1.トビラヲヒライテ


『・・・りす・・あ・す・・・・──』
声が聞こえる。誰の声だろう?聞いたことないけど、なんだか懐かしい気がする・・
『り・・・ありすっ!』
私の名前を・・呼んでる?
「はいっ!!」
思わず返事をしてしまった。だって、呼ばれてるし。回りをキョロキョロと見回してみても、声の主の姿は見えないけど。
「ぇっと・・だ、誰・・・ですか・・?」
『私の名前は・・・クィンハーツ』
──クィンハーツ・・・・?
そんな名前、聞いたことない。大体そんなすごい名前、初めて聞いたし・・・
『ありす・・・アリス・メノウ。あなたにお願いがあるのです』
「え?お願い?」
聞き返しながら自分のいる所をよく見回してみたけど、ここは私の部屋じゃない。この豪華なベッド。この豪華な装飾品。ここは・・どこ?
それにこの声はどこから聞こえてるんだろう。やけに透明感のある、澄んだ声。頭の中に木霊して、しばらく耳に残ってる。
『私を、助けていただけませんか?』
「え・・どういう意味?」
『今あなたがいるのは、“クロス邸”というお屋敷の一室です。私は、この屋敷のとある部屋から出られなくて困っているところなのです・・』
「クロス邸?」
また、聞いたことのない名前。友達にクロス君はいるけど、こんなにお金持ちじゃなかったし・・。
「ぁ、あの、その“とある部屋”ってどこにあるんですか?」
なんか、窓から見える景色からして、ここは4階かそこらあたりだ。
しかもこの部屋。「クロス邸」はすごく大きいお屋敷だと思って間違いないと思う。
そんな大きな、一回も入ったことない屋敷から一つの部屋を見つけ出すんだからヒントぐらいくれたってバチは当たらないと思う。けど・・
『それは・・・・』
クィンハーツは少し口ごもってからこう言った。
『それは、すみません。私にも分からないのです・・』
ウソ?なんで。クィンハーツさんもこのお屋敷のこと、よく知らないの?もしかして捕まってる、とか・・・?
「ぇっと~・・じゃぁ、私はなんでここにいるんですか?」
『その答えは、自分で見つけるのです』
「・・どういう意味?」
思わず敬語も忘れて聞き返してしまった。だって、意味わかんない。
私はなんでここにいるの?眠る前はどこにいたっけ?クィンハーツさんはどんな人?信じていいのかな?
『さぁ、アリス。扉を開けて・・あなたならきっと大丈夫ですから』
意味分かんないよ。全部、ぜんぶ。
でも・・・。
心の中で呟いて立ち上がった。
私は勇気と行動力が売りのアリス・メノウだもん。
大きな部屋の隅っこにある天蓋付きベッドから、左手にある豪華な両開きのドアへ。
 悩んでたって、立ち止まってたって仕方がない。
 だから、行動しなきゃいけないんだ。
 なんとかなる・・・いや、なんとかするために!
『ありがとうアリス──』

◆◇◆ そして 私は扉を開いた。 ◆◇◆










































































最終更新:2010年05月28日 21:12