「・・・うん、そうだけど・・?」
そうだ。そうではあるが。
この人の質問は「さっき靴箱にいましたよね?」だった。
別に、屋上から入るわけでもないし、多分このクラスの全員は「さっき靴箱にいた」と思うのだが。
──何か・・この人、天然ボケ?
私の七瀬に対する第一印象はそれだった。
「そうですかっ、良かったです!」
嬉しそうに愛らしい笑顔でその子──緩くウェーブした腰の少し上まではある茶色っぽい髪が特徴の、普通にカワイイ私の右隣の席に座っている子──は安堵したように胸元を押さえた。
ぇ、何一人で納得しちゃってる感じなの?良かったって、何が・・っていうか、まず、誰!
「ぁっすいませんっ私一人で勝手に・・先に言うことがありますよねっ。初めましてです、私、岡崎七瀬って言います」
そう言って右手を差し出してくる。
「私は春山小浪。テニス部で、普通にこなみって呼んでね」
そう言って手を握り返すと、七瀬は嬉しそうにブンブンと繋いだ手を振った。
「ふはぁ~でも本当に良かったですぅ。私、このクラス知っている人が一人もいなくて困ってた所なのですよっ。でも私、初対面の人に話し掛けるのとか、苦手で・・。それで、靴箱で小浪さんを見かけて、小浪さんなら友達になれそうだなって、思ったのでっ」
「ぇっ七瀬も?実は私も友達いなくて困ってたんだよぉ~!ぉしゃー友達1号ゲットだね♪」
そんなことを言ってると、先生が入ってきた。ってか、美術の金崎・・微妙かも。
「ぇ~今年1年この2年3組を受け持つことになった──」
去年の担任と同じような事を言う金崎は無視して、私は小声で七瀬に話し掛ける。
「そー言えば七瀬は何部なの?楽部?」
「いえ、美術部なのです」
「へ~茜と同じかぁ・・って、金崎じゃん!顧問が担任って嫌じゃない?」
「コラ9番、私語は慎め!」
「ぁ、はーいすみませんー」
適当に返事をして「怒られちゃった」という顔で七瀬の方を見ると、こっちを見ている永代君が見えた。
何で!?と思いながらもバッと、目線を反らすためにすぐさま下を向いた。
七瀬にどうしたの?と聞かれたが・・そう言えば永代君も美術部なのに七瀬は「知り合いがいない」と言っていた。女子にさえ人見知りをするようだし、やっぱり同じ部活でもあまり仲良くないのだろうか?そう思って、七瀬には言わなくてもいいか・・と思い「何でもない」と返した。
最終更新:2009年02月04日 02:21