくりしたよー、ジュン急に倒れちゃってさ。えーっと、ちゅ・・う・っ・・何だっけ?」
「熱中症、ダナ。」
「そう、それ!そのねちゅ・・・──それみたいで、暑いのがいけなかったんでしょ?だから急いで来て、予定より早く森に着いたよーっ」
 アイリは一生懸命、そう説明してくれた。
「軽くて助かった。」
 華美月が、不意にそう呟いた。その時はその言葉の意味が分からなかったが──次の瞬間、大いに理解した。いや、理解不能な所もあったが。
 突然体がゆっくりと下降して、途中でピタリと制止した。そして僕の膝の下に在った冷たい支えが外され、僕は随分久しぶりに感じる地面に足を着いた。当然「立つ」事も久し振りで、僕は途中でよろけ、転びそうになったが・・背中に置かれたままのもう一つの支えが、僕を支えてくれた。
 ・・その支えは、華美月の手。
 「軽くて助かった」、か・・成程。
──僕は如何やら、華美月にお姫様抱っこの形で抱えられ、運ばれていたらしい。
 いや、それは仮にも男として如何なのか。いや、大体何でお姫様抱っこなのだ。運んでもらっておいて文句を言うのも何だが、背負ったりするだけで良いではないか。と言うか何で・・いや、これが一番重要なのだが、何故に華美月なのか。もっとクロークとかクロークの魔法とか在ったのではないか。・・と言うのが理解出来なかった点だ。
「うわぁ・・凄い何でって言う顔だねー・・」
 アイリが苦笑しながら言った。・・いや、笑う前に説明して欲しいのだが。
「教えてやろうか。簡単な事だ、この中で一番“お前を運ぶ”事に適任だったのが華美月だった・・少し考えれば分かるだろうが。」
「私がトラさんとか呼んでも良かったんだけど、クロが華美月が運んだ方が早いって言ったのー。」
 アイリがちょっと不満そうにそう言った。・・その言葉を聞いて、僕は初めてクロークに感謝した。クロークが止めてくれていなければ、今頃僕はトラの背中に揺られて、此処まで来ていたかも知れなかったのだ。華美月よりもクロークよりももう何でも良いから、流石にトラは勘弁してほしい。
 そうして僕が背筋がゾッとするのを感じていると、華美月がツイ、と天を仰いだ。
「そろそろ・・夕刻だな。」
「ありゃ、ホント。じゃぁ寝床の確保といきますかーっ」
 アイリが大きく伸びをしながら、そう言った。
「んじゃ、誰が一番先に川を見つけるか──っ、よーい、ドンッ!」
 そして元気良くそう言うと、木々の間を掛け抜けて行った。
最終更新:2008年10月04日 21:47